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[CEDEC+KYUSHU]フロムゲーの硬派な背景やキャラは,どのように作られているのか。グラフィックス制作における実例の数々が紹介された
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印刷2021/12/06 19:09

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[CEDEC+KYUSHU]フロムゲーの硬派な背景やキャラは,どのように作られているのか。グラフィックス制作における実例の数々が紹介された

 ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC KYUSHU 2021 ONLINE」の初日となる2021年11月27日,「フロム・ソフトウェアのゲームグラフィックス制作の拘り」と題された講演が行われた。

画像集#001のサムネイル/[CEDEC+KYUSHU]フロムゲーの硬派な背景やキャラは,どのように作られているのか。グラフィックス制作における実例の数々が紹介された

 フロム・ソフトウェアは「DARK SOULS」シリーズをはじめ,「Bloodborne」「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」,そして最新作となる「ELDEN RING」PC / PS5 / Xbox Series X / PS4 / Xbox One)などを手掛けている。これらのタイトルに共通するリアルさ,硬派さは,多くのプレイヤーにとって強く印象に残っているだろう。

 そういったイメージづくりに大きく貢献しているのが,ゲーム内の「背景」「キャラクター」のグラフィックスである。
 今回の講演では,フロム・ソフトウェアで背景やキャラクターを制作するスタッフから,実際の作業の流れや,作業時にこだわっている部分などが,タイトルの事例を交えつつ紹介された。フロムゲー好きの読者は,ぜひ一読してほしい。

画像集#002のサムネイル/[CEDEC+KYUSHU]フロムゲーの硬派な背景やキャラは,どのように作られているのか。グラフィックス制作における実例の数々が紹介された 画像集#003のサムネイル/[CEDEC+KYUSHU]フロムゲーの硬派な背景やキャラは,どのように作られているのか。グラフィックス制作における実例の数々が紹介された


背景の制作時に大事にしていること


【1】一目で世界観が把握できるビジュアル


 講演の前半部では,背景グラフィックスを担当するスタッフにより,その作業の流れや特にこだわっている箇所などが語られた。

 まず,背景のグラフィックスが担う最も大きな役割は,その場所にどういった意味があるのかをプレイヤーに伝えることである。たとえテキスト等で説明を行わずとも,プレイヤーが一目見るなり,ゲームの世界観や物語性なども感じ取ってもらえるのが理想だ。

画像集#004のサムネイル/[CEDEC+KYUSHU]フロムゲーの硬派な背景やキャラは,どのように作られているのか。グラフィックス制作における実例の数々が紹介された

 そういった背景を実現するためには,「コンセプトの設定」「コンセプトを伝えるためのアセットの選定」「リアリティの演出」の3つを常に心掛けているという。講演ではスクリーンショットを交えて紹介されたので,キャプションと合わせて見ていこう。

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・コンセプトの設定

この背景を制作する際は,最初に「高貴なイメージや,階級の高い人が暮らしている印象を与える」というコンセプトを設定した。そして,コンセプトを実現するためにどのような背景が必要かを考え,「ゴシック建築による整然とした街並み」を制作したという
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こちらは「住民の狂気的なイメージ」というコンセプトをもとに制作した村の背景。木組みが不安定になっているほか,よく見ると死体なども吊されている。その村が単にさびれているだけでなく,狂気的な印象も受けるだろう
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・コンセプトを伝えるために必要なアセット選定

「SEKIRO」の仏師がいる部屋。彫られた人形を大量に配置することで,ここにいる人物が長い間,一人で作業を続けていることが分かる。異様な光景を見たプレイヤーは,「このNPCは只者ではない」と直感するだろう
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薄暗い地下道だが,右下の台には死体が整然と並べられており,この場所が何に使われているのかが,なんとなくイメージできる。蛆虫が湧き出る壺や蜘蛛の巣などを配置することで,さらなる不気味さも演出している
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・リアリティの演出

中央には大きな地図が敷かれ,その周囲に座布団が並べられている。殿様や配下たちが,作戦会議を行うための場所であることが分かるだろう
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豪華な屏風や刀掛けが置かれており,ここにいる人物の身分の高さがうかがえる。右側にある机や書物からも,知的な人物であることがイメージできるかもしれない
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【2】ストレス要素を排除したレベルデザイン


 適切な背景グラフィックスは,プレイヤーに対して移動ルートを促すなど,道しるべにもなる。それによってゲームプレイの快適さに結びつくほか,ゲームデザイナーが想定するプレイを自然な形で誘導できる。つまり優れた背景グラフィックスは,レベルデザインにおいても貢献しているのだ。

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 プレイヤーが自分自身の意思でゲーム内を探索し,ゴールへと向かっているつもりでも,実際には巧みなレベルデザインによって意図的に誘導されていることがあるという。探索の先にある発見や喜びを楽しんでもらうために,プレイヤーに気付かれないように誘導を行うのが,背景デザイナーの腕の見せどころというわけだ。

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・行動範囲を明示化する

高い石垣がそびえたっており,これを見たプレイヤーは,ジャンプやワイヤーアクションなどでは乗り越えられないことが一目で判断できる。この場所は乗り越えられないので,プレイヤーに誤解されないよう,中途半端な高さにはしないほうが良いわけだ
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画面を見て「この隙間は通れるかも?」と期待したものの,実際に通れないとストレスを感じてしまうだろう。この背景では,隙間に柱や土嚢のオブジェクトを置くことで,誤解を生まないように配慮している
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アクションゲームなどのプレイ中に,「無事に着地できるかもしれない」と思って飛び降りたところ,大ダメージを受けたり死亡したりしてガッカリした人は少なくないはず。だが,谷底すら見えないこの背景を見て,そういった期待を抱くプレイヤーはいないだろう
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・ライティングを用いた誘導

真っ暗なダンジョンなどで目印が何もないと,どの方向へ進めばいいのか分からず混乱してしまいがちだ。こういった際,進むべき方向に松明などの光源をさりげなく配置するのは,最もオーソドックスかつ効果的な手法だ
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プレイヤーを強く誘導したいときは,特徴的なランドマークを配置することも。ただ,こういった誘導をあからさまに行うと,プレイヤーにとっては「ゲームをやらされている」感を持ってしまうため,できる限り自然に配置することを心掛けているそうだ
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・進行方向の視界を確保する

プレイヤーが進行してほしいルート上には,大木などのオブジェクトを配置しない。戦闘や探索などの本来のゲームプレイを妨げないために,ストレスとなる要素は極力排除するのが鉄則だ
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ボス戦などにおいて,プレイヤーキャラの行動範囲内に木の枝や柱などが写ると,それだけでかなり目障りだ。だが,それを恐れて簡素な背景にしてしまうと,プレイヤーの印象には残らないだろう。戦闘に集中してもらいつつ,印象に残る背景を制作するのは大変そうだ
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【3】変化やメリハリがあるグラフィックス


 単に綺麗なだけのグラフィックスだと,現実離れした印象や,CG感,ポリゴン感などを与えてしまう。シルエットやライティングなどを意識することで,より現実味のあるグラフィックスを実現し,プレイヤーの没入感も高められるそうだ。

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・シルエット崩し

建物シルエットは強い印象を与えられるが,直線が続くとCG感,ポリゴン感が出てしまいがちだ。この背景では,自然地形の樹木や岩を意図的に並べることで,建物のシルエットを崩している
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屋外を普通に描くと単調な絵面になりやすいそうで,これを防ぐためにオブジェクトを配置した例。大・中・小のオブジェクトを用意し,なるべく同じシルエットが連続しないよう,バランスを考えて配置したそうだ
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シルエットを崩すときは,ゲーム内の世界観を表現できるアセットを使えるとベター。フロム・ソフトウェアの各作品では,その世界らしさを感じられる彫像や照明,そして死体関連のアセットを配置することが多いそうだ
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・リピート感の緩和

柵や塀のアセットを普通に並べると,リピート感がどうしても目立ってしまう。一部分を破壊するなど,なるべく工数をかけずに2〜3のアセットを用意し,これらを並べたりブレンドさせたりすることで,リピート感を比較的手軽に緩和できるそうだ
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地面は画面内の半分近くを占めるため,リピート感が生じないよう特に気を付けている部分だという。床のタイルは所々が破壊されているほか,敷かれている布も繊維構造などを踏まえた経年劣化を盛りこんでいる
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・ライティング

ライティングによるメリハリは強い印象を残せるため,デザイナーの腕の見せどころだそうだ。光源をゴチャゴチャと置くよりは,破壊断面などの質感の違いが分かる部分をピンポイントで照らすのがコツとのこと
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左右の画像を見比べてみると,ライティングによって室内の埃っぽさや空気感が演出されていることが分かる。情報量を絞って本来見せたいものを際立たせたり,影を落とすことで地面の情報量をアップさせたりと,ライティング関連には数多くのテクニックがあるそうだ
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【4】印象的に構築したビューポイント


 ここまではセオリーとして大事にしている部分だが,そのほかにも数々のノウハウやテクニックがあるとのことで,その一例も紹介された。
 実際の開発時は,予算や工数などに制限があるため,総ての背景を徹底的に作り込むことは難しいという。そういったなかでも,できる範囲内でプレイヤーの印象に残るビジュアル体験を届けるべく,開発チームは日夜努力しているとのことだ。

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・抑圧から解放のギャップ

岩に囲まれた狭い道を駆け上がると,その先には大きな城が眼前いっぱいに広がる。抑圧から解放のギャップ効果も相まって,プレイヤーに印象づけたい背景を,これ以上ない形でダイレクトに伝えられるそうだ
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・作り込まれたボス部屋

ボスがいる部屋は,ステージ中のクライマックスになることも多いため,いかに印象的な背景を作り出せるかを日々模索しているという。ここで掲載している画像は,構造や配置されているアセットこそシンプルだが,実に印象的な背景に仕上がっている
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・単調に見せないステージ構成

各ステージは,可能な限り差別化を行っているという。ステージ内に複数のシチュエーションを盛りこむほか,プレイヤーが思わずスクリーンショットを撮影したくなるような“絶景ポイント”を入れることも忘れない
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キャラクターの制作時に大事にしていること


【1】ラフモデル:シルエットでキャラクターの特徴を出す


 講演の後半部では,キャラクターのグラフィックスを担当するスタッフが,実際の作業における「ラフモデル」「詳細モデル」「リトポロジー」「テクスチャ」の流れに沿って,各工程における工夫などを説明した。

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 最初に行うラフモデルの制作時は,キャラクターの詳細まで作り込む必要はない。それよりも,デザイン画に描かれているキャラクターのコンセプトやシルエットが,ラフモデルに正しく反映されていることを心掛けているという。また,布の動きについてもラフモデルの段階で検証しつつ調整を施しているとのこと。そうすることでゲーム内でより自然な動きが表現できるそうだ。

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・プレイヤーの視点で確認

このモンスターは頭部が無く,不健康で太った体型としてデザインされている。ラフモデルの制作時は,そのコンセプトがシルエットに反映されていることを確認する。ゲーム内で実際に登場する際のポーズを入れ,たとえば脂肪がたまりそうなところなどは,この段階でメリハリを強調しているそうだ
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・布の動きを検証

「SEKIRO」では和服のデザインを多く取り入れているため,袖や裾などが腕や脚などに干渉しないよう気を付けねばならなかったという。このときは「Marvelous Designer」のツールで服装のデータを仮制作し,キャラクターを動かした際に干渉しないかの検証や調整を行ったという
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・完成形までの計画を立てる

このキャラは強敵という設定であるため,見た目からもそれが伝わるようにデザインを行った。アジア圏で一般的な6〜7頭身ではなく8〜9頭身にしたほか,特徴的な頭巾や羽織などを装備させ,ツワモノ感を演出
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【2】詳細モデル:目で感じられる“硬さ”を表現


 詳細モデルでは,ラフモデルに細かいディテールなどを入れて,一歩進んだリアルな造形を行う。デザイン画の設定や意図を汲み取るだけでなく,そのキャラクターが登場する際のバックグラウンドストーリーや,ゲームの世界観なども踏まえたうえで補完していくそうだ。

 この作業で特に意識しているのは,物の“硬さ”を表現することだ。そして,モデリングの造形で硬さを表現するには,物体を正確に見るデッサン力が必要となる。実物の形状を頭の中で理解できていると,効率よく詳細モデルを制作できることが多いそうだ。

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・硬さの表現

上記のラフモデルと同じキャラクターの詳細モデル。見るからに不健康そうなこのキャラは,腹に脂肪が溜まっていることが想像できるため,重力で垂れ下がるイメージで柔らかく表現する。一方,この大きな体を支える脚は引き締まっていなければ不自然なため,関節の骨格を浮き出したり,シャープな筋を入れたりして鍛えられている感を強調した
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・物の形状を分析して理解する

キャラクターが装備している各種アイテムが,どういう構造をしており,実際にどのように機能しているのかを把握する。そうすることによって,詳細モデルに更なるリアリティをもたらせるそうだ。ただし,調べる際に時間や手間が掛かるため,作業時間のバランスには要注意とのこと
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・凹凸感を入れるときの工夫

目立たせたい部分は凹凸感を強調することで,その印象を強められる。特定部位のみを強調すると浮いてしまうため,さまざまな方向からライトを当てながら,キャラ全体としての立体感を確かめつつ詳細モデルを制作しているそうだ
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【3】リトポロジー:視線が行きやすい部分の優先度を上げる


 実際のゲーム内では,メモリやポリゴン数などに制限があるため,詳細モデルをそのまま描画できるとは限らない。そのため,詳細モデルの形状をできるだけ維持しつつ,ゲーム内で描画する際のローモデルに落とし込む,リトポロジーの工程が必要となる。

 リトポロジーにおいて大事なのは,プレイヤーの視線が行きやすい部分の優先度を上げつつ,全体としてのバランスを保つこと。以下で説明しているようなセオリーはいくつかあるものの,なかなかに難しい作業だそうだ。

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・密度の分配

リトポロジーの際は,全部を均等にローモデル化しているわけではない。プレイヤーの視線が向かいやすい部分は情報の密度を濃くし,そうでない部分は薄くしている。キャラクターの場合は基本的に,顔→手→体→足の順で密度を薄くしているそうだ
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・動きと立体さを意識してポリゴン化

袖や裾などを物理エンジンで動かすときは,ポリゴンなどの間隔を均等にすることで,より自然な布の動きを実現できるとのこと。また,布における大きな皺や目立たせたい部分も,ポリゴンで凹凸感を入れるそうだ
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・シェーダーと組み合わせ

服を表現する際は,布のベースとなる部分に,経年劣化などでダメージを受けた部分を表現するテクスチャを組み合わせる。なお,実際に服がダメージを受ける際は,糸がほつれるが,これを表現するためにブレンド時の“向き”に気を付けているそうだ
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【4】テクスチャ:情報量を増やして印象的にする


 キャラクターの仕上げの段階で,いよいよテクスチャを制作する。このテクスチャを制作するときは,デザイン画で表現された特徴を再確認し,プレイヤーの視線を引くことを心掛けているそうだ。そして,プレイヤーの視線が向かった先の情報量を上げることで,より印象的な見た目のキャラクターに仕上がるとのこと。

 具体的には,キャラの動きを意識して,自然な汚れや劣化などを入れるのが効果的である。ただし,これらを無闇に盛りこむと見た目がわざとらしくなるため,全体のバランスを見ながら慎重に調整しているとのことだ。

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・プレイヤーの視線を引くための工夫

目立たせたいキャラクターには,特徴的な色や装備品を盛りこむことで,プレイヤーの視線を引きつけられる。画面右側のキャラクターが着ているマントには,他とは違った彩度の高い模様が入っており,暗闇などで遭遇したときも最初に目が行くだろう
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・動きによるリアルな表現

袖の先が色あせていたり,斧の刃に無数の線が入っていたりすることで,それらが実際に使い込まれている様子が分かるだろう。ちなみに服に関しては,実際の繊維と同じようにリアルにすると,ゲーム内ではほとんど見えなくなってしまうため,ややオーバーにしているそうだ
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・明度の強弱を入れて情報量を増やす

人は基本的に,動くものに視線が向かいやすいとのこと。そういったオブジェクトに対し,意図的に明度を変えたり,劣化や汚れなどを盛りこむことで,よりプレイヤーの印象に残りやすいそうだ
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 これらの背景やキャラクターの制作時に共通して大切にしているのは,ハイエンドゲームならではの特別な世界観を作り上げ,それをプレイヤーに体験してもらうための表現手法を模索することである。実際のゲーム開発には苦労も多いが,期待しているファンの印象に残るようなグラフィックスを作り上げることには,大きな手応えを得ているそうだ。

 現在,フロム・ソフトウェアが開発中の最新作「ELDEN RING」においても,本講演で紹介された内容を踏まえたうえで,背景やキャラクターなどを制作しているという。個人的にも,今後はフロムゲーを遊ぶとき,時折足を止めて風景やキャラクターをまじまじと見たくなる講演であった。

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「CEDEC KYUSHU 2021 ONLINE」公式サイト

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