スマートフォンでどこでもバトルロイヤルが楽しめる作品として日本でも人気を博している
「荒野行動」(
iOS /
Android),そして非対称型オンライン対戦ゲームとしてコンシューマやPC界隈で人気を博している
「Dead by Daylight」(
PC /
PlayStation 4)。この2作品を手がけた2つの異なる企業が提携し,スマートフォン向けの新作を開発した。
今回紹介する
「Identity V」(アイデンティティV
iOS /
Android)は,そんな背景を持つ注目作の日本版で,iOS版は
7月5日に,Android版は
7月11日に配信開始となった。中国(
※)で配信されるやいなや,各ストアのランキングの上位に顔をのぞかせたこの作品は,一体どんなゲームなのか。さっそく紹介していこう。
※中国では「第五人格」という名称で配信されている
※本稿ならびに掲載したスクリーンショットは開発版を元に制作しています
一言で言えば(めちゃくちゃよくできた)
スマホ版「Dead by Daylight」
最初に少しだけ,本作に関する業務提携を結んだ2つのスタジオ,NetEase GamesとBehaviour Interactiveについて紹介しておこう。
NetEase Gamesは,中国は杭州に在するNetEase.comを母体とするスタジオだ。中国内ではポータルサイト―日本でいうYahoo! Japan的なサイト―や電子メールサービスなども手がける,中国IT業界の雄である。同社は2000年代前半からオンラインゲームの運営などを行っていたが,日本のゲーム業界で頻繁に名前を聞くようになったのは比較的最近かもしれない。
ことさら
「陰陽師」(
iOS /
Android)は,同スタジオの知名度を大きく上げた1作で,日本国内でもプレイしている人はいまだに多い。前述したバトルロイヤルゲーム「荒野行動」をはじめ,Web漫画の世界観を元にした新作MOBA
「非人学園」などをスマートフォンで展開し,現在では世界でもトップクラスの売上をキープする中国のヒットメーカーとなっている。
陰陽師
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Dead by Daylight
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一方のBehaviour Interactiveは,カナダのモントリオールに拠点を置く巨大インディーズゲームメーカーである。これまでにも非常に多くの作品を手がけてきたスタジオだが,「Dead by Daylight」でその名前を知ったというゲーマーも多いだろう。
「Dead by Daylight」は,プレイヤーが
逃げる4人と追いかける化け物1体に分かれて楽しむ非対称型のオンライン対戦ゲームだ。日本国内では2015年に発売された「
EVOLVE」あたりからよく知られるようになった印象のあるジャンルだが,同作はその中でも“比較的”新しいタイトルとしてゲーマーに広く遊ばれている。PlayStation 4版が日本円で3000円(税込)からという安価な価格設定も,同作の普及を助けた。
今回紹介する「Identity V」は,そんな2つのスタジオが提携してスマートフォン向けに制作した期待作だ。その内容は,
一言で言えばスマートフォン版「Dead by Daylight」である。ゲームのスキームから得られる体験まで,ほぼ「Dead by Daylight」と同様で,異なる部分といえばプラットフォームがスマートフォンであるということや,グラフィックスを含む世界観くらい……というのが率直なところだ。
ただし,その完成度はかなりのもので,コンシューマ版「Dead by Daylight」の操作感をほぼ損なわずにスマートフォンで実現している。UI(ユーザーインタフェース)やマッチングにもとくに不満はなく,誤解を招くことを恐れずに言わせてもらえば,
「あーこれ人気出ちゃうわー」といったところである。
「Dead by Daylight」を楽しく遊んだ経験がある人ならば,本稿はここで閉じ,さくっとダウンロードしてプレイするほうがおそらく話は早い。ただ「いやいやそんなこと言っても信じんぞ」という人のために,「Identity V」のゲーム性を「Dead by Daylight」と微妙に異なる点にも触れつつ,解説していこう。
かくれんぼとおにごっこはいくつになっても最高の遊び
非対称型オンライン対戦ゲーム(ABA,Asymmetrical Battle Arena)といっても,そのゲーム性はタイトルによって若干異なる。「Identity V」および「Dead by Daylight」は,突き詰めると
かくれんぼ&おにごっこを仮想空間で体験できるようなイメージを持っておけば分かりやすいだろう。
プレイヤーは追いかける側(ハンター)と追いかけられる側(サバイバー)に任意で分かれ,それぞれマッチングを行って1マッチを遊ぶ。ゲーム開始後,ハンターとサバイバーは特定のフィールドにランダムに飛ばされる。そこでハンターはサバイバーを探し,そのフィールドから脱出させないように追いかけたり捕まえたりする。サバイバーはハンターを倒すことはできず,ハンターから逃げつつ条件を満たしてフィールドからの脱出を試みるというのが大まかなルールである。
サバイバーは,近くにハンターが来ると心臓がバクバクする演出が体に表れる
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ハンターがサバイバーを見つけるのは意外と難しい。サバイバーの走った痕跡や,音,そして暗号の解読失敗時になる衝撃音などを頼りに,サバイバーを追い詰めていく。基本的にハンターは,かくれんぼ→おにごっこを繰り返すことになる。こう書けば単純だが,ここにさまざまな要素が絡み非常に面白くなるのだ
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「Dead by Daylight」と異なる点でいえば,ハンター側も三人称視点ということ。「Dead by Daylight」でのハンターは一人称視点だったため,サバイバーは死角に入るような動きで翻弄するといったプレイヤースキルが有効だったが,「Identity V」でやるのは難しい
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ハンターは,逃げ回るサバイバーを2回殴って気絶させ,ロケットチェアと呼ばれる椅子にくくりつけて一定時間を経過させる,同一プレイヤーを複数回ロケットチェアにくくりつける,といったアクションを成功させると,そのプレイヤーをフィールドから退場させることができる。これはサバイバー側にとってのゲームオーバーだ。
そしてサバイバーの脱出条件は,フィールドに設置された解読機にアクセスして決められた数の暗号を解いたあと,フィールド上に2つ存在する脱出口のいずれか(両方でも可)を開いて逃げ出すこと。サバイバー側には4人のプレイヤーがいるが,全員が一緒に逃げる必要はない。あくまでも,フィールドから逃げ出すことが目的となる。
「Dead by Daylight」にあった“スキルチェック”が「Identity V」にもある。UIは少し異なるが,タイミング良くボタンを押すところは一緒だ
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ハンター側もサバイバー側も,プレイヤーはそれぞれ固有のキャラクターを選択できる。キャラクターによって持っている能力が異なり,それらの組み合わせが本作のいいスパイスになっている
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基本的に,ハンターのほうがサバイバーよりも移動速度が速いため,純粋な追いかけっこになってしまうと,サバイバーが逃げるのは難しい。サバイバーは,持ち前の能力やフィールド上の障害物を使って,ハンターの追撃を避けて,少しずつ活路を開いていく。
暗号を解きながら,忍び寄るハンターの影におびえる恐怖。そして圧倒的なパワーを持つ存在に追いかけられる絶望感。サバイバーでは,そういったスリルを絶えず味わえる。もちろんハンターはその逆で,逃げ回るサバイバーを追い詰めていく嗜虐的な快感,そして戦略を持って相手を追い詰めていく知的な気持ち良さを満喫できるのだ。
キャラクターの成長要素も「Dead by Daylight」とは異なる。同作はブラッドウェブと呼ばれる非常に特徴的なシステムを持っていたが,「Identity V」はノード制。現在のノードにある条件を達成したら,次の覚えたい能力のあるノードを選択し,再び条件に挑戦する。これを繰り返して徐々に能力を獲得していく
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ハンターには特質と呼ばれる固有の能力もある。サバイバーの動きを察知するものや,暗号機の解読を邪魔するものなどさまざま。付け替えも可能だ
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ちなみに「Identity V」はチュートリアルもおもしろい。屋敷にやってきた探偵が,そこで起こった惨劇を“再現する”という物語形式で,新キャラクターや新要素をアンロックしていく
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非常に高品質な作品
さて,注目作の「Identity V」をここまで紹介してきたが,端的にまとめるならば,
PCやコンシューマゲーム機でしか満足に遊べなかった非対称型オンライン対戦ゲームを,スマートフォンで見事に実現した作品といえるだろう。しかもそれをやっているのが,スマホでコンシューマライクなゲーム性を実現するのに長けたNetEase Gamesと,「Dead by Daylight」で確かな実績を残しているBehaviour Interactiveのタッグなのだ。「Identity V」は非常に高品質なスマホゲームと断言できる。
「Dead by Daylight」のプレイヤーはもちろん,プラットフォームの壁があってこのジャンルをプレイできなかった人,そもそもこれまで本作について何も知らなかった人も含め,マルチプレイの対戦ゲーム好きになら誰にでもオススメできる作品といえる。
基本プレイ無料のアプリ内課金制ということで,とりあえずのプレイをするだけなら無料で楽しめるというハードルの低さを追い風に,本作は日本国内でも一定以上の評価を集めそうだ。興味のある人はぜひ一度触れてみてほしい。