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[インタビュー]サウジアラビアのマンガプロダクションズが「AnimeJapan 2025」に出展。CEOであるブカーリ イサム氏に,出展の理由や日本のコンテンツに対する思いを聞いた
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印刷2025/04/02 07:00

インタビュー

[インタビュー]サウジアラビアのマンガプロダクションズが「AnimeJapan 2025」に出展。CEOであるブカーリ イサム氏に,出展の理由や日本のコンテンツに対する思いを聞いた

 サウジアラビアとアラブ諸国を代表する,アニメ・マンガ・ゲームの制作/製作/配給会社「マンガプロダクションズ」が,2025年3月22日と23日に開催されていた「AnimeJapan 2025」に出展していた。

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 同社は,2011年にサウジアラビアの首都リヤドで設立され,2018年には東京オフィスが開設されている。
 国内向けとしては,東映アニメーションと共同で,アニメ「アサティール 未来の昔ばなし」シリーズや,アニメ映画「ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語」などを制作しているほか,モバイルゲーム「アサティール 冒険の物語」の開発や配信も行っている。

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 また,国内IPの海外展開も手掛けており,アニメ「キャプテン翼シーズン2 ジュニアユース編」「GREAT PRETENDER razbliuto」においては,中東での配給や宣伝などを担当。2024年7月から9月まで放送されていた「グレンダイザーU」の,アラブ地域の音声吹替/放送と世界での放送/配信も行っている。

 ゲーム関連では,中東・北アフリカ地域での「真・三國無双 ORIGINS」「UFOロボ グレンダイザー たとえ我が命つきるとも」の販売やアラビア語版のローカライズも担当している。

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 今回,同社のCEOであるブカーリ イサム氏に,「AnimeJapan 2025」への出展の理由や扱っているコンテンツ,今後の展開などについてお話を聞いてきた。
 国内の漫画やアニメ,ゲームへの愛が深く,日本語は「ベルサイユのばら」で学んだという同氏の話は,現在の国内アニメやゲームの制作/開発事情をあらためて考えさせられるものも多かったので,ぜひ一読してほしい。

「マンガプロダクションズ」公式サイト


ブカーリ イサム氏インタビュー

※2025年3月23日,会場内で実施

4Gamer:
 本日は,よろしくお願いします。
 まだイベント会期中ですが,会場の様子はいかがでしょうか。

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ブカーリ イサム氏(以下,ブカーリ氏):
 今回で3回目の出展ですが,「AnimeJapan」はいつも賑やかで楽しくすばらしいです。マンガプロダクションズのブースも,今まで以上に多くの方がいらしてくれました。

4Gamer:
 サウジアラビアのテントをイメージしたエリアや,日本人にはなじみ深い「キャプテン翼」や「グレンダイザー」の展示物が目を引くので,「何だろう」と思って足を運ぶ人も多そうですね。
 「AnimeJapan 2025」では協賛もされていますが,なぜブースを出展しているのでしょうか。

ブカーリ氏:
 目的のひとつは友人を増やすことです。
 日本のビジネスは,信頼関係と人間関係が大切なのですが,それはサウジアラビアも同じです。そのため,AnimeJapanを通じて,日本の多くの皆さんとの文化交流を深め,より多くのビジネスを展開していきたいのです。

 アニメと漫画の制作から始まったマンガプロダクションズですが,2020年からはIPマネジメントも始めました。アニメ作品はもちろん,最近ではフランスで開発されたゲーム「UFOロボ グレンダイザー たとえ我が命つきるとも」や,コーエーテクモゲームスの「真・三國無双 ORIGINS」を中東と北アフリカで販売しています。

4Gamer:
 グレンダイザーや真・三國無双は,中東でも人気があるのですか。

ブカーリ氏:
 はい。特に「真・三國無双」シリーズは,長年アラブ世界で好かれてきました。ただ,アラビア語のバージョンが無かったため,十分に楽しむことができなかったんです。
 「真・三國無双 ORIGINS」は,(文字量として)50万行以上をアラビア語に翻訳しています。ゲーム内には,アラビア語にはない言葉や名所もあったのですが,それも言葉を起こすようにして訳しています。それもあってか,アラブ世界のファンの皆さんには,大変よろこんでいただけました。

4Gamer:
 グレンダイザーは,アニメも人気のようですが。

ブカーリ氏:
 TVアニメが放送されていたこともあって人気です。グレンダイザーは,サウジアラビアの首都であるリヤドに,立像の設置もしています。これは,世界最大の架空のキャラクターの金属製彫刻として,ギネス記録にもなっているんです。

4Gamer:
 マンガプロダクションズでは,日本を含めた海外へのアニメや漫画などのIP創出と,国内IPをライセンシングしてもらい,海外へ展開するといった2種類の事業を行っているんですね。

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ブカーリ氏:
 アニメは,東映アニメーションと共同で「アサティール 未来の昔ばなし」や,映画「ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語」を制作しました。アサティールは,続編である「アサティール2 未来の昔ばなし」も2024年に放送しています。

4Gamer:
 ライセシングのほうは,古い作品が多いですね。

ブカーリ氏:
 まずは,海外で放送されていて人気のあった作品をといった形です。もちろん,これからの世代をターゲットにするには新しい作品も必要なので,2020年に放送された「GREAT PRETENDER」なども扱うようになってきました。

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4Gamer:
 若い人に人気があるタイトルは,ほかにどのようなものがありますか。

ブカーリ氏:
 「ワンピース」や「進撃の巨人」「ハンター×ハンター」「ブルーロック」などが人気です。私の娘は中学2年生ですが,「ハイキュー!!」や「呪術廻戦」「鬼滅の刃」が好きと言ってますね(笑)。

4Gamer:
 その辺りは,世界共通なんですね。
 日本のIPを海外で展開する際に,大事にしていることはありますか。

ブカーリ氏:
 まず,IPを持っている会社に協力してもらえるかが大事です。
 グレンダイザーの時はダイナミック企画さん,GREAT PRETENDERはProduction I.Gさん,真・三國無双 ORIGINSはコーエーテクモゲームスさんに,非常にお世話になりました。先ほども話しましたが,信頼関係や人間関係は大切です。日本の会社は絶対に約束を守るので,一緒に仕事を進めやすいです。
 また作品の質も大事です。メイドインジャパンの作品にはこだわりを持って作られているものも多いので,安心感があります。

4Gamer:
 日本を持ち上げてくれてうれしいのですが,逆に良くない部分はありますか。

ブカーリ氏:
 すべてではないんですが,日本国内の市場しか見てない作品も多いです。私の世代は子供の時,日本のアニメを見て育ちました。でも今のデータを見ると,世界の子供たちは,あまり日本のアニメを見ていないんです。新アニメの数は多いので,少子化の関係ではないですね。

4Gamer:
 人気がある作品はあるけれど,昔ほど日本のアニメは見られていないと。なぜなんでしょう。

ブカーリ氏:
 日本のアニメスタジオが,あんまり子供向けのアニメを作らなくなったからでしょうか。それと,言い方が悪くなってしまうのですが,少しこう,オタク向けなミッドナイトアニメが増えてきたからかなと思っています。これらのアニメは,放送から2〜3年は持ちます。ただ,過去のアニメのように,30年や40年後にもビジネスとして活用できるかといったら,厳しいのではないかなと思っています。

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4Gamer:
 たしかに昔のロボットアニメなんかは,今でも新シリーズが制作されたりゲームに登場したりもしていますね。

ブカーリ氏:
 また,制作時の意思決定にかなり時間がかかっているのも,問題があると思います。日本の場合,共同で制作している会社や制作委員会の中で議論することが多いです。
 それは大事なことなんですが,ある会社都合で動きが滞ってしまうことも多いのです。海外展開の場合,そのIPを守るという部分もあるんでしょうけれども,確認のための時間が少しかかり過ぎている気もします。

4Gamer:
 組織が大きくなるほど,確認の回数が多くなることが多いですからね。

ブカーリ氏:
 最後に,制作現場の問題です。制作会社はいつも忙しく,ラインが埋まっています。なぜかというと,人材が足りてない。そしてなぜ人がいないのかというと,今の日本のアニメ業界が多くのスタッフにとって魅力的な仕事環境になっていないからです。金融業界や情報通信業界などは,人材が足りないと誰も言っていないですから。

 具体的にいうと,お金(給与)の面でしょう。好きだからこそ,我慢してやってる人たちもいますが,それはいつまでもできるわけではないです。この辺は仕組みを変えないと,ダメだと思います。

 ゲームの方も,今の日本はモバイルゲーム市場がずっと成長していません。トップの作品はあまり変わっていなく,さらに中国の会社の割合がどんどん増えているんですよ。
 さらに韓国の作品も人気があります。このままだと,アニメとゲームは海外に持っていかれるかもしれませんね。日本のアニメやゲーム業界は,明治維新が必要かもしれません。

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4Gamer:
 最後に,日本のアニメや漫画,ゲームなどについて思うことがありましたらお聞かせください。

ブカーリ氏:
 我々は,日本のコンテンツに対して非常にこだわりを持っています。私も日本で作られた多くの作品を見て育ちました。私は,日本のコンテンツに非常にパワーがあると感じています。

 今の世界では,残念ながら食べ物で言うとジャンクフードのようなコンテンツもたくさんあります。ただ,日本はそうではない,非常に深くて感動を与える,夢や希望を与えるようなコンテンツも持っています。だからこそ,我々は日本のコンテンツを世界に広げたいのです。

 これからも,日本と共にパートナーシップを結んで,制作ビジネスやIPの活用などをしていきたいと思います。今回のAnimeJapanを通じて,より多くの作品と関わっていければとも思いますのでご期待ください。

 またサウジアラビアでは,eスポーツにも力を入れています。2025年には,初めてのeスポーツオリンピックが開催される予定です。マンガプロダクションズは,エンターテインメントやスポーツ,観光分野の企業であるSelaとの戦略的パートナーシップを結んでいますので,eスポーツに興味がある方は,ぜひ観光を兼ねて遊びに来てください。

4Gamer:
 本日は,ありがとうございました。

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「マンガプロダクションズ」公式サイト

「AnimeJapan」公式サイト

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