2013年4月13日,サイバーコネクトツー東京スタジオにて,
「『.hack』シリーズ完全設定資料集 LIGHT EDITION」の発売を記念した
トーク&サイン会が行われた。
当日は,「.hack」シリーズの初期から携わってきたエグゼクティブディレクター・
松山 洋氏と,ディレクター・
新里裕人氏による「.hack」のマル秘エピソードが披露され,また会場には,
「.hack//G.U」「.hack//Link」でキャラクターデザインを務めた
細川誠一郎氏の生原稿が拝める展示スペースが設置されるという,ファン垂涎のイベントとなった。
本稿では,そのトークの内容を中心に,イベントの模様をレポートしていこう。
会場にはメッセージボードも
 |
 |
設定資料と共に振り返る「.hack」の11年
トークはまず,松山氏が来場者にお礼を述べると共に,
「せっかく東京スタジオがあるのだから,これからも年に2回くらいはこういう距離の近いイベントをやっていきたい」と展望を語ったところからスタートした。
左から松山 洋氏,新里裕人氏
 |
トークテーマのテーマとして最初に掲げられたのは「『.hack』を振り返ろう」というもの。2002年にスタートし,アニメやコミック,ゲームなど,さまざまなメディアで展開されていった「.hack」シリーズ。しかしその最初,松山氏が便宜上「1stシーズン」と呼ぶ作品が世に出た頃のサイバーコネクトツーは,スタッフが25名の中規模会社でしかなかった。開発ラインは当然1つしかなく,その1ラインで3年半かけて作りあげたのが,初代「.hack」なのだという。そして,その時チームリーダーを務めていたのが新里氏だ。
サイバーコネクトツーの古参メンバーである新里氏は,年齢も松山氏より5つ上(現在48歳らしい)で,松山氏の先輩に当たる人物だ。松山氏曰く,当時の二人はよくある先輩後輩の間柄だったそうだが,松山氏が社長になったことで,「今日からお前は俺の部下だぞ!」と,立場が逆転してしまった。まあこの世界では良くありそうな話だが,松山氏がユーモラスな語り口で話す当時のエピソードは面白く,会場は大爆笑となっていた。
新里氏によれば,「.hack」シリーズは当初
「フォルテプロッツェ」という盗賊の女の子が活躍するゲームとして企画されていたという。しかし企画を進めていく課程で,「盗む」と「ハッキング」のイメージがマッチし,新里氏はハッカーをテーマにした作品を思案するようになった。しかしハッカーでは,現代や近未来のイメージが強くなりすぎてしまい,ファンタジーからはかけ離れてしまう。
そこで思いついたのが,
「オンラインゲームの世界をテーマにすればいい」というアイデアだった。後に「.hack」の基礎となるこのアイデアを聞いた松山氏は,
「冒険ロマンをテーマにした作品はいくらでもあるので,独自性のあるアイデアだと思った」という。
 ファンにはお馴染みの生物「プチグソ」に関するトークも。ゲームに幅を持たすためには考案されたというプチグソの育成だが,当時は企画担当が1人しかおらず,ほとんどの要素を松山氏が考えたという |
 ヘビグソも松山氏がデザインしたらしいのだが,ほとんどのデザインはボツ。結果,採用されたのは,真ん中に描かれているスタチューの1つだけだったらしい |
続いては,「.hack G.U.」を中心とした2ndシーズンの話へ。この時期はサイバーコネクトツーにだんだんとスタッフが増えてきた頃だという。開発ラインも2ライン体制になり,「.hack」を作るRPGチームと,「ナルト」を作るアクションゲームチームに分かれていったとのこと。
この頃の新里氏は,もちろんRPGチームのリーダーとして,開発に関わっていた。その時に苦労したのは,主人公であるハセヲのデザインだそうだ。主人公なので,凝ったデザインにしたいのだが,ハード性能の制約上,それをゲームに落とし込むのが難しい。松山氏によれば,ハセヲのコンセプトは漫画
「無限の住人」の主人公・万次が原型になっていたとのこと。なので,当時はマントから武器が出てくるようなビジュアルをイメージしていたのだが……布の表現は2013年の今でも,3Dグラフィックスが苦手とするものの一つである。そこで布ではなくフライングマーマーのようなイメージにしてみたりなど,実にさまざまな試行錯誤が行われという。
またメインヒロインであるアトリのデザインでは,
「最初は洋風にするか和風にするかも決まっていなかった」という両氏。しかし制作を続けていく段階で,アトリのテーマである「小鳥」のイメージが盛り込まれていくことになった。背中の羽などは,小鳥のイメージを強調した結果生まれたもので,またパンツルックの可愛らしいファッションも,やはり小鳥がベースになっているとのことである。
 プチグソ同様,「.hack」のマスコット的存在であるチムチム |
 グランティ |
さらに2ndシーズンではゲームの後には,オリジナルビデオアニメーション「.hack//G.U. TRILOGY」の制作も行われた。サイバーコネクトツーとしては初の映像作品とった同作は,松山氏によると,ゲーム版の「.hack G.U.」がハセヲにとって「救えなかった」物語だったため,「救って終わりにしよう」という想いで制作された作品だという。
さらにゲームと同じ展開では面白くないという考えから,ハセヲの「B-stフォーム」という新しい要素も盛り込まれた。一方ヒロインの一人である揺 光については,松山氏曰く「リデザインする必要がまったくなかったキャラクター」とのこと。しかし現場のこだわりと,松山氏が揺 光を好きすぎたことから,デザインが新たに起こされることとなった。
続く3rdシーズンの展開は,PSP「.hack//Link」を皮切りに,2010年より開始となった。ただし,さまざまなメディアで同時に展開するのではなく,スパンを空けながら続けていく形式がとられていた。この流れはコミック,オリジナルビデオアニメーション
「.hack//Quantum」と続き,2012年には劇場用アニメ
「ドットハック セカイの向こうに」が公開。さらに2013年末には,スマートフォン向けゲーム
「ギルティドラゴン 罪竜と八つの呪い」(
iOS /
Android,以下ギルティドラゴン)が,3rdシーズンの一環として展開されている。
「ギルティドラゴン」とこれからの「.hack」
「ギルティドラゴン」はすでに50万DLを突破しており,順調に会員数を伸ばしているそうだ。無料でどこまでも遊べるので,無理に課金する必要はないと松山氏
 |
トークの最後のテーマは,これからの「.hack」について。さまざまな理由から「.hack」という名前は付いていない「ギルティドラゴン」だが,松山氏によれば,同作は紛れもないシリーズ作品とのこと。「.hack」のウリでもあるバトルの迫力や独特の世界観,練り込まれたドラマ性などもしっかりと受け継がれているという。それだけではなく,毎週新しい機能が実装されていて,サービスが開始された2012年末から比べても,現在は比べものにならないほどゲーム内容が進化しているそうだ。松山氏は今後の展開にも期待してほしいと語り,イベントは終了となった。最後に松山氏からのコメントを掲載し,本稿の締めとしたい。
 スマートフォンはスペックに優れ,世界中のファンと簡単に繋がれる便利な万能なゲームデバイスであるとコメントする松山氏 |
 会場では,ギルティドラゴンの未公開資料も公開。残念ながら撮影禁止だったので詳しい内容は語れないが,会場からは歓声が飛ぶほど濃い内容だった |
松山氏
「.hackシリーズは,新作やリメイクの要望がたくさんあります。しかし現在,家庭用ゲーム機でオリジナルシリーズを展開するのはとても難しい状況です。じゃあ,我々が何の準備もしてないかというと,なわきゃありません! ただ,大人を動かすのはいつの時代も子供達です。今の「.hack」シリーズは「ギルティドラゴン」なので,「ギルティドラゴン」の売り上げと利益が一定の規模になって「.hackいけるんじゃん? .hackそろそろやれよ」と言われた時に,「そんな事もあろうかと」と準備しているものを展開できるようしたいですね。なので,今はぜひ「ギルティドラゴン」を楽しんでください」
 2013年5月には,都内某所で「ギルティドラゴン」のイラスト展示イベントも開催 |
 「ギルティドラゴン」のイラスト集も販売される。なおこちらは「ギルティドラゴン」のイラスト展示イベントで先行販売されるそうだ |
イベントの最後には,.hackの豪華賞品があたるプレゼント抽選会も。会場には60名くらいの人達が詰めかけていたが,そのうちの19人が賞品をゲットできていた。約3人に1人が当たったということになるので,なかなかの当選率といえるだろう
 |
松山氏と新里氏による,恒例のサイン会も行われた
 |
 |
設定資料の展示コーナー
 |
 |