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[インタビュー]乙女ゲームのトップランナー対談が実現! オトメイトと「恋と深空」のInfoldgamesが語る,ときめきの作り方とは

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 ハイクオリティな3D表現力を持つ乙女ゲームで話題となっているInfoldgamesの新作アプリ「恋と深空」iOS / Android)が,2024年1月18日にリリースされることを目前にして,同社の開発チームと,オトメイト(外部リンク)のキーパーソンとの対談が行われた。

 Infoldgamesの皆さんはかつて「薄桜鬼」外部リンク)などオトメイト作品のプレイヤーだったということで,かねてより対談を熱望していたようだ。なお,Infoldgamesのお三方は上海からオンラインで参加。東京にいるオトメイトの皆さんとの間に,通訳を挟みつつ対談が行われた。

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オトメイトの皆さん
アイディアファクトリー代表取締役社長 佐藤嘉晃氏(右)
「薄桜鬼」シリーズプロデューサー 藤澤経清氏(中央)
プロモーションチーム主任 三上祥子氏(左)

 「オトメイト」とは、ゲームソフトメーカー、アイディアファクトリー株式会社が手掛ける女性向けの恋愛ゲームブランドで、シリーズ累計出荷本数が100万本を突破した「薄桜鬼」をはじめとして数多くのタイトルをリリースしております。
 2018年からはNintendo Switchタイトルの展開に力を入れており、既に66タイトルを発売(2024年1月現在)。また近年ではゲームだけに止まらず、イベント、グッズ、他企業とのコラボ展開、更には東京・池袋にオトメイトビルをオープンするなど、その周辺展開にも注目が集まっております。




Infoldgamesの皆さん
エグゼクティブプロデューサーの小沫(モー)氏
統括プロデューサーの栗子(リーズ)氏
グローバルマーケティング統括の葉子(エーズ)氏

 Infoldは2021年に設立され、本社はシンガポールにあります。ロサンゼルス、東京、ソウル、台北などの都市にも支社を設けています。運営中の「ニキシリーズ」と「恋とプロデューサー」は、グローバルで数千万人以上のユーザーを獲得しており、現在「恋と深空」、「百面千相」、「インフィニティニキ」などの新規タイトルの開発に注力しています。

 そして、Infoldはゲームタイトルだけではなく、アニメ、映画、音楽などのエンターテイメント分野にも投資と研究開発を続け、より包括的なIPエコシステムの構築を目指しています。



「恋と深空」公式サイト

「恋と深空」予約注文ページ

「恋と深空」事前登録ページ



筋金入りの乙女ゲームファンが,
乙女ゲームを作ったら……!?


――まずはお一人ずつ,自己紹介をお願いします。

佐藤嘉晃氏(以下,佐藤氏):
 私はアイディアファクトリーで代表取締役を務めております,佐藤と申します。アイディアファクトリーでは,オトメイトというブランドも展開しています。

藤澤経清氏(以下,藤澤氏):
 初めまして,オトメイトで乙女ゲームを作っております,藤澤と申します。オトメイトでは「薄桜鬼」というゲームを作っており,そのプロデューサーをやっています。

三上祥子氏(以下,三上氏):
 私はオトメイトブランドのセールスプロモーションを担当しております,三上と申します。よろしくお願いいたします。

栗子(リーズ)氏:
 初めまして,「恋と深空」統括プロデューサーの栗子(リーズ)です。今回はオトメイト様と対談ができてうれしいです。昔からオトメイト作品が好きで,「緋色の欠片」は全シリーズを制覇しました。それから,「AMNESIA」シリーズのウキョウさんも好きです(笑)。

小沫(モー)氏:
 初めまして,「恋と深空」ディレクターの小沫(モー)です。「薄桜鬼」と「AMNESIA」からオトメイト作品にはまり,「Collar×Malice」「ピオフィオーレの晩鐘」「オランピアソワレ」や「幻奏喫茶アンシャンテ」など,最近の作品も好きです。

 どの物語も新鮮で面白く,キャラクターたちも個性豊かで生き生きしていて,そんなオトメイト作品の世界観設定とキャラクターデザインが好きです!

 また,「ピオフィオーレの晩鐘」の“MSシステム”は,別視点からストーリーや登場人物の補足情報をプレイヤーに伝えるなど,遊び方にも面白みがあってすごく良いゲームデザインだと思います。本日は,よろしくお願いいたします。

葉子(エーズ)氏:
 こんにちは,「恋と深空」グローバルパブリッシング統括の葉子(エーズ)です。アイディアファクトリーの先輩方と対談ができてとてもうれしいです。

――何だかファンミーティングのような雰囲気になっていますが,皆さんが同じ業界に身を置く立場として,「乙女ゲーム」というゲームジャンルに対してどのような思いや考えを持っていらっしゃるかをお聞かせください。

栗子(リーズ)氏:
 私たちはゲームの作り手である前に,ヘビーな乙女ゲームプレイヤーなんです。プレイヤー視点から見れば,乙女ゲームでは違う時代や世界,シチュエーションの中で,さまざまな人達と出会い,カレらの過去を知って絆を築けることから,まさに無限の可能性が秘められているゲームのジャンルだと思います。

 プレイヤー側から作り手になってあらためて,乙女ゲームの無限の可能性に驚嘆しますね。また,プレイヤーそれぞれの体験から生まれる「自分だけの絆」と「物語の没入感」こそが,乙女ゲームが長く続く理由であり,魅力だと思います。

小沫(モー)氏:
 栗子に同意見ですね。乙女ゲームは「恋愛をシミュレート」しているように見えますが,プレイヤーさんにまるでその場にいるかのような「リアル」な恋愛感情を体験してもらえるのが特徴だと思っています。そのようにプレイヤーさんの心を惹きつけることが,私たちクリエイターが目指す目標でもありますね。

 個人的な話ですが,思えば人生初のオトメイト作品が「薄桜鬼」で,ちょっと懐かしい,PlayStation 2版でしたね。序盤から物語とキャラクターたちに惹かれていって,とくに不治の病を患っていながらも新選組の「剣」として,誇り高き剣士としての志を貫いた沖田総司くんが一番印象深かったです。

 重厚な物語に浸かったことで,バッドエンドでも切ない美しさを感じましたし,バッドエンドならではの儚さというものを初めて分かった気がします。当時,確か簡体字版がなくて,作品の素晴らしさを深く体験できなかったけれど,これからはオトメイトさんから中国語対応の作品が発売されることを期待しています。

佐藤氏:
 たくさん出します(笑)。

小沫(モー)氏:
 ありがとうございます!

佐藤嘉晃氏
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佐藤氏:
 オトメイトは19年前に立ち上げたブランドで,「薄桜鬼」は15周年を迎えました。私も男性ですし,隣にいる「薄桜鬼」プロデューサーの藤澤も男性でございますが,企画を作っているスタッフの大半は女性です。

 私は「女性向けのゲーム」と「乙女ゲーム」はやはり違うと考えています。というのも,女性向けゲームという大きなジャンルの中にあるひとつのジャンルとして,「乙女ゲーム」という割とニッチなジャンルがあると捉えているんですね。私たちはそこを開拓していこうと,オトメイトブランドを作りました。

 ブランド誕生から19年も展開しているだけに,たくさんの作品が生まれたわけですが,「薄桜鬼」のような史実をベースとしたファンタジー作品から,2月29日に発売を予定している「マツリカの炯-kEi- 天命胤異伝」外部リンク)のような艶やかなロマンスシーンが詰まった作品など,物語のバリエーションも多いんですね。

 そもそも,乙女ゲームを始めたのがコーエー(現在はコーエーテクモゲームス)さんなのですが,弊社ともご縁がありまして。アイディアファクトリーが乙女ゲームに参入したのも,コーエーさんからご紹介を受けたのがきっかけなんですよ。

 コーエーさんは「アンジェリーク」など主要なタイトルを中心に制作されていて,あまり種類を増やさなかったわけですが,アイディアファクトリーはたくさん種類を作ろうという方針で,多くの乙女ゲームを制作してきました。そのなかでも,初期にヒットしたのが「緋色の欠片」でしたね。そのプロデューサーも藤澤がやっておりました。

藤澤氏:
 私が乙女ゲームを作り始めた頃はまだ,女性向けゲームという言い方が主流でしたね。そこから乙女ゲームというものをさらに広く深く開拓していったわけですが,私が男性なものですから,まず男性目線が入ることによって何ができるのかを考えました。そして,どんなものが女性に面白いと思ってもらえるかを大事に考えました。

 そうして男性も女性も共有・共感できるものとして「2人の絆」や「想い」というものを作品に込められないかと思って作ったのが「緋色の欠片」なんです。そこから時代が変わって,もう1つ大きな想いを乗せて作ったのが「薄桜鬼」です。どちらも主人公と攻略対象による,単なる恋愛物語ではなく,お互いの想いを重ね合わせて絆を深める,というのをテーマにしています。これがオトメイトの礎になったのではないかと思っています。

 そこから十数年経ちまして,たくさんの方がオトメイトの作品をプレイしてくださり,今,新しい作り手が育っています。日本だけでなく,Infoldgamesさんのように海外でも女性向け,乙女向けのゲームが作られ,どんどん世界に広まっていっているのをうれしく思っています。また,今日のような場で新しいゲームに触れられることもうれしいです。

「緋色の欠片」(1作目はPS2専用ソフトとして2006年に発売)
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栗子(リーズ)氏:
 こちらも,この場に立てて光栄に思っております。

――乙女ゲームといえば「ときめき」が不可欠だと思いますが,ときめきを作るために必要なものは何でしょうか。あるいは,ご自身はどんなときに「ときめき」を感じますか。

藤澤氏:
 私は恋愛よりは,男女の絆のような,深いつながりにとてもときめきますね。心が震える感じがするんです。ですので,私が物語の中に詰め込みたいと思うのは,何もなかったところに想いが少しずつ重なっていくことだったり,あるいは実際にはあったであろう絆を拾い上げていくような形で,昔の記憶が明らかになっていくというものです。

 例えば,生き別れたなどの出来事があったとか,幼馴染みだったことが分かるとか,相手が大事なものを持っていてくれたとか……。いろいろな過去の重なりが分かるというのが私は好きですし,「想い」を感じますね。

栗子(リーズ)氏:
 藤澤さんのおっしゃる通り,私もキャラクターとの絆を築き上げることが一番だと思います。その絆を築き上げる過程もとても重要ですね。カレらと一緒に旅をして,いろいろな場所で人々と巡り会いながら絆を築いていく……,そこでキャラクターとプレイヤーだけの思い出が作られるんですよね。

 その過程でさまざまな感情が湧き出るのではないかと思います。そういった良質で豊かな体験をするほどに,プレイヤーさんもゲームの世界に没頭し,キャラクターへの思い入れも深まるのではと考えています。そうして,リアルな恋愛体験に限りなく近しい「ときめき」が生まれるのだと思います。

 以前私たちは考えてみたことがあるのですが,キャラクターとともに過ごす日常の,細部の細部まで追求し,リアリティをもって描ければ,さらに没入感を高められるのではないかと。

 そこで,私たちはゲーム内に,実際の恋愛でも行うようなことをなるべく追加しました。例えば,カレとのおしゃべりや悩みの相談だったり,カレの鼓動に触れたり,「ご飯は何を食べた?」と尋ねたり,一緒にクレーンゲームやカードゲームを遊んだり……などです。何気ない日常を通して「ときめき」を積み重ね,恋愛体験を高めることができればと思っています。

小沫(モー)氏:
 確かに,私たちは常に「恋愛体験」を軸にしてさまざまなコンテンツを作っています。中でも「ときめき」を作るためには,プレイヤーさんたちの「私はこういう恋愛を望んでいます」という願いに耳を傾けることもとても大事ですね。私たちは,プレイヤーさんや社内スタッフからの意見を重視し,ニーズに合わせて試行錯誤をくり返しています。

 例えば,初めてのβテストでは「メインストーリーが3Dの一人称視点なら,キャラクターたちとさまざまなインタラクティブな体験をできる点が良いので,“思念カード”のイラストにも動く演出が欲しい」というフィードバックをいただきまして。その願いに応えるよう,思念カードでも,キャラクターとリアルタイムなやり取りができる機能を実現したわけなんです。



徹底的なリサーチと「乙女回路」が,ときめきを生む


――新しい乙女ゲームやIPは,どのようにして生まれますか。乙女ゲーム業界ならではのエピソードがあればお聞かせください。

栗子(リーズ)氏:
 3Dの乙女ゲームを作る私たちにとって,新鮮で未知なことがほとんどで,既存の参考物があまりない状態です。でも逆手に取れば,自由に創作できるということになります。前例や決まりことに縛られず,ただ純粋に「どのようにして恋愛体験をより良くするか?」を考え,新しいチャレンジを繰り返しながら,より面白くやり込み度のあるゲーム作りを目指しています。

 時折,開発チームやプレイヤーの声からインスピレーションを受けることもあり,そんな風に,わりと小さな出来事から閃いたり,アイデアが湧き出ることも多いですね。

「恋と深空」ゲーム内ミニゲーム「ニャンニャンカード」「クレーンゲーム」
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小沫(モー)氏:
 そうなんです。開発中のある日,疲れていたときに「カレと話ができたら,どれだけ癒されるか……」という,何気ない溜息からアイデアが出てきたりするんですよね。このときは,スタッフのみんなで,本気で「どうやったら会話できる機能が実現できるか」を話し合いました(笑)。

 社内には「こういう機能が欲しい!」という願いを書き込み,発散できる専用のチャットグループもあるんですよ。どれほど奇抜な発想でも,とりあえずこのグループに投げることができます。最終的に,みんなが話し合って納得したアイデアに基づいて,最適な技術を用いながら試行錯誤していきます。すでに実装されているいくつかの機能やコンテンツは,このチャットグループから生まれたものなんですよ。

 乙女ゲームというジャンルに限らず,ゲーム開発の本質は,プレイヤーを感動させるコンテンツを作ることだと私は思っています。ですから,ゲームは,まず私たち作り手自身が面白いと思える,もしくは感動できるものでなければ,そのエネルギーがプレイヤーに伝わらないと思います。

「恋と深空」ホーム画面にてキャラとインタラクティブなやり取りが可能
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藤澤氏:
 ステキですね。では,物語の舞台や世界観は,どうやって決められていますか。インスピレーションを何かに求めたり,チームで相談したりするのでしょうか。

栗子(リーズ)氏:
 好きなジャンルのゲーム作品はもちろん,映画や動画などさまざまな場所からアイデアを汲み取っています。私たち自身が伝えたいもののほかにも,マーケティング部の意見も聞きますし,プレイヤーさんからの意見やコメントを大事にしているので,アンケート調査も行います。

佐藤氏:
 なるほど,リサーチ型なんですね。

栗子(リーズ)氏:
 やはり市場でプレイヤーさんが求めるものに注目をおけるほうが正しいのかなと思っています。中国で流行っているコンテンツから,今,みんなが気になっているものは何なのかを探っていますね。また,ゲームというジャンルだけに留まらずに,文芸作品など各媒体において今,何が人々に感動を与えているのかなど,幅広く見ています。

 そうやって新しいものを探りながらも,「薄桜鬼」のように過去の歴史からインスピレーションを受けて,そこから新しいストーリーを作ることにも興味を持っています。革新するだけでなく,クラシックなもの,もしくは王道のものもいいですよね。

三上氏:
 「恋と深空」はRPG要素もあるゲームですが,乙女コンテンツと掛け合わせる発想はどこから生まれたのでしょうか。

栗子(リーズ)氏:
 そうですね。私たちはプロジェクトを立ち上げる初期段階で,今を生きる人たちはより平等な恋愛観を持つようになっていると気づきました。ですので,ゲームプレイを企画するとき,あえて「彼と肩を並べて戦う」ことを,恋愛体験の1つとしてゲーム作りに取り込みました。

 「恋と深空」での恋愛体験は,甘い日常デートのひと時でもあり,共に困難や危機に立ち向かう過程でもあります。そして,乙女ゲームのプレイヤーには無限の可能性が秘められていると信じていまして,そんなプレイヤーの皆さんに新しくバリエーション豊かなプレイ体験を提供したく,キャラとインタラクティブなやり取りを味わえつつ,一定的な難易度のある操作を求められるバトルシステムを作りました。

 ただその一方,ライトでシンプルに彼との恋愛体験を楽しむといったニーズにも配慮し,バトルクエストの難易度やモンスターのデザインに工夫を入れ,オート操作などの便利機能も実装することで操作への要求ハードルを下げるようにしました。


――バトルシステムに限らず,開発には困難がつきものだと思いますが,皆さんはプロジェクトが難航したとき,どのように克服していったのでしょうか。

藤澤経清氏
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藤澤氏:
 開発において一番困るのが,私が作るとどうしても乙女チックというよりは,感動モノになってしまうことですね。そこを乙女ゲームとして,俗に言う“糖度”をどこまで盛り込むのかを,女性スタッフと相談しながら作るようにしています。

 そうじゃないと,どうしても男性でも楽しめる作品になりかねないと。最終的に,そこは目標にはしているんですが,その過程での乙女ゲーム的なところを失くさないようにしています。自分でもよく言っているのですが「乙女回路」をちゃんと持って作るというのが私の信条です。

栗子(リーズ)氏:
 先ほども説明したとおり,私たちは今までのない新しいなゲーム体験をお届けできればと思っています。ただ新しいことをチャレンジすることは言わばリスクも伴っており,手探りしながら進むものが多く,失敗や挫折も日常茶飯事のようなものでした。

 例えば開発中では,「いかにハイエンドな3D演出をスマホアプリの許容容量内で実現するか」であったり,「やり込み要素のあるバトル育成システムとライトな日常・ミニゲームとのバランスをどうするか」など,細かいところまでやり直しとブラッシュアップを繰り返し,ゼロから最良な結果を探っていました。

 幸いチーム一同となり,それらの難関を乗り越えることができまして,またその分チームが前進する糧にもなったのではないかと信じています。

小沫(モー)氏:
 私からも例を挙げたいのですが,メインストーリーをより没入感のある演出にするために,3Dの一人称視点にこだわることもかえって課題となりました。アプリの容量はもちろん,ハイエンドな画質やシステムエンジンまでいろいろと工夫を入れてきました。それだけでなく,スマホ端末の縦スクリーンでも,第一人称ならではの臨場感を最大限に伝えるべく,幾度のやり直しを経て,最終的にアニメ映画制作のプロセスを導入し,ようやく3D演出によるストーリーテイリングの魅力を引き出せるようになりました。

 それと,このゲームは全世界同時配信を控えていまして,多言語に対応しています。ただ単にキャラクターのセリフを各言語にローカライズしてボイス収録を行うだけではなく,会話時の口元の動きもその言語の特徴と一致させたいと思い,業量が増えることも惜しまず,調整を行いました。

 そのため今皆さんが体験できるバージョンでは,キャラクターたちは各言語に合った口の動きをするので,本当にその言語で話しているようなリアルな体験を味わっていただくことができます。

「恋と深空」メインストーリーでの3D×第一人称の演出
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葉子(エーズ)氏:
 実は,マーケティングチームも開発チームに負けないほどの課題がありました。例えば,キャラクターたちの魅力を120%引き出せるPVや,ポスターなどの素材を出したいのですが,やはり簡単ではありません。

 それにオフラインイベントなどは,いくら準備しても突発的なトラブルが発生する可能性があります。プラン通りにプレイヤーの皆さまにお届けできないことに対して,残念で悔しさを感じることもありました。今まで無事に乗り越えられたのは,プレイヤーさんたちの優しさと,「恋と深空」への愛が支えてくれたおかげなんです。

 私たちも本当に「恋と深空」が大好きですから,困難に遭ったときは深くヘコんでしまうこともありますが,楽しさとリスクが相まった仕事だと思っています。

栗子(リーズ)氏:
 本当に,たくさんの困難がありましたね。それに,克服するためにはチームみんなの力が必要ですから,おのずと人手不足になってしまって。ですから,この記事を読んだ読者の皆さん,ここまで読んでくれてうんうんとうなづいてくれたあなた……,興味があればぜひ弊社に応募してください!

 作品とともに成長したい意欲がある優秀な人材を募集しております。本当に,乙女ゲームを作れるスタッフさんは貴重なので……。弊社はもちろんですが,オトメイトさんの求人もチェックしていただきたいと思います。

佐藤氏:
 ありがとうございます(笑)。最近は優秀な海外の方が「乙女ゲームを作りたい」と言って弊社にも来てくれるようになりました。

Infoldgames社内
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――乙女ゲームの開発において,どのような人材が求められていますか。メンバーの才能やチーム構成にどのような需要があるのでしょう。

藤澤氏:
 メンバーの才能という点については,まず優先されるのは乙女ゲームが好きなことが挙げられると思います。ですが,好きなことと開発できることは同じではありません。才能もあるかと思いますが,好き以上に作ってみたいという気持ちが才能を大きく伸ばすと思いますので,そういう気持ちが強い方がいいですね。

 また,制作のうまい方と一緒に仕事ができることもうれしいですが,ゲーム作成に情熱や大きな気持ちがある方と一緒に仕事をしたいと思っています。

――本日の対談が始まる前に,アイディアファクトリーの皆さんに「恋と深空」を試遊していただきました。プレイされていかがでしたか。

佐藤氏:
 オトメイトだとなかなか挑戦しないだろうというレベルの超大作でしたので,私も大変感動いたしました。あの技術で弊社も作っていきたいなと思えるような,理想的な技術なんですけど,なかなか予算がないので……。

藤澤氏:
 私たちが普段,作っているゲームは1人称の2Dですが,「恋と深空」はキャラクターが3Dでリアルに動いているのにとても感動しました。キャラクターをいろいろな角度から見られるし,周囲の様子も全部見ることができると。実際に触れているわけではないけれど,画面をタッチをしてカレらの存在を感じられました。私たちではちょっとできない,また1つ違う世界を体験できたと感じています。

 とくにサブストーリーやカードストーリーのインタラクティブな部分がステキで,作り手としてすごくうらやましかったですし,演出は男の僕でも見ていてドキドキしましたね。本当に楽しくプレイさせていただきましたし,すごく良かったです。

栗子(リーズ)氏:
 ありがとうございます。「ここをもっとこうしたらいい」というようなアドバイスがあれば,お聞かせいただけますか。

藤澤氏:
 ストーリーのなかで選択肢がありますが,行動だけでなく,プレイヤーさんの考え方も反映できる選択肢もあるといいなと思いました。そこで何通りかを選べることで,プレイの幅が広がるのではないかと思います。

三上祥子氏
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三上氏:
 オトメイトの作品は,システム部分の操作性やギミックよりも,シナリオだったりキャラクター設定性にさまざまな伏線や,仕掛けを散りばめていますね。

藤澤氏:
 「緋色の欠片」や「ピオフィオーレの晩鐘」でもやっていたのですが,主人公視点だけでなく,いろいろなキャラクターの視点から物語を見られるシステムもあると,もっと面白いのではないかと思います。過去の物語であってもいいし,それらエピソードを集めたりするシステムとうまく組み合わせてもいいですよね。

三上氏:
 私も,主人公視点だけでなく,カレがそのとき何をしていたかというカレ視点の物語もあるといいなって思いました。

栗子(リーズ)氏:
 先ほどの試遊ではお時間的に体験していただけなかったかと思うのですが,実はそういったサイドストーリーを閲覧できる「秘話」機能をすでに作っております。物語の裏でキャラクターは何をしていたのか,ということが分かります。

 なので三上さんのコメントを聞いていて「近い発想だな」と思わず頷きました(笑)。それでも先輩方からのアドバイスはとてもありがたくと思いますし,今後の展開として,より多くの視点や新しい表現形式を制作し,異なる角度で物語やキャラたちを垣間見られる工夫をしていきたいと存じます。

「恋と深空」サイドストーリーを楽しめる「秘話」機能
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――「恋と深空」は1月18日にサービス開始ということで,プロモーションイベントも用意されているかと思いますが,あらためてご紹介いただけますか。

葉子(エーズ)氏:
 今まさに進行形でたくさんのキャンペーンやイベントの準備をしています。全世界同時配信のゲームですので,世界中の乙女ゲームプレイヤーが一緒に参加できるイベントを企画しています。

 まず,世界的に有名な歌手のサラ・ブライトマンさんをお招きして,ゲームのテーマ曲「LOVE AND DEEPSPACE」(外部リンク)を歌っていただくことになりました。国境を越えた音楽に乗って,時空を越える愛の歌をお届けできればと思っております。

 そのほかにもゲームタイトル「深空」にちなんだ「宇宙」をテーマにしたビッグイベントがあり,プレイヤーの皆さまから寄せられたメッセージを衛星ロケットに乗せて宇宙に届けるといったスペシャルなキャンペーンを予定しています。

 また,世界各地の風習や,プレイヤーさんの好みに合わせたイベント活動も展開していきたいと思います。私たちとしても,早くプレイヤーの皆さまとお会いしたいと思っています。

サラ・ブライトマン氏が歌うテーマ曲「LOVE AND DEEPSPACE」
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――それは楽しみですね。「薄桜鬼」シリーズも15周年キャンペーンが行われていますよね。今後はどのようなイベントが開催されるのでしょうか。

三上氏:
 すでに2023年9月18日から,15周年企画がスタートしているのですが,今後の予定としましては2024年2月3日から11日に,聖地巡礼として函館で朗読劇やトークイベントを予定しています(外部リンク)。コラボディナー付きのトークショーなどもございます。また,3月3日には「薄桜鬼 真改 桜の宴2024」(外部リンク)という単独イベントを開催いたします。

「薄桜鬼 真改 桜の宴2024」キービジュアル
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藤澤氏:
 ちなみに,函館はメインキャラクターの土方歳三が,最期まで戦った終焉の地になります。そこでキャラクターボイスを担当されている三木眞一郎さんのトークショーが行われるというわけですね。

 そしてイベント「薄桜鬼 真改 桜の宴2024」は,「薄桜鬼 真改」になってから初めてのイベントなんです。攻略対象のほぼすべてのキャストさんが参加してくださいますので,ファンの皆さんが大いに楽しんでいただけるイベントになると思います。

栗子(リーズ)氏:
 楽しみにしています! 実は,私はオトメイトパーティーが好きでして,以前,実際にチケットを買って参加したことがあるんです。

オトメイト一同:
 わー! ありがとうございます!

――実は,通訳をしています私も同じです(笑)。

藤澤氏:
 うれしいですね。

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佐藤氏:
 15周年のアニバーサリーはまだまだ続きます。3月28日には「薄桜鬼 真改 遊戯録 隊士達の大宴会 for Nintendo Switch」外部リンク)も発売されます。また,毎年マーベラスさんがミュージカル「薄桜鬼」を上演してくださっていますが,今年は4月に公演が決定しています。これからも「薄桜鬼」の発表を楽しみにお待ちください。

2024年3月28日発売予定「薄桜鬼 真改 遊戯録 隊士達の大宴会 for Nintendo Switch」のキービジュアル
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Infoldgames一同:
 楽しみにしています!


ビッグなコラボが実現か!?
グローバル展開で広がる乙女ゲームの輪


――ここからはメディアからの質問に移ります。日本のゲーム業界には,女性向けゲームはシンプルな操作やシステムでないと受け入れられないという風潮がある気がします。それを踏まえると,「恋と深空」に独特なバトルシステムを採用するのは,勇気がいることだったのではないでしょうか。

栗子(リーズ)氏:
 そうですね。プレイヤーに好きな人と肩を並べて一緒に困難や危機に立ち向かい,カレと共に戦う場面をプレイヤーに体験させていただきたくて,バトル要素を入れることを決めました。

――オトメイトからは「薄桜鬼」のアクションゲーム「薄桜鬼 幕末無双録」が発売されていましたが,当時を振り返られて印象深いことなどをお聞かせください。

藤澤氏:
 「薄桜鬼」は恋愛アドベンチャーゲームですが,シリーズで初めてアクションゲームに挑戦したのが「薄桜鬼 幕末無双録」でした。アドベンチャーゲームとしてはまた違う面を表現したもので,恋愛の気持ちよりもアクションとしての爽快感を得られるものになりました。

 「幕末無双録」以来,アクションゲームは制作されていませんが,今回「恋と深空」をプレイさせていただいて,ものを動かすということを思い出しました。これからはもっと,簡単に操作ができて楽しめるものがどんどん作られていくのではないかなと,何となく思い浮かべていました。いつか,国境を越えてInfoldgamesさんと新たな可能性を作り出すことを期待しています。

「薄桜鬼 幕末無双録」(PSP専用ソフトとして2012年3月22日に発売)
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栗子(リーズ)氏:
 とても光栄に思います。

――日中の乙女ゲームの市場における今後の発展についてそれぞれの思いや抱負をお聞かせください。

佐藤氏:
 日本の乙女ゲームのマーケットは,非常に明るいと感じています。Nintendo Switchの時代になって,オトメイトのゲームが世界中で売れるようになってきました。国内外を問わずオトメイトの作品をたくさんのお客様にお楽しみいただける非常にありがたい状況になっていて,よりこれを推進していこうと考えています。

 去年も私は香港と台北に出張させていただきましたが,世界中どこにでもオトメイトが必要とあらば売り込みに行きたいと思っております。

葉子(エーズ)氏:
 私たちは,広い視点から市場全体を分析するより,乙女ゲームのプレイヤーをフォーカスする視点が多くなるかもしれませんが,そこで私たちが観察できたのは,世界各エリア,中国・日本も含みますが,それぞれカルチャーや美的感覚に,違いと共通点があるということでした。

 その一方,各地のプレイヤーさんたちによるクチコミでは「キャラクターがそばにいてほしい」「没入感が欲しい」といった訴求が共通していましたね。ですので,高い没入感が味わえる「恋と深空」のゲームプレイに満足しているように見えました。なお,テストの際にいただいたアンケート調査でも,中国と日本のプレイヤーさんがそれぞれ一番好きな思念カードも同じでした(笑)。

 そして,乙女ゲームのジャンルにおいて,全世界同時配信を行った前例が非常に少なく,我々はまだまだ新たなチャレンジと向き合わなければなりません。いかに国やカルチャーの壁を乗り越えるか,また,中国や日本に留まらず,全世界のプレイヤーさんのニーズに沿った本作ならではの恋愛体験をお届けすることが課題として挙げられますね。

 もちろん,グローバル展開とシンクロした現地特化な運営方針も取り入れており,各エリアの市場動向を観察,勉強しつつ,より良いPR効果とサービスを提供できるように努めています。

「恋と深空」日本語版テストアンケート
画像集 No.018のサムネイル画像 / [インタビュー]乙女ゲームのトップランナー対談が実現! オトメイトと「恋と深空」のInfoldgamesが語る,ときめきの作り方とは 画像集 No.017のサムネイル画像 / [インタビュー]乙女ゲームのトップランナー対談が実現! オトメイトと「恋と深空」のInfoldgamesが語る,ときめきの作り方とは

栗子(リーズ)氏:
 現地のスタッフと現地のプレイヤーさんのニーズの声に耳を傾け,勉強しています。すでに各エリアのプレイヤーさんが自発的に弊社の「恋と深空」に注目していただいていることも,開発チームも含めて感動しております。

――ここでそろそろお時間となってしまいました。最後にオトメイトさんとInfoldgamesさんからひと言いただければと思います。

栗子(リーズ)氏:
 皆さんと楽しい時間を過ごすことができ,感謝しております。お互いにまったく違うジャンルの作品を作っているわけではないですが,違う視点と違う方法論に触れることができ,とても勉強になりました。ぜひ今後の開発やパブリッシングに活かしたいと思います。また,オトメイトさんと手と手を取り合って交流を深めていきたいと思っております。本日はありがとうございました。

佐藤氏:
 私たちも機会があれば,すごいビルだという御社にご訪問したいなと思っております。

小沫(モー)氏:
 先ほど,佐藤さんから香港と台北にお越しになったことがあるとお聞きしたときは,3人とも「上海にも来ていただけたら」と言っていたんです。ぜひ弊社にいらしてください。

佐藤氏:
 ええ,ぜひ! 本日は本当にありがとうございました。

※本記事は,当日対談の録音とその後のテキスト取材で編集した内容となります

「恋と深空」2024年1月18日全世界リリース決定
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Infoldgames社内
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  • 発売日:2024/01/18
  • 価格:基本プレイ無料+アイテム課金
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