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印刷2024/03/08 19:56

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AIをゲームのエフェクト制作に活用する研究事例が紹介された,アプリボットのエフェクトアーティストによるセッションをレポート

 サイバーエージェントは2024年3月7日,ゲーム・エンターテイメント事業部の技術やノウハウを紹介する開発者向けカンファレンス「CyberAgent Game Conference 2024」を開催した。本稿では,アプリボットのチーフエフェクトアーティストを務める邑上貴洋氏のセッション「ゲームエフェクト制作へのAI活用」の内容をレポートしたい。

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 邑上氏によると,現在サイバーエージェントグループでは全社的にAIの活用に取り組んでおり,エフェクト分野も例外ではないという。ただ,エフェクトについては研究開発を進めているものの,まだ実践的に導入しているわけではないので,このセッションを聞いた人はぜひチャレンジして,その結果を発信してほしいと述べた。

 さて,AIには「万能」「便利」「早い」「クオリティが高い」「仕事がなくなる」「何だか怖い」といったさまざまなイメージがあるが,邑上氏は「今の時代はまだ,という話かもしれないが」と前置きしつつ,「AIは決して万能ではない」とする。「3DのクリエイティブはAIでなんでも作れる,というケースは結構あるが,ゲーム開発にはまだまだ時間がかかると捉えている」としたうえで,現状は,AIを作業フローに組み込むことで効率化を図っているという。

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 邑上氏が最近試しているのは,画像生成AIのStable Diffusionだ。ゴッホ風やアニメ風といった,さまざまな学習データタイプを指す「モデル」や,画像の構図や人物のポーズを設定できる拡張機能「ControlNet」,ポージングに活用できるフリーソフト「DesignDoll」が紹介された。

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 続いて,ControlNetを使ってリアルなエフェクトやアニメ調のエフェクトなどを作成する事例が紹介された。ベースとなる炎や爆発のエフェクトは,VFXツール「EmberGen」を使って作成したという。EmberGenは炎や煙,爆発などに特化したGPUベースのツールであるため動作が軽く,使いやすいうえに,最初から数十種類のプリセットが用意されているのでコストパフォーマンスが高い。

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 具体例として,EmberGenで作成したリアルなエフェクトをアニメ調に変換した作例が示された。邑上氏は,「After Effects」「Photoshop」などを使ってフィルターを掛けるのではなく,AIがしっかり描き直していることを強調した。

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「ControlNet m2m」の研究も進めており,動画から連番画像への変換を試みているものの,課題が多く,商用利用できるようなものではないのが現状だという
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 Stable Diffusion以外で使いやすいAIも紹介された。Adobeの「Firefly」は,同じくAdobeの「Express」に搭載されている生成AIで,作成したものの商用利用が可能だ。また,分かりやすいフィルター機能や,非常に軽い動作をブラウザ上で実現している。

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同じ炎を,3つのテイストで出力したFireflyの作例が示された
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 動画生成AIとして,「Runway gen-2」も紹介された。現状では,画像をそのまま動画化しただけでは不自然になることもあるため,プロンプトで補足する必要があるとのこと。

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 有料の「Pika 1.0」は,日本語が使えて映像変換も得意という特徴がある。とくにアニメ調の画像をリアル調に変換することが得意だという。

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 連番画像のアトラス化では,工数を削減するため,数フレームの原画をAIで生成して,それらの中間画像をAIで生成するという試みも行っている。

AfterEffectsのプラグイン「SpeedX」「Twixtor」は,どちらかというと実写合成に向いているため,アニメ調のものでは,生成した中間コマのシルエットの輪郭がブレやすいという現象が起きた
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中間コマを生成するAIとしては,「Rife-App 3.35」「Flowframes」が紹介された。アニメ調の表現における中間コマ生成について,大幅なコスト削減を見込めるという
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連番画像のアトラス化を多用することのデメリットも示された。とくに画面全体に演出を施した場合,画像の劣化が顕著に出るとのこと
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Unityの「Vector Graphic」のメリットとデメリットが紹介された。邑上氏は,現在β版だが,今から始まる新規プロジェクトに使えば,ゲームがリリースされるころには正式版になっているかもしれないと話す
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Adobeの「Animate」は手描きに特化している。また,パスを単純化しても,形状がほとんど変わらないため,大幅にパス数を減らせるという大きなメリットがある
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 AI生成物の著作権にも言及された。邑上氏によると,変換元の素材に著作権があるなら,自作する必要があるとのこと。そのため,EmberGenで作成したリアルなエフェクトをAIで変換するといったフローであれば,著作権に抵触しないというのが邑上氏の見解だ。

 表現に関しては,最適なモデルを学習させることが重要なため,データのタイプに使う画像などには配慮する必要があるものの,今のところ著作権に抵触するケースはそれほど多くないという。そのため,学習させるデータのタイプをさらにブラッシュアップして,クオリティの高いものにしていきたいと邑上氏は話した。

 また,AIや素材には有償のものもあれば無償のものもあり,それぞれ利用する場合の規約が異なる。実際に使う場合は細かくチェックして,不明な点は法務部に問い合わせるなどしたほうがいいとのこと。

 セッションの最後には,今後のAI研究開発における3つのテーマが示された。「ラフ絵からハイクオリティなリアル系素材の作成」は,文字どおり手描きのラフ絵などからハイクオリティなリアル調エフェクトの素材を作ることだ。邑上氏は,リアルな素材からアニメ調,ラフ絵からリアル調といったようにAIが描き直せるようになると,コストを大幅に削減できるのではないかと語った。

 「AI出力映像のベクターパス化」は,AIで出力した映像をベクター化することにより,画像の拡大縮小時に画質が劣化しない,あるいは,データサイズが小さくなって扱いやすいなどのメリットを狙うものだ。邑上氏は,「Unity側の実装の仕組みも研究したい」と述べた。

 「3Dモデル生成など複数AIとの組み合わせ」は,モーションを読み込みこんだり,キャラクターを差し替えたりするようなAIが順次登場しているので,それらを組み合わせることで,例えば,ハイクオリティな必殺技のビデオコンテを短時間にクオリティ高く作るといったことを狙ったもの。邑上氏は「エフェクト以外のチームとも連携して,研究を進めたい」と意気込みを見せてセッションを締めくくった。

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「CyberAgent Game Conference 2024」公式サイト

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