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リズム×アクションアドベンチャー「No Straight Roads」プレイレポート。目で見るな,耳と身体で感じろ!
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印刷2020/09/01 00:00

プレイレポート

リズム×アクションアドベンチャー「No Straight Roads」プレイレポート。目で見るな,耳と身体で感じろ!

 マレーシアのクアラルンプールを拠点とするMETRONOMIKの新作「No Straight Roads」PC / PS4 / Nintendo Switch / Xbox One)が,2020年8月27日にリリースされた。リズム要素を取り入れた,ポップな3Dアクションアドベンチャーだ。

画像集#001のサムネイル/リズム×アクションアドベンチャー「No Straight Roads」プレイレポート。目で見るな,耳と身体で感じろ!

 METRONOMIKは,「FINAL FANTASY XV」のリードゲームデザイナーを務めたWan Hazmer(ワン・ハズメー)氏と「ストリートファイターV」のコンセプトアーティストであったDaim Dziauddin(ダイム・ゼィアウディン)氏が中心となって立ち上げたデベロッパだ。

 淡々とステージのハイスコアクリアを目指すのではなく,主人公を中心としたユニークなキャラたちによって繰り広げられるストーリ仕立てになっている「No Straight Roads」。日本語版では,主人公キャラに豪華声優陣によるフルボイスも用意されるなど,ローカライズにも力が入っている。
 本稿では,PC向けの製品版とほぼ同等のバージョンをプレイできたので,その感触をお伝えしよう。

※記事にはネタバレが含まれるので,まだクリアしていない人やこれからプレイする人は,その点を了承のうえで読み進めてほしい


音楽が電力に変換される世界で繰り広げられる

EDMとロックのバトルストーリー


 本作の舞台となるのは,主人公たちが生活するビニールシティ。そこは巨大なEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)レーベル「NSR」に支配されている。いくら巨大とはいえ,いち音楽レーベルが街を支配できている理由は,この世界が「電力が音楽から生成される」という,なんとも夢のあるシステムで支えられているから。NSRの力によって音楽が効率よくエネルギーに変換できるようになったために,ビニールシティは豊かな街へと生まれ変わったようである。

「ビニール(vinyl)」はアナログレコードの意味で使われることもある。ビニールシティも,音楽とゆかりが深い街かもしれない。タイトルの「No Straight Roads」に由来すると思われる名を持つ組織NSRは,ビニールシティで主人公たちとどのように関わってくるのだろうか?
画像集#002のサムネイル/リズム×アクションアドベンチャー「No Straight Roads」プレイレポート。目で見るな,耳と身体で感じろ!

 主人公となるギタリストのメイデイ(CV:佐倉綾音さん)とドラマーのズーク(CV:福山潤さん)はインディーロックデュオ「バンク・ベッド・ジャンクション」のメンバーだ。

直情径行型で不思議と人を惹き付ける魅力を持ったメイデイ(右)と,その抑え役かつ冷静沈着でインテリのズーク(左)
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 ロックとビニールシティへの愛にあふれたこの2人組が,NSRの主催するオーディションに参加するところから物語はスタートする。2人とも確かな手応えが得たものの,結果はまさかの落選。

オーディションがチュートリアルになっている。基本操作はここで覚えよう
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クル・ファイラは,メイデイが憧れる伝説のギタリストだ
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イギリス発の人気オーディション番組を知っている人なら,ニヤリとしてしまうシーン
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 審査員からのロックに対する強い否定に肩を落としながら帰途につく2人だったが,道すがらNSRの審査の不正とシティに対する裏切りを目にすることに。EDMに支配されたシティに音楽の自由を取り戻そうと,ロックミュージックを武器に巨大組織NSRに立ち向かっていくことになるのだ。

画像集#007のサムネイル/リズム×アクションアドベンチャー「No Straight Roads」プレイレポート。目で見るな,耳と身体で感じろ!

NSRの裏の顔を知って,メイデイとズークは戦うことを決意する
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秩序を乱すもののとしてロックを排斥しようとするNSRのビッグボス,CEOのタティアナ。彼女がロックを強く嫌悪する理由とは?
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クリアのカギは注意深く「聴く」こと

ビートに乗ったアクションでステージをジャック


操作方法はこちら。PC版では,キーボードでもゲームパッドでも操作可能
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 そんなこんなでプレイヤーが向かうのは,ビニールシティ内の主要エリアを支配する,NSRお抱えのビッグアーティストたち+αが待ち受けるステージだ。
 勝負はもちろん普通の戦闘ではなく「音楽で!」となるわけだが,「No Straight Roads」のバトルは,いわゆる音ゲーとは大きく異なった作りになっている。

 それもそのはず,開発陣は本作について「DARK SOULS」シリーズにインスパイアされたことを明かしていて,ベースになっているのは三人称視点3Dアクションだ。
 非常に個性的なボスキャラと,そのボスの個性を映し出したステージから繰り出される攻撃をジャンプやドッジロール(ローリング)で避けたり,合間を縫ってプロップ(小道具)を起動して攻撃したり,特殊攻撃をパリィで弾き返したり,といった感じで戦っていくスタイルになっている。

クラブ・プラネタリウムのボス,DJサブアトミック・スーパーノヴァのステージは,ターンテーブルと銀河系が組み合わさったかのような場所。画面左上にあるのが2人のプレイヤーキャラのHPバー(キャラアイコンの右)とエナジーバー(キャラアイコンの左),右上は敵のHPバー
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プロップ(メトロノームがついているオブジェクト)は,近くで演奏ボタンを長押しすると武器や道具などに変形し,プレイヤーをサポートしてくれる。これはロケットミサイルをボスに向けて発射するところ。プレイヤーが回避中,代わりに攻撃してくれるタレットなども存在する
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神童ピアニスト,ユィヌのステージで登場する怖い顔のボス。敵側のオブジェクトからドロップする小さな白い音符はストックでき,遠隔攻撃用の弾丸として利用する
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 ただの三人称視点3Dアクションではなく,バトルを「No Straight Roads」たらしめているのが“ビート”というスパイスだ。ビニールシティでは,すべてが音と一体化していて,それは敵だけでなくプレイヤーのアクションにも当てはまる。そして,その音こそが,本作のバトルを有利に運んでいくためのカギとなっているのである。

 大抵の3Dアクションゲームの場合,防御すべきか,攻撃すべきかを判断するには,敵のモーションやエフェクトをよく見ることが必要だ。「No Straight Roads」の場合は,それに加えて,注意深く“聴く”ことも重要になる。
 見た目にも予測しやすいモーションをとってくれる敵が多い序盤はまだいいものの,極彩色のステージの中,見ているだけでは分かりにくい,気付きにくい攻撃が次第に増えてくる。また,移動するオブジェクトに飛び移るときも,動きだけを見ているとタイミングが掴みづらい場合がある。

アクスカ地区の支配者サユのステージトラックは日本語の歌詞付きで,聴いているだけでも楽しい。彼女はここからあと2回変身するデジタルアイドル。そのうちVTuberたちも,こんな進化を遂げるかも?
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変身後のサユステージは,ファンのサイリウムの影響でよりサイケデリックに。“見る”だけで対処しようとするとなかなか難しい
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 そんなときにプレイヤーにとって頼れる武器になるのが聴覚。多様なステージトラックのビートに合わせてアクションボタンを押すことが,基本の移動や攻撃,効率的・効果的な回避や反撃につながっていくのだ。

マルチアーティストの歌姫イヴ。過去にズークとは何かあったようだ。カットシーンのアニメーションは表情を含めて全般的にクルクルとよく動く
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イヴのステージはアートギャラリー。彼女に限らず,紫色の攻撃はパリィで弾き返すことができる。「DARK SOULS」シリーズほどのシビアさはないので,トラックを注意深く聴いて,ビートにタイミングを合わせよう!
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クリア後に広がる遊びの要素:A面

拠点アンロックでプレイがより快適に


 本作には,ボスを倒していくことで,徐々にアンロックされていくコンテンツもある。各ステージのバトルは,たとえ負けてしまっても,そのままコンティニューが可能なため(代わりにスコアランクは低くなる),メインストーリーをクリアすること自体はさほど難しくはないだろう。むしろアンロックされてからが本番とでも言わんばかりのカジュアルさだ。

 最初のボスステージをクリアすると開放されるのは,下水道にあるメイデイとズークのホーム。戦利品を飾ったりできる「リラックスルーム」,敵の情報が分かる「地下戦略室」,バフやスペシャルムーブなどを管理できる「ズークのワークショップ」,スキルツリーを調整できる「地下ライブハウス」,ファンを増やすための「海賊放送スタジオ」,などといった部屋が,段階を追って開かれていく。

「ズークのワークショップ」画面。「ステッカー」を楽器に貼り付けると,バフ(例えばダメージアップなど)を得られる。「モッド」は各キャラの特性を生かしたスペシャルムーブ(特殊アクション),アルティメットデュエットは2人で繰り出す超必殺技のようなもの。いずれも複数の中から,敵に合わせて都度チョイスできる
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「エリパッド」が開放されると,各ステージまで一気にジャンプできるようになり,移動がとてもスムーズに
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 スキルツリーとファンついて,もう少し詳しく説明しよう。
 シングルプレイでは,キャラを切り替えながらストーリーやバトルを進めることができる。休憩中のキャラはHPが回復していくため,体力が心許なくなってきたら,もう一方のキャラに切り替えるといった戦い方が基本になるのだが,慣れてきたら場面によってキャラを使い分けるのもいい。というのも,元気なギタリストのメイデイ,冷静なドラマーのズークというキャラ設定が,それぞれの持つスキルツリーにも生かされているからだ。

 メイデイは重い一撃を放つアタッカー。ズークは攻撃力こそメイデイに劣るものの,素早い打ち込みとキャンセルも可能なコンボの達人という特性を持つ。「地下ライブハウス」では,そんな特性に基づいた各々のスキルを伸ばしていける。例えば,メイデイなら強力な攻撃が出やすくなり,ズークならコンボの数が増えていく,といった具合だ。トラックに合わせて,どのキャラを使うとどんなビートにノリやすいのか探ってみるのも,自分の得手不得手の傾向が分かって面白いかもしれない。

メイデイとズークの個別スキルに加えて,バンド自体のスキルツリーもある。ダブルジャンプなど,より戦いやすくなるような技が多い印象
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 これらのスキルツリーの拡張に必要なのが,ファンのパワーだ。ファンの数は,NSRの目を忍んで海賊放送に出演したり,シティで不具合が起こっているマシンにミニクワサと呼ばれるエネルギー源(電池のようなもの)を供給したりすることでも増えていくが,手っ取り早く増やすなら,より高いスコアでステージをクリアするのがいい。
 なので,クリア済みのステージでも,新しいスキルを開放したり試したりと,快適なプレイを求めて繰り返し挑んでしまいたくなるはずだ。満足のいかないスコアでクリアしてしまったボスならなおさらだろう。

最初は大抵のビートからズレていた筆者も,内なる謎のスキルツリーを開放して,がんばりました
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クリア後に広がる遊びの要素:B面

難度と組み合わせて繰り返し楽しめるアレンジトラック


 「ロックでEDMに革命を起こす」

 そのテーマを見たとき,ロックもEDMも好きな筆者としては,どちらかのジャンルに優劣をつけるような要素が作品内で出てくるのではないかと,少し構えてプレイを始めてしまった。しかし,その点において本作は,うまくバランスをとっていると感じた。
 EDM陣営のボスは,これまでスクリーンショットで紹介してきたように,主人公たち以上に個性的で憎めないキャラばかりだし,彼らのステージトラックは普通にかっこいい。面白いのは,バトル中にトラックのミックスが自然にシフトするところだ。開始直後はEDM調だったトラックが,プレイヤー側が要所でアクションを起こすとアクセントとしてギター音が上乗せされたり,バトルの状況によってトラック自体がシームレスにロック調へと変化したりするのである。

ロボットの男性(?)アイドルグループ「1010」(テンテン)の戦艦ステージ。プレイヤー側が優勢になると中央上のゲージがロック寄りに。エネルギーゲージが回復するだけでなく,トラックにも変化が現れるようになる
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個性的でインパクトのあるボスのアクションや各種サウンドは,見ていても聴いていても飽きない
画像集#026のサムネイル/リズム×アクションアドベンチャー「No Straight Roads」プレイレポート。目で見るな,耳と身体で感じろ!

 著名なコンポーザーたちによって生み出され,オーディオと名のつく幾つかのアワードを獲得している本作のステージトラックは,ディスコ,キュートコア,ラップ,ネオクラシカル,ファンキーハウス,サイケデリックダブなどといったジャンルが揃っている。そのどれもが,EDMミックスになっても,ロックミックスになっても心地良く,いい意味で耳に残るサウンドばかり。
 クリア後は,各種難度と組み合わせてミックス選択もできるようになっており,そこには作り手側のトラックへの自信と,徐々に開放されていくスキルをあれこれセットしながら,さまざまなモードで繰り返し遊んでほしいという想いが見え隠れする。そして,ついついプレイしてみたいという衝動に駆られてしまったのなら,それはきっと「No Straight Roads」にハマってしまったということなのだ。

 気になる人は,SpotifyやAWAにて,ミニ・オリジナル・サウンドトラックが公開されているので,この機会にぜひ聴いてほしい。筆者もヘビロテ中だ。


 「No Straight Roads」を,プレイヤーが主体となって演奏する一般的な音ゲーとしてプレイしてしまうと,求めていた爽快感ではないこと,ややクセのある操作タイミング,パッと見では分かりにくい映像表現などに違和感や戸惑いを覚えてしまうかもしれない。

3Dアクションではないラップバトルのステージも途中で出現する
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 でも,その感覚は恐らく正しく,ある意味で開発者たちが意図するところだろう。ストーリー,ビートアクション,ユニークなキャラとサウンドを融合させた本作が目指したのは,これまでにない体験だ。
 ハイスピードで流れてくるノーツにシビアなタイミングで向き合うスタイルになりがちな音ゲーとは切り離された世界。万人がビートに身体を委ねられるようなジャンルを新たに生み出そうと模索する姿が,そこからはうかがえた。
 本作をプレイすると,普段いかに目に頼ってゲームをしていたか,ということにもまた気付くはず。たまには意識の大半を「耳」に傾け,ときには全身でビートを感じながらゲームを楽しむという感覚も,またいいものである。

ストーリーの結末は自身の目と耳で確かめてほしい
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