
インタビュー
[キャリアクエスト]「面白いとは何か」を考えるプランナーへの興味,そして音楽活動を継続できるかが入社の決め手。セガの若手プランナーが就活時に考えていたこととは【PR】
このイベントは,ゲーム業界への高い熱意を持つ学生と,新卒採用に意欲を持つゲーム関連企業のマッチングを図るもの。その開催に合わせて,実際に現場で働いている若手社員に,ゲーム業界を目指す学生のためのインタビューを行った。
本稿では,セガの第4事業部でプランナーを務めているY.S.さんのインタビューをお届けしよう。
今回は「就活編」として.Y.Sさんが学生自体に何を考え,どんな活動をしていたか,そして就活時に何を心がけていたかなど聞いている。
なお,本記事は4GamerとGame*Sparkで共同制作した連載記事となる。
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「心とは何か」を研究する傍ら,音楽活動に専念していた学生時代
4Gamer:
さっそくですが,自己紹介をお願いします。
Y.S.さん:
2023年度入社で,3年次プランナーのY.S.と申します。現在は,バトルゲームのキャラクターを制作する班に所属していまして,その中で性能設計班のリーダーを務めています。
4Gamer:
学生時代は,どのような分野を専攻していたのでしょうか。
Y.S.さん:
文学部で,心理学・哲学系を専攻していました。「心とは何か」というテーマで,人間の心は何をもって定義されるのかといった話や,それをもとにしてAIに何を持たせれば心持っていると定義できるのかといった研究をしていました。
4Gamer:
哲学と心理学を学んでいたという感じでしょうか。
Y.S.さん:
そうですね。両方混ざっているような感じで授業を選択していました。
4Gamer:
それでは,学生時代に打ち込んでいたことについて教えてもらえますか。
Y.S.さん:
私はちょうどコロナ禍に大学生活を送った世代なので,ずっとインターネット上で音楽活動をしていました。
あまりにも時間を持て余していたのと,もともとピアノをやっていたこともあり,音楽活動に興味を持って友人と一緒に動画を作っていたんです。その活動は今も続けていて,ボカロの調声やミックスマスタリングなど主に音響エンジニア寄りのことをやっています。最近はAfter Effectsの勉強も始めました。
4Gamer:
そうした音楽活動は,プランナーの業務に生かされていますか。
Y.S.さん:
直接音を作るようなことはできていませんが,コンテンツを作る側の視点や,人と協力してコンテンツを作り世間に届けて反応を見るといった流れについては,現在の業務とほぼ同じですから結びついていると捉えています。
また音楽活動を通じて動画や音楽を制作している方,VTuberさんやYouTuberさんたちと知り合えたので,そうした知見や今のトレンド・ニーズを掴むにあたり,すごく役立っていると感じます。
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4Gamer:
就活時に,音楽活動がプランナーの業務に生かせると考えていましたか。
Y.S.さん:
私自身は楽曲制作しかして来なかったのですが,セガを含めていろんなゲーム会社をチェックしている中で,ゲームのサウンド制作に関して,「そこに音があるから意味を持つ」ということは面白い表現手法だと感じたんです。
たとえば何もない空間で視覚的な情報がゼロでも,サイレンが鳴ったら危険を感じるし,犬の鳴き声が聞こえたらそっちに犬がいると思いますよね。そうやって情報を持たせることによって,音がゲームの中で役立っているという概念が好きなんです。
それでサウンドを作るなら個人活動でもできるし,プランナーとしてサウンドを鳴らす意味を持たせることをやりたいと考えていました。
サウンド志望だったが,インターンでプランナーに興味を持った
4Gamer:
就職活動時は,どんな業界をチェックしていたのでしょうか。
Y.S.さん:
「面白そうなもの」というテーマで,かなり幅広くリサーチしました。エンタメ系ではゲーム業界だけでなく,音楽事務所やイベント企画会社,アニメ会社などです。それ以外だと化粧品会社や金融機関など,「この企業,名前知ってる!」みたいに幅広くラフな感じでリサーチしていました。
また個人活動のほうで,事務所所属のオファーをいただいた時期と就活のタイミングが重なっていたので,少し悩んだりもしていました。
4Gamer:
エンタメ以外の業界に興味を持ったことに,何か理由はありますか。
Y.S.さん:
自分が好きなものや関わっていることを中心に,いろいろ模索していたんです。メイク用品が好きだから化粧品会社,生活に関わっているから金融機関といった感じですね。その結果,やっぱりエンタメに直結している企業の方が自分には合ってるなと。
4Gamer:
ゲーム業界では,最初からプランナーを志望していたのでしょうか。
Y.S.さん:
セガだけプランナー志望で,ほかは全部サウンドを志望しました。実はセガのインターンで初めてプランナーという職種を知ったんです。
本当はサウンド系の職種をチェックしていたのですが,セガでは募集していなかったんです。それでプランナーのインターンに参加してみたらすごく面白かったので,興味を持ったという感じです。
4Gamer:
プランナーを面白いと感じた理由を教えてもらえますか。
Y.S.さん:
たとえばゲームの音はサウンドのスタッフが作っているし,キャラクターデザインはアーティストが手がけていることは分かっていたのですが,プランナーのように「面白いとは何か」を考える,つまりゲームの根幹を考える専門の職種があるということは知らなかったんです。
インターンでは実際に企画書を書いたのですが,「面白い」の概念を考えるのが極めて難しいことだと認識して,すごく興味を持ちました。
4Gamer:
学生時代に「心とは何か」を研究していたというお話ですが,それと「面白いとは何か」を考えることがリンクしたり,もしくは実践してみたら違うと感じたりしましたか。
Y.S.さん:
実を言うと,「AIに芸術を作らせることはできるか」というテーマの論文を書いたとき,「できる」という結論を出したんです。でも実際に自分で「面白い」の概念を考えてみて,AIだけですべてを作ったものは,どこにでもあるものにしかならないと考えをあらためました。
AIは,おそらく市場を分析して普遍的に存在するものを提示してくるのですけれども,それを企画書として読んだとき,別に面白くないんですよね。その意味では,大学で学んでいたときよりも,かなり知見が広がりました。「面白い」は形がないからこそ,先達の皆さんが頭を抱えて悩んでいるのだなと。
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4Gamer:
自分で考えたときに,AIが作るようなものではない,独自性のあるものを作れたという経験はありますか。
Y.S.さん:
インターンでは,1人で企画書をゼロから書いたんですけれども,そのとき自分の音へのこだわりを入れたんですよね。
そういった人間的なフィルターが,その企画書の独自性になったと捉えています。それをAIだと,おそらく中央値など定量的なデータに基づいた内容にしてしまうんですよね。その人ならではの知見や経験によってフィルターがかかるから,オリジナリティが出るというと大げさかもしれないですけれども,人間的になると実体験ベースで感じました。
4Gamer:
プランナーという職種にはデータだけでなく,こだわりなどの人間的な部分が必要であると。
Y.S.さん:
そういったことを概念的にボヤーッと考えて,難しいけど面白そうだと感じたのがプランナーへの興味のきっかけでした。
4Gamer:
音楽活動を続けているということで,もともとエンタメコンテンツに興味があると思うのですが,ゲームはどのくらい遊んでいましたか。
Y.S.さん:
遊んではいましたが,たぶん同期を含めセガのほとんどのスタッフと比較すると,あまり遊んで来なかったほうだと思います。
とくに1人用のゲームはほとんど遊んでなくて,「ゲーム=ほかの人と一緒に遊ぶパーティーゲーム」くらいの感覚でしたね。就活を始めてゲーム用PCを購入してから,友だちと一緒にいろいろ遊ぶようになったレベルです。
学生時代は本当にスマートフォンゲームばかりで,音楽活動用にゲーマー向けのPCを購入してからもしばらくは「Overcooked」ばかり遊んでいました。今はもちろんそんなことはなく,休憩時間に同僚と「オーバーウォッチ2」を遊んだり,活動者の友人たちと「R.E.P.O.」などの流行のゲームで遊んだりしていますけれども。
4Gamer:
アニメなどゲームの周辺領域のエンタメはどうでしょう。
Y.S.さん:
アニメはよく観るほうだと思いますけれど,深夜アニメを全部チェックするような感じではないです。それよりも二次創作文化やニコニコ動画が大好きだったので,二次創作コンテンツや楽曲の配信ばかり観ていました。
音楽活動を継続できるかとスタッフの真摯な態度がセガ入社の決め手に
4Gamer:
就活時に業界の動向や福利厚生,働き方などは意識していましたか。
Y.S.さん:
「音楽活動を継続できる」ことを一番重視しました。会社自体は副業OKでも,サウンド職は良くも悪くも技術が成果物に直接反映されてしまうのでダメというところが多いんです。そこを許容してくれるところや,それに伴ってワークライフバランスが取りやすいところを探していました。
4Gamer:
ゲーム会社は副業OKなところが多いのでしょうか。
Y.S.さん:
私はそんなに多くの会社を受けたわけではないのですが,受けたところはOKな場合が多かったですね。ただ,サウンド系だけはダメというところも多かったです。
4Gamer:
学生のころからクリエイティブなことができる時代だから,そのスキルやノウハウを仕事に生かそうという人が増えているのでしょうか。
Y.S.さん:
同じ事業部に所属している同期の中,ここまで両立しようとしているのは私だけだと思います。
4Gamer:
セガの面接で,印象的だったエピソードはありますか。
Y.S.さん:
面接のときに個人活動の話をしたのですが,それに関して「会社ではやりたい仕事が絶対にできたり,希望のプロジェクトに入れたりする保証はないけれどもどう思うか」という質問をされたんです。
当然,企業として何か作るのは個人でやるのと違うだろうとは考えていましたが,それを入社前に提示してくれることに信頼を覚えました。
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4Gamer:
そう言えば,面接は対面でしたか。学生時代はコロナ禍真っ只中というお話がありましたが。
Y.S.さん:
すべてオンラインでした。コロナ禍の影響でオンライン面接になったのは,私たちが最後だったと思います。だから,内定が出て初めて会社に来たんですよね。
4Gamer:
セガに入社を決めた理由を教えてください。
Y.S.さん:
内定が出たあとに,音楽業界とどちらに進むか迷っているという話を正直にしたところ,「個人のクリエイティブな活動はむしろ推奨したい」と言われたんです。「プランナーはどんな知見でも生かせる職種だから,むしろ強みにしてほしい」と。それが嬉しくて,入社の決め手になりました。
4Gamer:
面接のときもそうですが,わりと包み隠さず事情を話していたんですね。
Y.S.さん:
基本的に,正直に話をしていました。それで,すごく真摯に答えが返ってきたので,社員の人柄を含めてセガは良い会社だと感じましたね。
4Gamer:
セガへの入社が決まり,楽しみだと思っていたことを教えてください。
Y.S.さん:
私は就職について,好きなことが1つ増えるというい捉え方をしていたので,「ゲームを作るんだ,すごい!」と考えていました。
同期は学生時代にゲームを作っていた経験がある人も多いのですが,私自身はゲームに関してはまったく分からなかったので,「ゲーム作る人になっちゃった!」とワクワクしていましたね。
4Gamer:
実際入社後にゲーム作りに携わって,印象は変わりましたか。
Y.S.さん:
「自分が考えた,これを作りたい」というゲームを本当に自分の手で操作できるような経験をそれまでにしたことがなかったので,「ゲームを作るのは面白い」「自分がやって来なかった創作だ」とすごく感動しました。それは今も同じです。
4Gamer:
入社前に不安に感じていたことはありましたか。
Y.S.さん:
入社後にゼロから1を生み出し続けられるだろうかという不安を抱えていました。先ほどお話ししたとおり,インターンではゼロから企画書を作ったのですが,私はいわゆるゼロイチが得意ではなく,どちらかと言えば1を100にするタイプなんです。私のやってきた音響エンジニアも,いただいた音源をより良くしてお返しする仕事でしたし。
4Gamer:
作曲はやっていなかったのでしょうか。
Y.S.さん:
基本的に作曲する人のサポートをメインにしていましたし,そのほうが好きでしたね。大学では演劇のサークルに入っていたのですが,役者より照明や音響を担当していました。自分でこれをやると決め,そのために人を集めるようなタイプではないので,そこが不安につながっていました。
4Gamer:
その不安だったことについては,入社後に払しょくされたのでしょうか。
Y.S.さん:
そうですね。いざ入社してみるとゼロイチはむしろレアなケースで,1を100にすることがほとんどだったんです。
たとえば「このキャラクターなら,こんな技やこんな動きが面白いだろう」といった感じで,IPの良さを生かして新しいゲームを作っていくことが今の私の仕事なのですが,私自身にとってピッタリだったと感じています。
また入社直後に「ゼロイチは苦手」という話を先輩にしたところ,「基本的にプランナーの仕事は1を100にすること。たとえオリジナルのゲームでも,何を足せば面白くなるかを考えるのは1を100にすることだ」と教えてもらい,ほとんどの創作は1を100にすることだという結論に至りました。
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4Gamer:
就活生だったころのご自身に,何かアドバイスはありますか。
Y.S.さん:
私の選択は何も間違っていなかったと捉えているので,そのまま自分の好きなもの,興味のあるものに正直に行動するスタイルを貫いていったらいいと伝えたいですね。
4Gamer:
それでは,これから就職活動を始める学生の皆さんに向けてアドバイスはどうでしょう。
Y.S.さん:
やはり先手必勝ですかね。弟の就活の相談を受けたこともあるのですが,年を経るごとに就活のタイミングが早まっている感があります。
またエンタメのように専門分野がある業界では,その専門の知識や経験がないと厳しいという印象があります。新卒採用といえども,中途採用とまではいかなくとも,ある程度の知見を求められるケースが増えているなと。私はインターン採用でしたが,そこで得た専門知識・経験がなかったら厳しかったかもしれません。
また分野はさておき,何かを作って人に提供する経験も役立つと思います。サークルで何かを作って発表した経験でもいいし,そこは時間のある学生のうちに,いろいろ取り組んでみると良いのではないでしょうか。
4Gamer:
ありがとうございました。
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