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[CEDEC 2009]デベロッパがパブリッシャを“使う”時代? イメージエポックの御影良衛氏が語る「提案型ゲーム開発」とは?
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印刷2009/09/04 00:00

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[CEDEC 2009]デベロッパがパブリッシャを“使う”時代? イメージエポックの御影良衛氏が語る「提案型ゲーム開発」とは?

 「セブンスドラゴン」や「ルミナスアーク」などの開発元として知られるイメージエポックの代表取締役の御影良衛氏「現代の日本におけるゼロメイクの提案型ゲーム開発とは」と題された講演を行った。
 新興のデベロッパであるイメージエポック社は,設立(株式会社化)からまだ4年という非常に若いゲーム会社。社長の御影氏にしても,なんとまだ20代という若さである。

 新進気鋭の若手社長,そしてイメージエポックは,ゲーム業界での生き残りをかけて,どういった戦略を打ち出していくのだろうか。これからの時代の日本のゲームデベロッパがどうあるべきか,何を目指していくべきなのか。イメージエポック自身の戦略を例に挙げなら,御影氏の考えが語られた。


画像集#002のサムネイル/[CEDEC 2009]デベロッパがパブリッシャを“使う”時代? イメージエポックの御影良衛氏が語る「提案型ゲーム開発」とは?
 御影氏ははじめに,「ゲームデベロッパの人間も,『市場の状況』『パブリッシャの状況』『自社の状況』,それぞれを知っておくことが大事」だと発言し,国内のゲーム市場の概観を表す表を提示した。
 氏は,「各ゲーム機のシェアや市場規模をぱっと言える方は,業界人でも案外少ないものです。しかし,これからの時代,ゲーム制作者自身がそうした世の中の環境に疎いようでは務まりません」「市場の動向をしっかり知ることが,ゲームを作るうえでの第一歩」といいながら,現在の市場の状況を説明していく。

 詳しくは,下のスライドを見てもらえると一目瞭然なのだが,続編物や版権物を省くと,全プラットフォームで共通して,10万本売れているタイトルはほとんどない。御影氏はこれを指して「これが今の市場の本当の姿です」という。
 こうした現状を踏まえたうえで,パブリッシャが新規タイトルについてどう考えているか。どういうタイトルなら企画を通してよいと思うのか。それを“開発会社の側が考えてあげる”ことが大切なのだと語る。

画像集#005のサムネイル/[CEDEC 2009]デベロッパがパブリッシャを“使う”時代? イメージエポックの御影良衛氏が語る「提案型ゲーム開発」とは?

 さらに御影氏は,「こういう面白いアイディアがある。こういう企画を思いついた。だからゲームを作る。……そういうやり方は,もう古いのではないかと思っています。21世紀のやり方ではない」「20世紀のゲームの作り方は,無限のマーケットを前提にした作り方でした。拡大期のやり方です。しかし,今はもう市場のパイは決まっています。売れる数も決まっています。であれば,市場に合わせた作り方が大事になってくると思います」と捲し立てていく。

 具体的には,「例えば,弊社にいる新納という人間は,『このターゲット/市場にこういうゲームを投入すれば,10万本くらい売れる。一本あたりのバックマージンが例えば2500円だったなら,2500円×10万=2億5000万円。仮に200%の収益性を求められているプロジェクトなら,使える開発費は1億2500万円になる。じゃあ,面白いゲームを宣伝費など込みで1億2500万円でどう作るか?』という,逆算の論理でゲームを開発していきます」といった具合の話である。
 面白いことを考えること自体は当たり前として,さらにその先の市場の動向,経済の動きを知っていないと,これから先,適切なゲーム開発はできないというのだ。

 ……まぁよく言えば「堅実」,悪く言えば「夢のない」話と言えるのかもしれないが,「面白ければ売れる」が幻想でしかないことは,業界人ならば誰もが考えるところ。とくに現代は,その面白さ自体,あるいは遊びやすさを含めて,どういう層がどうやって遊ぶのか? 具体的な購入動機が描けない商品がそうそう売れるマーケットでないことは確かだろう。

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 御影氏の主張は,端的にまとめると,市場を知り,パブリッシャの事情を知ったうえで,パブリッシャのニーズを汲み取った開発提案をすべきだという話で,その内容は至極もっともなもの。デベロッパにとってはパブリッシャこそが直接的な意味での“お客様”なわけで,そうした配慮はあって然るべきなのだろう。

 しかしながら,国内のゲームマーケットの停滞や世界的な不況の影響もあり,パブリッシャの側に新たな企画を起こす余力がなくなってきた事実を踏まえ,御影氏は,「デベロッパのあり方も変わる必要がある」と主張する。
 イメージエポックでは,そうした問題の打開策として,パブリッシャから仕事を受注をするという形には拘らず,自己資金でゲームを作れる仕組み,そして自己資金で作ったゲームをパブリッシャの持つ販売力を“利用させてもらって”売るという,デベロッパとパブリッシャの新しい関係のあり方を模索しているのだという。またそれを実現するために,現在,上場準備中らしい。
 なかなかにアグレッシブというか,自己資金で作ったゲームを,どの時点でパブリッシャに売り込みにいくのか? など,いくつかの難しい問題もありそうだとは思うが,海外などでは割と見られるやり方でもあり,今後どうなるのかが気になるところ。
 
 一昔前は,ゲームデベロッパといえば,収益の柱となるオリジナルのヒット作を生み出し,それをもってパブリッシャに転向することが一つのゴールとなっていた。近年の例で言えば,ドラゴンクエストの開発元というブランド力を活かしながら,自社のオリジナルタイトルの地歩を固めたレベルファイブなどがその好例だ。
 しかし,急激に変化し続けるゲーム業界にあって,そのパブリッシャすら統廃合されていく今,ゲームデベロッパ各社は,自身の立ち位置,目標について,新しいあり方を求められているのかもしれない。

 今後さらにオリジナルの新作タイトル発表を複数控えているなど,新興デベロッパとしては,異例の躍進を遂げつつあるイメージエポック。同社に所属する新納一哉氏などと含めて,今後の動向に注目しておきたい会社である。


「イメージエポック」公式サイト


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