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日本のメイプルストーリーでVTuber「メイぷる木の子」が生まれたわけ。今どきのコミュニティマネージャー事例を講演[NDC25]
本講演では,メイぷる木の子を推進してきた,ネクソンジャパンのオ・ジュヒ氏と鈴木蒼大氏により,VTuberを活用した今どきのユーザーコミュニティ作りの一例と,その成果が紹介された。
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主題のVTuber「メイぷる木の子」は,「メイプルストーリー」の看板モンスターで,キノコ型のマスコット“メイプルキノコ”をモチーフとしたバーチャルアイドルだ。魂は日本の女性声優であり,対象言語も日本語。活動場所は主にSNSと動画で,公式Xのプロフィールは以下のとおり。
「やっほ〜! メイぷる木の子ぷる!
メイプルストーリーをはじめ、ゆるっとお話するぷる♪」
語尾の「ぷる」だけでも,彼女のVTuberとしてのキャラクター性がなんとなく推し量れるだろう。
メイプルストーリーは日本でも人気だが,本拠地は韓国。アジア圏でも,かつてのPCオンラインゲーム時代から熱烈に支持されている。
しかし,メイぷる木の子はネクソンの日本法人ネクソンジャパンが日本向けに打ち出した,日本人プレイヤーのための施策だという。
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「コミュニティマネージャー」とは,ユーザーの声に耳を傾け,最終的にユーザーのロイヤリティ向上を目指す役割だ。
昨今はゲーム業界でよく聞く役職の1つであり,本施策もユーザーコミュニケーションを目的として発足したものだという。
VTuberを選んだ経緯としては,既存のGM(ゲームマスター)や公式情報の発信だけでは,ユーザーとのコミュニケーションのやり方に限りがあったためだ。また,GMはゲーム内の問題解決を主とするため,よりコミュニケーション面に特化し,SNS活用もゲーム情報とは異なる方向で発信できる存在として,日本で人気のVTuberに目をつけたとのこと。
壇上では,ロート製薬のVTuber「根羽清ココロ」,サントリーのVTuber「燦鳥ノム」を例に出し,「いずれもキャラクター性の豊かさと,ブランド力の強化に向上している例です」と分析していた。
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ネクソンジャパンがVTuber活用に踏み切ったきっかけは,2021年4月1日のエイプリルフール施策だった。当時は「マビノギ」や「テイルズウィーバー」などの要素を用いた擬人化キャラクターを制作し,VTuberアイドルグループのプロジェクトファンディングを(ウソで)実施した。
そして,この時点ではエイプリルフール施策に過ぎなかったそのうちの1人,メイぷる木の子が2023年11月に実現することになる。すべては前述した,ユーザーコミュニケーションの強化のためだ。
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メイぷる木の子をマネージメントしているのは,MS事業チームの鈴木蒼大氏だ。今ではファンから「マネジャプル」とも呼ばれている。
鈴木氏は小さいころから父親とメイプルストーリーに触れ,今も現役プレイヤーとして遊び続けているという。そうして養った勘どころを,専門VTuberのサポートのために発揮しているらしい。
そして会場モニターに,メイぷる木の子が登場した。普段とはまるで違うNDCという場での活動とあり,彼女は「すごく緊張しています」と述べる。しかし,明るく元気に韓国語で自己紹介をすると,会場の参加者たちも微笑ましくザワついた。
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ここから,メイぷる木の子の活動とその成果が語られていった。鈴木氏は端的に,「以前よりカジュアルなコミュニティを形成できた実感があります」と述べたが,それは定量評価にも反映されたそうだ。
まず,メイぷる木の子の活動場所はSNS「X」と動画サイト「YouTube」だ。Xではユーザーコミュニケーションのために毎日ポストを投稿している。ときには流行のネタを活用したり,テキストに斜め読みを仕込んだりして,コミュニティを活性化させつつ反応を見てきた。
一方,YouTubeでは双方向性なコミュニケーションを楽しんでもらうライブ配信と,その一部を切り抜いた動画制作(いわゆる切り抜き動画)を投稿している。ライブ配信ではゲーム攻略やお誕生日配信などのほか,ユーザー向けのリアルイベントに潜入することもあった。
ほかにも正月着物などの衣装をシーズンごとに用意したり,2025年4月のエイプリルフール施策では恋愛シミュレーションゲーム「キノコイ」を公開したりと,コミュニティ形成に一役買ってきた。これらの活動の影響で,ファン主導の二次創作の投稿数も増えたそうだ。
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この活動の結果として,各種チャンネルの登録者数も増加した。まずXのフォロワー数は,活動開始から約1年半の2025年3月時点で4374(記事執筆時点の6月24日で4485)を記録した。
この値で特筆すべきは,当初はメイプルストーリー公式アカウントとのフォロワー重複数が目立っていたところ,現在は“メイぷる木の子だけのフォロワー”が増加し,割合が変化したことだ。端的に言って,メイぷる木の子だけのファンがついたと見ていいだろう。
あるいは,その人たちがメイプルストーリー公式をフォローしていないだけとも解釈できるが。なんにせよ母数の向上に寄与している。
さらに,「ライブ配信時にゲームの同時接続数が増える傾向」も見えてきたという。それぞれの活動に対する感想もポジティブな反応が9割超となり,コミュニティに与えている影響は少なくないようだ。
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そのうえで課題もある。まず各種チャンネルの登録者数については,世間的には大きくなくとも十分な成果と受け止めているとした。
しかし,YouTubeに関しては明確に「ライブ配信に比べて,ショート動画を含む動画投稿のパフォーマンスが低い」という結果が出た。
よく言えば,ファンが求めていることの現れとも言える。ただ,施策の運用者としてはこれも1つの課題と捉えたいのだろう。
さらに,どの値も確実に増加しているが,メイプルストーリーの宣伝のための専門VTuberとしては,どの数値も「ゲーム側の人口流入などに影響しているか,有意な分析はできていない」ことが課題だという。
この点を明確に割り出すのは,あらゆるコンテンツでも難しい。その多くはだいたいの雰囲気を見て,「なんとなく寄与している」と,フワついた結論しか出せない物事が多いはずだからだ。
ただ,こうした面も定量評価できるようになれば,今後のさらなる活動の根拠になり得るのは事実だろう。その多くは,「社内の説得材料のために」という地に足の着いた理由なのだろうが。
あとは,GMとCM(メイぷる木の子をコマーシャル的存在,あるいはコミュニティマネジメント的存在と定義した呼び方)の役割を分けた運用のはずが,最近では2つの役割が混ざり合ってしまうシーンも出てきたそうだ。ここはメーカーとコンテンツが限定されているため,アプローチにも限りがある専門VTuberならではの悩みかもしれない。
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ネクソンジャパンがVTuberを活用したコミュニティマネジメントに乗り出した理由は,「メイプルストーリー好きはサブカルチャーへの興味関心もある」と考えたから。これまでの活動も施策としては十分に効果的だったが,今後もより幅広い活動方法を模索し,ユーザーたちに信頼してもらえるメッセージを重ねて,ファンの定着を目指す。
そして,メイぷる木の子への高いエンゲージメント率を,ゲームへの流入につなげていく。そのときに果たして,「本当にメイぷる木の子の影響だったか」が測れるかどうか。そこを求めていきたいとしていた。
終盤の質疑応答では,メイぷる木の子の影響はファンのみならず,社内にも波及したことでスタッフたちが「ぷる〜」と言い出したことや,今後はVTuber同士のコラボも考えていきたいといった展望が語られた。
最後は壇上より,オ・ジュヒ氏が自ら「ありがとうぷる〜」と会場に挨拶し,にぎやかな拍手と共に講演を終了した。
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「メイぷる木の子」公式X
「メイぷる木の子」YouTubeチャンネル
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