日本ファルコムから2021年9月30日に発売されるPlayStation 4用ソフト「
英雄伝説 黎の軌跡」。本作は同社の40周年記念タイトルにして,
「英雄伝説 空の軌跡FC」から続く人気RPG「軌跡」シリーズの最新作だ。
新しい主人公を迎え,新たな舞台でシリーズ後半の幕開けを告げるストーリーを描いた本作を遊んでみたので,序盤プレイレポートをお届けしよう。
新たな幕開けを告げる「軌跡」シリーズ最新作
爽快で戦略性の高い戦闘システムに要注目!
本作の舞台は,ゼムリア大陸中西部に位置し,主に「閃の軌跡」シリーズの舞台となっていたエレボニア帝国と並ぶ二大国の1つ,カルバード共和国。主人公の
ヴァン・アークライドは,その首都であるイーディスを拠点に,ワケありの依頼ばかりを専門に請け負う
「裏解決屋(スプリガン)」として活動している。そんなヴァンのもとに“ある依頼”が持ち込まれたことから,物語が動き始める。
その依頼主は,名門校「アラミス高等学校」に在籍する1年生の女生徒,
アニエス・クローディル。アニエスは何者かに盗まれてしまった曽祖父の遺品である,
「ゲネシス」と呼ばれる古い導力器(オーブメント)を見つけ出してほしいのだという。そして,このオーブメントの捜索をきっかけに,ヴァン達は共和国の平和を揺るがす巨大な陰謀に巻き込まれていく……。
なぜか警察や遊撃士協会といった表の組織を頼らず,裏解決屋を生業としているヴァンのもとを訪れたアニエスは,盗まれてしまった古いオーブメントの捜索を依頼する
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基本的なゲームの進め方は,裏解決屋としての業務をこなしながらオーブメントの行方を追い,その背後に隠された謎に迫っていくというもの。ヴァン達,「アークライド解決事務所」への依頼は,事務所に直接持ち込まれるもののほかに,各街区の掲示板に特別な方法で掲示されるものがある。後者の依頼には,ストーリーを進めるために必須のものと,そうでないものがあるが,多くの依頼を達成するほど事務所の評価ランクが上がって報酬がもらえるので,どんどんこなしていこう。
スプリガンの仕事は,各所にある掲示板をチェックすることから始まる
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最初はヴァンしかいない解決事務所だが,ストーリーを進めることで新たな仲間が加わっていく。依頼をこなして評価ランクを上げると報酬がもらえるので,積極的に引き受けていこう
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面白いのが,どんな手段や方法で依頼を達成したかによってヴァンの属性が変化する
「L.G.C.アライメント」という仕組みだ。これは,ゲーム中の選択肢によって,LAW(ロウ),GRAY(グレイ),CHAOS(カオス)の3つの属性値が変動し,この値に応じてヴァンのステータスの一部や,ストーリー中盤以降で共闘する組織・勢力などが変化するというもの。本作には,おなじみの遊撃士協会のほかにも,さまざまな因縁のある裏の組織が登場するので,どんな価値観に立って物語を進めるのかは慎重に考えたい。
どんな手段で依頼を達成したかによって,ヴァンの属性が変化する。選択肢は慎重に選ぼう
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首都のイーディスだけでなく,依頼を受けてさまざまな地方に出張することも。のどかな農村や東洋風の街,砂漠の中にある中東風の都市など,各地の景観を見るのも楽しみの1つだ
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そして本作のもう1つの大きな見どころが,従来のコマンド型AT(アクションタイム)バトルと,フィールド上で敵を直接攻撃できるフィールドバトルをシームレスに切り替えられる,新しい戦闘システムだ。フィールドバトルは完全なアクション型の戦闘になっており,キャラクターごとに固有の武器を使った攻撃や回避アクションで戦っていく。
フィールドバトルではアーツ(導力魔法)やクラフト(戦技)を使用できないが,攻撃をヒットさせることでアクションゲージが蓄積し,ゲージが最大になると敵のスタン値を大きく上昇させる
「チャージアタック」を繰り出せる。フィールドバトルからATバトルへの切り替えは□ボタンで即座に行うことができ,敵をスタンさせたうえでATバトルへ移行すると,追加ダメージを与えつつ,敵の行動順を大きく後退させた状態で有利に戦いを展開できる。
フィールドバトルでは,ヴァンは撃剣(スタンキャリバー)による近接攻撃,アニエスは導力杖(オーバルスタッフ)による遠隔攻撃と,武器ごとに異なるアクションでバトルを行う
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ATバトルは,従来と同じコマンド型のバトルとなっており,敵味方の行動順によって戦闘が進んでいく。本作では,ATバトルの新要素として
「S.C.L.M.」(スクラム)システムが採用され,味方と隣接することでパートナーが追撃する
「S.C.L.M.チェイン」や,クラフトやアーツの威力が強化される
「S.C.L.M.サポート」が発動する。基本的には,近くに味方を集めて戦うほうが有利だが,敵の範囲攻撃でまとめて大ダメージを食らってしまう場合もあるので要注意。敵の先制攻撃を受けた場合やボス戦を除き,ATバトルからフィールドバトルへの移行も自由に行える。
フィールドバトルで敵をスタンさせたら大チャンス! ATバトルに切り替え,アーツやクラフト,新システムのS.C.L.M.チェインなどで一気に畳みかけよう
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この,2つの戦闘システムを使った新しいバトルは非常にテンポがよく,「軌跡」シリーズ的に表現すれば,まさに
導力器の発明に並ぶほどのインパクトだと感じられた。弱い敵ならフィールドバトルでそのまま倒してしまえばいいし,強敵を相手にするときもフィールドバトルでスタンを取り,すかさずアーツやクラフトを交えたATバトルで畳みかけることができる。とにかくストレスがなく,爽快なバトルを堪能できるこのシステムは,アクションとコマンドバトルの理想的な融合と言ってもいいだろう。
ATバトル中は,×ボタンの長押しでフィールドバトルに再度移行できる。もう一度フィールドバトルでスタンを狙ったり,そのまま戦闘から離脱したりと戦略性の高いバトルを楽しめる
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また,一部のボス戦ではヴァンが異形の外装をまとった
「魔装鬼(グレンデル)」の姿に変身し,超強力な専用コマンドを駆使して戦うことになる。ヴァンがなぜこんな力を持っているのか,そもそもグレンデルとは一体何なのかはストーリーに関わる大きな謎となっており,ヴェールに包まれたヴァンの生い立ちと合わせて,どのように描かれていくのか気になるところだ。
グレンデルに変身すると,専用コマンドによる強力な攻撃を繰り出せる。この能力の詳細は謎に包まれているが,今もヴァンを苦しませている過去の“悪夢”と関係があるようだ
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「軌跡」シリーズは,2004年に発売された
「英雄伝説 空の軌跡FC」から2020年の
「英雄伝説 創の軌跡」まで,世界観や一部の登場キャラクターを引き継ぎながら,これまでに10タイトルがリリースされている長寿シリーズだ。それだけに,本作から遊び始めても楽しめるのか不安に思う人もいるかもしれない。結論から言ってしまうと,そうした心配はまったく不要だ。かく言う筆者も,エステルとヨシュアを主人公とした第2作
「英雄伝説 空の軌跡SC」以来,およそ10年ぶりに「軌跡」シリーズをプレイしたが,まったく問題なく物語に没入することができた。
本作では,メインキャラクターが一新。「軌跡」シリーズ未体験でも入り込みやすくなった
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実は甘いものに目がないヴァンや,女の子らしい優しさと芯の強さを持っているアニエスなど,物語の中心となる新キャラクター達はどれも個性豊かで魅力的に描かれている
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その大きな理由は,ヴァンを始めとするメインキャラクターが一新され,舞台も新たにカルバード共和国へと移ったこと。もちろん本作にも,これまでの作品から一部のキャラクターが登場するが,過去の事件や出来事についてはさりげなく触れるだけに留まっており,背景を知らなくても置いてけぼりに感じることはないだろう。ゲームを進めるうちに,何となく人間関係がつかめるようにうまく構成されているので,シリーズ未体験の人も安心してほしい。筆者はと言えば,過去にどんなことがあったのかが気になって,これまで未プレイだった作品を遊んでみたくなってしまった。
筆者でもどうにか覚えていた不動のジンや,元●●のレン(ネタバレのため伏字)など,ほかにも新旧さまざまなキャラクターが登場するが,すべてを知らなくても問題なし。個人的には,あんなに小さかったレンが,すっかり大人になっていて感無量だ……
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ファルコム作品らしい丁寧な作り込みと魅力的なキャラクター,シリーズでおなじみの戦術オーブメントを活用した自由度の高いキャラクターカスタマイズ,そしてゲームを盛り上げる素晴らしい音楽はそのままに,RPGとしての完成度をより高めている「英雄伝説 黎の軌跡」。とくに,アクションとコマンドバトルを融合させた新しい戦闘システムは必見なので,ぜひ一人でも多くの人に体験してほしい。「軌跡」シリーズのファンはもちろん,遊びごたえのあるRPGを探しているすべての人にオススメしたい1本だ。
戦闘をサポートしてくれる,シリーズでおなじみの戦術オーブメントは,本作では第六世代の「Xipha(ザイファ)」に進化。支援AIとなる「ホロウコア」,複数のアーツがインストールされた「アーツドライバ」,空きスロットに装着することで多彩な効果を発揮する「クオーツ」を組み合わせることで,自在にカスタマイズできる
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