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しげるのゲーミング子育て日誌:連載第1回のテーマは保育園の入園手続きこと「保活」。保活に潜む「ゲーム性」とは?
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印刷2024/03/30 09:00

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しげるのゲーミング子育て日誌:連載第1回のテーマは保育園の入園手続きこと「保活」。保活に潜む「ゲーム性」とは?

画像集 No.009のサムネイル画像 / しげるのゲーミング子育て日誌:連載第1回のテーマは保育園の入園手続きこと「保活」。保活に潜む「ゲーム性」とは?
 ゲーマーにしてライターのしげるさんが,頭を悩ませつつも楽しんで子育てに向き合う過程をエッセイにする企画「しげるのゲーミング子育て日誌」。今回から不定期で,お子さんの成長とともに起こる悲喜こもごもを連載していきます。

 記念すべき連載第1回のテーマは保育園の入園手続きこと「保活」。しげるさんが「ゲーム性がある」と言うその手続きの実態とはどんなものなのか? これから保活に挑む人も,「こんなのあったなあ」と思い出す人も,子どもをめぐる行政に関心がある人も,必見です。

 前回4Gamerに子育てとゲームのことを書いたところ,あれよあれよと連載になってしまった。初めましての人も以前からご存知の人もこんにちは。2歳児を育てている,ライターのしげるです。ゲームは好きだけど最近は時間的余裕が皆無で全然できてないへっぽこゲーマーですが,よろしくどうぞ。

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[2024/02/24 11:00]

 で,ここからが本題なのだけど,とうとう子供が4月から保育園に通うことになった。2年と2ヶ月ほどほぼ家と近所だけ(と児童館)で子育てしていたが,今後は平日の日中はよそに預かってもらうことになる。「長かったな……」という気持ちと,「子供がずっと家にいる期間って,案外短いんだな……」というちょっとした寂しさの両方がある。

画像集 No.002のサムネイル画像 / しげるのゲーミング子育て日誌:連載第1回のテーマは保育園の入園手続きこと「保活」。保活に潜む「ゲーム性」とは?

 保育園に入れるためには,当然ながら諸々の手続きを踏まねばならない。いわゆる「保活」である。自分もこんな立場になるまでは,子供を保育園に入れるまでのあれこれについてまったく無知だった。「ネットを見ると保育園の話って荒れがちだし,大変そうでおっかねえな……」くらいの感じで考えていたのである。

 ただ,実際に子供を保育園に入れる段階になると,これが意外にゲームっぽかった。奥さんも「割とゲームっぽいところはある」と言っており,児童館で知り合ったほかの親御さんたちの中には,「保活というゲームにハマっている」ようにしか見えない人もいたように思う。ということで,今回は「保活」から感じられたゲーム性についてちょっと書いてみたい。

 ちなみに,文中の園児募集に関する制度面,システム面についての記述は,自分が住んでいる神戸市のものである。なんせ神戸の話なので,東京での保育園探しよりものんびりしているところが多少あるはず。「こんなにラクじゃねえよ!」「ていうかお前ほとんど何もしてねえじゃねえか!」とつっこみたくなる読者もいるかもしれないが,そこはご容赦願いたい。

画像集 No.006のサムネイル画像 / しげるのゲーミング子育て日誌:連載第1回のテーマは保育園の入園手続きこと「保活」。保活に潜む「ゲーム性」とは?

 保育園の入園タイミングには春と秋があるが,大体の家庭は4月の入園を目指す。そのため申込書は,入園前年の9月20日から配布され,10月20日から11月30日までの約1ヶ月の間が申込書の受付期間となる。その後1月に選考結果が各家庭に送付され,受かっていれば,園での面接,各種アイテムを買い揃えるといった入園準備をし,4月に晴れて入園となる。神戸市ではこの入園までの流れなどを解説したルールブックが配布されており,基本的にはその流れに沿って親は準備を進める。

 しかし,9月20日に申込書をもらったところで,そのまま書いて申し込み……ということにはならない。まず自宅付近にある保育園・保育所の位置を地図で確認し,位置や自宅との距離を検討するところから始める。良さそうなところをピックアップしたら実際に見学に行き,どんな保育園なのか概要を掴みにいくのだが,見学は基本的には電話予約が必要なので,その段取りも親が自分で組むことになる。幸い我が家は奥さんが育休中だったのですぐに動けたが,両親ともに仕事があるとこの時点でけっこう大変だったりする。

 免疫が弱い幼児は,集団生活させるとすぐに熱を出す。そうなったらすぐ引き取りに行かなければならないので,やはり重要なのは保育園と自宅の距離の近さだ。しかし子供を預けるのだから,質の面でも妥協はしたくない。一見全部同じに見える保育園でも実はけっこう教育方針に違いがあり,がっちりカリキュラムを組んでさまざまな活動をさせるタイプの園もあれば,割と放任主義で子供の自主性に任せるタイプの園もある。どの園が子供の性格(といっても,2歳児の性格というのは「あるような,ないような……」という感じなんだけど)に合うかどうか,親は頭を悩ませることになる。

 そういったリサーチを経て,候補を絞ることができたら応募……なのだが,ここで大事なのは自分の家庭の「持ち点」を把握しておくことである。この「持ち点」とは,正式には基準指数と呼ばれるもので,ざっくりいうと「その家がどのくらい余裕がなく,保育園への入園をどれくらい必要としているか」をポイント化した数字だ。自治体によって点数の付け方は異なるが,例えば神戸市の場合は「月20日以上かつ週40時間以上又は週5日以上かつ日8時間以上働いている」ならば100点,「月16日以上かつ週16時間以上又は週4日以上かつ日4時間以上働いている」ならば70点……といった感じで,父親と母親がどの程度忙しく余裕がないのかで点数化される。

 この基準指数は就労状況のほか,父母に疾病や障害があるかといった部分も点数化されており,父母それぞれの状況に合致した数値を選んで集計され,合計したものがその家の「持ち点」となる。労働状況がハードであればあるほど点が高くなる仕組みになっているので,基本的に高得点なほど希望した保育園に入りやすくなる。

 この基準指数は労働形態によって決まるので,働き方を変えない限り上下させることはできない。しかし,父母の労働形態以外に「調整指数」と呼ばれる部分が設定されている。ここは労働以外の要素が加味される部分で,例えば介護が必要な親族が家にいるか,シングルで子育てをしているか,生活保護を受給しているか……といったポイントが加算される。この部分の点数を上げるために「認可保育園の募集前から認可外保育園に預けた実績を作っておく」といった技もあり(認可保育園の募集を待てないくらい忙しいのか……ということで点数がつくらしい),ハックのやりがいがある部分である。

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 正直「ケチくさいこと言ってないで,保育園なんか希望者全員入れてやれよ〜税金払ってんだからさ〜」と思うのだけど,自治体によってリソースに限りがあるのもまた事実だろう。我が家も粛々とこのポイント制に従い,自分たちの点数を把握した。そして点数を把握したうえで,「自分たちはどのくらい高順位の点数を持っている(希望が通りやすい)のか」「どの保育園が何人受け入れる予定なのか(聞けば教えてくれる場合もあるし,親同士のネットワークを通じて情報を入手する場合もある)」「近所の保育園の質やカリキュラムはどうなのか(これも親同士のネットワークから情報を入手できることもあるが,基本的には園に見学に行くことになる)」などなどを総合的に判断し,第一希望の保育園を決めるわけである。

 保育園の応募状況に関しては,毎週自治体から発表がある。この保育園は何人,この保育園は何人……といった形で,保育園ごとに現在何人の応募があったかが具体的な数字で発表されるのだ。11月30日までこの発表を睨んで最後の最後に自分たちの点数と応募人数的に受かりそうなところを選ぶのか,それとも早い段階から「ここしかない」という第一希望の一点突破を狙うのか。状況を見て応募した保育園の希望順位を操作できるので,応募したあとも締め切りまで目が離せない。

 そういった状況で,我が家は当初提出した申込書のまま希望順位を調整せず,第一希望の一点突破を狙った。理由としては,我々は2歳児保育の受け入れ枠が5人と,周辺の保育園と比べても余裕があるところを狙ったという点がある。さらに「あえて駅前にある交通の便のいい園を選ばず,住宅街の中にポツンと建っている園を狙う」という小技も使った。駅前の保育園は職場への行き帰りの道中で子供を預けたり引き取ったりできるので,やはり人気が高い。その点住宅街の保育園は近くの人間しか来ないので,通える距離ならばそちらのほうが狙い目なのである。この読みが当たったのか,ひとまず希望通りの園に入れることができた。ハッピーエンドである(これから入園準備が始まるので,エンドではない)。

 応募が締め切られたらひとまずやることがなくなり,1月半ばの合格発表を待つのみ。受かったら面接なり入園準備なりがあるが,落ちた場合も園や年齢によっては二次募集を受けられるので,そこでまた頑張ろうということになる。基本的に神戸市は待機児童ゼロを達成している(2023年4月1日時点)ので,多少希望から外れるかもしれないが一度落ちても保育園自体には入れると思っていいはずである。

  ここまで保活のルールや一部攻略的な要素を紹介したが,いかがだっただろうか。けっこうゲームとしてはアツそうな要素が揃っていないだろうか。実際に地図上で目的地をピックアップして数か所を周り,その中から候補を調べ,自らの持ち点と周囲の応募状況を判断しながら希望順位を考えて応募する。一種のギャンブルに近い要素もあり,周辺エリアの保育園の受け入れ状況やカリキュラム,応募人数に関して妙に詳しい,完全に「ハマっちゃっている」親御さんもちょいちょい見かけた。またそういう人から聞いた話というのが,ちゃんと役に立ったりする。保活,燃える人は燃えるのである。

 特に,我が家は奥さんが書類を見ると燃えるタチだったのが大きい。「提出物を揃えて空欄を埋めて,キッチリ不備がないように書類を用意する」という作業になると俄然「やってやるぜ!!」と戦意が湧いてくるそうで,ややこしい提出物であればあるほど燃えるという提出書類専門の戦闘狂である。そういう性質の人からすると保活は大変やりがいのあるゲームなのだそうで,全体の作業の感想を奥さんに聞いても「しんどくはなかった」と余裕を見せていた。すごいな。

 また,基準指数のスコア表を見つつGoogleマップで保育園の位置を見比べ,どこに人気が集中しそうか見極める作業は,戦略シミュレーションっぽくて単純に面白かった。「自分の手元にあるリソースがある程度運によって決まり,それをどう割り振るかを頭を捻りつつ決定する」というあたりには,「シチズン・スリーパー」のようなTRPGをベースにしたテキストアドベンチャーっぽいところがある。

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「シチズン・スリーパー」のキャプチャ。画面上部に表示されているダイスが,プレイヤーのリソースだ

 むしろ保活をテーマにしたTRPG的なゲームを作ることもできそうだ。親の働き方や居住地周辺の保育園の立地などは運の要素が強く,そこから基準指数という形でリソースが割り振られ,それを元にしてあらかじめ決まっている枠の中からどこに応募するかを決める。応募後もオッズの変化に応じて希望の順位を入れ替え,最終的な入園を目指す。居住地周辺の保育園の数と質,夫婦の働き方をダイスで決め,そこから生まれたリソース(基準指数や保育園の見学に行ける日数など)の配分や応募先をプレイヤーが決定するゲームという形式にしたら,すでにゲームとして成り立つのではないだろうか。

 実際には保育園への応募,そして保育園に子供を通わせるのは大変で面倒な作業である。そもそも落選の可能性があるし,通い始めてからも熱を出して迎えに行ったり,ほかの子供と揉めたりとトラブルは発生するだろう。根本的にはストレスが溜まることが多い。さらに言えば,各家庭の方針と運の要素も大きい。うちはいろいろと見学に行った結果「このあたりの園はどこも良さそうなので,とにかく自宅から近いかどうかを最優先で選ぶ」という方針で戦えたが,「教育方針上どうしてもこの園に入れたい」などの希望があるかどうかや,居住地の人口や保育園の数のバランスによって,難しさは変わってくるだろう。呑気に「ゲームみたいだ〜」とか言っていられたのは,その時点で幸運だったのだと思う。

画像集 No.005のサムネイル画像 / しげるのゲーミング子育て日誌:連載第1回のテーマは保育園の入園手続きこと「保活」。保活に潜む「ゲーム性」とは?

 ただ,そんなストレスの溜まる作業だからこそ,細かいところにゲーム性を見つけて,ちょっとでいいから楽しむことができれば,多少は気持ちもマシになるのではないだろうか。「これはゲームだ」「こういうところがゲームっぽい」とストレスの溜まる部分をプラスに捉え直すことは,大変なことの多い子育てをちょっと気楽にしてくれるような気がする。

 保活以外にも,例えば「スプーンと逆側を向いて食べまいとする赤ん坊に無理やり離乳食を食べさせる」という作業は,「タイミングに合わせて赤ちゃんの口にスプーンを突っ込むリズムゲーム」だと思い込むことで乗り切ったし,もっと小さい時は「ミルクを飲んだあとにどれだけ素早くげっぷを出させることができるか」にトライしていたこともあった。なんせ3時間ごとにミルクを求めて泣くのでトライする機会はたくさんあったし,今にして思えば「これはゲームなんだ……」と思い込むことでなんとか夜中の授乳を乗り切ったところもある。

 なんせネタが保育園の入園なので,激戦区に住んでいる世帯は「笑いごとじゃねえよ!」と思うような話だと思う。しかし,笑いごとではないことをあえて無理やり「ゲームっぽいな〜」と捉えることで笑いごとにしてしまうのも,子育てという面白くもキッツい難事業を無理やり乗り切るテクニックなのではないだろうか。ゲーミング子育て,奥が深いな……と,自分の連載のタイトルを見ながら改めて思うのであった。

■■著者プロフィール■■
しげる

 ミリタリーとかプラモデルとかの本を作る編集プロダクションに勤務後、現在フリーライターとして活動。2022年に生まれた子供の面倒を見つつ、プラモデルの雑誌やインターネットなどに文章を書いたりしながら神戸で生活しています。
X:@gerusea
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