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「あんスタ!!」ストーリー紹介連載第8回。スカウト!ドールハウス,温故知新/継承の御前試合,スカウト!デッドエンドランド,新参!目覚めの暗夜行路を語る

 Happy Elementsのアイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!BasicMusic」のストーリーを紹介する記事の第8回は,「スカウト!ドールハウス」「温故知新/継承の御前試合」「スカウト!デッドエンドランド」「新参!目覚めの暗夜行路」の4本を取りあげる。

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 本記事では,“知っているとストーリーをより楽しめるポイント”の解説と,各イベントやスカウトの感想,考察をお届けする。記事内では詳細なネタバレは控えているが,できるだけ各ストーリーの読了後に読むのがおすすめだ。

「あんさんぶるスターズ!!Basic/Music」公式サイト

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ストーリーピックアップ
「スカウト!ドールハウス」

開催期間:2020年7月14日〜7月30日

――あらすじ――

 実家の八百屋の手伝いをしていた高峯 翠と,ESビルの入館証を失くしてしまった影片みかは,ひょんなことから大道具倉庫に閉じ込められてしまう。2人は大道具に囲まれて小さな人形になったような気持ちを味わいながら助けを待つが,倉庫は工事予定で人がなかなか訪れない。一方,翠の不在に気づいた守沢千秋は,青葉つむぎとともに彼らを捜索しようと動き出す。<全8話/シナリオ:西岡麻衣子(Happy Elements株式会社)>

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◆ストーリーのここをチェック!

ゆるキャラ好きの高峯 翠

 プロフィールの趣味に“ゆるキャラグッズ集め”とあるとおり,高峯 翠は無類のゆるキャラ好きである。彼とゆるキャラのふれあいの歴史としては,「!」の【出航!海上の海賊フェス】のキャプテン・喜怒哀楽や,【暗躍!月影の風雲絵巻】のはんぞうモン,【スカウト!苺狩り】の苺の妖精ベリーハッピーちゃんなど多数あり,ゆるキャラのおかげで仕事へのモチベーションがアップする場面も多かった。また彼は,絵がうまい蓮巳敬人や,“画伯”な伏見弓弦には一目置いている様子がある。

大吉に苦い思い出?

 本ストーリーで高峯 翠は「(明星スバルの飼い犬)大吉には苦い思い出がある」と語る。そして,影片みかに向かって「斎宮(宗)先輩が犬になったと思っているのでは?」と謎の発言をするが,これは,なぜか守沢千秋が大吉の姿になってしまったと思い込んだ翠の物語である「!」の【スカウト!十二支(前編)】を読むと意味が分かるだろう。千秋本人は登場しないものの,翠が普段は言えないような言葉をかけてやる姿は必見である。

「!」 【スカウト!十二支(前編)】より
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影片みかは軽い

 影片みかを肩車した翠は「そのまま走れそうなほど軽い」と言う。昨年度にみかは,青葉つむぎに「もう少し食べたほうがいい」と痩せすぎなことを心配されていたが,プロフィールによれば,みかは身長171cmで体重は54kg。筆者が計算したアイドルたちのBMI(体格指数)からすると,ぎりぎり“痩せ”に入るか入らないかというところである。余談だが,みかよりもBMI数値が低いESのアイドルは10人ほどおり,現時点で数値が低いTOP3は,HiMERU,桜河こはく,礼瀬マヨイと神崎颯馬である(※個人的な興味で調べました)。

「!」 青葉つむぎキャラクターストーリー「Black Swan」より
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「あのとき偽善者とか偽物って言われた」

 高峯 翠が流星隊について語るシーンで,「あのとき『偽善者』とか『偽物』と言われて,何も知らないやつに何でこんなことを言われるのかとムカついた」という言葉が出てくる。これはメインストーリー第四章で,天城燐音がステージで流星隊をバッシングしたことを指しているのだろう。本ストーリーでは,そのとき語られなかった翠の心情と現在の想いを聞けるわけだが,あの事件は一方の角度から見ただけでは分からない内情もあった。「あんスタ!!」という作品の面白さは,ものごとひとつとっても当事者たちのさまざまな想いが絡み合い,それぞれの視点での事実が後々紐解かれていくところにあるのでないかと思う。

青葉つむぎと影片みかの関係

 影片みかが“つむちゃん先輩”と呼ぶ青葉つむぎは,過去にみかとは少々複雑な関係にあった。昨年度,みかが所属するValkyrieは,つむぎが補佐をしていた天祥院英智の“革命”の影響によって失脚させられ,リーダーである斎宮 宗が表舞台を降りてしまったからだ。だが,2人が同じ手芸部であったことや,互いに思いやりの気持ちを持っていたことで,関係は大きく壊れなかったようである。

◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感

 本ストーリーは高峯 翠のモノローグが比較的多く,主に彼の視点で物語が進んでいく。彼は少々後ろ向きな性格で積極的に人に話しかけられるタイプではない。それなのに,ごく親しいわけではない人と密室に閉じ込められる……というのは,なかなかの試練だったかもしれない。

 だが彼は昨年度の経験をとおし,自分なりに成長しようとがんばっている。公式サイトのプロフィールにある「『先輩』になったんだから,しっかりしないと……」というセリフからも,それがよく伝わってくるように思う(余談だが,“流星隊”としてのイラストでも,時が経つにつれて彼の表情に変化が見られるところも胸アツだ)。とはいえ,人はいきなり「今日から100%ポジティブ思考です!」とはならないものだ。ストーリー中でも,助けを求める影片みかを救おうとする一方で,閉じ込められた状況に弱音を吐いてしまう。

 けれど,前述した「『偽善者』と言われてムカついた」という言葉には続きがあり,翠が口にしたのは「でも本当にムカつくのは……」という言葉だ。思えばいつもそうなのだが,彼が泣いたり落ち込んだりするのは,誰かにひどい目にあわされたからではなく,何もできなかった自分自身に対しての失望や後悔の気持ちからくることが多かった。そして今回,そんな彼の様子を見たみかは,翠にこんな言葉をかける。

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 「ヒーローもアイドルも同じで,信じて願えばゴールへの道ができる」。そして,いますぐ勝てなくてもいい,それも含めて子供たちは憧れるのだからと。

 みかは詳細な生い立ちが明らかにはなっていないが,決して恵まれた環境だったとは言えないはずだ。それでも彼は,いまでも自分のなかの神さまに未来の幸せを祈り続けているのかもしれない。押し付けるでも諭すでもなく,「自分も翠に助けられている」と言えるみかを見ていると,故郷でたくさんの子供たちに懐かれていたという姿が目に浮かぶ。そして翠もみかの想いを受け止め,前を向く気持ちを取り戻す。大道具に囲まれた小さな人形たちの物語のように,人知れずひっそりと紡がれた優しいストーリーだった。


ストーリーピックアップ
「温故知新/継承の御前試合」

開催期間:2020年7月15日〜7月24日(Basic)
     2020年7月15日〜7月23日(Music)


――あらすじ――

 かつての人気番組「ばんぱいあ将軍」が打ち切られることになり,番組のファンである蓮巳敬人はショックを受ける。一方,リズムリンクが開発しようとしていた“音楽特区”の治安が悪化しているという噂があり,ESによる再開発計画が持ち上がっていた。そんななか,新たに築かれたライブハウスの開店記念イベントとして,UNDEADと紅月が出演する【御前試合】が行われることになる。<全20話/シナリオ:日日日>

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◆ストーリーのここをチェック!

チェックしておくべき過去のストーリー

 「あんスタ!!」のストーリーは,過去に公開された物語を読んでおくとより深みが増すと思うが,今回の【御前試合】ではそれが極めて顕著だと感じたので,参考になる「!」のストーリーをまとめて挙げておきたい。

【追憶*それぞれのクロスロード】

 【御前試合】を楽しむにあたり,最も重要だと言えるのがこの【クロスロード】である。このストーリーでは,かつての夢ノ咲学院を改革しようとしていた蓮巳敬人と,敬人が助けを求めた幼馴染の朔間 零,そして敬人の思惑に対し零が出した答えが読み取れる。UNDEADの前身たる“デッドマンズ”の登場,乙狩アドニスと神崎颯馬の友情の始まりや紅月のメンバーの出会いの様子も描かれており必読だ。そして作中で言及されているとおり,【御前試合】には【クロスロード】とまったく同じメンバーが勢揃いしているが,【クロスロード】の頃にはまだUNDEADも紅月も存在していないのが面白い。

「!」 【追憶*それぞれのクロスロード】より
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【追憶*流星の篝火】

 これは蓮巳敬人の革命から天祥院英智の革命への流れ,そして紅月の結成当時に関わる重要な描写もあるため,ぜひ目をとおしておきたいところ。また,【御前試合】で敬人が神崎颯馬に「過去に傷つけてしまった」と語る場面があるが,これはおそらく,深海奏汰が関わっていた夢ノ咲学院内の非合法サークル【八百比丘尼】への関与を理由に,颯馬を紅月から追放しようとしたことではないかと思う。ちなみに,【御前試合】の終盤に出てくる【海神戦】とは,紅月と五奇人(奏汰)が対決するはずだったステージのことである。

「!」 【追憶*流星の篝火】より
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 このほかにおすすめしておきたいのは,乙狩アドニスの故郷や家族,彼の夢について理解が深まる「!」の【灼熱!南国景色とサマーバカンス】や,羽風 薫が育った厳格な家庭や家族との関係が垣間見える【スカウト!荒野のガンマン】など,挙げようと思えばまだまだたくさんある。

 さらに【御前試合】のなかで思い出される過去のストーリーは,零が弟の朔間凛月に怒られたという「!」の【コーラス★始まりのオペレッタ】や,零が薫に「恋愛について昨年のクリスマスに釘を刺した」という【キャロル*白雪と聖夜のスターライトフェスティバル】,鬼龍紅郎が三毛縞 斑に「時代劇っぽい振る舞いがうまい」と感じたという【躍進!夜明けを告げる維新ライブ】,まだカッチリと噛み合っていなかった頃のUNDEADが流星隊とライブで共演する【出航!海上の海賊フェス】,紅郎と南雲鉄虎による“空手部版・返礼祭”とでもいうべき【スカウト!拳闘の四獣】,零が言う「昨年度ずっとやっていた『サガ計画』」が描かれた【Saga*かけ上がるレインボーステージ】【Saga*ぶつかり合うリバースライブ】など枚挙にいとまがない。

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UNDEADというユニット

 詳しくは先ほど挙げた「!」の【追憶*それぞれのクロスロード】【生け贄◆不死者たちの復活祭】で語られているが,UNDEADはデッドマンズというユニットから始まっている。デッドマンズは蓮巳敬人が結成したユニットで,朔間 零と大神晃牙,さらに助っ人で鬼龍紅郎が参加していた。だが,あるライブを最後にユニットは解体され,海外へ渡った零を待ち続けていた大神晃牙がデッドマンズをUNDEADに変え,現在のメンバー構成となって“復活”した。なお,デッドマンズは「!」の【衝突!思い還しの返礼祭】などで再登場している。

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紅月というユニット

 デッドマンズは蓮巳敬人が作り,鬼龍紅郎も参加していたユニットなので,ある意味で紅月も“デッドマンズが前身”と言ってもいいかもしれない。紅月は敬人と紅郎の2人で始まり,加入試験に合格した神崎颯馬があとから加わった形である。紅月の結成当初の話としては,【追憶*それぞれのクロスロード】【追憶*流星の篝火】,そして【躍進!夜明けを告げる維新ライブ】などに描写がある。紅月は当初,敬人が「天祥院英智の願いを叶えるために結成した」ユニットであったが,その後にあり方を変え,“血よりも濃い絆”で結ばれたユニットとなった。

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◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感

 上記のチェックポイントを読んでいただければ分かるように,本ストーリーはある意味で“【追憶*それぞれのクロスロード】のその後”を描く物語であり,作中に出てくる「過去の地層の上で最新の舞を踏もう」という言葉どおりの快作である。

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 今回はUNDEADと紅月が登場するイベントであり,メンバーそれぞれの見せ場もあるのだが,ここでは蓮巳敬人と朔間 零の関係性に絞って書いていこう。

 幼い頃からのつながりがあった敬人と零。彼らは“寺の息子”自称“吸血鬼”という,極端に言ってしまえば「祓魔師と魔物」(敬人は仏教徒だが)とでも表現できる真逆の性質を持ちながら,友情を育んできた。だがそのつながりはいつしか薄れ,夢ノ咲学院でまた交わり,そして再び離れていく。お互いにかけがえのない仲間を見つけた現在の2人は,おだやかな関係を手に入れたと言っていいかと思うが,この【御前試合】をきっかけに,それはまた熱を持つ。

 敬人はかつて「主役じゃなくていい,そんな器じゃない。けれど,素晴らしい物語の登場人物になりたかった」(「!」【追憶*それぞれのクロスロード】より)と話していた。子供から青年に成長した彼は,自らが舞台の真ん中に立つのではなく,中心で輝く存在を一番近くで見たいという願いを持つようになったのかもしれない。余談だが,敬人と同じく天祥院英智の“片腕”である日々樹 渉も,「私は主役と交歓したいんです。私と同じ立場の,他者とね」(「!」【奇跡☆決勝戦のウインターライブ】より)と言っていたのが興味深い。
 一方の零は,【追憶*それぞれのクロスロード】「自分が主体だと民主的にならない」と言っていたとおり,自らが望むと望まざるとにかかわらず,“主役”になってしまう人物である。そういう意味でも,敬人と零は非常に対照的だ。

 だが,彼らはお互いに向けて「なぜ俺だけは駄目だったんだ?」と口にする。これは「なぜ助けてくれなかったのか?」という言葉と同じ意味を持つと筆者は解釈している。敬人にとっては革命に手を貸してもらうこと,零にとっては自らの存在を救ってもらうこと(“こちら側”に来てもらうこと)だったという意図の違いはあると思うが。
 零がデッドマンズから抜けたことは,当時の敬人にとっては“裏切り”とも取れる行為だった。零の立場に立って考えれば理由はそれだけではなかったのもよく分かるのだが,敬人を傷つけた事実は零の心にもずっと残っていたのだろう。傷つけられた側はもちろんだが,傷つけてしまった側も心に深い傷を負うからだ。だからこそ,零は敬人に罪滅ぼしをしたかったのかもしれない。

 そしてその罪滅ぼしが,「ところがどっこい☆」から展開された【御前試合】での徳川綱吉の復活ではないだろうか。当初の脚本にはない展開に狼狽し腹を立てる敬人に(何度も言われているが,敬人は予期せぬ展開に弱い),零はこう言うのである。

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 これを読んだ筆者は思った。ああこれは,「!」の【決別!思い出と喧嘩祭】で,英智が敬人に言ったこのセリフと同じじゃないか,と。

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 敬人にとっての“主役”が求めるのは,ほかの誰でもない敬人その人なのだ。零の言葉も,英智の言葉も,子供の頃からずっと「立場や肩書に関係なく友達でいてくれた」敬人に対する“愛情”以外のなにものでもない。彼らの言葉によって,敬人は「愛すべき物語の登場人物になりたかった」という願いを叶えたと言えるのではないだろうか。そしてこの願いが叶ったのも,彼らが愛する仲間を得て心を満たし,ようやく過去に向き合うことができたからなのかもしれない。

 繰り返しになるが,本ストーリーは作中に出てくる【御前試合】ステージと同じように,積み重ねられた過去の地層(ステージにおいてはドラマ「ばんぱいあ将軍」)を知っているほど,感動を呼ぶのではないかと思う。多くの人が,この痛快なステージと温故知新の物語を楽しんでいることを願う。

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ストーリーピックアップ
「スカウト!デッドエンドランド」

開催期間:2020年7月30日〜8月14日

――あらすじ――

 忍者同好会を忍者部にするべく活動に励む仙石 忍と礼瀬マヨイは,プロデューサーから「デッドエンドカフェ」の手伝いを依頼される。同じく依頼を受けていた演劇部の真白友也と日々樹 渉とともに接客をするが,人混みが苦手なマヨイは具合が悪くなってしまい……。<全9話/シナリオ:木野誠太郎(Happy Elements株式会社)>

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仙石 忍が受け継いだ「目安箱」

 物語の冒頭,仙石 忍と礼瀬マヨイは忍者同好会の活動として「目安箱」に投函された依頼を確認する。この目安箱は忍が言っているとおり,流星隊の活動の一貫で昨年度に守沢千秋が夢ノ咲学院内に設置したものである。当時は生徒たちの悩み相談をSNSで連載して好評だったそうだ。この目安箱を忍が受け継いだ事実に感動した人も多かったのではないだろうか。

「!」守沢千秋キャラクターストーリー「ナイトウォッチ」より
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「怪人」と呼ばれる礼瀬マヨイ

 仙石 忍に「『忍者』は『怪人』よりもずっと好ましい」と語る礼瀬マヨイ。彼はメインストーリーでも逆先夏目や三毛縞 斑などに“怪人”と呼ばれており,斑が言うには,「ESには七不思議のような『怪人』の噂がある」らしい。彼が怪人と呼ばれるのは,いつも物陰に隠れているというだけではないと思われるのだが……。

メインストーリー第三章より
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演劇部の“女装”といえば真白友也?

 演劇部の真白友也と日々樹 渉とともに「デッドエンドカフェ」の手伝いをすることになった仙石 忍と礼瀬マヨイ。カフェの給仕には専用の衣装がありメイクも必要だったようだが,その流れで忍は「演劇部のように女装はできないけど」と話す。演劇部で女装とくれば,思い出されるのは友也だ。昨年度は部長である渉に執拗なまでに追いかけられ,さまざまな女装をさせられていたのである(「!」の【スカウト!薔薇十字物語】【なりきれ!灰かぶりの大舞台】など)。

「!」【スカウト!薔薇十字物語】より
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髪の毛を自在に動かす日々樹 渉

 上記のあらすじにあるスチルイラストからも分かるように,日々樹 渉は髪の毛を自在に操ってさまざまなことができるらしい。一体どうなっているの!? と思ってしまうところだが,彼はどちらかというと「手品にはタネがある」と言うタイプなので,これも理論的に説明できる仕組みがあるのかもしれない……。ちなみに彼は夢ノ咲学院卒業後,氷鷹北斗の母が看板女優を務める劇団に入団しており,本ストーリーで「(氷鷹)北斗の母に課せられた極限の入団試験」と話すが,その入団試験後の様子はぜひ下記の画像を参照されたい。

「!」【Link♪ここから始まるシンフォニア】より
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◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感

 礼瀬マヨイと日々樹 渉は今回のスカウトにおける高レアリティのカードだが,作中で渉が「あなた(マヨイ)と私,意外と気が合うと思うんですよ」と言っていたとおり,この2人はなんとなく“絵的にしっくりくる”感じがする。やはり“怪人”“道化の奇人”ということで,どことなくイメージが似ているからだろうか(表に見える性格的なところはだいぶ異なっているようだが)。

 マヨイは新しく登場したばかりのキャラクターなので,まだ情報が少ない。しかし,これまでのストーリーを読んでいると,とても優しく思いやりのある心を持っているものの,アイドルとしての能力ではなく,存在そのものを自己否定する傾向が強く感じられる。本ストーリーでは,人の視線が苦手なマヨイが現場から逃げ出してしまい,「愛する人のためなら失望されてもいい」とまで思いつめてしまう。彼はモノローグが多いタイプなので心情が手にとるように分かり,読んでいるこちらの胸まで苦しくなる。

 一方の渉は逆で,モノローグが極端に少ないキャラクターだ。そんな彼の生い立ちがほんの少しだけ明かされたのが,本ストーリーで活躍する真白友也も登場した「!」の【対決!華麗なる怪盗VS探偵団】だった。渉は本当の気持ちや自分に関する話をほとんどしないが,友也に助言を与えたその話しかり,本作しかり,Ra*bitsの結成しかり,大事なところでそっと誰かの背中を押してやることが多いように思う。最終的には本人や本人に最も近い存在にその後を任せるところがいい。

 行き場をなくして沈みきってしまったマヨイは,自らを「与えられた愛に殉じた『オペラ座の怪人』」に例える。あの物語のファントムは,本当の愛を知ったのち,ふたたび孤独の身となってしまう。けれど本作では,忍がマヨイにこんな言葉をかけるのだ。

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 怪人のいる壁に囲まれた小部屋は決して行き止まりではなく,死して物語を終える必要もない。それを乗り越えれば,その向こうにはみんなが待っているのだと。

 怯えながらも手を引かれ,明るいところへ出てきたマヨイ。彼のアイドルとしての活動は始まったばかりではあるけれど,願わくは,彼らしさを失うことなく成長していってほしいと思う。その繊細な心がいつか,愛と喜びでいっぱいに満たされる日が来るのを祈りたい。


ストーリーピックアップ
「新参!目覚めの暗夜行路」

開催期間:2020年7月31日〜8月9日(Basic)
     2020年7月31日〜8月8日(Music)


――あらすじ――

 ある依頼を受け,月永レオを調査していた桜河こはく。レオに近づくこはくに気づいた三毛縞 斑は,こはくにその意図を問いただす。黒幕は悪評高い業界の大物だと判明し,2人は協力しあうことになる。そして彼らは,ユニット“Double Face”として出演した【マーブルキャスト】ステージで,黒幕の制裁へと動き出す。<全23話/シナリオ:日日日>

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◆ストーリーのここをチェック!

Double Faceというユニット

 本ストーリーで初お披露目となった新ユニット,Double Face。といってもユニット名だけは,先ほど紹介した【温故知新/継承の御前試合】に登場している。なお【暗夜行路】は夏,【御前試合】は春から秋にかけてのストーリーである。以下でメンバーについて補足する。

三毛縞 斑

 本ストーリーのメイン,Double Faceのメンバーである三毛縞 斑は,唯一のソロユニット・MaMとして「あんスタ!」の世界に現れた。初登場は「!」の【花吹雪*皐月の藤紫】で,本ストーリーでの「(仙石)忍を攫った」という話はこのときのものである。また,同じく斑の両親の話や「ニューディの所長とは前からの知り合い」と言及されているのは「!」の【追憶*流星の篝火】にて,「無垢な女の子を騙している」という言葉の真相は「!」の【躍進!夜明けを告げる維新ライブ】で語られている。このほか,彼についてより理解を深めるためには,月永レオとの関係が描かれている「!」の【スカウト!コンチェルト】を,深海奏汰とのつながりについては【追憶*流星の篝火】のほか【ドロップ*遠い海とアクアリウム】なども参考になるだろう。

「!」【スカウト!コンチェルト】より
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桜河こはく

 桜河こはくはKnightsの朱桜 司の実家である朱桜家の分家出身で,司を「坊」と呼び,桜河家は朱桜家のために力を尽くしてきた一族であることが語られている。とはいえ司も一方的に守られているわけではなく,何かとこはくを気にかけている様子も描写されており,メインストーリー第五章では司がこはくを“監禁”(?)する事件もあった。こはくの所属するCrazy:Bとの関係やメンバーの人間性は,メインストーリーのほか【スカウト!ハニービー】なども参考になる。

メインストーリー第五章より
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名前を呼んではいけないあのひと

 本ストーリーで「名前を呼んではいけないあのひと」と呼ばれた,アイドル業界の“ゴッドファーザー”。これまでの記事でも何度か触れてきたが,今は亡き彼の存在がストーリーで初めて触れられたのは,「!」の【軌跡★電撃戦のオータムライブ】である。ゴッドファーザーは「原始のスーパーアイドル」とも呼ばれ,引退後は権力者として業界を支配した人物であり,乱 凪砂の養父でもある。さらには七種 茨と血縁関係にあることが「!」の【奇跡☆決勝戦のウインターライブ】で明かされ,その後の【Saga*かけ上がるレインボーステージ】にて,夢ノ咲学院の教師で元スーパーアイドルの佐賀美 陣により,原始のアイドルから始まる壮大な“アイドル史”が語られた。

神崎颯馬の「ちぇすと〜!」

 常に本物の日本刀を持ち歩いている神崎颯馬は,本ストーリーで「【喧嘩祭】の際に考えなしの感情任せで武力を振るってしまった」と語っているが,これは「!」の【決別!思い出と喧嘩祭】で,天祥院英智が蓮巳敬人に紅月の解散を言い渡したと聞き,単身で英智を討ちにいったことを指している。アイドルでありながら武士たる颯馬は物騒なイメージを持たれがちだが,作中でレオが「爽やかなやつ!」と言うとおり,彼は磨き上げられた刀のように美しく純粋な人なのである。彼の斑に対する想いは,(家柄もあって)颯馬が深く尊敬する深海奏汰をとおしてのものであり,そのあたりはぜひ前述の【花吹雪*皐月の藤紫】【追憶*流星の篝火】などを読んでもらうと理解が深まると思う。

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人を嫌いになれない月永レオ

 本作で,ゴッドファーザーの後継者を騙る悪人に利用されていることが分かった月永レオ。Double Faceの2人は悪人を成敗するために動きだすが,レオはそれを知ってもなおその黒幕を,「仕事相手としては尊敬している」と言う。こうした「誰かのことを簡単に好きになって友達になる,そうなると何があっても嫌えない」というレオの資質は,Knightsの過去ストーリーである「!」の【追憶*モノクロのチェックメイト】などを読むとよく理解できるだろう。また,今作で彼は【ジャッジメント】のステージ(「!」の【反逆!王の騎行】)のあと,復帰したものの感覚が取り戻せず駄目になっていた時期があると言っていたが,この頃のストーリーには「!」の【スカウト!ロビンフッド】などがある。

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登場しないものの,存在感があるキャラクター

 本ストーリーには,(名前のみで)登場こそしないものの,非常に存在感があるキャラクターが何人かいる。筆者が思うその人物とは,Knightsの朱桜 司,流星隊の守沢千秋と深海奏汰,fineの天祥院英智だ。
 司は先ほど述べたとおり,こはくとのつながりが非常に強い。こはくは生まれたときから「朱桜家に仕える桜河家の人間」であり,それは彼がアイドルである前の絶対的な事実だ。その生き様を理解するためにも,司について知ることは有益だろう。

 守沢千秋と深海奏汰については,本作で三毛縞 斑が「(【MDM】のステージを見て)自分もあんなふうになりたかった。羨ましかった」と語る。彼ら3人の関係は,何度も挙げてしまうが「!」の【追憶*流星の篝火】に詳しい。
 そして,月永レオが「テンシ」と呼ぶ天祥院英智。そう名付けた瞬間は,こちらも先ほど挙げた「!」の【追憶*モノクロのチェックメイト】で確認できる。英智は昨年度の一連の革命に関わり,今年度から始まったESの発起人でもあるので,あらゆる場面でその存在を感じることは多い。


◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感

 本ストーリーはユニットの新たな楽曲が披露される“箱イベ”だが,「あんスタ!!」では初となる新ユニットの登場,とはいえキャラクターは既存のアイドル(なのでプレイヤーはその人となりをある程度知っている)という面白い傾向のストーリーだ。

 ここでは、主に三毛縞 斑について語っていこう。ご存じのとおり,彼はESにおいて唯一のソロユニットだ。これはかなり特殊なケースで,昨年度の夢ノ咲学院においても,蓮巳敬人が「例外措置であり扱いには困っている」(「!」【スカウト!コンチェルト】より)と語っていた。なお,斑はかつて“流星パープル”として流星隊に所属しており,“流星ブルー”となった深海奏汰と入れ替わるようにしてユニットを脱退し,以来ソロでの活動を続けている。

 そして月永レオとは一昨年度,「お互いに気になっていて声をかけて仲良くなった」ことが「!」の【追憶*モノクロのチェックメイト】で明かされていた。レオと斑の関係は本作において非常に重要な要素となるが,何があっても自分を好きでい続けてくれるレオは,「昔からどこにも馴染めず邪魔になる」「デカくて怖いからか警戒される」斑にとって,かけがえのない大切な親友なのだろう。

 警察組織と反社会勢力という相反する肩書の両親を持つ斑は,言ってしまえば生まれながらにして「普通の生き方」はできないと決められていたのかもしれない。けれど,彼は持ち前の“やろうと思えばなんでもできてしまう”天性の能力で,ときに両親の力を借りつつ,さまざまな人助けをしてきた。彼を見ていると,人間が大好きだが,姿を表すと怖がられてしまう怪物が,人知れず陰で人間のために何かをする姿を想像してしまう。人に例えばそれはまさに“アンチヒーロー”だ。

 あくまでも筆者の感想だが,本ストーリー(というよりDouble Faceというユニットそのもの)は,始まりはこはくの行動や思惑によるものだったが,“斑の救済”という意味合いを強く感じる。実際のところ,こはくにはCrazy:Bという“戻る家”――いや,巣箱と言ったほうがいいかもしれない――があるが,斑にはそれがないのだ。家族とも距離を置き,ずっと1人で活動してきた斑。だからこそ終盤のこれらのセリフには,涙が出てきてしまった。

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 それは斑が子供の頃に憧れていた“光のなかのヒーロー”ではないかもしれないし,仲間と一緒に高いところを目指そうと手を取り合うわけでもないのかもしれない。けれど,ぶつかれば簡単に相手を壊せてしまう斑に,「気を抜いてミスしたら自分が対処するから安心してやれ」と,一緒に汚れてくれて,地獄に落ちる覚悟がある者がそばにいてくれるということなのだ。

 正義の味方どころか“ちょっとマシな悪党”たちは,いろいろな意味でスレスレのことをする。それでもこはくが言うように,彼らは「自分たちが汚れることで,綺麗に健全に生きていける誰かがいる」「その美しい羽ばたきを心の慰めと矜持にして,歯を食いしばって生きる」と言う。彼らはアイドルとして輝くステージで笑顔を振りまき,もう1つの顔で悪人たちを漆黒の闇に消し去る。2つの顔を持つ彼らは,いつか本当に地獄に落ちるのだろうか。それでもやはり,安息が彼らの心を満たすことを願ってやまない。

 余談だが,先日公開したインタビューにて,Double Faceは臨時ユニットではなく,今後も活動を継続していくと明言されていた。彼らの活躍――いや,暗躍を,これからも大いに期待したい。

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 第9回の記事もお楽しみに!

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 2020年3月に「あんさんぶるスターズ!」から生まれ変わり,新たなスタートを切った「あんさんぶるスターズ!!」は,同年4月に配信5周年を迎えてもなお,その勢いが衰えることはなく圧倒的な人気をキープし続けている。制作陣へインタビューする機会を得たので,その模様をお届けしよう。

[2020/07/29 12:00]

■たまお(ライター)■

 エンタメ系フリーライター。音楽・ゲーム業界などでの社会人生活を経て,作品やキャラの素晴らしさを文章で伝えるためにライターへ転向。現在4Gamerにて「あんさんぶるスターズ!!」のストーリー解説記事を連載中。このほか追いかけ中のタイトルは「アルゴナビス」「スタマイ」「ツイステ」「ヒプマイ」「パラライ」「刀剣乱舞」「A3!」「まほやく」「ブラスタ」など。

Twitter(@tamao_writer)


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