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「gamescom asia × Thailand Game Show 2025」がバンコクで開幕――B2BとB2Cを統合した東南アジア最大級のゲームイベント。「プレイヤーの国」から「創造者の国」への転換を目指す
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会場面積は3万平方メートル以上,4ホールにわたる大規模なもので,出展社数は200社を超えるという。4日間の来場者数は20万人以上と予想されており,その規模感は東南アジア地域では群を抜いている。今回のgamescom asiaは,B2B(ビジネス向け)とB2C(一般向け)の両面を兼ね備えた「ハイブリッド型」として設計されており,業界関係者からゲーマーまで,あらゆる層が楽しめる構成になっている。
開会式に登壇したドイツビデオゲーム産業協会(German Video Games Industry Association)の理事長Lars Janssen氏は,「gamescom asiaとThailand Game Showがバンコクで合同開催されるのは今回が初めてであり,非常にエキサイティングだ」と語った。同氏とマネージングディレクターのFelix Falk氏は,Thailand Game Showとの統合により,イベントが以前のシンガポール開催時よりもさらに活気に満ちていると評価する。
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「gamescomが謳う『360度のゲームフェスティバル』を,Thailand Game Showのパートナーとともにバンコクで実現できることを嬉しく思う」とFalk氏は述べた。今回のイベントではビジネスセクションが導入され,ヨーロッパと東南アジアのビジネスをより緊密に結びつける役割が期待されている。「東南アジアは非常に興味深く,成長著しい新興市場だ。この成長を見ることができるのはエキサイティングであり,明るい未来が待っている」と,両氏は期待を込めて語っていた。
gamescomはすでにグローバルブランドとして確立されており,ドイツ・ケルンでの開催に加え,ブラジル・サンパウロでの「gamescom LATAM」,開発者向けカンファレンス「gamescom DEV」などを展開している。今回,タイのバンコクがそのラインナップに加わることで,アジア・太平洋地域における存在感をさらに強めることになる。
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タイ政府のデジタル経済推進機関(DEPA:Digital Economy Promotion Agency)および国際貿易振興局(DITP:Department of International Trade Promotions)の代表者であるNuttapon Nimmanphatcharin氏は,政府のゲーム産業支援策について詳細に説明した。
タイのゲーム市場規模は現在350億バーツ(約1600億円)を超え,年間15〜20%という高い成長率を維持している。ゲーマー人口は3000万人以上に達し,昨年のゲーム関連支出は11億ドルに上った。
DEPAとDITPは,タイのゲーム開発者と起業家を支援するため,多岐にわたる施策を展開している。具体的には,金融機関とクリエイティブスタジオの橋渡し役として資金調達を支援し,ゲーム産業向けのデジタル人材育成プログラムを推進。また,東京ゲームショウやG-Star,gamescomといった国際イベントへのタイ開発者の参加を積極的に支援し,グローバルな露出機会を提供してきた。「人こそが産業の鍵となる要素だと,DEPAとDITPは信じている」と,Nimmanphatcharin氏は強調した。
そして今年,タイ政府は東南アジアで初めてとなる「ゲーム産業振興法(Game Industry Promotion Act)」を成立させる見込みだ。この法律は,ビジネス環境を強化し消費者を保護するだけでなく,開発者,アニメーター,コンテンツクリエイター,ゲーム関連組織に至るまで,産業全体を支えるキャリアフレームワークを構築する。Nimmanphatcharin氏は「タイをグローバルなゲームの目的地にしたい。この地域,あるいは世界のゲーム産業にとっての代替国としての地位を確立する」と,野心的なビジョンを掲げた。
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タイゲームソフトウェア産業協会(TGA:Thai Games Software Industry Association)の会長であるKittipong Prucksa-aroon氏は,今回のイベントが持つ歴史的意義を語る。「タイの歴史において初めて,グローバルなゲーム産業のための真のB2Bプラットフォームに門戸を開く瞬間だ。クリエイター,投資家,パブリッシャ,機関が対等な立場で集まる場が実現した」と述べ,これが東南アジアが新たなゲームの発祥地として台頭する重要な節目であると位置づけた。
タイは長きにわたり熱心なプレイヤーの国であったが,今回のイベントは「創造者の国(nation of creators)」へと向かう最初の大きな一歩を示している。会長は「今日,さらに偉大なことが始まる」と語り,60以上のタイスタジオが数千人の才能あるプロフェッショナルとともに参加していることを強調。「彼らのプロジェクトは,創造性,コラボレーション,イノベーションの力を示しており,タイの開発者が世界的な舞台に立つ準備ができていることを証明している」と,誇らしげに述べた。
TGAの使命は,タイのゲームエコシステムを接続し,強化し,促進することだ。開発者,投資家,そしてDEPA,DITP,文化省といった政府機関と緊密に連携しながら,競争力があり持続可能な産業を構築し,タイを東南アジアのゲームハブとして位置づけることを目指している。会長は参加者に向けて,「地元のスタジオには自らのストーリーを語ってほしい。地域および世界の人々に,タイの創造性,回復力,コラボレーションの精神を発見してほしい」と呼びかけた。
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今回のイベントは,日程を区切ってB2BとB2Cの両方に対応している。10月16日と17日は主にB2B向けの日程で,業界関係者同士の商談やネットワーキングが中心だ。一方,10月17日から19日は一般来場者も楽しめるエンターテイメントゾーンが開放され,最新ゲームの試遊やステージイベントなどが展開される。
エンターテイメントゾーンには,Bandai Namco,Capcom,Ubisoftといった著名企業が参加予定だ。インディーゲーム展示も約80タイトルが予定されており,グローバルな新興デベロッパの作品に触れる機会も充実している。
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コスプレ大会,eスポーツ競技,声優やインフルエンサーのサイン会,ライブパフォーマンスなど,ファン向けの企画もかなり用意されている。ゲームを「プレイする」だけでなく,「体験する」「交流する」場として設計されているわけだ。
そんなgamescom asia × Thailand Game Show 2025では,タイのデベロッパが開発するゲームや,業界人向けに行われた講演内容を中心に紹介していく。
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gamescom asia x Thailand Game Show 2025公式サイト
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