企画記事
[インタビュー]武将は顔が命!? 「信長の野望」の伝統芸能“武将イラスト”の描き方を戦国絵師らに聞く(二階堂盛義の謎も判明!)
そんな「信長の野望」の絵は,どのように描かれてきたのか?
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今回はシリーズの秘密に迫るべく,“シブサワ・コウ”ブランドのCG部リーダーである,亀井亮太氏と木村勇作氏に話をうかがった。
これまで表舞台に上がることのなかったデザイナーたちが語る,「信長の野望」ならではの描き方や苦悩,武将たちのイメチェン裏話。さらには有益なテクニックまでもを伝授してもらった。シリーズファンのみならず,日ごろから絵を嗜んでいる人もお見逃しなく。
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■亀井亮太氏(写真左)
コーエーテクモゲームス
エンタテインメント制作本部
CG部 シニアエキスパート
1992年入社。「信長の野望・天翔記」から「信長の野望・烈風伝」のCGディレクター。「信長の野望・嵐世紀」から「信長の野望・創造」の2Dパートリーダー。「三國志5」「三國志6」のCGディレクター。「三國志8」から「三國志12」,「三國志14」の2Dパートリーダーを務める。
このほか「真・三國無双5」,「討鬼伝」シリーズ,「ジルオール」,「西遊記」,「信長の野望 Online」などにも携わる。
好きな武将は,黒田官兵衛,松永久秀,龐統。NHK人形劇「三国志」の影響で関羽も好き。
■木村勇作氏(写真右)
コーエーテクモゲームス
エンタテインメント制作本部
CG部 シニアエキスパート
2010年入社。「信長の野望・創造」を経て「信長の野望・大志」「信長の野望・新生」や,「三國志13」「三國志14」,「三國志 覇道」「信長の野望 覇道」の2Dパートリーダーを務める。「Rise of the Ronin」のほか,Team Ninja作品のキャラクターデザインも手がける。
好きな武将は,北条氏康,伊達政宗。君主に重用され,部下にも慕われて優秀そうなため。張遼も漢らしい・潔いイメージがあってカッコいいという理由で好き。
タイトルの顔,信長の制作期間は2か月!
4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。
まずは,お2人の日ごろの仕事内容からお聞かせください。
亀井亮太氏(以下,亀井氏):
私は以前まで自分の手で絵を描いていましたが,最近はデザインチーム全体の管理が主な業務です。当社には複数のゲームブランドがあり,1ブランドのなかにもいくつかのデザインチームがありますが,私は“シブサワ・コウ”ブランドに関わることが多いです。
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木村勇作氏(以下,木村氏):
私は主に,シブサワ・コウ作品の2Dアート関係の進行や品質を管理しています。実務としては武将スチル,メインビジュアルなどの各種デザインを担当します。言ってしまえば,管理だけでなく作業もしつつ,ブランド全体の品質を上げていこうという立場ですね。
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4Gamer:
アートの品質管理というと,どんなことをチェックされるのでしょう。素人考えですが「ここちょっと曲がってるよ」なんて指摘も?
亀井氏:
ざっくり言うとそうです。ときには担当者に「前のほうがよかったんじゃないかなあ」なんて言っちゃいますが……(笑)。
とはいえ,今はデザインチーム全体を見る立場ですので,作品全体の方向性を眺めて調整する役割が大半です。1枚1枚の絵にああだこうだ言うのは,木村のほうがメインでやってくれています。
木村氏:
我々には今まで“シブサワ・コウ”ブランドが培ってきたノウハウがあるので,それを踏まえて制作物に過不足がないかをチェックしています。足りないところは,自分で手を入れることもあります。
4Gamer:
足りない,と言いますと?
木村氏:
髪や髭などの具体的なパーツではなく,言うなれば“らしさ”ですね。例えば,武田信玄なら「どっしりと構えている感じ」。それを表情や恰幅のよさで表したいのですが,目力や威圧感を感じさせなかったり,体型がちょっとスリムになっていたりすると,物足りないんですよね。
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4Gamer:
腑に落ちました。お2人のお仕事は“シブサワ・コウ”ブランドへの理解と,感性を言語化する技術が不可欠なのですね。
亀井氏:
そんなカッコいい言い方ではないかもですけれど(笑)。
ただ,木村の言うように重要なのは“魅力的ならしさ”です。我々もそこを重点的にチェックしますし,描いているデザイナーたちも一生懸命にやってくれています。
それに,昔は「この武将を描いて」のゼロベースから制作スタートでしたが,昨今は企画チームが「この武将はこんな恰好で,表情はこうで」とオーダーしてくれるようになって,チームも大助かりです。
木村氏:
今は社内チャットで認識を擦り合わせながら進めていますね。ラフを何パターンか描いて共有するのも楽になりましたし。
4Gamer:
武将イラストは基本,どのようなイメージを持って描くのでしょう。
亀井氏:
「信長の野望」の絵は基本的に,“その武将が活躍した,どこかの場面を想定した姿”で描くことが多いです。信長なら「桶狭間の戦いに打って出る,すごみのある感じのシーン」などをモチーフにします。
また,武将スチルはゲーム内の演出に使いやすいことも大切で,例えば「(絵としての)動きを出そう」など,作品ごとの方針がありました。対してメインビジュアルは,シリーズ作品ごとに1枚の絵でシチュエーションを感じさせることを想定してきました。
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4Gamer:
あらゆる要望に応えるデザインチームの底力……!
そもそもの話,お2人の入社志望はなんだったのですか。
亀井氏:
もう30年以上も前のことですが,私は美大生で,とにかく絵を描きたかったんですよ。でも,当時は絵を描く仕事がすごく少なくて。画家になるというか細い道はありましたが,サラリーマンとしてお給料をもらえる絵の仕事はごくわずかでした。
そんななか,友人がコーエー(現コーエーテクモゲームス)ファンで,「就職説明会に行ってみようよ」と誘ってきたんです。それがきっかけで面接を受けたら採用されました。当時の私はゲームをやらないどころか,歴史モノも得意ではなかったんですけど,「ここならとにかく絵を描けそうだ!」という一心で入社を決めたんですよね。
あのころゲーム業界では,子供に好まれやすい元気なカートゥーン調の作風が主流でしたが,コーエーに関しては絵画タッチでしたので,作風的にいいなと思ったのも後押しになりました。
4Gamer:
コーエーファンのご友人,ナイス采配ですね。
ちなみに美大ではなにを専攻されて?
亀井氏:
グラフィックデザインです。
4Gamer:
ちょっと意外です。グラフィックデザインというと,ポスターやWeb,立体造形物のデザインを学ぶ学科なのでは?
亀井氏:
ええ。ですから正直,専攻を間違えました(笑)。
私は絵を描きたかったので,それなら日本画や油画に進めばよかったんですけど,単純に進路を間違えましたよね。
それでいうと木村も同じグラフィックデザイン出身ですが。
木村氏:
私は恥ずかしながら,美大卒業後は就職する気があまりなかったんですよね……(笑)。人生に迷っていたといいますか。
だけど,大学4年生の夏に母親が大きな病気をしたので,就職して安心させなきゃと思い直しまして。ちょうどコーエーテクモゲームスが秋の採用募集をしていたので,そこで運よく拾ってもらえた形です。
亀井氏:
そうだったんだ! 知らなかったなあ。木村の世代だと,うちはもうそれなりに狭き門になりつつあったと思うけど。
木村氏:
私はほんと,どうにか滑り込んだ感じです(笑)。
そして入社後はモーションチームに配属されましたが,どうしても絵が描きたくて,デザインチームに異動させてもらったんです。
4Gamer:
いずれも絵を描きたい情熱が原動力にあったと。
以降はともに数多くの作品を担当されていますが,ご自身にとってデビュー作と位置づけている作品はどれでしょうか。
亀井氏:
デビュー作とするなら,シリーズ6作目の「信長の野望・天翔記」でしょうか。入社以降はデザインチームのリーダーに従い,いちスタッフとして仕事に取り組んでいましたが,前任者の退職に伴い,天翔記からチームの責任者に任命されたんです。
このときの信長の顔グラフィックスも私が描いたものでして,私の代表作だと思っています。当社(コーエーテクモゲームス日吉本社)の中庭のタイルアートにも採用されましたしね。
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4Gamer:
天翔記の信長は,知性や才気を感じられるお顔ですね。タイル絵も日吉本社の名所で,航空写真やGoogleマップでも見られるという。
それにしても,こうして歴代作品の信長を並べると,ひと目で分かる“らしさ”がありつつも,少しずつ趣が異なっていますね。
亀井氏:
私のときも変えるつもりはなかったのですが,描いているうちに「自分の理想の信長」が出てしまったのかもしれません。
4Gamer:
木村さんのほうは,代表作はどれにあたりますか。
木村氏:
シリーズ15作目の「信長の野望・大志」だと思っています。前作「信長の野望・創造」までは亀井のもとで従事していましたが,大志でデザインチームのリーダーを引き継ぐことになったんです。
当時,リーダーを担うのは初めてだったので,いろいろとつかめていなかったこともあり,大変だった記憶があります。
4Gamer:
そのときは,どんなことに苦戦したのでしょうか。
木村氏:
大志はシステム上,「内政」と「戦闘」とを区分けする作りで,1武将あたり2枚のイラストを用意しました。そのため,平時は落ち着いた印象に,戦時は激しい印象にと,描き分けが求められました。
ですが,動きを出そうとすると武将たる重厚感とバッティングしてしまい,要求を両立させるのにものすごく難航しまして。
明日発売「信長の野望・大志」の新規武将イラスト126枚を一挙掲載。天下取りに挑む者たちの面構えをご覧あれ
2017年11月30日に発売となる「信長の野望・大志」には,2000人以上の武将が登場する。それぞれのイラストを見るだけでも飽きないのだが,本稿では,本作のために新たに描き下ろされた武将イラスト126枚を一挙に掲載しよう。
4Gamer:
そのころ,亀井さんに相談されたりは?
木村氏:
相談しましたよね。
亀井氏:
2人で相談し合ってやってたね。
木村もこの時点でやりたい方向性を持っていましたが,多くの人が携わるゲーム作りですからね。上長たちの意見も加味する必要があったり,私も彼に任せすぎた部分があったりで,苦労をかけちゃったかなと。
木村氏:
あれも今では思い出ですね。
4Gamer:
長いお付き合いなんですねー。
昔を振り返って,お互いの第一印象は思い出せますか?
亀井氏:
当時は「ナヨッとしているなー」って思った気がします(笑)。
木村氏:
亀井は私の入社当時からずっと上長なので,“上長の亀井さん”な印象のままですね。一昔前は私のレベルが低いために,亀井から厳しいことも言われていましたが,今は信頼してもらえている実感があります。
以前よりも話しやすくなりましたし(笑)。
亀井氏:
いやいや,あっと言う間に追い越されたよ(笑)。今の彼は本当にうまいです。私としては,親の役割を勤め上げた安堵感すらあります。
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4Gamer:
ステキな師弟関係のようで。
話を戻して,イラストの制作期間はどれくらいなのでしょう。
木村氏:
デザイン自体は,1武将1枚を5日間ほどでしょうか。
もちろん,作業前の打ち合わせや,作業後の仕上がりチェックなどもあるので,完成までのトータルだと1か月から1か月半,順調にいったら3週間が目安ですかね。それも武将次第ですが。
亀井氏:
やっぱり信長などの有名武将は,完成までに2か月はみておきたいですよ。ただ描くだけじゃなく,みんなの意見を集めて反映させることもやっていると,それくらいはかかります。
4Gamer:
トータル期間はなんとなく予想していましたが,デザイン自体は5日ほどで描けてしまえるとは。思いもよりませんでした。
木村氏:
今はほぼすべての武将イラストを分業体制でやっているので,そのおかげですね。ラフや清書,着彩の実作業は約1週間で終えられます。
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4Gamer:
へー。私はてっきり,スタッフさんが武将を数名ずつ担当して,0から100までやっているのかなって想像していました。
「信長の野望」の厚塗りな絵柄を眺めていると,「ははーん。これとこれはきっと同じ人の絵だな」って見えてくるのも楽しいですし。
亀井氏:
そうした手癖みたいなものはあるかもしれません。木村も私も,絵を見ればどのスタッフが描いたのかはすぐに分かりますし。
ただ,最初から最後まで1人で描くことは少なくなりました。デザインチームは1チームあたり,海外スタッフも含め約20名いて,タイトル1本につき100〜150人ほどの武将イラストを描く必要がありますので。
4Gamer:
そのうえで,個々人は「描きたいです!」と立候補できるんですか。
亀井氏:
ちょいちょいありますね。
ただし,描きたいもの,得意なものばかりを振り分けると技術が偏ってしまいます。チームのみんな,それぞれ描きたい対象はいろいろとあるでしょうが,基本的に「どんな人物でも描けるようになるお仕事」として,趣味嗜好は加味せず,万遍なく振り分けています。
木村氏:
それと当社は抱えるタイトル数は多いので,どれか1作品に集中していられる時期がほとんどないんですよ。
ですから,「今はこっちのタイトルが佳境だからみんなでやろう」「こっちのラフは隙間時間にできそう」「だから着彩はあの人にお願いして」「その仕上げは自分でやろう」などと,臨機応変な仕事場です。デザインチームに関してはタイトルの垣根もまったくないですし。
亀井氏:
作風的にご想像がつくかと思いますが,「信長の野望」と「三國志」は同じデザイナー陣が担当しています。私たちのチームは厚塗り系の絵柄を得意としていて,そのなかで持ち回りながらやってきました。
ですから,上杉謙信を描いている隣で関羽が描かれていたり,1人で両方を描いたり,さらにブランド外のTeam Ninja作品のキャラデザをやりつつ,ルビーパーティー作品の背景を仕上げたりも日常茶飯事です。
私はゲーム業界以外は明るくないですが,おそらく“アニメ業界ほどきちんと区分されてはいない分業制”って感じですね。
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4Gamer:
なんだか,内政で適材適所に武将を配置しているかのようですね。複数タイトルを同時進行というのも驚きですし。
でも,並列して作業すると途中で混乱してきたりしませんか? 謙信と関羽のお髭をあべこべで描いてしまったりとか。
木村氏:
混乱することはないですね。仕上がりをチェックする立場になってからは,「午前は信長」「午後は三國志」なんて分けたりもしますし。
亀井氏:
デザインチーム責任者のあるあるだね。
絵画タッチなドット絵,極まる
4Gamer:
過去のお話からだと,亀井さんのドット絵時代はどうでしたか。
亀井氏:
ドットのこと話し始めたら,長いですよ(笑)。
私が入社したばかりのころ,武将イラストは縦64ピクセルのキャンバスにドットを打つ,絵画というよりパズルのような作業で制作していました。当時は16色のカラーパレットしか使えず,しかも武将は8色で描かないといけない。絵の具のように色を混ぜられず,8色の並び……我々はタイルと呼んでいましたが,タイルを隣り合わせにして,どうにか中間色に見えるように調整したりして。
私は絵を描きたくて入社したので,「これは絵と言えるのか……」なんて,当初はだいぶガッカリしたのを覚えています。
4Gamer:
当時のドット絵師ならではのエピソードですねー。
亀井氏:
ちなみに8色のパレットを決めるのは,デザインチームの責任者がプロジェクトで最初にする仕事でした。
1度でも決めてしまったなら,もう以降の制作中は変えられないので,8色だけで肌の色から背景の壁からなにもかもを作る。私も責任者になったときは,先輩方のパレットをよく参考にしたものです。
4Gamer:
そのときは何色を選んだのでしょう。
亀井氏:
白と黒は必須で,赤・青・緑の原色も使います。だから残るはあと3色で,これをどう選ぶかが問われました。私は薄い青,黄色,薄い黄色で構成して,やりくりしていましたね。
そんなんだから,当時はグレーがすごくうらやましかった。うちのチームとは違うやり方で制作されていたタイトルでは,16色をフルに使っていて,パレットにもグレーが3色も並んでいて。「いいなあ。贅沢だなあ。これもう殿様パレットだなあ」って妬んでました(笑)。
4Gamer:
殿様パレット(笑)。私には想像しにくにのですが,実際のところ,その8色でどうやって灰色を表現していたのでしょう。
亀井氏:
薄い青と薄い赤を並べて市松模様のタイルにするんです。近くで見ると色がガッタガタのブロックにしか見えませんが,引きで見るとちょっとグレーっぽく感じるんですよ。濃くすれば暗いグレーに見えますし,青と赤のどちらかが強いと,その色味に引っ張られます。
顔の暗い部分に使っていたのは赤と緑です。これもまた市松模様に並べて茶色のように見せていました。ですから,人の肌を描くにも関わらず,ベージュのような色はいっさい用いていなかったですよ。
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今度は「信長の野望」14タイトルを一気にプレイ。着実に進化を続けてきたシリーズの歴史を振り返る
コーエーテクモゲームスの人気シミュレーション「信長の野望」シリーズの最新作「信長の野望・創造 戦国立志伝」が2016年3月24日に発売される。「三國志13」発売直前に掲載した三國志シリーズ全作品プレイレポートへの反響が大きかったので,今回は「信長の野望」でも既存の14タイトルを一気にプレイしてみた。
- キーワード:
- PC:信長の野望・創造 with パワーアップキット
- シミュレーション
- CERO A:全年齢対象
- コーエーテクモゲームス
- プレイ人数:1人
- 信長の野望
- 戦国時代
- 日本
- 歴史物
- PC:信長の野望・創造
- PC:信長の野望・烈風伝
- PC:信長の野望・天下創世
- PC:信長の野望・蒼天録 パワーアップキット
- PC:信長の野望・蒼天録
- PC:信長の野望・革新 パワーアップキット
- PC:信長の野望・革新
- PC:信長の野望 嵐世記
- PC:信長の野望・天翔記 with パワーアップキット HD Version
- PC:信長の野望・嵐世記 with パワーアップキット
- PC:信長の野望・天道 パワーアップキット
- PC:信長の野望・天道 with パワーアップキット
- PC:信長の野望・天道
- PC:信長の野望・天下創世 with パワーアップキット
- PC:信長の野望・創造 戦国立志伝
- PC
- プレイレポート
- レビュー
- 企画記事
- ライター:徳岡正肇
4Gamer:
まさに職人技ですね。
亀井氏:
私も制約があるほうが燃える性質だったみたいです。
周囲にもドット職人と呼ばれるような人がいっぱいて,なかにはキーボードで直接描く人もいました。キーボードを補助ツールとして使うんじゃなくて,筆代わりにキーを打っていた人たちです。
私も入社3年目くらいで天翔記の信長を描きましたが,そのときは脂が一番乗っていましたね。かわいらしいタッチの作品が主流のなか,絵画タッチで描いていた数少ないメーカーという自負もあり,自分でも「ドット絵の表現なら誰にも負けない!」くらい思っていました。
4Gamer:
あっ,今更ですが,入社1992年で,3年目にはチームリーダーになっていたとなると,かなり早いキャリアアップだったのでは。
えっ,リアル「太閤立志伝」?
亀井氏:
そうですね,私の絵のキャリアは絶頂期を迎えていましたね。まあ,ここからオチがつくんですけど(笑)。
ご存じのとおり,1990年代はコンピュータの性能が飛躍的に進化し,それに伴い制作手法も変わり,ゲームにドット絵が必要とされなくなりました。ずっと続くと思っていたドット時代が終わったんです。
それまで8色で生きていた人間ですからね。「256色で描くって!? 無理無理そんなパレット作れない!」なんて思いましたし,ソフトも技術も毎年新しくなって,今や1677万色のフルカラー。本当に,グラフィックス界隈の進化にはすさまじいショックを受けました。
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木村氏:
ハードの進化で,学んできた技術の生かしどころがなくなるのは,ほんと恐ろしいですね……。
でも,話を聞いていると純粋に楽しそうだなとも思いますよ。いろいろな試行錯誤が求められるのでしょうが,やることは明確ですから。私もドット絵制作は夢中になれる気がします。
今の時代はもはや,やれることが多すぎて,逆にどう絞るかを悩まなくてはならない時代になっていますし。
亀井氏:
まあ,フルカラーになって「好きに描いていいよ」となってからも,なんとかやってこられたのは唯一の幸いだったかな(笑)。
キーボードは,絶対!
4Gamer:
そんな時代を経てのチームは現在,デジタル作画環境ですか。
木村氏:
今はほぼ100%,デジタル作画です。
当社ではどんな構図やポーズにするかの大まかなデザインを「大ラフ」と呼び,線画にした状態を「ラフ」と呼びますが,大ラフをアナログで描く人はいます。ですが,そこから先は分業のためのデジタルデータが必要なので,アナログのまま仕上げることはないです。
亀井氏:
だいたいタブレットだよね。描画ソフトもPhotoshopで。
木村氏:
最近はクリスタ(CLIP STUDIO PAINT)を使う若手も増えてきましたけどね。チームの9割以上はPhotoshopですよね。
亀井氏:
絵を描くだけなら,iPadのProcreateだってアリなんだけど,プログラマーに渡すときにイラストデータとして整えるという一点で,今でもやっぱりPhotoshopは優れています。
木村氏:
長く続くシリーズだけに,各所から「以前と同じ納品の仕方でお願いします」と言われると,おのずとPhotoshopになりますし。
亀井氏:
正直,描画ツールとしてだけ見たら,私ら管理者的にはライセンス料がコスト面で悩ましいし,ほかにも優れたソフトはあると思うんだけどね。でもやっぱり慣れが大きいから,とどまっちゃう。
木村氏:
ですねえ。私もPhotoshopじゃないとどうしても描き味が違ってくるタイプなので。一応,ほかのソフトも触れてみたりはしますけど,最後は慣れ親しんだPhotoshopに戻ってきちゃいます。
4Gamer:
ソフト以外にも,ツール類にこだわりはありますか。
亀井氏:
キーボードは手放せないですね。作業中はショートカットキーが必須なので。デジタル世代の人はタブレット画面だけでもやれてしまいますが,私たちはキーボードが欲しいんです。絶対に。
大きなタブレットのほうが描きやすくても,デスクにキーボードを置くためだけにタブレットをサイズダウンさせるくらいです(笑)。
キーボード自体も,余計なキーがない英語配列使用を使います。長年にわたって使い込みすぎて,印字もすり減って消えました。
木村氏:
私も英語配列ですね。違うキーボードを使う場合も,ショートカットキーはいつもと同じ設定に変えます。やっぱりCtrlキーの位置。これがもう左手が記憶している位置じゃないとダメなんです。
亀井氏:
そうそう,配置が変わるとキツいよね。ショートカットキーはもはや体に染みついていて,無意識レベルで使うから変えられない。
そのかたわらで,左手用デバイスをスイスイ使いこなす若手を見ると,うらやましいけどできる気がしない(笑)。
4Gamer:
それほどまでにキーボード愛をお持ちだとは。
ほかに必要なものでいうと,武将の資料などはいかがでしょう。
木村氏:
歴史関係の資料は,デザインチーム共用の本棚で見ます。資料をずっと手元に置いておきたい人は自費で買ったりもしていますね。
亀井氏:
今どきはインターネットでいろいろと調べられますが,やはり歴史ゲーム作りでは情報が足りなかったり,参考画像が小さくてよく分からなかったりしますので。我々にとって書籍は必須です。
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4Gamer:
過去には「氏名や逸話は分かるが,容姿の情報がほとんどない武将」もいたかと思います。そういうときの制作はどうされたのでしょう。
木村氏:
多くの場合,デザイナーが創作するというよりも,企画チームのアイデアをもとに描いてきました。
そのうえで我々は,その武将をどのように見せていくか。カッコよくかコミカルか,肉付けや着付けはこうで……と組み立てていきます。
4Gamer:
いわば武将のスタイリストさんですね。
あと,お姫様はどうでしょう。姫君は容姿や品々の手がかりがほぼないばかりか,文献に名前が残っているだけの場合も多いですよね?
亀井氏:
そうなんですよ。だから姫は長年,めちゃくちゃ苦労してきました。みんな着物の形はだいたい似通ってしまうし,髪型もいわゆる姫カット。並べると,どうしてもシルエットが近似してしまいます。
4Gamer:
でも,「信長の野望」のお姫様は性格が伝わってくるような絵姿で,美人バリエーションの多さもすごいです。
伊達政宗の正室である愛姫や,浅井3姉妹の次女・初さんはいかにも聡明な奥方の印象ですし,奥方と一口に言っても,ねね様は包容力と親しみやすさを感じるし,寿桂尼様は思慮深さや強さがにじんでいる。
戦姫として伝わる成田甲斐ちゃんや,立花誾千代ちゃんは凜とした表情が最高です。それにガラシャちゃんや瀬名姫の憂いのある感じとかも,なんなんですか! 帰蝶さん,淀殿はツンとした美人なんだけど,それぞれツンの方向性が異なるんですよね。あーもう早川殿もかわいいし,千姫の笑顔って誰に向けたものなのかしら切ない……などなど。
お姫様のイラストには語りつくせぬ奥深さがあります!
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木村氏:
ありがとうございます(笑)。姫は我々がずっと抱えてきた課題の1つなので,そう言っていただけるとホッとします。
亀井氏:
なんとか特徴を出そうと小物を持たせたり,「この姫ならこういう所作をするんじゃないか」と考えてみたり,毎回悩みの種だったもんね。
木村氏:
ええ。ときには大河ドラマや,ファッションデザイナーの独創的な衣装の色使い,模様の入れ方などもヒントにしてきましたし。
もちろん,それらのデザインはそのまま反映するわけではなく,あくまで要素をくみ取る形で参考にさせてもらっています。
おかげさまで「この髪型がイケるなら,これもアリかも」などと,表現的にやりすぎかどうかの判断基準も徐々にできてきました。
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- インタビュー
- ライター:本丸猫左衛門
- カメラマン:永山 亘
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
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