「カプコンカップ11」決勝大会レポート。翔選手がチリの新星Blaz選手を打ち倒し，「ストリートファイター6」世界最強の座に輝く

　カプコンは2025年3月5日〜8日，東京の両国国技館で，「ストリートファイター6」（PC / PS5 / Xbox Series X|S / PS4）のプロツアー決勝大会「カプコンカップ11」を開催した。


　本大会は，カプコンプロツアー2024の決勝大会となるイベントで，世界各地やオンラインで実施された予選大会などを勝ち抜いた48人が日本に集結。世界最強の座と優勝賞金100万ドルをかけて，激しい戦いをくり広げた。

当日の進行を務めたアールさん（左）とRyan Hartさん（右）

　決勝大会は3月5日から実施され，初めに8つのグループに分けて予選リーグ戦が行われ，各グループの上位2名が最終日（3月8日）の決勝トーナメントに進出した。なお，決勝トーナメントはダブルエリミネーション方式で，各グループの1位抜けがウィナーズブラケットから，2位抜けがルーザーズブラケットからスタートしている。

ウィナーズブラケット

ルーザーズブラケット

決勝トーナメントは，ダブルエリミネーション方式の3本先取制で実施された

　日本からは，ときど選手，ふ〜ど選手，翔選手，Shuto選手の4名が決勝トーナメントに進出しているが，昨年国内のストリートファイターリーグを席巻したLeshar選手，3度目のカプコンカップ優勝がかかったMenaRD選手，昨年のEsports World Cupを制したXiaohai選手など，まさに錚々たるメンバーが揃うことになった。


　誰が勝ち抜いてもおかしくないトーナメントでひときわ輝く活躍を見せたのが，日本の翔選手だ。予選リーグ戦でも危なげない動きで1位抜けを決めた同選手が，チリのBlaz選手，アメリカのNoahTheProdigy選手，そしてウィナーズ決勝でLeshar選手を撃破し，ウィナーズサイドでのグランドファイナル進出を決めた。

翔選手。ストリートファイター6発売当初から活躍を続ける日本のニューヒーロー。プロツアーの日本地域ポイント1位で本大会の出場権を獲得している

　一方，ルーザーズサイドは隠れていたニューフェイス，Blaz選手が進撃を開始する。翔選手にルーザーズに落とされたあとは，Xian選手，Shuto選手，NoahTheProdigy選手，AngryBird選手，Leshar選手という強豪相手にリュウを使用して連勝を重ね，グランドファイナルで再び翔選手と相見えることとなった。

Blaz選手。新進気鋭のチリのプレイヤーで現在15歳。南米-東地域1位で大会の出場権を獲得し，予選リーグ戦では5勝全勝で決勝トーナメントに進出している

　ウィナーズサイドにおいて1度敗れたBlaz選手のキャラクター選択に注目が集まったが，Blaz選手はルーザーズトーナメントを勝ち抜いたリュウを選択。翔選手のJPに対し，決して相性のいいマッチアップではないが，ルーザーズを共に戦い抜いたメインキャラクターを信じることにしたようだ。

Blaz選手はウィナーズサイドの翔選手との試合でケンと豪鬼も使用していた

　試合は，Blaz選手がルーザーズからの勢いのままに，翔選手のJPを攻め立てる展開を見せるも，これをどっしりとした立ち回りで受け流し，翔選手が先取していく。しかし，ウィナーズから数えて4連敗中のBlaz選手もこのままでは終われないと，持ち前のプレッシャーを翔選手に掛け続け，貴重な1勝をもぎ取ることに成功する。


　ルーザーズトーナメントにおける圧倒的な内容に加え，流れを変えかねないこの1勝で，Blaz選手の追い上げの可能性を感じられたが，ここできっちりとシャットアウトしてしまうのが翔選手の強さだろう。ピンチに陥ることも少なくなかったが，一瞬の油断も見せることなく丁寧に立ち回り，Blaz選手に2連勝し，見事優勝を決めた。




　なお，大会の模様は，カプコンの公式YouTubeチャンネルにて配信されている。極限とも言える試合ばかりなので，ぜひあわせてチェックしてほしい。

カプコンの代表取締役社長 辻本春弘氏より，優勝賞金100万ドルと優勝カップが授与された

カプコンカップ11優勝 翔選手囲みインタビュー

――カプコンカップ決勝大会が初めて日本で開催され，その大会で見事優勝しました。今の気持ちはいかがでしょうか。

翔選手：
　何も言葉が出てこないってこういうことなんだなって。感無量です。

――翔選手にとってカプコンカップはどんな大会なんでしょうか。

翔選手：
　個人的には一番大きい大会だと思っていて，多くの選手にとってひとつの目標になっていると考えています。日本の国技館開催で優勝できて本当にうれしいです。

――グランドファイナルは極限の緊張のなかで戦っていたと思うのですが，どんな気持ちでしたか。

翔選手：
　いろいろあるんですが，初めての日本開催でほかの日本人選手が落ちていき，最後に残ったのが自分1人ということで，日本の選手のため，応援してくれているファンのため，日本を背負って戦いました。

――グランドファイナルはチリのBlaz選手が相手でしたが，どんな印象を受けましたか。

翔選手：
　Blaz選手には1度ウィナーズで勝っていましたが，ルーザーズの勢いがすごくて，正直再戦したくありませんでした。ただ，自分は合気道のように相手の勢いをそのまま返すような戦い方が得意なので，グランドファイナルでもそれを意識していました。

――Blaz選手がルーザーズを勝ち抜くなかで，何か対策などは用意していましたか。

翔選手：
　とくにはなかったんですが，とにかく勝ちたいという気持ちをもって，気合いで戦いました。

――Blaz選手のリュウはほかの選手とは何が違っていましたか。

翔選手：
　15歳という若さで，この大舞台であれだけのパフォーマンスを発揮できるのが驚きでした。自分は予選リーグの調子が悪かったんですが，緊張もあって実力を発揮しきれないのがふつうだと思うんです。ルーザーズに落ちたときも落ち込んでいるように見えたんですが，そこから立て直して上がってきたのは，本当にすごいと思いました。

――予選リーグの調子があまりよくなかったとのことですが，決勝トーナメントでJPからキャラ変更する気はありませんでしたか。

翔選手：
　決勝トーナメントはJP1本でいくと決めていました。キャラを変えるか考えてしまうと，負けるたびにノイズが入ってきてしまうので迷いはありませんでした。

――翔選手は舞も配信などでかなりやりこんでいましたよね。

翔選手：
　舞は出すかはずっと悩んでいまして，実は大会前に妻とJP1本でいくか，舞を出すかで喧嘩しちゃったりもしていました。

――翔選手は先日結婚したと報告していましたが，競技シーンにおいて，家族がもたらすモチベーションの変化はありましたか。

翔選手：
　モチベーションの変化はありませんが，体調管理など格闘ゲーム以外の部分でとても助かっています。より競技に集中できるようになったのがありがたいです。

――100万ドルの使い道は何か考えていますか。

翔選手：
　とくにないですね。お金って使ったらすぐなくなってしまうので，長くこの業界で活躍するための活動資金に使いたいと考えています。

――昨年優勝したUMA選手は競技シーンを引退してしまいましたが，翔選手は引退などは考えていないのでしょうか。

翔選手：
　もちろん変わらずやっていきます。このシーンにいられる限りはずっと戦い続けます。

――直近の国内の競技シーンでは，Leshar選手の活躍が目立っていました。これまであまり戦う機会がありませんでしたが，実際に戦ってみてどんな印象を受けましたか。

翔選手：
　もちろん強いのは知っていましたし，トーナメントにおいても脅威に感じていました。ただ今日は自分に流れがあったのと，いつもよりもLeshar選手の動きが悪かったような気がしています。今日は勝てましたが，次も勝てるかは分かりませんね。

――翔選手は大会をとおして，ときど選手のみに敗れていますが，ときど選手への印象はどうでしょう。

翔選手：
　きつかったですね（笑）。結局ときどさんには勝てなかったなぁって。次どこで戦うことになるか分かりませんが，次の大会では勝ちたいです。

――ひと昔前と比べてeスポーツが盛り上がってきていますが，そのことについて何か思うことなどはありますか。

翔選手：
　自分が子供の頃は，世間的にゲームはいいものではなかったと思っていて，格闘ゲームを始めたのが中学二年生のときだったんですが，そのときはウメハラさんやときどさんといった一部のプレイヤーしかプロはいませんでした。

　今のシーンは，そのときのプロが盛り上げてくれたからあるもので，おかげで自分もプロとして活動できています。すごくありがたいことですし，今度は次世代に向けて自分が盛り上げていきたいと思っています。

「ストリートファイター6」公式サイト