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インディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン8」レポート(後編)。実験的な作品や溢れんばかりのパワーを感じた作品を紹介
先に掲載したレポートの前編では,ユニークなアイデアの作品や,プレイ後に「続きをじっくり遊びたい」と思わせてくれたものを中心に取り上げたが,後編では実験的だったり,ちょっとニッチかもしれないが,溢れんばかりのパワーを感じたものを集めてみた。
制作者が“誰にも邪魔されず,自由に作った”作品たち。商業ベースのタイトルにはあまり見かけない,これらの作品たちに触れやすいことも,東京ゲームダンジョンの大きな魅力のひとつだ。
インディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン8」レポート(前編)。8番目のダンジョンでは,異変を察知したらつき進め!

インディーゲームの展示会「東京ゲームダンジョン8」が,2025年5月4日に東京にある都立産業貿易センター浜松町館で開催された。レポートの前編では,ユニークなアイデアを持つ作品や,「続きをじっくり遊びたい」と思わせてくれた作品を中心に紹介する
![]() カエルパンダは「くるくる回そう!方向幕コレクション for Nintendo Switch シリーズ」を出展。電車の「方向幕」と音をシミュレートする,方向幕がなんだか分かるレベルの人にはたまらないソフトらしい。電車を走行させるゲームではないことに注意 |
![]() PPが出展する「モフプラ」は,新キャラのシルヴィが実装されていた。背景をドラッグして宇宙船を「操船」し,船に接近するデブリを回避するなど「しっぽをモフモフ」する以外のインタラクションもできるようだ。つまり……あとは想像にお任せします |
「東京ゲームダンジョン」公式サイト
日本語のゲーム(仮)
出展団体:mumimumi![]() |
本作は,「モチ上ガール」「女装フィッシング」などの作者であり,東京ゲームダンジョンのイメージイラストを描いていることでもおなじみのmumimumi氏(@mumimumi2000)の新作だ。
日本語の表現力を活用した革新的なアドベンチャー……となるかは今後の開発の進み方次第なのだそうだ。
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頭に花が咲いている,というか貫通しているようにも見える主人公のクロダは,どうにも記憶が曖昧な様子。そこに妹を自称するキャラクターが押しかけ,置かれた状況をいろいろと伝えて来る。
しかしmumimumi氏は「本当に妹とは限らないですよ」と言い,いたずらっぽく笑う。もしかして……弟?(女装フィッシングに引っ張られた感想)。
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プレイを続けるうちに,筆者は「セリフ」がマウスカーソルの動きに応じてブレているような感覚を覚えた。もしやと思いドラッグしてみると……セリフが動いた!
どうやら画面に表示されるテキストは,ドラッグして主人公に食べさせることが可能らしい。
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食べた言葉は記憶され,そのパワーを使った戦いも発生する。しかし,いざ始まったバトルでは自称妹の放つ圧倒的な日本語パワーに,あえなく洗脳寸前に追い込まれるのだった……。
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おおまかなUIが完成した段階で,内容については固まっていないそうだが,mumimumi氏の過去作や会場での発言から考えるに,実験的なゲームになるのは間違いなさそう。
なお試遊中「ヤバい,『女装フィッシング』の人の新作だ」「どうする,プレイしていく?」といった会話が背後から聞こえてきた。いい意味で警戒されていた,いや期待を集めているようだ(笑)。
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Keplerian Space Discovery
出展者:Kugelblitz![]() |
自分だけの宇宙船を建造し,綿密なプランを準備して,太陽系の惑星や衛星を探査するシミュレーターだ。ケプラーの方程式に基づいて精密な天体運動を再現しているだけでなく,宇宙の美しさの表現にも力を入れている。
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設定できるパラメータは,いちいち挙げていくとキリがない細かさで,シミュレーター的な性質が強いアプリであることを強調しておきたい。
作者のキドカオル氏(@KeplerianSpace)によれば,現実の宇宙ロケットや宇宙計画に関するデータや知見があればあるほど活かすことができるらしい。
ただ現実とは異なり,政治や予算の制約なしにさまざまな計画を試せるのは,ある意味でロマンチックとも言える。
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一方で,衛星の打ち上げ計画を受注し,指定された軌道に衛星を投入するといった,宇宙ビジネス的な遊び方も用意されている。
軌道に投入さえすればいいわけではなく,“優しくエレガントに”扱わないと衛星が故障してしまうことも。
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さらには現在の科学では説明のつかない,不思議な物体や現象との遭遇もあるらしい。Steamにてデモ版が公開されているので,まずは実際にプレイしてみて,自分に「ライトスタッフ」(正しい資質)があるか確かめてみてはいかがだろうか。
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推しぬいチューン
出展者:megamittz![]() |
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主人公のつむぎは,「推し」のぬいぐるみ「推しぬい」を作るのが趣味の女の子。「推しぬいチューン」は,そんな彼女の推し活を見守るような雰囲気のアドベンチャー&シューティングだ。ゲームボーイで動作するゲームを,プログラムなしで作れるソフト「GB Studio」で制作されている。
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つむぎはどこかフワッとしたところがあり,ぬいぐるみ作りで手を動かすうちにいろいろな別のアイデアが湧いてしまう。推しぬい(おしぬい)を作るはずなのに,完成するのは「ぶしぬい」「ぬしぬい」「あしぬい」など,変なものばかり。それはそれでかわいいけど。
![]() ふわっふわでござる |
![]() あしぬい……「足縫い」? 何ができあがるかはお楽しみ |
そんな余計なアイデアは撃ち落してしまえばいい……というわけで,シューティングパートでは「お」以外の文字を撃破することが一応の目的となる。
でも,このゲームが気になった人は,おしぬい以外のぬいぐるみも見たくなったのでは? 逆に「お」以外の文字を残して,おしぬい以外のぬいぐるみをコンプリートすることも本作の遊び方のひとつ。シューティングゲームとはいえ,文字の動きのパターンを覚えて,落ち着いて撃てばそう難しくはない。
![]() 1ステージにつき4体のぬいぐるみを作れる |
![]() おしぬいが完成すればステージクリア! 次のステージへ |
ステージセレクト画面はスマホやPCのOS風の見せ方になっていて,こちらにもいろいろな仕掛けがある。あえて多くは語らないので,いろいろな場所をクリックして開いてみよう。
おそらく作者のノラ氏(@nora3l)も喜びます。スマホやPCのブラウザから無料でプレイできるので,気軽に遊んでほしい。
![]() ステージセレクト画面もだんだんにぎやかに |
![]() ん? なんだろうこの絵は |
「推しぬいチューン」公式サイト
https://megamittz.com/game/oshinui_tune/
DYPING ESCAPE
出展者:ヘビサイドクリエイション![]() |
本作は,不気味な目玉に見つめられながら,正確に素早く打ち込んでいくタイピングゲームだ。unityroomで公開中の「DYPING」(外部サイトリンク)を大幅にパワーアップしたものとなる。
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この目玉は悪意をもってプレイヤーを誘導し,また打ち込んだ内容は現実となってあなた(主人公)に襲いかかる。だがタイピングゲームであるルール上,プレイヤーは目玉の提示する「言葉」をそのまま打ち込むことしかできない……(ように思える)。
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unityroom版は,そんな構造をうまく利用した“PCで遊ぶならではの短編ホラー”といった趣のゲームだったが,「DYPING ESCAPE」では目玉の悪意と恐怖が大幅に強化された。
その代わり,こちら側にもさまざまな対抗手段が用意されており,相手の言葉を巧みにかわしたり,設定画面を開いて打開策を見つけたりできる。
また,単語や文字を差し替えられるカード「切れ端」は,プレイのたびに変化。毎回異なる展開を楽しめるそうだ。
![]() その権限,本当に渡してしまって大丈夫か? |
unityroom版が,逃れようとしても結局は呪い殺されてしまうジャパニーズホラーだとすれば,「DYPING ESCAPE」は脅威に対して対抗可能なアメリカンホラーのようなニュアンスを感じる。いわばゴージャスに作られたハリウッド版「DYPING」かもしれない(笑)。
なおプレイ中,本当になにかが起こったとしても作者(@HeaviCre)はなんら関知しないそうなので,そのつもりで遊んでほしい。
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ドット絵RPG
出展者:ぱうビーム![]() |
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本作は,サークルぱうビーム(@pawbeam_)が手掛けるRPGだ。プレイヤーは水没した世界で,「水上配達員」として誰かの大切な荷物を届けることになる。
ある人にとっては懐かしく,またある人にとっては温かみが感じられる作品で,かわいいドット絵に惹かれた人が次々にプレイしていた。
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この世界はほとんどが水没しているようで,フィールドでの移動にはボートを使う。また主人公メルの周囲には,とにかく明るいポアレ,酒好きでいつも二日酔いのワサビらがいて,ほのぼのとしたイベントが続いていく。
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作中では“挨拶”が重要視されているのだが,これは前作「おはゆいちゃん 爆発」から引き継がれているものらしい。途中にいるウニとまで挨拶できるのは,ほほえましく感じた。
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キャラクターをはじめ,グラフィックス全般を担当するやいぎ氏(@_yaigi)によれば,「今作も絶景には力を入れています!」とのことだった。
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試遊できたのは10分程度で終了となる短いバージョンだったが,前述したとおりプレイする人の姿が絶えず,来場者の期待を集めている様子がうかがえた。
作者のXや公式サイトでは順次新しい情報が更新されるだろうから,ちょいちょいチェックしてみよう。
ちなみにメインキャラの性別は特に設定していないそうで,遊んだ人の解釈におまかせらしい。
立ち絵が変なポーズの恋愛アドベンチャー
出展者:ななにのん![]() |
ユニークなビジュアルと予測不能なストーリー展開で注目を集めている,ビジュアルノベル「立ち絵が変なポーズの恋愛アドベンチャー」。何やら新しいシステムが加わったと開発者の伏見のヒナタはん氏(@hinatagames4)が告知していたので,試しに遊んでみることにした。
が,現場ではアクキー的なものが装着されたエアマウスを手渡され,ゲームを遊ぶ前から頭の中で「?」が溢れてしまう。
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ここで雰囲気に飲まれたら負けだと,気を取り直してゲームをスタート。……うん,噂にたがわず本当に変なポーズと,シュールなシナリオが目の前で展開していくゲームだった。しかし,エアマウスで操作する意味とは一体?
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気になっていた新システム「フリーダムコマンド」は,プレイヤーが「場面展開を自由に指定できるにも関わらず,エンディングには影響しない」選択肢のことだった。
伏見のヒナタはん氏によれば,「攻略結果を気にすることなく,カオスな選択肢を気軽に楽しんでください!」とのことで,このタイプのゲームによくある「本当に選びたい選択を続けた結果,キャラクター全員にふられるルートに進んでしまう」ジレンマが解消される(筆者だけが感じるジレンマだろうか)。
![]() 左上に表示されているのがフリーダムコマンドの一例。それはそれとして,観月橋先生の名状しがたいポーズも気になるところ。顔の前面に突き出された10本の突起は,まるでそれぞれが意思を持った蛇のように,ぬめり光る表面を……いや,ぬめってもないし光ってもいない |
もちろん全選択肢が「フリーダムコマンド」というわけではないので安心してほしい。もしすべての選択肢がエンディングに関係しないとしたら,それはそれで前衛的すぎるアドベンチャーゲームだ(笑)。
なお試遊版の最後のほうに出てきた選択肢を見たとき,筆者は思わず「ウワーッ!」と声をあげてしまった。ベタなネタではあるものの,適切なタイミングで使われると破壊力が高い。
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本作の完成版ではどんな展開が待っているのだろうか。最後までカオスが続くとしてもビックリだし,普通にヒロインたちのことを愛おしく思えていたとしたら,それはそれでビックリだ。
ともかく,制作チームがアドベンチャーゲームにつきものの「変な選択肢や展開」を愛してやまないことはヒシヒシと伝わってきた。
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灰色のパルスメモリー
出展者:HAIIRO GAME SERIES![]() |
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「灰色のパルスメモリー」は,408(しおや)氏(@haiiro_408)が制作する人形討伐アドベンチャーだ。
ドット絵,アニメーション,コミックを組み合わせた独特の表現のある作品で,完成版は終末都市の片隅を舞台にした「切なさと微かな希望が溶け合う群像劇」となるらしい。
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舞台となるのは,「人形」の出現により荒廃した旧東京。謎に包まれた存在である人形の生態を調べ,記録していくのが主人公の少女「ネクター」=プレイヤーの目的だ。
この子がなかなかのお嬢様で,ひとりでは生活が困難なレベルである。そのヘルプ兼ツッコミ役を務めるのが,皮肉屋で意地悪なイチハチ。お話は楽しいバディものといった趣で始まるが,じつはイチハチは旧型の人形なのである……。
![]() こちらがイチハチ。ティザーPVでは18(IB?)との表記もあったので,型番的なものかもしれない |
さらに408氏の作品によく登場する少年の「アイリス」と,兄的な立ち位置の「カジクマ」らもお話に登場するらしい。少子化が進み,人を襲う謎の人形が蔓延る世界観も,これまでの作品と共通だ。そういえば,イチハチも過去作のキャラに似ているような?
![]() これが人形。ちょっと残酷な調査もできる |
東京ゲームダンジョンには15分程度の体験版を出展していた本作。過去作品の要素を散りばめつつも,より広い範囲に届けようという408氏の意気込みを感じたことも紹介したくなったポイントだ。おもに女性の来場者が,もの静かに,だが熱心にプレイしていた姿も印象に残る。
体験版は現時点では未公開だが,直近だと5月24日開催のノベルゲーム限定イベント「DREAMSCAPE3」にも出展するそうなので,興味を持った人は足を運んでみよう。
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「東京ゲームダンジョン」公式サイト
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