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[TGS 2017]「エースコンバット7」の物語は単純な善悪の戦いではない――河野Pにストーリーの概要や登場キャラクターの関係などを聞いた
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印刷2017/09/26 00:00

インタビュー

[TGS 2017]「エースコンバット7」の物語は単純な善悪の戦いではない――河野Pにストーリーの概要や登場キャラクターの関係などを聞いた

 千葉・幕張メッセで2017年9月21〜24日にかけて開催された東京ゲームショウ2017。その会期にあわせて,バンダイナムコエンターテインメントが2018年に発売する「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」PC / PS4 / Xbox One)の河野一聡ブランドプロデューサーにインタビューを行う機会が設けられたので,本作について更なる話を聞いた。

 ゲームシステムやデザインなどはE3 2017のとき(関連記事)に話してもらっているので,今回はストーリーや登場キャラクターなどに関して重点的に質問している。

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「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」公式サイト


「エースコンバット」ブランドプロデューサーの河野一聡氏
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4Gamer:
 まず,ストーリーのバックボーンはオーシアとエルジアの戦争となるんですよね。

河野一聡氏(以下,河野氏)
 そうです。

4Gamer:
 オーシアがエルジアの領土に軌道エレベータを建設したことが開戦理由となっているそうですが,なぜそのような状況になったのでしょうか。

河野氏:
 軌道エレベータが建てられた理由はゲーム冒頭で少し語られます。あまり言えないのですがボカして言うと,建物が建つとそれによる経済効果が期待できますよね。それによって助かる国があって,エルジアも期待していたんだろうな……という感じです。

4Gamer:
 しかし,それがもつれて戦争状態に。

河野氏:
 何かあるんですよね。現実世界でも似たような利権問題はありますが,そういうイメージです。

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4Gamer:
 ただ,エルジアの王女が顔に煤(すす)を付けていたり,戦争は妙な方向に向かっているという印象を受けます。

河野氏:
 戦争はさまざまな人々を翻弄していて,エルジアの王女であるコゼットもその中の1人です。トレイラーの映像は全体のストーリーから少しずつ切り出しているので,タイムライン的にはいろんなコゼットが混ざっています。詳しくしゃべってしまうとプレイヤーの楽しみを奪ってしまうので言えませんが(笑)。

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 コゼットは単に可愛いだけのキャラクターではありません。コゼットだけでなく,老パイロットのミハイなど,それぞれの人間が戦う理由や自分なりの意思を持っていて,それがストーリーの中心になっています。片渕須直監督のシナリオなので,単純な善悪ではないんですよ。トレイラーでコゼットの「あなたはどっちを選ぶのかしら?」というセリフがありますけれども,あれはストーリーの一環であり,プレイヤーへのメッセージでもあるんです。

 人間がトリガーを引かない無人機に対してプレイヤーがどう考えるのかとか,片渕監督が書いてくれたそれぞれのキャラクターの想いとか,それらをストーリーモードに入れ込んでプレイヤーにお渡ししたいと考えています。

4Gamer:
 例えば「エースコンバットX2 ジョイントアサルト」みたいに勧善懲悪的なシナリオではないわけですね。

河野氏:
 そこは片渕監督が入った時点で,絶対にそうはならないと分かっていましたし,それを望んで片渕監督に来ていただきました。

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4Gamer:
 主人公はオーシア軍のトリガーというTACネームの人物なのでしょうか。

河野氏:
 そうなっています。ただ,あくまでプレイヤー自身が主人公となるような形です。

4Gamer:
 シリーズの伝統ですね。

河野氏:
 とくに今回はナンバリングなので,「俺にはこういう過去があって……」みたいなキャラクター付けをするつもりはまったくありません。ストーリーテリング的には,主人公が誰か分からない状態で話を進めるのは難しいことなので,苦労する部分もあるのですが(笑)。ただ,そこはナンバリングシリーズを作ってきたスタッフと片渕監督の力で,きちんと出来ていると思います。

4Gamer:
 旧作ではスカーフェイスだと傭兵,ブレイズだと新米といったある程度の経歴はありましたが,そういったものもないのでしょうか。

河野氏:
 経歴というか,例えば「エースコンバット04 シャッタードスカイ」だと英雄譚の主役,「エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー」だと影のヒーローといった体験をしてもらったように,今回もある役割を体験をしてもらうことにはなるんです。それは結構ショッキングで,予想もしないところへと向かっていきます。

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4Gamer:
 それを象徴するのが,トリガーのエンブレムに刻まれる「爪痕の三本線」なのでしょうか。

河野氏:
 鋭いですね! そういう感じです。

4Gamer:
 部隊章を消すなんて相当の行為ですけど,その辺りは話せないと。

河野氏:
 話せないですね(笑)。
 エンブレムに関して言えば,プレイヤーにとって分かりやすいアイコンになるので,毎回いろいろな試行錯誤をするんですよ。今回もさんざん悩んで,やっと出たアイディアがあの三本線です。Twitterを見ていると,三本線で消した部隊章を貼ったプラモデルを作っていらっしゃる人も見かけるので,ファンの方に響いたようでよかったと思っています。

4Gamer:
 ただ,E3 2017のトレイラーでは主人公の所属するオーシアの攻撃による民間人の被害が叫ばれるなど,オーシアこそが悪役のような描かれ方をしていますよね。

河野氏:
 あれは,E3 2017のトレイラーとgamescom 2017のトレイラーの2本で一対という構成になっているんですよ。E3 2017トレイラーから見ると「オーシアは正義のために戦うんだ」という流れになるんですが,gamescom 2017トレイラーだと「オーシアが原因なのだ」と。そして,両方の理屈が正しいんです。


4Gamer:
 トレイラーと言えば,一瞬出てきた白い前進翼の架空機が気になるのですが,お話いただけることはありますか?

河野氏:
 ないです(笑)。
 ちなみに,あれは勝手にトレイラーに入れられていたんですよ。僕らもトレイラーを見て「何でこれ出てんの!?」って驚いたんですけれども,「でも話題になるかもしれないからいいか」とOKしました。位置付け的には,ストーリーが進むにつれて現れる新しいものの象徴という感じですね。ゲームらしくていいかなと思っています。

4Gamer:
 他メディアによると,あの白い機体は無人機らしいですね。

河野氏:
 はい,あれは無人機です。

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4Gamer:
 従来作だとライバル的なキャラクターや陣営が何か1つの理念を象徴していましたが,「機械の助けを得て戦う」ミハイと完全に無人の白い機体とは,象徴するものが異なっているように感じられます。

河野氏:
 ストーリーの構造的な話をすると,プレイヤーと対になるのがミハイです。「エースコンバット」シリーズは,人と人の関係が求められますからね。それがありつつ,一歩退いた視点で見ると“有人機と無人機”という対があります。そしてプレイヤーとミハイも有人機側として“無人機が台頭する未来”との対になっているわけです。こういった構造は,片淵監督としっかり話し合いながら作っています。

4Gamer:
 対比と言えば,トレイラーでトリガー機がレーザーなどSF的な武装を使用していて,それが敵との対比構造なのかなとも思いましたが。

河野氏:
 それは新しくプレイヤーができることを表現したもので,SF的な武装を使う敵機が出てないのは,たまたまですね。
 フィールドに雲を配置して,環境にバリエーションを作ることができた。無人機を含めて敵機のバリエーションを作ることができた。で,プレイヤーは……という部分なんですよ。チャフやフレアの追加やポストストール機動はありますけれども,さらに特殊兵装でレーザーなどを追加しました。
 SFといっても荒唐無稽なものではなくて,シリーズの伝統でもあるので実際に研究されているようなことを先に取り込んでいます。実際には見えないレーザーをゲーム的に分かりやすくはしていますけどね。
 そうやって,やれることや敵のバリエーションを倍々に掛け合わせて,プレイヤーの体験をたくさん生み出したいと構想しています。

4Gamer:
 敵もSF的な兵器を使ってくるようですが,避けるときはミサイルとは異なる対応を求められるのでしょうか。

河野氏:
 レーザーって避けられるのかなあ(笑)。実際には狙われた瞬間に当たりますから。

4Gamer:
 「エースコンバットX スカイズ・オブ・デセプション」のSPミッションではZ.O.E.のファルケンがビームサーベルみたいにレーザーを振るってきましたね。

河野氏:
 そういった表現は,最終的にゲームバランスを考えて調整します。そもそも本当のことを再現したら,ドッグファイト自体やらないじゃないですか(笑)。

4Gamer:
 ミサイルだって100発も積めません(笑)。

河野氏:
 そこはゲーム的なジャッジで,ゲーム性を確保するように判断します。

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4Gamer:
 トレイラーに出てきた人物達は,オーシアに対して否定的な立場のように見えますが,エルジア側の人々なのでしょうか。

河野氏:
 いえ,オーシアの人物も混ざっています。プレイヤーが巻き込まれる環境にも似ているんですが,「どの組織も一枚岩じゃないよね」という感じです。

4Gamer:
 そう言えばトレイラーで異なる機種で編隊を組んでいるシーンがありましたが,あれもまたプレイヤーが巻き込まれる環境を表したものなのでしょうか。

河野氏:
 それもありますが,「機体を変えられますよ」というゲーム的なプレゼンテーションの部分が大きいですね。多分,そんなに深い意味はないです(笑)。

4Gamer:
 ということは,僚機も任意の機体に変えられるのでしょうか。

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河野氏:
 そこまでのことではないですね。僚機は固定で考えています。
 開発スタッフが「新しい機体を見せたい!」と思って入れたのでしょう。白い無人機がトレイラーに入っていたのもそうですが,そういうことはよくあります。

4Gamer:
 「どうだビックリしただろう!」みたいな(笑)。

河野氏:
 開発スタッフも楽しんでいるんだなあと思っています(笑)。

4Gamer:
 シリーズファンとして気になるところなのですが……今回のトンネルはどのようなものが用意されているのでしょうか。

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河野氏:
 トンネルについてはよく聞かれます(笑)。ところで,プレイヤーとしては賛否両論なのを知ってらっしゃいますか? 歓迎と否定で真っ二つなんですよ。それの中庸をとったのが「エースコンバット・ゼロ ザ・ベルカン・ウォー」の“上から出たり入ったりできるトンネル”だったのですが,今回は割とストロングスタイルで作っています。
 そして,“トンネルだけとは限らない”ですよ。

4Gamer:
 それは,精密機動が求められるけれどもトンネルじゃないというような……?

河野氏:
 それ以上は言えません(笑)。

4Gamer:
 ところで本作からは離れる話なのですが,EASAという名前が出てきて「おっ?」と思いました。その出典と思われる「エースコンバット3 エレクトロスフィア」はシリーズ的にどういう立ち位置なのでしょうか。

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※「エースコンバット7」におけるEASAは「エルジア航空宇宙局(Erusian Air and Space Adminstration)」の略称。一方,「エースコンバット3」におけるEASAは「政府宇宙管理機構(Euro-Asia Space Adminstration)」の略称。名称は似ているが同一のものではない。


河野氏:
 公式の回答としては,「『エースコンバット3』はエースコンバットフランチャイズとして出しているので,『エースコンバット7』にもいろいろと影響しています」という感じですね。

 アートディレクション担当の菅野昌人が,もともとナムコ(当時)にドラグーンの模型を持ち込んで入社したくらいのUGSFマニアなので,勝手にやるんですよ(笑)。なので,気がつくと「エースコンバット3」や,さらにその先のエッセンスが取り込まれています。
 「エースコンバット3」が好きなプレイヤーも喜んでもらえるような要素が入っていますし,「エースコンバット」シリーズは大きな世界観を持っているので,そういうのを継承していくのもいいと思っています。

4Gamer:
 「エースコンバット」シリーズは「X」シリーズや「ACE COMBAT INFINITY」といったスピンオフも出てきたように,柔軟性がありますよね。

河野氏:
 世界設定に関してはいろいろ挑戦もしています。まあ,今回はナンバリングなので,「エースコンバット04〜6」と同じ,ユージア大陸のある世界です。システムは,三次元の自由航行という癖のある操作性ではあるのですが,敵を追って捉えて倒すというシンプルなシステムで汎用性が高いので,いろんなことに使っていきたいと思っています。

4Gamer:
 「スカイ・クロラ イノセン・テイセス」みたいな展開もまた望めるのでしょうか。個人的には最近だと,「アーガイルシフト」関連記事)を「エースコンバット」的なシステムで遊んでみたいと思いましたね。

河野氏:
 「アーガイルシフト」は,多数のお客さんが遊ばれるVR ZONEという公共の場で健康や安全性を最優先するというところで,フライトシューティングという選択はなかったのでしょう。コンセプトが異なるのだと思います。

 VRでのフライトシューティングは難しく,実際「エースコンバット」をVRにすると言ったときも,「できないだろう」という声が最初は多かったですね。VR黎明期に「VRに最も向いていないのはジェット戦闘機」と声高に語られていたのですけれども,それを何とかするのが「エースコンバット」チームの仕事だと思い,頑張りました。
 結果的にすごく楽しいものが出来ていますし,やって良かったと思っています

4Gamer:
 本作のVRモードについて改めてうかがいたいのですが,VRモードはキャンペーンモードから独立しているということですよね?

河野氏:
 完全に別モードとして切り離しています。あくまで主軸はマルチプラットフォームで展開している「エースコンバット7」というゲームのキャンペーンモードです。そこに相当な力を注いでいますし,10年ぶりのナンバリングとして正しい回答をプレイヤーに出さなければいけないと思っています。
 ただフランチャイズの未来を考えたときに,それとは別にプレイヤーの皆さんへ可能性や展望を提示したい,我々の挑戦を見せたいという思いがあって,それがVRモードとなっています。

 当然,技術的・技法的にもキャンペーンとVRは一緒にできません。キャンペーンだと映画的な第三者視点のカメラを使えますが,VRでそれをやると「さっきまでパイロットだったのに,急に変な視点からの映像を見せられた」という混乱が起こるんですね。
 なので,VRモードでは“自分はパイロット”ということをブレさせず,完全に一人称で作っています。ゲームの根幹は一緒ですけど,目指しているゴールが違うんですよ

 VRモードは「エースコンバット7」で満足してもらえるとは考えていませんし,「7」の本編だとは位置付けられません。ただ,このモードで「ハンガーで実物大の戦闘機を見るのはこんなに価値があるんだよ」や「空を飛ぶというのはこんなにすごいことなんだよ」という未来の片鱗をプレゼンテーションしたいと思っています。

4Gamer:
 最後に,シリーズや同ジャンルのファンに向けたメッセージをお願いします。

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河野氏:
 シリーズファンの方々,「エースコンバット」をいつも支えていただいてありがとうございます。そのお陰で10年ぶりにナンバリング新作を出せます。期待に応えるべく細部までこだわって作り抜いているので,まだ少しお待たせしますが,“いいものにする”という約束の代わりに,お待ちいただければと思います。
 戦闘機好きという方々には,本当に「見てください!」といった感じで,戦闘機の足回りからテクスチャーから,今世代にふさわしい戦闘機を提示できていると思います。ぜひとも楽しみにしてください!

4Gamer:
 ありがとうございました。

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