ガラスを突き破って……ではなく,メールで届いた招待状。よく読んだら,文字は不気味だけど内容はとくに変わったところはない“お仕事のメール”だった
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ベタつくようなイヤな暑さを感じる,とある日の午前零時。薄暗い自室でひとりゲームをしていると突然,“グワシャーッ”とガラスを突き破り,一枚の紙が部屋の中に飛び込んできた。寿命が縮む思いで広げるとそれは,不気味な文字で書かれた
「ソング オブ ホラー シ遊会」の招待状だった。
……というのは虚構の話で,実際はメールでご丁寧な案内ののちに20:00ごろに届いたのだが,
「ソング オブ ホラー」(
PC /
PS4 /
Xbox One)は,2021年8月26日にEXNOAから日本語版が発売されるホラーアドベンチャーである。発売日が近づき,同社が“シ(死?)遊会”ことメディア向けの体験の場を設けたとのことで,その招待状だったというわけだ。
都内某所にある指定の試遊場所に足を運ぶと,広めの屋内スタジオに救急車風のバンが1台止まっていた。試遊はこの無人のバンの荷室で,ということだが,明らかに怪しい……。疑いつつ乗り込むとバックドアが閉められ,そしてスタジオも真っ暗に。多少ビビりながらも「ほうらね,やっぱり」と誰も聞いていないのに強がり,ヘッドホンを付け,コントローラを握り,暗闇の中でモニターに照らし出されているソング オブ ホラーの世界へ。
指定の場所に来てみると,不気味な救急車(風のバン)が……。この世のものとも思えない雰囲気があるが,しかし,ここで試遊できる人間は1時間に1人(1メディア),前後の消毒もあってプレイ時間も30分ほどという制限があり,手前にはアルコール消毒と体温チェックの場所が設けられているなど,現世と変わらない感染症防止対策も取られている
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バンに乗り込み試遊を開始。なお,今回用意されていたのはPS4版である
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スペインのデベロッパ・Protocol Gamesが開発を手掛けたソング オブ ホラーは,とある作家とその家族の失踪事件をきっかけに始まる,
「それ」と呼ばれる名もなき闇の存在に関わる物語が展開するホラーゲームだ。物語はチャプターで分かれており,主人公である編集者の
ダニエル・ノイヤーやその上司の
エティエンヌ・バートランド,元妻の
ソフィー・ヴァン・デネンドといった13人の登場人物(プレイアブルキャラクター)それぞれの視点で,探索や謎解きをしていく。
探索の舞台には,家族全員が行方不明となった作家の家,今は使われていない孤児院や放置された精神病院など,ホラー好きにはニヤリとするようなシチュエーションが用意されている。
ダニエルの家族や知人以外にも,立場の異なるさまざまな人物がプレイヤーが操作できるキャラクターとして登場する
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今回試遊できたのは,イントロダクションとチャプター1の冒頭。探索の舞台は作家の家だ。各部屋で気になるものを調べたり,使えそうな道具を集めたりしながら,この家で一体なにが起きたのかを推理し,失踪した一家を見つける手がかりを探す。基本的に,こうした探索がメインとなっていた。
先に進もうとドアを開けようとしたら,鍵がかかっている。鍵を探していると書斎の机の少し開いた引き出しにそれらしきものがちらりと見えたが,しかし引き出しが錆びて動かないため手が届かない。潤滑油となるものを求めてキッチンや物置に……といった感じで家にあるさまざまなものを集め,ときにそれらを組み合わせて次の場所へと進んでいく。
カメラは固定で,部屋の形状やプレイヤーキャラクターの立っている位置などで視点が切り替わるというクラシックなスタイルになっているため,人によっては遊びにくさがあるかもしれない。しかし,基本的な操作は移動,モノを調べる,ちょっとしたダッシュ程度で派手なアクションや複雑な動きはないため,慣れるまでそう時間はかからないはずだ。
固定の視点のため調べたいものがあるのに選択しにくいということもあったが,Rスティックでキャラクターの向きを微調整することでクリアできた
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暗くて人の気配がない,しかし確実に“何か”がいる……。そんな不気味な雰囲気の家を探索していると,調べている部屋のドアが突然
「バンバンッ!」と叩かれる。「それ」と呼ばれる恐怖の存在が,すぐ隣の部屋にいたのだろう。ここはどうにか,物音を立てずにやり過ごす。
車内で試遊をしている様子。車の中は外から見るより真っ暗で,モニターに照らされた操作方法のプリントがどうにか見えるくらい
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本作の何よりの特徴となっているのが,この怪異を避けながら探索するという点だ。「それ」と呼ばれる存在は高度なAIによって制御されており,“プレイヤーの行動に対応し,予期しない形で追い詰めてくる”という。探索中の部屋に「それ」が近づいてくると,コントローラが震えるのが,かなりの緊張感を与えてくれる。
序盤のみのプレイだったため少ししか体験できなかったが,謎多き「それ」の怪異の形はさまざまあるようだ
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そして驚きなのが,「それ」によって命を奪われたプレイヤーキャラクターは,物語上でも“亡くなった人”としてゲームが進んでいくところ。死後は別のキャラクターにバトンタッチし,さらに調査を進めて次のチャプターに進む手がかりを探していく。もちろん全員がやられてしまったらゲームはやりなおしとなるので,慎重に探索を進める必要がある。
「それ」に捕らわれてしまうとその人物は死を迎え,ゲームから退場してしまう。ピンチになっても,ドアをこじ開けようとする無数の手が伸びてきたら必死に押し返すなどして必死に抗おう
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個人的にお気に入りだったのが“音”の演出。家の中からか,それとも外からなのか――「それ」が近づいているときだけでなく,遠くからも近くからもいろいろな音が聞こえてきて,それが不気味な雰囲気を増幅してくれていたのだ。ヘッドホンやイヤホンでのプレイをオススメしたい。
ドア越しに耳をそばだてて,隣の部屋の様子をうかがうことも可能。怪異を避けるため重要な行動となる
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このようにゲームを満喫していると,また
「バンバンッ!」と何かを叩く音が。しかも何度も,それもヘッドホンの外から。「怖いなァ,怖いなァ。なんか嫌だなァ」そう言いながらヘッドホンを取り,なおも音が響くバックドアのほうを見てみると……
「ギャーッ」
試遊用のバンに恐怖の存在である「それ」らしき何かが襲ってきていた。
見つかったら,終わり――本作のキャッチコピーのとおり,そのまま筆者は(試遊時間の)終わりを迎えてしまったのである。
……ということで,EXNOAのドッキリ企画(?)にも乗っかりながら本作を紹介したが,“何かに見られている”という不気味さと“逃れられない恐怖”の要素はなかなかのものだった。日本語版を待ち望んでいたホラーゲームファンはもちろん,最近知ったという人も,8月26日に発売される本作をチェックしてみてほしい。
ドッキリ企画(?)で登場したお化けのみなさんは,“どんな空間にも最恐のお化け屋敷,ホラーイベントを創る”がモットーのホラーイベント制作会社「怖がらせ隊」に所属するお化けとのこと(公式サイトはこちら)
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この救急車は“デリバリーお化け屋敷”こと「絶叫救急車」。明るい写真だとあまり伝わらないかもしれないが,お化けも救急車もかなり不気味で暗いところで見るとさらに怖い
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記念撮影にも応じてくれた。襲い掛かってきたときもそうだったが,お化けの皆さんもフィジカル・ディスタンシングや感染症拡大抑止をしっかり意識した行動を心掛けているようだ
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