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クリエイター向けブランド「ProArt」から,6K解像度の32型ディスプレイが登場。162インチのマイクロLEDディスプレイも披露
といっても,本稿で取り上げるのは,すでに紹介したゲーマー向けブランド「Republic of Gamers」の製品ではなく,クリエイター向けの高画質ディスプレイブランド「ProArt」シリーズの製品だ。
32インチ6Kディスプレイが今年発売。価格は意外と安い?
今回,ProArtブースに展示されていたのは,アスペクト比16:9で解像度6016×3384ピクセルの6Kディスプレイ「PA32QCV」だ。
2024年に発表された製品だが,2025年にようやく発売になるらしい。ProArtシリーズの製品は,なかなか発売されないまま,数年展示され続けるというのは,これまでも幾度となくあったことである。
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6016×3384ピクセルという縦横解像度は,見慣れた整数比の解像度ではないことは明らかだ。たとえば,2024年にProArtブランドから登場した5K解像度ディスプレイ「PA27JCV」は,5120×2880ピクセルで,「WQHD」と呼ばれることもある2560×1440ピクセルの縦横2倍の解像度である。
6016×3384ピクセルは,正方解像度の376×376ピクセルの横16倍,縦9倍の解像度と言うだけで,馴染みのある解像度とは関係なさそうだ。関連するものを挙げるとすれば,Appleが2019年に発売した「Apple Pro Display XDR」と,同じ解像度と言う程度か。
ASUSによるPA32QCVのアピールポイントのひとつは,同社独自の「LuxPixel AGLR」(Anti-Glare Low Reflection)と称する環境光低反射コーティングだそう。これは,画面への周囲の映り込みを低減しつつ,映像の鮮明さは高く維持する技術という。
ブースでは,表示面がテカテカのノートPCと見比べるデモを行っていた。たしかに,PA32QCVの表示映像には,自分の顔がほとんど映り込んでおらず,映像に集中できたので役立ちそうだ。
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採用液晶パネルはAUO製のIPS型。担当者によれば,光源LEDは広色域白色LEDで,直下型バックライトシステムを採用しているそうだが,採用LEDはMini LEDではないとのこと。そのためか,エリア駆動時の分割ゾーン数は16と少ない。
HDR映像表示はVESAのHDR関連規格「DisplayHDR 600」に準拠しており,標準輝度400nit,ピーク輝度は600nitに達する。公称コントラスト比は2000:1。なお,最大リフレッシュレートは60Hzだ。
高画質ディスプレイらしく,色誤差はΔE<2で,デジタルシネマ向け色空間規格「DCI-P3」の色空間カバー率は98%とのこと。さらに,Portrait Displaysのブランド「Calman」のキャリブレーションシステムに対応する。
映像入力インタフェース類は,DisplayPort 1.4入力×1と,HDMI 2.0入力×1,Thunderbolt 4(96W出力対応)×2を備える。そのほかに,3極3.5mmミニピンヘッドフォン出力もインタフェース部に並んでいた。Windows PCだけでなく,Mac系への対応が本機の特徴だと,担当者はアピールしていた。
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PA32QCVの発売時期は,2025年第3四半期を予定しており,北米におけるメーカー想定売価は1200ドル前後(税込,約17万1000円)。ProArtから登場する32インチ6K解像度のIPS型液晶ディスプレイとしては,かなり安価と言えそうだ。
ホームシアター向けの162インチのMicro LEDディスプレイが発売へ
ホームシアター向け大画面システムは,これまで,プロジェクターが主流を占めてきたのだが,近年,流れが変わり始めてきた印象がある。
たとえば,2024年は100インチクラスの大画面液晶テレビの発売が相次ぎ,TCLが100インチ液晶テレビを50万円で発売。2025年には,さらに価格破壊が進み,Xiaomiから登場した100インチテレビは,Amazon.co.jpでの販売価格が29万円台となったほどだ。これらは皆,液晶パネルを採用する。
一方,次世代ディスプレイ技術のひとつ「マイクロLEDディスプレイ」は,サブピクセルのひとつひとつが,μmサイズの赤緑青LEDチップで構成される映像パネルだ。
業務用では,マイクロLEDディスプレイの普及が進んでおり,新しめの大型のイベント会場では,プロジェクタのかわりに導入されていることもある。一方,ホームシアター向けは,富裕層向け製品がボチボチ出てきたという程度だ。
意外なことに,ASUSは,富裕層向けホームシアターの市場にProArtブランドで乗り込もうとしている。かつてASUSは,ProArtブランド立ち上げ時に,「放送業界向けのリファレンスディスプレイを展開していく」と豪語していた。Mini LED×量子ドット技術採用ディスプレイは,他社に先駆けて市場に投入した実績もある。
2025年のASUSは,製品化を前提としたマイクロLEDディスプレイの新モデル「ProArt Cinema PQ09」(以下,PQ09)を発表し,ブースに実機を展示していたのだ。
PQ09の画面サイズは,162インチだ。寸法にすると横約3.6m,縦約2.0mという巨大な画面である。ピクセルピッチは約0.93mmである。最大輝度は1200nitで,DCI-P3色空間カバー率は99%を謳う。
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実際の映像を見た感じとしては,まずまずといったところ。ひとつ高く評価したいのは,パネルの継ぎ目がかなり目立たなくなっていたところ。担当者は「ドットピッチとパネルモジュールの継ぎ目の隙間を揃えるチューニングを行った。さらにPQ09では,LuxPixel AGLRを適用しており,パネルモジュールの継ぎ目が目立たなくなった」と述べていた。
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ASUSは,COMPUTEX 2024においても「ProArt Cinema PQ07」という,136インチのマイクロLEDディスプレイのプロトタイプを展示していた。このときは,若干,パネルの継ぎ目が見えていたのを覚えている。
ProArtの担当者によれば,2024年のPQ07では,LuxPixel AGLRは適用していなかったそうだ。
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なお,PQ07のDCI-P3色空間カバー率は97%だが,PQ09は99%となっている。発色性能向上のチューニングも進んだようだ。
PQ07は,発売時期や価格が明らかになっていなかったが,PQ09は,2025年第3四半期の発売を予定しており,北米におけるメーカー想定売価は約16万ドル前後(税別,約2286万円)であるという。
また,136インチのPQ07も,プロトタイプで終わりせず,画質やそのほかの製品完成度をPQ09レベルに上げて,2025年末以降に販売していく計画を練っていると,ProArtの担当者は話していた。
日本市場での発売は未定だが,担当者は「我々は,ソニーの『Crystal LED』が抑えている業務用分野にも営業をかけたい」と鼻息が荒く,価格的な競争力はかなり高いとアピールしていた。
たしかに,PA09の16万ドルという価格は,162インチ4Kというスペックを考えると,相対的には安価な方だと思う。16万ドルという価格は,他社製品では1サイズ下の136インチ製品に付いているというイメージだ。ASUSのProArtは,なかなか侮りがたし,といったところか。
ASUSのProArt製品情報ページ
4Gamer.netのCOMPUTEX 2025特集ページ
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