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[GDC Summer]Remedy Entertainmentが「CONTROL」のプロシージャル型破壊効果の実装から学んだこと
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印刷2020/08/06 19:03

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[GDC Summer]Remedy Entertainmentが「CONTROL」のプロシージャル型破壊効果の実装から学んだこと

 2020年1月末に開催された第18回視覚効果協会賞で表彰されたのが,Remedy Entertainmentが2019年にリリースした「CONTROL」PC / PS4 / Xbox One)だ。
 3年の開発期間と,3000万ドル(約32億円)の予算で作られたという,コストパフォーマンスの良さもゲーム業界では高く評価されているが,NVIDIAのサポートを受けたPC版はハードウェアレベルでのレイトレーシング機能をサポ―トした初のゲームになるなど,ビジュアル面もAAAレベルの作品に引けを取らない。

画像集#001のサムネイル/[GDC Summer]Remedy Entertainmentが「CONTROL」のプロシージャル型破壊効果の実装から学んだこと

Remedy Entertainmentの主任VFXアーティスト,ヨハネス・リヒター氏
画像集#002のサムネイル/[GDC Summer]Remedy Entertainmentが「CONTROL」のプロシージャル型破壊効果の実装から学んだこと
 そんなRemedy Entertainmentで特殊効果を担当したチームのリーダーで,主任VFXアーティストであるヨハネス・リヒター(Johannes Richter)氏が,GDC Summerで「CONTROLにおける破壊可能な環境:プロシージャル破壊効果から学んだこと」(Destructible Environments in 'Control': Lessons in Procedural Destruction)と題したセッションを行ったので紹介しよう。

 ちなみに「CONTROL」のVFXミドルウェアには,SideFXの「Houdini」が使われている。また,リヒター氏がRemedy Entertainmentに参加したのは2019年に入ってからのことだが,もともとは映画産業のVFXスタジオ畑で,過去10年にわたって「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」「名探偵ピカチュウ」「ゼロ・グラビティ」「エヴェレスト 神々の山嶺」といった大作映画に関わってきたベテランアーティストだ。


 近年,インディーズゲームを中心に“プロシージャル (自動生成)”という言葉がよく聞かれるようになった。少数の開発者による手作業では難しい,広大なマップや多様性に富んだキャラクターを実現するために利用されることも多い技法である。リヒター氏は,プロシージャルを規定するにあたって「与えられたルールに基づく,ゲーム世界のデータの解釈と処理」であると話し,あくまで開発者側が明確なルールを作り出していることを強調する。

 「CONTROL」では,舞台となる“オールデスト・ハウス”と呼ばれる政府機関の建物内にあるテーブル,コンピュータ,観葉植物,書類など,数百におよぶオブジェクトに何かしらのインタラクションが可能な環境作りをモットーに,さまざまなものを木っ端微塵にできるような破壊効果を実現することが試みられた。

 プロシージャルな破壊効果を生み出すにあたり,Remedy EntertainmentのVFXチームには「粒度の原理」(Principle of Granularity)というルールがあったという。簡単に言えば,1つのオブジェクトが「Objects(物体) → Chunks(塊) → Debris(破片) → Dust(埃)」と段階的に細かくなるというものだ。

画像集#003のサムネイル/[GDC Summer]Remedy Entertainmentが「CONTROL」のプロシージャル型破壊効果の実装から学んだこと

 イメージとしては,破片がジョイントでつながりあって塊を作り,塊もジョイントでつながりあって1つのオブジェクトを作っている状態で,銃弾を受けるなどのトリガーによって,オブジェクトが瞬時に段階的に壊れていく。物体は塊と,塊は破片と,そして破片は埃と常に混在しているが,埃に関しては塊のジョイントが外れるほどに破壊が進行した時点で,パーティクルで表示されるようになっている。

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 Remedy Entertainmentでは,環境アートチームがデザインしたマップがVFXチームに送られ,それをプログラム部門が自社製エンジン「Northlight」のランタイムで処理するというプロセスで開発が行われている。プロシージャル型の破壊効果が採用されたのは,上述のように何百も存在するアセットとそのバリエーションを効率よく処理するためだ。塊や破片の物理効果はゲームエンジンで制御され,破壊できない金属製の家具や大理石などは,ノーマルマップによるデカールで表現されている。

 また,よりリアルな破壊表現を行うため,コンクリート,木材,ガラスといったメタデータを組み込み,異なる材質のものが異なる破壊の様子を見せるようレンダリングされている。もちろん,埃については専用のパーティクルエディタで調整している。

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 プロシージャル型の破壊効果を使用するにあたって,リヒター氏が反省点として挙げたのは,テストを行うためのプログラムを開発する時間がなかったことだ。そのため,実際にマップ中を動き回り,手動でオブジェクトを破壊しながら確かめることになり,ゲームエンジンに変更が加えられるたびに繰り返さなければならなかったという。また,アセットのプロパティが多く,ネーミングが複雑化したため,タイプミスによってバグが発生したり,違う効果表現が行われたりといったこともあり,今後は統合型メタデータAPIの作成が必要になるだろうと話していた。

画像集#008のサムネイル/[GDC Summer]Remedy Entertainmentが「CONTROL」のプロシージャル型破壊効果の実装から学んだこと

 「CONTROL」は,日本ではPlayStation 4版がマーベラスより発売されており,2020年4月にDLC第1弾「THE FOUNDATION」がリリースされている。また,DLC第2弾となる「AWE」は,Remedy Entertainmentの過去作である「Alan Wake」シリーズとつながりが深いものになるという。「CONTROL」がヒット作になったことを受けて,PlayStation 5およびXbox Series X対応版も開発中だ。

「CONTROL」公式サイト


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