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頭が電球になる白熱頭症。自分を人気者だと思い込むロックでなし病。フェイクスピア症候群に,ぺたんこ段ボール症,ヒノキ男病などの変すぎる症例と,あなたは笑いながら向き合ったことがあるだろうか?
不幸なことに聞き覚えがないのなら,この機会に学んでもらおう。
イギリスのデベロッパ・Two Point Studiosは,2016年5月の設立以降,ユーモアあふれるヘンテコ経営シミュレーション「ツーポイント」シリーズを展開し,世界中で高い人気を博してきた。その相棒として肩を組んできたパブリッシャは,皆さんご存じのセガだ。
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本シリーズはこれまで,病院を舞台にした初代「ツーポイントホスピタル」をはじめ,大学が舞台の「ツーポイントキャンパス」(日本語版は未発売),博物館が舞台の「ツーポイントミュージアム」を送り出しており,それぞれ複数のDLCも配信してきた。
これらはいずれも,本格的な経営シミュレーションゲームとしての作りがしっかりと追求されており,質実剛健な遊びを楽しめる。
その一方で,キャラクターやオブジェクトのコミカルなビジュアル,独特なユーモアだらけのテキスト,皮肉たっぷりなジョークを込めたボイスなどが,際立つセンスを見せながらも親しみやすい雰囲気を生み出し,その諧謔で多くの人たちを引きつけてきた。
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そしてこのたび,Two Point Studiosの設立10周年を記念し,「ツーポイントホスピタル:ハートフルコレクション」(Switch2 / PS5 / XBOX Series X|S)のデジタル版が2026年9月16日に,Switch2 / PS5向けパッケージ版が11月6日に,それぞれリリースされる運びとなった。
本作は,初代「ツーポイントホスピタル」の集大成的タイトルだ。ゲーム本編はもちろん,拡張DLC×7本,追加アイテムパック×3本,さらに既存の無料アップデートのすべてが収録された完全版である。
なお,2021年には同じような決定版「ツーポイントホスピタル:ジャンボエディション」も発売されていた。
両作を比較すると,今回は“2020年10月以降配信の拡張DLC×3本,追加アイテムパック×1本”が新たに収録されている。
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本シリーズを手がけてきたTwo Point Studiosには以前,10周年記念インタビューで取材したことがある。
そのとき,スタジオディレクターのGary Carr氏と,テクニカルディレクターのBen Hymers氏に話を聞いたが,「ツーポイントホスピタル」の歴代DLCが,PC版とコンシューマ機版とでリリース時期に差が生じていたのは,開発環境やスペックの事情によるものだったという。
しかし,近年はそれらの課題も解消され,すべてのプラットフォームで同じコンテンツを展開できるようになった。そのため,10周年という節目に完全版たるハートフルコレクションのリリースを決めたそうだ。
それに際し,本稿ではスタジオの原点にして,シリーズの作風を形成した「ツーポイントホスピタル」の特徴と魅力に迫り,“ツーポイントシリーズはなにがヘンテコすぎて人気になったのか”を掘り下げる。
元ネタが分かるとニヤリ,そうでなくとも笑える
イギリスならではのブラックジョークが満載
「ツーポイントホスピタル」では,プレイヤーが病院の院長となり,さまざまな奇病を抱えた患者を診察・治療して施設を発展させていく。
基盤はオーソドックスな経営シムだ。治療機器や病棟,待合室などのレイアウトを工夫するのはもちろんのこと,病院の拡張やスタッフの配置,自販機やカフェといった設備まで細かくいじれる。
ちなみに同作がSteamで配信された2018年8月のこと,わずか数日で開発費用を回収できたことから,開発陣はヒットを確信したらしい。
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基本の遊び方はマップステージクリア型であり,指定された環境でミッションをこなしていくというもの。とはいえ,各マップにはいつでも戻れるため,「クリアしたらハイさよなら」なものではない。大きなマップで自由に病院経営するサンドボックスモードも完備だ。
チュートリアルも充実しており,円滑な病院経営に必要なテクニックは,序盤のステージから段階的に学ぶことができる。
こうしたシム系のゲームでは,「なにもない状態から好きにやってください」と言われても,膨大な情報量のせいで思い通りにいかないものが少なくない。その点,本シリーズは小刻みにゴールが設けられていて遊びやすく,またプレイヤーがなにかミスをして,ステージクリアが困難になっても,その経験をうまく生かせるようゲーム全体が設計されている。
たとえば新たな治療設備など,テクノロジーの「研究」は完了するまでにけっこうな時間がかかる。そのため,新たな病気の症例が発覚してから始めたのでは研究が間に合わず,結果として病院の評判を落とし,ステージクリアから遠ざかっていくパターンが生じる。
ここで重要なのは「その先,病院経営がうまくいかないことが予想されても,研究を続けて完了させること」だ。
というのも本作,一度完了した研究は,そのステージをリスタートしても引き継がれる。つまり,次回は必要なテクノロジーを使える状態から再チャレンジできるため,プレイ面でかなり有利になる。強くなって再挑戦できること自体,ゲーマーの意欲をくすぐるであろう。
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そして本作では,我々もよく知る風邪や骨折など,一般的な症例にだけ対応するのではない。頭が電球になる「白熱頭症」など,あからさまにヘンテコな奇病,その数180種類以上に対峙していく。
ちなみに白熱頭症の治療は「頭ごと付け替える」というとんでもないものである。これはフレーバーテキストや誇張表現ではなく,ゲーム中では“その様子が実際に表現されている”。そこがまたとんでもない。
ほかにも,自分が世界最高のロックスターや伝説のチャンピオンだと思い込む「ロックでなし病」という奇病がある。この患者は風貌や仕草までもが,実在した世界的ボーカリスト風になってしまうなど,ニヤリとさせられるどころか人によっては爆笑してしまうだろう。
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こうした独特のセンスは,Two Point Studiosの地元が,皮肉の効いたジョークを好むイギリスであるということも影響しているはず。
正直,症例を挙げているだけでも愉快なのだが,「ボグワーツ・ポッター症」のように万人が元ネタを思い浮かべられるものから,「ラジオアタマ病」のような一部のマニアだけが元ネタに思い至るものまである。
どれも,テキストをひと捻りしているだけなのか,単なる翻訳ミスなのかも怪しい絶妙なワードチョイスだ。
こうした言葉遊びが結果的に「なんでもありな世界」を形作っていて,掘り下げていくと楽しくてキリがない。
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なお,今回リリースされる新作ハートフルコレクションのレーティングは,CERO基準だとCERO C(15歳以上対象)となる。
その理由は,病院というシリアスな世界で,プレイヤーたちは人の生命や健康の尊さを学ぶから……ではなく。「トイレで排泄する表現があるから」とのこと。これは開発陣の持ちネタになっており,いろいろな場所で公言されているのだとか。そんなところまで作り込んでいることに感心するべきか,呆れるべきか。
ついでにセガがパブリッシングしているだけあって,病院内にアーケードゲームを設置できたり,それがセガのタイトルだったりもする。
この病院は,そういう病院なのである。
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経営シムとしての骨格は,伝統的かつ優等生なゲームデザイン。なのに至るところにキワキワのジョークが大盛りにされている。
あまりに本気の作り込みでふざけ倒しているから,こちらも白けた気分にはなれない。いちいちウィットに富んだボイスナレーションを耳にして字幕を読むたび,つい引きずり込まれて失笑してしまう。
ゲームもユーモアも本気で追求されているこのバランス感覚は,仮にマネしようと思っても容易にできるものではない。いくら開発資金を投じたところで,この世界をまとめ上げるのは困難だろう。
Two Point Studiosにしても,「自分たちのゲームがすべてうまくいくとは考えていません。50人前後の中小規模のスタジオで,常に失敗の可能性とプレッシャーを抱えて開発に打ち込んでいます」としていた。
しかし,結果として磨き上げた唯一性は,「ツーポイント」シリーズじゃないと味わえないテイストを生み出している。ファンにも当然のようにそう受け取られている今を考えると,同スタジオとシリーズの10年間の歩みは,「変すぎて人気になった」を体現しているも同然だ。
足かけ5年にわたってリリースされた
合計7本もの拡張DLC+α
上記のとおり,「ツーポイントホスピタル:ハートフルコレクション」には,リリース済みの拡張DLC×7本と,追加アイテムパック×3本が収録されている。ここではそれぞれの内容を簡単にまとめよう。
●DLC「ビッグフット」(2018年12月)
冬をテーマにした3つの新病院,地域特有の34種の病気,アイテム40種が登場。目があめ玉になる「アメダマ病」や,時代錯誤のエリザベス朝な気分に陥る「フェイクスピア症候群」などが発生する。
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●DLC「ペバリー・アイランド」(2019年3月)
南の島をテーマにした3つの新病院,地域特有の34種の病気が登場。鳥のような恰好や行動を取る「色トリドリ病」や,つま先がラクダのように分かれてしまう「インストラクダー症」などが発生する。
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●DLC「未知との遭遇(クローズエンカウンター)」(2019年8月)
3つの新病院,地域特有の45種の病気,アイテム33種が登場。“飛ぶ”ことに取りつかれてしまう「つくダニ症」や,圧縮された状態からの再生が必要な「ぺたんこ段ボール症」などが発生する。
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●DLC「自然と自給(オフ・ザ・グリッド)」(2020年3月)
自然あふれるエコシティで,自然と自給をテーマにした3つの新病院,地域特有の35種類の病気,アイテム32種が登場。かかしに化してしまう「カカシカ症」や,ヒノキ製の男の人形と化して,まわりに嘘をつくようになる「ヒノキ男(ひのきお)病」などが発生する。
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●DLC「カルチャーショック」(2020年10月)
※コンシューマ版初収録
芸術やエンターテインメントをテーマにした3つの新病院,36種類の病気,3種類の治療機器が登場。映画スタジオや音楽フェスティバル,上流階級の社交場で,ツーポイント州の衰退した文化を救う。
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●DLC「スティッチ・イン・タイム」(2021年2月)
※コンシューマ版初収録
時空を超えた病院経営を楽しめる3つの新病院,34種類の病気が登場。タイムポータルを使って先史時代,中世,未来を巡り,それぞれの時代で発生するキテレツな病気を治療していく。
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●DLC「スピーディーリカバリー」(2022年3月)
※コンシューマ版初収録
救急医療をテーマにした3つの新病院,19種類の病気,3種類の治療機器が登場。6種のユニークな救急車を運用して患者を搬送し,ライバル病院と競いながら地域の救急医療対応にチャレンジする。
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●追加アイテムパック3本+無料アップデート
病院に設置できる新アイテムを収録した有料の追加アイテムパックは,これまでに3本配信されている。このほか無料アップデートで,「SEGA 60th アイテムパック」「ソニックパック」も追加された。
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ツーポイントな世界を初めて味わうなら
「ツーポイントホスピタル:ハートフルコレクション」で決まり
最後にシリーズのおさらいだが,「ツーポイントホスピタル」に続く2タイトルは,コミカルなビジュアルとイギリスジョークにあふれたユーモアセンス,なにより本格的な経営シミュレーションの部分をしっかりと継承している。そのため「ツーポイントホスピタル」をプレイして気に入ったのであれば,試してみて損はない。
なお,2作目「ツーポイントキャンパス」については残念ながら,今のところ日本語版が未発売だ。しかし3作目「ツーポイントミュージアム」はテキストの日本語化だけでなく,日本語ボイスまで収録されている。
さすが一大声優市場の日本とあって,毒舌ナレーションのけれん味は日本語吹き替えでも完全再現されており,人によっては「ツーポイントホスピタル」より親しみやすくなるかもしれない。
ともあれ,発売から変わらぬ魅力で,今もなお世界中でウケ続けているシリーズの原点。「ツーポイントホスピタル:ハートフルコレクション」をこの機会に味わうのが最もおすすめだ。
今こそ,シリーズ未経験者にぜひ触れてほしい。きっと誰もが「どの口でハートフルと名乗ってんだ!」と苦笑いさせられることだろう。
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