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[インタビュー]武将は顔が命!? 「信長の野望」の伝統芸能“武将イラスト”の描き方を戦国絵師らに聞く(二階堂盛義の謎も判明!)
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印刷2025/11/18 08:00

企画記事

[インタビュー]武将は顔が命!? 「信長の野望」の伝統芸能“武将イラスト”の描き方を戦国絵師らに聞く(二階堂盛義の謎も判明!)

あの二階堂さんの誕生秘話!?


4Gamer:
 やりすぎか否かでいうと,「信長の野望・蒼天録」から一躍人気者になった,「ひょえー!」でおなじみの二階堂盛義さんなど,ときおり表情の豊かな武将がいましたよね?
 率直に,お2人は二階堂さんの制作には携わりましたか。

ネットの一部で一世を風靡した「二階堂盛義」
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木村氏:
 二階堂さんがあの描かれ方になったのは,私が入社前のことですね。
 というかあれ,亀井さんでしたよね?

亀井氏:
 私が描いたものではないのですが,もろに携わりましたよね。
 まず,二階堂さんは“ああなる”何作か前から,口をちょっと開けた姿で描かれていました。昔は顔グラフィックスのサイズが小さく,せまい枠内で個性を出す必要があったのも一因にあります。
 というのも,武将イラストはシリーズ作品の新旧を含めると,同じ武将でも違う武将でも何バリエーションもあります。それらを並べると正直,誰が誰なのか分からないくらい同じに見えてしまうんです。
 そこで「もっと顔の特徴を強められないか」とチーム内で相談があり,創意工夫をこらしていくうちに,ああなってしまい……。

4Gamer:
 亀井さんは描いたわけではないけれど,GOを出したと?

亀井氏:
 ええそうです。デザインは別の者ですが,当時の責任者は私でした。振り返ると,1日に100人や200人の武将を整えねばならず,時間も限られていましたから。「ハイハイハイ! 次次!」といった具合でチェックしていった結果,ああした名物武将がすり抜けまして。
 個性的な表情やポーズの武将はほかにも何人かいましたが,なかでも二階堂さんと隈部親永さんは注目され,当時の某インターネット掲示板のヘッダーにまでなってしまっていました。
 そうした反応を目にして,「さすがにやってしまったか……」と後続作品で戻す傾向にしたものの,彼らはすでに人気者になってしまい。

二階堂盛義と両翼を担った「隈部親永」
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4Gamer:
 「信長の野望」40周年記念の歴代顔グラフィック人気投票では,二階堂さんが堂々の1位で,DLC化までされていましたね。

亀井氏:
 ありがたい限りですが,今後ああした方向性のデザインを増やしていくかというと,もうできないかなと思います。
 私たちが題材にしている日本の戦国時代は,今でも全国各地に武将の末裔の方々がいらっしゃったり,武将が根ざした地域で敬愛されていたりします。ですから,我々は敬意をもって描かなければならない。
 こう言うと「じゃあ,あのころはよかったのか」という話になってしまうのですが,当時は必死で作っているうちにああなってしまいまして。あれらは,あの時代だからこそ生まれてしまった産物と言えます。

木村氏:
 私としては少し悔しいですけどね。
 亀井さんが言う「やりすぎた」はよく理解できますが,あれほどインパクトのあるキャラクターを描いたんですから。
 とはいえ,昨今の「信長の野望」シリーズでは,有名武将のカッコいい姿のほうが需要が高いですからね。そこが難しい。

亀井氏:
 今はいろんな意味で無理だよね。史実の人物ではなく,架空武将の顔グラフィックスとかならアリかもしれませんが。

4Gamer:
 「信長の野望 出陣」や「信長の野望 覇道」では,ユニークな表情の武将をプレイヤーアイコンにしている人をよく見かけますし。一定の需要はあると思うので,今後のチャレンジに期待しています!


格のレンジを広げるには


4Gamer:
 これも個人的に聞いてみたいのですが,コンシューマゲームとモバイルゲームでは,武将を描く方針に違いがあったりするのでしょうか。

木村氏:
 ありますね。コンシューマとモバイルでは根本的に,デザインの目指す方向性が異なります。例えば「信長の野望」なら,コンシューマでは腰を落ち着けてプレイしてもらうための絵を目指し,モバイルなら大仰でダイナミックな動きのある絵を目指しています。
 モバイルではさらに,どの武将もカッコよさを底上げする方向で描いています。傾向としてはポージングや演出,キラーンとするエフェクトなどで,高レアな武将ほどを盛るようにしています。

4Gamer:
 モバイルだと,どうしても「レアリティ」の概念があり,SSRがキラキラ感を出す一方,Rは質素に……といった傾向が業界の常かと思います。こうした描き分けにも,なにかルールはありますか。

木村氏:
 やはり装飾や演出については差を出すものの,我々としてはデザイン自体のクオリティには差をつけず,レアリティが低いからタッチを簡易的する,といったことにはならないよう心がけています。
 そのうえで,盛りを足さないというよりかは,プレイヤーさんの目を引きすぎないよう「要素は引き」で描いていくイメージですね。

※画像は「信長の野望 出陣」より
画像ギャラリー No.054のサムネイル画像 / [インタビュー]武将は顔が命!? 「信長の野望」の伝統芸能“武将イラスト”の描き方を戦国絵師らに聞く(二階堂盛義の謎も判明!)

4Gamer:
 とても分かりやすいです。

木村氏:
 逆にコンシューマでは,言い方はアレですが,「カッコ悪い人はカッコ悪く描いていこう」の方針なんですよ。
 モバイルではなるべく全員をカッコいい系にまとめようとしているのに対して,コンシューマではカッコいい以外の要素,コミカルさなどの個性をあえて強調して掘り下げているんです。

亀井氏:
 それだけに,笑顔が似合う武将が貴重なんですよね。

4Gamer:
 笑顔……といえば姉小路頼綱さん。
 いいですよね。人気があるのも納得の笑顔。

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木村氏:
 まさにそこなのですが,例えばあの笑顔を有名武将でやろうとしたら,とても難しいんです。戦国武将としてのイメージ的にですね。おそらく社内からも「これ目を開けさせて」と修正指示を出されます(笑)。

亀井氏:
 有名どころで笑顔OKなのは,秀吉と前田慶次くらいかなあ。

木村氏:
 不敵な笑み,という表現だと大丈夫なんですけどね。満面の笑みは人を選びますよね。姫ならほほ笑みをやりやすいですが。

4Gamer:
 姫の笑顔,たまりませんよね……。

※画像は「信長の野望 覇道」より
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※画像は「信長の野望 出陣」より
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木村氏:
 男性武将も笑顔にはさせられるんです。ですがやはり,強さや精悍さが先立つ人たちなので,合わせる表情が限られてしまうんですよ。

4Gamer:
 そう聞くと,二階堂さんのハマり具合がより味わい深いです。


お絵描き好き必見のテクニック


4Gamer:
 描き分けの話だと,「武将の年齢」はどうでしょう。
 作品によっては若いころの信長や秀吉,あるいは年齢を重ねた姿などまちまちですが,描き分けではどんなところを意識するのでしょうか。

※画像は「信長の野望・大志」より
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木村氏:
 主には「顔の表現」ですね。肌のハリやシワ,輪郭もです。人間は歳を取ると輪郭が下がっていきますよね? そのバランスを変えつつ,人物のよさを出すバランス感を詰めていきます。
 ここに関しては亀井がマニュアルを作成していて,「若いときよりも鼻は長くする」「アゴは大きくする」などの方針で整えています。

4Gamer:
 そんなマニュアルが!? 絵を嗜む人が切望しそうです。

亀井氏:
 キャラクターに歳を取らせようとしたとき,ありがちなのはシワやほうれい線,ヒゲをつけるなどの表面的な表現です。
 ですが我々は,顔の比率やシルエットを変えるなどし,表面的な手法以外で変化を出してから,表面に着手することを大事にしています。

木村氏:
 あとは姿勢でしょうか。腰の曲がった信長などは極端ですし,単純にイヤですよね? 基本は「その武将の一番いいとき」を表現したいので,老年の武将でも,カッコいいおじいちゃんを目指しています。

4Gamer:
 カッコいいおじいちゃん,最高ですよね。
 ただ,シリーズをとおしておじいちゃんで描かれがちなご長寿武将……宇佐美定満や北条幻庵らの若い姿も見てみたくはありますが。

※画像は「信長の野望 出陣」より
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亀井氏:
 そこは制約次第ですね。「信長の野望」では基本,1武将につきイラスト1枚で作っています。先ほど話に挙げた大志の仕様は例外で,あれはちょっとリッチな作りでしたので。
 そのうえで,おじいちゃん武将も若いころの活躍がありますが,1枚に絞るとなるとやはり,めざましい活躍を見せた年齢に焦点を合わせることになります。結果,老いてから有名になった人ほど固定されがちで。

木村氏:
 世間の人々が抱くイメージも意識しないといけませんしね。

4Gamer:
 そういえば「三國志」では年齢などに応じてイラストが差し替わる仕組みもありましたが,「信長の野望」ではそういうのありましたっけ?

亀井氏:
 信長や伊達政宗,あと徳川家康みたいに,若いころは金溜塗具足(きんためぬりぐそく),関ヶ原の戦いではシダの葉の前立の歯朶具足(しだぐそく)にと,時期ごとの変化を反映した前例はあります。
 秀吉も若いときは足軽の恰好ですが,そのあとは馬藺(ばりん)の兜でドーンと太閤らしさを見せたりとか。
 そうした武将たちの出世の表現は,なるべく史実に合わせて挑戦しました。けれど,「三國志」ほど自由にできないのがネックでして。

木村氏:
 「信長の野望」では,そういうよく知られている天下人ではやれても,全体的にやりづらいんですよね。
 「三國志」の場合,貫禄を出すために冠を足したり,衣装を豪華にしたりで立身出世を表現する例がありましたが,そこは“創作の余白”があったからです。対して「信長の野望」の場合,身につけられた甲冑や着物が現存している例もあり,創作がしづらいんです。
 史実があるなら寄せないとならないし,寄せきれないとファンタジーになってしまう。「髷(まげ)だけ変えようか?」というのもちょっと違いますし,かといって登場武将を一律で派手にしても,結局は横並びになるだけ。変化を出すのは「三國志」よりもハードルが高くて。

※画像は「信長の野望 出陣」より
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4Gamer:
 資料が残っているからこその悩みなんですね。
 髷といえば,各武将の「月代(さかやき)を剃るのか,剃らないのか」の分け方もどうされているのでしょう。

亀井氏:
 「信長の野望」ではこれまで,“その武将がシリーズに初登場したときの髪型や雰囲気”を踏襲してきました。
 なら初登場のときはどうしたかというと,シリーズ初期のデザイナーがもうほぼいないため,当時の考えは知れないものの,後続作品では原則,残された肖像画を参考にしたり,企画チームの提案や映像作品を参考にしたりが大半でした。一度定着させた姿もやみくもには変えませんので,今後,信長が月代を剃ることはおそらくないと思います。
 まあ,肖像画やシリーズ初期では剃ってますから,どちらもアリと言えばアリなんですけど(笑)。現状は「信長は総髪」ですし,この方針はよほどのことがない限りは変わらないはずです。


麻呂からの卒業――今川義元イケメン化事件


4Gamer:
 その点,「今川義元のイメチェン」はファンを驚かせたかと思います。あれもなかなか勇気のいる変更だったのでは。

亀井氏:
 今川義元は30年ほど前,桶狭間の戦いで信長に倒される,完全なるやられ役のイメージでした。当時の映像作品などで登場するときも,「太っちょで馬に乗れない」とか「麻呂っぽい感じ」で描かれていましたし。我々もそういう分かりやすさに乗っかっていました。
 ところが歴史研究の結果,今川義元は異なる見解が生まれました。それこそマンガ「センゴク外伝 桶狭間戦記」が連載されたころから,歴史ファンのイメージが一気に覆ったんですよ。
 以降は歴史好き,歴史研究に敏感な方々の今川義元に対する評価が変化したことで,我々も合わせていかないと,となりまして。

※画像は「信長の野望 出陣」より
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4Gamer:
 「センゴク外伝 桶狭間戦記」の今川義元は,文武も知勇も優れた才気あふれる名君主って感じですものねえ。“海道一の弓取り”という異名がより合致するイメージだったのも影響していそうです。
 その結果,変貌を遂げたのは「信長の野望・天道」からでした。今も直衣で公家風な趣もありますが,スマートな雰囲気には品性を感じます。以降も烏帽子&甲冑姿になるなど,キレ者感が増していますし。

亀井氏:
 我々としても,「どの武将も本当はみんなカッコよくしたい!」ですからね。やっぱり人気が欲しいんですよ……!
 だけど,いくら人気が欲しいからといって,以前はおじさんだったのがアイドルみたいな美青年になる,といった安易な美形化は違います。それほど変えるには必然性がないとダメです。
 ダメですが,今川義元ほどにあればやります(笑)。

4Gamer:
 オジサマから青年へというと,ゲーマー的には「真田幸村」もでしょうか。今でこそ「戦国無双」に登場したような,赤備えの若武者なイメージですが,昔はおヒゲな中年武将って扱いだったような。

亀井氏:
 幸村も「信長の野望・覇王伝」までは中年時代の姿でしたねえ。

木村氏:
 亀井さん世代のあたりから,甲冑姿のイケメンになっていましたね。

※画像は「信長の野望 出陣」より
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「信長の野望・新生」では壮年期の姿も描かれている(亀井氏作)
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4Gamer:
 ついでに,各武将に甲冑を着させるか,兜をかぶらせるかどうかは,なにか判断基準があるのかも気になります。

亀井氏:
 兜の有無はあまり踏襲していませんね。人物的に猛将タイプなら着ける傾向ですし,政治で活躍した人なら着けないことが多いです。このあたりの「衣装は作品ごとに変えても大丈夫」という認識でした。

4Gamer:
 兜や甲冑は言い伝わっているものや,造形の工夫でバリエーションを出されていますが,着物のほうは大変じゃないですか?

亀井氏:
 着物はいろいろ着せていますね。直垂(ひたたれ)にしてみたりとか。作品を重ねても顔は大きく変えられない,だから描き手としてはどこかに違いが欲しくなる。そこで服装に着目しています。

※画像は「信長の野望 出陣」より
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木村氏:
 着物は模様で差別化することが多いですよね。ワンポイントで家紋を入れたりして,なにかしらその人物らしい衣装を目指したりで。

亀井氏:
 場合によっては,前作まで着物武将でも「今回は甲冑姿でいってみようか」って判断でイメージチェンジもわりとあるしね。

※画像は「信長の野望 出陣」より
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4Gamer:
 それこそ,シリーズ顔役の信長は衣装が変遷していますよね。

木村氏:
 いろんなバリエーションの鎧がありましたね。

亀井氏:
 ただ,昨今は「黒の甲冑に,裏地が赤のマント」で定番化していて,これが“シブサワ・コウの織田信長”のトレードマークになりました。
 ちなみに,こうした点でも「三國志」のほうがけっこう自由です。うちの劉備は赤い着物を着せ続けたことで,「三國志」シリーズならではの印象も定着しているんじゃないかなと思っています。

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シリーズ40周年を記念して制作された信長の甲冑
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巨匠たちのタッチ


4Gamer:
 少しお話を変えて,お2人はこれまで影響を受けたイラストレーターさんはいらっしゃいますか。

亀井氏:
 戦国武将のイラストにおいて,生頼範義先生と長野 剛先生に影響を受けていない絵描きはいないと思います。漫画家なら鳥山 明先生,大友克洋先生,安彦良和先生の作品が子どものころから好きでしたが,やっぱり強く強く影響を受けたのは生頼先生と長野先生です。

※生頼範義氏。世界的イラストレーター。“シブサワ・コウ”ブランド作品のパッケージイラスト,映画「スター・ウォーズ」や「ゴジラ」シリーズのポスター,書籍のカバーイラストなど多数の作品を手がける。ちなみに昨日11月17日は,生頼氏の誕生日だった

「信長の野望・戦国群雄伝」(1988年)
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「信長の野望・武将風雲録」(1990年)
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「信長の野望・覇王伝」(1992年)
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※長野 剛氏。歴史人物の油彩画や,書籍のカバーを数多く手がけるイラストレーター。1995年から2012年まで“シブサワ・コウ”ブランドのパッケージイラストを担当

「信長の野望・将星録」(1997年)
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「信長の野望・烈風伝」(1999年)
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「信長の野望・天道」(2009年)
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木村氏:
 私も“シブサワ・コウ”ブランドのパッケージイラストを描かれている方々の影響を受けましたが,なかでも内田パブロさん,日田慶治さんを尊敬していて,目指しているところでもあります。
 内田パブロさんは最近ですと,「DEATH STRANDING」や「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」などで活躍されていますね。自分と年齢が近いのもあり,とても刺激になっています。

※内田パブロ氏。リアルなタッチで知られるイラストレーター。「信長の野望・創造」「三國志13」のパッケージイラスト,書籍のカバーも担当

「信長の野望・創造」(2013年)
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※日田慶治氏。幅広いジャンルで活躍するイラストレーター。「信長の野望・大志」「信長の野望・新生」「三國志14」「三国志8 REMAKE」のパッケージをはじめ,カードゲームのイラストや書籍のカバーも手がける

「信長の野望・新生」(2022年)
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4Gamer:
 それら先生方の推しどころとは?

亀井氏:
 生頼先生に関しては,一見するとタッチが粗いのに“ちゃんと描けている”ところですよね。作品に近づいて見てみると,筆でバッチバチに描かれているのがよく分かるんです。一方,ものすごく細かく描くことも,点描もできてしまう。巧みすぎて,いまだに次元が違います。

木村氏:
 私もたくさんありますが,内田パブロさんの作品は色使いがカッコいいんですよ。ビビットな色を差しても,全体として見るとまったく破綻していない。目を引く印象だけを残している。
 タッチもカッコいいです。粗い部分もあるのに,それが描く対象を立体として成り立たせている。私が一番カッコいいと思うタッチは,内田パブロさんですね。個人的にも「これって,どうやって描いてるんだろう」とよく研究させてもらっています。

4Gamer:
 それぞれ,直接お会いされたことは。

亀井氏:
 面識はないですねえ。長野先生は,秋葉原でライブペインティングのイベントをされていたとき,見に行ったことがあるくらいです。

木村氏:
 もう10年以上も前,内田パブロさんが「信長の野望・創造」のイラストを手がけていたころ,個人的にやっていらしたmixiでのクロッキー会で,偶然ご一緒してちょっとだけお話ししました。
 でもわずかな交流でしたので,たぶんあちらは覚えていらっしゃらないかと。ですので私は,陰ながら尊敬している感じです(笑)。


戦国武将と聞いて思い浮かべるのは……


4Gamer:
 戦国武将と言われたとき,ゲーマーの多くは数々の先生らが描いてきた「信長の野望」の絵姿,あるいはその影響を受けてきたであろう“コーエーテクモゲームス風の戦国武将”を想像する人が多いと思います。
 その点,お2人はそうしたパブリックイメージを左右する立場だと考えたり,プレッシャーを感じたりしたことはありましたか。

木村氏:
 確かに「信長の野望」を遊んでくれた方々にとっての武将は,我々のイラストのイメージで固定されるのかもしれないと考えたことはあります。それ自体は光栄ですが,そのぶん責任も感じますよね。

亀井氏:
 私もまったく同じです。
 制作中は正直,目の前にある仕事でいっぱいいっぱいでしたが,シリーズ20周年あたりからでしょうか。絵に対する反響を多くいただけるようになって,「僕らがなにげなく描き続けてきたものが,ここまで影響を及ぼしていたのか」と実感したときがありました。
 以降はより緊張感を持って表現しようと努力しています。

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4Gamer:
 そうした思いも,シリーズが長く愛されている一因なんでしょうね。

亀井氏:
 私が語るべきではありませんが,同じテーマのゲームをこれだけの数,16作品以上も作り続けられているのは,本当にありがたいことです。プレイヤーの皆さんにはもう感謝しかないです。
 当然,シリーズ40年の途上では浮き沈みもありましたし,かつて社内でも「ガラッと絵柄を変えてみたら?」という声が上がりました。けれど,そんな議論があっても「うちはうちで」と。むしろ作品の軸を定めることにつなげていき,ブランド化に励んできた実感があります。
 ですので,ときには挑戦もしますが,根底にある「奇をてらわずにやっていこう」の意識は大切にしています。

4Gamer:
 伝統芸能でいうところの“型”を受け継ぎながらも,新しさを取り入れていく,そんなスタンスなのですね。
 とはいえです。同じ人物を,同じように踏襲していきつつも,前作とまったく同じ姿にはしない。場合によっては「同じイラストを次回作に流用する」だって立派な経営判断に思えますが,そうはせず毎回新しく書いていらっしゃる。それゆえに「今回はどこで違いを出そう……」の悩みには毎回襲われているのではないかなって。

亀井氏:
 まさに,常につきまとう悩みですね(笑)。
 毎回がんばっているんですけど,(現場の机の資料を指して)こんな風に顔グラフィックスが並んでいるのをあらためて見ると,「これ前のと似てるよね」とか「猛将の眉間に力入れがち」なんて思うところがたくさん出てきます。この感覚がまさに,現場の苦労そのものです。

※画像は「信長の野望 出陣」より
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木村氏:
 シリーズが長く続いてきたぶん,同じことをやっていると古く見られてしまう。だから似ることは解消したいのですが,安易に表情を変えるだけだと既存の印象がボヤけてしまう。
 ポーズもそうです。同じ武将も作品ごとにポーズを変えたところで,ほかの武将の過去例とかぶっていないわけではない。ですから,昨今は人物自体のデザインのみならず,ライティングや演出も含めたアプローチで,差別化を図れろうと試行錯誤しています。

亀井氏:
 絵画タッチは変えず,別軸で考えてるよね。

木村氏:
 ええ。その時々のエンタメの潮流や技術を取り入れてたりして。

4Gamer:
 近年の新しい演出でいうと,武将イラストのアニメーションですかね。「信長の野望 覇道」や「信長の野望 出陣」でも戦法の発動時,武将のダイナミックな動きに「キター!」と興奮します。

亀井氏:
 イラストのアニメーション化ですね。うちでは2Dイラストの専用ツール「Spine」を使って動かしています。やはり,今どきは“絵がまったく動かないわけにはいかない時代”ですから。

木村氏:
 動くとキャラクターの生きている感が強まるので,プレイヤーさんにもより感情移入していただけるだろうと考えています。
 ただですね,Spineにも「適さないポーズ」があるんですよね。だから動きを優先させすぎると,逆に選べなくなるポーズが出てきてしまい,その制限がまた新たな悩みになってしまい……(笑)。

亀井氏:
 昔は武将の大ラフを描いて,企画チームに「どうですか?」と確認してもらうだけでよかったのにね。
 最近はもう,先に動きありきの絵コンテを作り,そこから1コマを切り取って絵を描くという,アニメーション前提の描きだしですし。

4Gamer:
 なんとも難解な。
 しかし,適さないポーズというのは?

亀井氏:
 単純に「縦の動き」です。2Dなので,体を横軸に振る動きは分かりやすく映えるのですが,腕を奥側から手前側に振るような,縦軸の動きで見せようとすると,途端に立体感がなくなってしまうんです。
 あとは背景も関係します。背景なしでも人物単体で成立するイラストと比べて,「背後のお城に向けて手を上げる構図」など,背景と姿勢ありきの絵はアニメーションに制限が出てくるわけですね。

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