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レトロンバーガー Order 24:たった4色で何が描ける? 「The Eternal Castle [REMASTERED]」でCGAテイストの底力を見てみよう編
レトロゲームの面白さと言えば,欠かせないのが“色”という構成要素。ドット絵というのはもちろん,“色”です。
そう,ビビッドな発色が冴えるセガ・マーク3も良し,1パレット3色ながら中間色が多彩なファミリーコンピュータも良し,Atariハードのくすんだ発色もそれはそれで魅力的。ただ顧みられることが少ないのが,CGA(Color Graphics Adapter)の4色グラフィックス!
そんなわけで,2019年1月5日にPlaysaurusからSteamでリリースされた「The Eternal Castle [REMASTERED]」というアクションアドベンチャーゲームを見ていきましょう。
本作は,1987年にリリースされたDOS向けタイトル「The Eternal Castle」をリメイクしたもの。Brøderbundの「カラテカ」や「プリンス・オブ・ペルシャ」,Delphine Softwareの「フラッシュバック」や「アウターワールド」と同様,ロトスコープ・アニメーションが特徴的なサイドビュー形式のアクションアドベンチャーゲームです。ただBrøderbundやDelphine SoftwareがAmigaやCommodore 64のようなホビー向けコンピュータをプラットフォームに選んでいたのに対し,「The Eternal Castle」はDOSマシンに向けたものであったため,グラフィックスが独特なCGAの4色仕様となっています。
「The Eternal Castle」はデータディスクが失われて“幻のゲーム”となっていましたが,Leonard Menchiari氏ら開発チームが綿密な調査と努力によって,プレイフィールを現代の環境に再現しました。いやあ,世の中にはすごい努力家がいるものですね!
……まあ,嘘なんですけどね。Order:12の「ARC SYMPHONY」と同じく。
そんなわけで,またレトロ“風”ゲームの紹介です。「なんだ“風”か」なんて思わずに,ちょっと考えてみてくださいよ。今はUnityやUnreal Engineなどの便利な開発環境が今はたくさんありますが,それがあったからといってロトスコープテイストのモーションを作るにはどれだけ苦労が必要か。それも,モダンなグラフィックスでなく4色に塗りつぶしたピクセルアートで表現するなんて。言ってみれば高級食材をダシだけ取って捨てるみたいな豪勢さです。
それに4色しかないからこそのグラフィックス表現は,かなりのハイクオリティぶりに仕上がっています。純粋なアートとしての出来栄えはもちろん,「精細に描写されないから想像を掻き立てられる」というエッセンスも含めてプレイヤーに訴えてくるものがあります。
キャラクターの操作感は,Delphineのゲームを思わせる,ヌルヌルながら軽快なもの。斜め入力で地面を這うように移動したり,遮蔽物に密着して銃を構えれば身を乗り出して銃撃したりと,プレイヤーの「やりたいこと」を綺麗に反映してくれる操作系統は普通に感心できるポイントです。
ゲームを構成するのはチュートリアルでもある荒野,古代遺跡,戦場,廃研究所,最終エリアといった5つのステージで,6月28日に追加された新規エピソードを含めてもアクションアドベンチャーとしては短め。また,謎解きや戦闘も割とカンタンです。どちらかと言えばアーケードライクな触感で,PC用アクションアドベンチャーを持ち出すよりも「謎解き要素に振った『エレベーターアクション リターンズ』的なゲーム」と例えたほうが適しているかもしれません。
そんな感じで,サクッと遊べてCGAの魅力も味わえる「The Eternal Castle [REMASTERED]」。「予定も無いのに21日に有給とって4連休にしてみたんだけど,この暇を埋めるに適した奇抜なゲームってある?」くらいの温度で飢えを覚えている人にプレイしてみてほしいタイトルです。ところで先週の筆者は,体育の日というものを会社の入ってるビルの玄関が開かなかったことで知りました。
「The Eternal Castle [REMASTERED]」公式サイト
- 関連タイトル:
The Eternal Castle [REMASTERED]
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