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[GC 2007#002]ステップアップを狙う欧州の独立系ゲーム企業3社
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印刷2007/08/21 15:57

業界動向

[GC 2007#002]ステップアップを狙う欧州の独立系ゲーム企業3社

 ドイツなどヨーロッパのゲーム業界には,小規模な人数でPCゲームを開発する弱小メーカーはまだまだ多い。「Crysis」などで話題を集めるCryTekのように,特殊な技術や知的財産を保有することで,業界やゲーマーからも一目置かれるようなメーカーもあることにはあるが,ことPCゲームでは予算の捻出も難しく,地元で地味に活動するに留まっている開発者達も少なくないのである。本記事では,そんな状態からの脱皮を狙う3メーカーを紹介したい。


会場でNebula 3エンジンを紹介する,Radon LabsのテクニカルディレクターAndre Weissflog氏。過去2年に渡ってチューンニングを続けている同エンジンは,彼にとっては我が子のような存在のはずだ
NEbula 3エンジンでビジネス拡大を模索
Radon Labs

 ベルリンを本拠とするRadon Labsは,開発者80人を抱える,「小規模」と呼ぶには失礼な規模のゲームメーカーだ。Microsoftの要請で,1994年に「Urban Assault」を開発して業界デビュー。このほかにも,1998年には「Project Nomads」を制作してCDVからリリースしており,日本でもコアなゲーマーならRadon Labsの作品を遊んでみたことのある人もいるだろう。
 2003年に一度経営危機に陥るが,この年に同社が長らく利用してきたNebulaエンジンをアップグレードした「Nebula 2」を完成させている。このエンジンを利用して,数か月で作れる規模の2Dスクロールアクションなどを制作し,2006年にはPCのほかニンテンドーDS用ゲームも開発するなど,7本ものプロジェクトを手掛けて復活した。
 Radon LabsのAndre Weissflog(アンドレ・ワイズフログ)氏は,「Nebula Engine」と題されたセミナーの中で,同社の方針を語っていた。2005年からは「Nebula 3」エンジンの開発にも着手しており,より簡潔でストリーム化されたDirectX 9およびDirectX 10対応の高水準なソフト制作が可能なものになる。実用化されれば,ライセンスビジネスにも着手したい構えだという。
 Nebula 2エンジンでもかなりのものが制作できるということは,同社が開発中の「Drakensang」というRPGのデモでも理解できる。本作は,ドイツ産テーブルトークゲーム「The Dark Eye」のライセンスを受けたもので,同じくドイツを基盤としたAnacondaというパブリッシャからリリースされる予定だ。今のところドイツ以外での販売予定はないとのことだが,パーティシステムなど,最近のシングルプレイ用RPGには少なくなった要素が気になる作品である。



パネル方式でDECK 13 Interactiveの概要を説明するのがThorsten Lange氏(写真右)だ。Ankhシリーズで培ったノウハウで,「アドベンチャーゲームの会社」としてのブランドを築きたいところ
得意のアドベンチャーでアメリカ進出の機を窺う
DECK 13 Interactive

 フランクフルトで29名ほどの開発者を擁するDECK 13 Interactive。聞き慣れないメーカーだが,同社のアドベンチャーゲーム「Ankh」シリーズは,アメリカでもそれなりの評価を受けている。アドベンチャーゲームばかりでなく,最近では「Carnival Cruise Line Tycoon」というシミュレーションゲームがActivisionブランドでリリースされて15万本ほど売り上げ,バリューソフトのヒット作となっている。

 そのDECK 13 InteractiveのThorsten Lange(トーステン・ラング)氏が,「Made in Germany Panel」(ドイツ産ゲームのパネル)というパネルディスカッションで新たに紹介したのが,「Jack Keane」と名付けられた新作アドベンチャーゲームである。この作品は,海賊のキャプテン ジャック・キーンが主人公で,肉食植物を開発したドクターTという科学者の追跡のため,女王が送り込んだスパイの水先案内をするうちに,彼自身もミステリアスな孤島に漂着してしまうというものである。お色気もあるコメディで,キャラクター達が引き立っているのが特徴だ。パブリッシャの10Tacleによれば発売が2007年第4四半期まで延びてしまっているものの,アドベンチャーゲームファンには魅力的な作品であろう。



もともとEidos Interactive傘下のCore DesignsでプログラミングをしていたこともあるというPatrick O'Luanaigh氏は,女性カジュアルゲーマー層を狙っている。Venus Redemptionで,ララ以上のヒットキャラを作り出せるだろうか
女性カジュアルゲーマーに向けたゲームで第2のララを目指せ!
nDreams

 最後に紹介するのは,イギリスのハンプシャーで2006年末に旗揚げしたばかりのnDreamsだ。創設者は,Eidos InteractiveやSci Gamesでディレクターを務め,「Tomb Raider」シリーズのプログラミングにも関わったという実績を持つPatrick O'Luanaigh(パトリック・オルアネイ)氏である。「Game Design Complete」という著書もある,ちょっとしたベテラン開発者だ。

 nDreamsのプロジェクトは,女性をターゲットに絞り込んだ2Dビューのアドベンチャーゲーム「Venus Redemption」である。O'Luanaigh氏は,「Goodbye Lara, Hello Venus」(さよならララ,こんにちはヴィーナス)と名付けられた講義で,「女性ゲーマーにもウケた(Tomb Raiderの)ララ・クロフトは,百歩譲っても男性向けのキャラクター。どうしたら女性のための女性キャラクターを作れるのだろうか」と考え,nDreamsを設立するやいなや,30代から60代までの女性達200人に詳しくインタビューを行ったと語る。さらにアートワークやゲームのテスト時に得た意見を参考にし,ヴィーナスという女性が主人公のアドベンチャーゲーム「Venus Redemption」を制作するに至ったのだという。
 本作では,プレイ中にゲームオーバーになることはない。パズルが難しくて詰まるとゲーム側が解答を教えてくれるなどの難度の低さもさることながら,3Dグラフィックスカードの必要がない低スペックな作りだったり,操作も徹底的に簡略化していたりなど,ハードルを低くして女性ゲーマーの取り込みを狙うとのことだ。

 現時点ではグラフィックスもFlashゲームっぽいが,ストーリーの制作に2人の女性を起用し,アメリカ人の声優によるアメリカ風の発音での会話シーンを設けることで,北米市場での販売も見込んでいるようだ。ゲーム中にはいくつかのミニゲームもあり,ニンテンドーDSでのリリースも予定しているという。
 発売は2008年の初期。主人公のヴィーナスは,O'Luanaigh氏の計画通りララを押しのけるほどのキャラクターに成長することになるだろうか。(ライター:奥谷海人)

  • 関連タイトル:

    Drakensang: The Dark Eye

  • 関連タイトル:

    Jack Keane

  • 関連タイトル:

    Venus Redemption

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