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「ティアリングなしで高フレームレート&低入力遅延を実現」を謳う「Virtual Vsync」。その正体に迫る
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印刷2011/06/13 00:00

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「ティアリングなしで高フレームレート&低入力遅延を実現」を謳う「Virtual Vsync」。その正体に迫る

画像集#002のサムネイル/「ティアリングなしで高フレームレート&低入力遅延を実現」を謳う「Virtual Vsync」。その正体に迫る
 COMPUTEX TAIPEI 2011の速報としてお伝えしたとおり,LucidLogix Technologies(以下,LucidLogix)は,グラフィックス仮想化技術「Virtu」(ヴィルチュ)の機能強化版,「Virtu Universal」を発表した。
 Virtuは,CPUやチップセット側の統合型グラフィックス機能と,単体グラフィックスカード(≒GPU,以下便宜的に「単体GPU」と表記)とによるスイッチャブルグラフィックスを提供するもの。Virtuは,Intel 6シリーズチップセットとSandy Bridgeコアの第2世代Core iプロセッサとを組み合わせたデスクトップPC用の技術として登場したが,Virtu Universalでは,対象がノートPCやオールインワンPC,あるいはAMDプラットフォームにも拡大されることとなる。

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VirtuとVirtu Universalの違い。VirtuはSandy Bridge世代のデスクトップPCのみが対象だが,Virtu UniversalではノートPCや「AMDの次世代プラットフォーム」にも対応する
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BIOSTAR製の「AMD 890GX」マザーボード「TA890GXE」と「Phenom II X6 1065T2.9GHz」,「GeForce GTX 480」という構成によるVirtu Universalのデモ。グラフィックス出力はAMD 890GX側から行われている

速報記事:[COMPUTEX]すべてのゲーマーをVSyncの呪縛から解放する「Virtual Vsync」,LucidLogixから


Offir Remez氏(Co-Founder, President & Vice President of Business Development, LucidLogix Technologies)
画像集#006のサムネイル/「ティアリングなしで高フレームレート&低入力遅延を実現」を謳う「Virtual Vsync」。その正体に迫る
 そして,Virtu Universalの目玉機能が,速報でお伝えした「Virual Vsync」ということになるのだが,LucidLogixを率いるOffir Remez(オフィール・レメズ)社長は,「Virtu Universalは,対応プラットフォームを拡大しただけではない」という表現を使い,Virtu Universalにおける機能拡張が2つあるとした。その1つがパワーマネジメントだ。

 Virtu Universalのパワーマネジメント機能では,統合型グラフィックスと単体GPUのどちらを利用するか,アプリケーションごとに選択できるようになっている。Remez氏によれば,「ノートPCをバッテリーで利用しているときや,コンセントにつないでいるときなど,利用状況に応じて別々のプロファイルを用意することもできる」とのこと。

VirtuからVirtu Universalへの移行で,ユーザーインタフェースが刷新される予定。合わせて,パワーマネジメント機能が追加される
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 というわけで,2つめがVirtual Vsyncである。
 速報記事で,ゲーム側のVSync設定が有効でも,Virtual Vsyncを利用すればベンチマークテストのスコアが大きく向上するというのは紹介したとおりだが,実のところLucidLogixでは,そういった“見て分かる”効果もさることながら,FPSなどでより自然な操作感を実現することに,かなり重きを置いている。

Virtual Vsyncの“効能”。VSync有効時の60Hzという制約を取り払いマウスなど入力系の応答性も高めると同時に,VSync無効時に発生するティアリングを生じさせないとされる
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MSI製の「Intel H67 Express」マザーボード「H67MA-E45」と「Core i7-2600/3.40GHz」,「GeForce GTX 260」によるデモ機。Vertual VSyncが有効化されていたが,ティアリングのない状態で平均180fps前後を叩き出していた
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 現在,一般的な液晶ディスプレイの垂直リフレッシュレート(垂直同期周波数)は60Hz。これが「1秒間に60フレームの画面書き換えを行っていることを意味する」というのは,4Gamer読者には釈迦に説法だろうが,これを応答速度に換算すると16.6ms。1フレームを描画するのに,16.6msかかるわけである。PC用として入手できる最も高リフレッシュレートの液晶パネルは3D立体視に対応した120Hzのものだが,それでも応答速度は8.33msある。

画像集#011のサムネイル/「ティアリングなしで高フレームレート&低入力遅延を実現」を謳う「Virtual Vsync」。その正体に迫る
 「一般的な液晶ディスプレイでFPSゲームなどをプレイするとき,マウスやコントローラの反応速度にタイムラグを感じることがあるだろう。これは,描画品質を優先してVSyncを有効にしたときに起こりやすい症状だ。しかし,人間の反応はもっと高速であり,スムーズなゲームプレイを実現するためには,応答速度をできるだけ引き上げる必要がある」(Remez氏)。

 そこでVirtual Vsyncでは,統合型グラフィックス機能と単体GPUの両方を使って,VSync無効時に発生するティアリングをなくしつつ,フレームレートを大幅に引き上げて,入力系の遅延を減少させようという試みがなされた。

Vertual Vsync有効時でも,Call of Duty 4: Modern Warfareのオプションでは,VSyncを有効化する「Sync Every Frame」は「Yes」になっている
画像集#012のサムネイル/「ティアリングなしで高フレームレート&低入力遅延を実現」を謳う「Virtual Vsync」。その正体に迫る
 LucidLogixで製品開発を担当するAleksey Krasnopolsky(アレクセイ・クラスノポルスキー)シニアプロダクトマネージャーは,「今なお,180Hzなど,垂直リフレッシュレートの高いCRTディスプレイを好むプロゲーマーが存在する」としたうえで,「プロゲーマーからのフィードバックの一部で,SLIなどのマルチGPU構成を採用している例があるのは,描画性能を向上させるだけでなく,入力系の応答速度を高めるのに有効だと考えているからだ」という分析結果を披露。Virtual Vsyncのデモを見せながら,「フレームレートよりも,マウスの追従性を体感してくれ」と,盛んにアピールしていたのが印象的だった。

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「Call of Duty 4: Modern Warfare」でVSyncを無効化した状態。フレームレートが上がり,マウスの追従性も向上するが,マウスを振って視点を動かすとティアリングが発生する
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同じシステムでVertual Vsyncを有効化したところ,マウスを振ってもティアリングなしで追従する。フレームレートがVsync無効時より上がっている点にも注目してほしい


Virtual Vsyncの手法


 速報でもお伝えしたとおり,Virtual Vsyncの手法は,「1枚の絵を1フレームとして見たとき,最初と最後の5〜6ピクセルラインを一方のGPUで描画し,それ以外の大半のピクセルを高性能なGPUで描画するもの」(Remez氏)。その詳細は,数々の特許技術が関わるとして明らかにはしてもらえなかったが,基本的には,

  1. 性能が劣るほうのグラフィックス機能には,VSyncを有効化した状態でディスプレイ制御に専念させ,同時に,1フレームの冒頭数ラインを描画させる
  2. 性能が高いほうのグラフィックス機能は,VSync無効の状態でレンダリングに専念させる
  3. 「性能が高いほうのグラフィックス機能が1フレームを書き終わるタイミング」を予測する
  4. 性能が劣るほうのグラフィックス機能に,1フレームのラスト数ラインの描画と,ピクセルパイプラインの後処理を担当させる
  5. 2つのグラフィックス機能による描画結果を,GPU仮想化技術であるVirtu Universalで合成する

Virtual Vsyncの設定メニュー。描画品質とパフォーマンスのどちらに振るか設定できるスライダーが用意されている
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という手順を繰り返すことになる。

 そして,この処理系で最も重要なのが,2つの画面を合成するタイミングを予測することだ。LucidLogixによると,その性能が描画品質にも大きく影響を与えるのだそうで,実際,Virtual Vsyncのコントロールパネルには,高性能なほうのGPUのレンダリング速度を変更するというスライダーも用意されている。「パフォーマンスに振り切ると,ゲームによってはティアリングが発生することがあるため,それを調整する」(LucidLogix)のだそうだ。ただし,ウェイトが入っているのかどうかなど,具体的な説明はされなかったので,このあたりは後日検証する必要があるだろう。

60Hz入力に対応する液晶パネル搭載のノートPCを用いたVirtual Vsyncのデモ。両モデルともVSyncは有効にされているが,Virtual Vsyncを有効にした右側のノートPCでは,100fpsを超えた内部フレームレートを実現する
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 ちなみにRemez氏は「原理的には,DirectX 11世代の単体GPUとDirectX 10.1世代の統合型グラフィックス機能を組み合わせ,DirectX 11世代のタイトルを高速化させることは不可能ではない」と説明するが,今回公開されたデモは,すべてDirectX 9で動作していた。DirectX 10〜11世代のタイトルにも対応し,第3四半期中にはOpenGLにも対応するとされるVirtual Vsyncだが,DirectX 10〜11に向けた最適化はまだ十分でないということなのかもしれない。


画像集#020のサムネイル/「ティアリングなしで高フレームレート&低入力遅延を実現」を謳う「Virtual Vsync」。その正体に迫る
 COMPUTEX TAIPEI 2011の会期中,ホテル「Grand Hyatt Taipei」内のスイートには,マザーボードベンダーのみならず,数多くのノートPCベンダーが立ち寄っており,筆者が訪れたときも,ある台湾系ノートPCベンダーが,製品への実装についてLucidLogixと真剣に話し合っていた。

 Remez氏は,Virtu Universalを「7月に正式リリースすべく開発を進めている」としている。ひとまずのターゲットはデスクトップとなり,製品版はマザーボードにBIOSキーの形でライセンス提供されることになる。ただ,30日間の体験版も用意されるとのことなので,その使い勝手を実際に評価できる日は遠くない。

LucidLogix公式Webサイト(英語)
  • 関連タイトル:

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