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「ELDEN RING TRPG」メディア体験会レポート。金欲と色欲にまみれた放浪騎士ヨンガメが,ゆかいな仲間と「接ぎ木の貴公子」に挑む
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印刷2023/06/21 17:00

プレイレポート

「ELDEN RING TRPG」メディア体験会レポート。金欲と色欲にまみれた放浪騎士ヨンガメが,ゆかいな仲間と「接ぎ木の貴公子」に挑む

 フロム・ソフトウェアのアクションRPG「ELDEN RING」を原作とするテーブルトークRPG「ELDEN RING TRPG」が,KADOKAWAから2023年6月20日に発売された。価格は6050円(税込)。

 本稿では,発売の前週に行われたメディア体験会の模様をお伝えしたい。なお,作品の性質上,ゲームの導入部分におけるシナリオのネタバレが含まれている。あらかじめ,ご留意いただきたい。

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 フロム・ソフトウェアのタイトルを原作とするTRPGとしては,2017年に発売された「DARK SOULS TRPG」(以下,前作)に続く第2弾となる。前作同様,グループSNEの加藤ヒロノリ氏が開発を担当している。
 スタミナをダイスで管理する独特な戦闘システムをはじめ,ゲームの核となる一部の要素は変わらないので,前作の経験者はスムーズに楽しめるだろう。

 一方で,ステータスやスキル関連の部分は一新され,探索要素に至っては「オープンワールド感」を表現した独自システムを導入し,しっかりとELDEN RINGらしい作品になっている。

体験会では,本作を開発したグループSNEの加藤ヒロノリ氏がGM(ゲームマスター)を務めてくれた(写真奥)
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「ELDEN RING TRPG」公式サイト


 さて,意気揚々と現場を訪れてルールブックを拝見した筆者は,さっそくそのデカさに驚かされた。
 本作のルールブックはA4判の3冊セット(三方背BOX入り)仕様で,システムやキャラクター作成に必要なデータを収録した「ルール」,プレイヤーが使用する「スキル&シート」,ゲームマスターが使用する「エネミー&シナリオ」に分かれている。合計600ページ以上の大ボリュームだ。

 加藤氏によると,レガシーダンジョンはもちろんのこと,原作に登場する地下墓を含むすべてのダンジョンとイベントを収録しているという。それを聞いた瞬間,頭の中に「?」が100個くらい浮かんだが,それならばルールブックの物量にも納得するほかない。

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筋力18くらい要求されそうなデカさと重さ。三方背BOXで角も立っており,技量補正もありそう
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プレイヤーがゲーム中に参照することになるスキル&シートは中綴じ式。コピーが容易な仕様になっている


キャラクター作成はよりシンプルに。溜まる「悪意」を横目に探索を進めよう


 セッションを開始する前に,まずはプレイヤーキャラクターを作る必要がある。
 キャラクターの基本データは,通常のTRPGでは「クラス」にあたる「素性」と,全8種類(生命力,精神力,持久力,筋力,技量,知力,信仰,神秘)のステータスで構成される。各素性の初期ステータスは固定なので,キャラクター作成にあたってダイスを振る必要はない。

キャラクターシート
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 素性はそれぞれ,対応する「スキルセット」を持ち,レベルが5の倍数に達するごとに新たなスキルを習得可能だ。初期キャラクターのレベルは10(素寒貧のみ5)なので,初期スキルセットから2つのスキルを持った状態でゲームを始められる。

 つまり,本作は「素性を選ぶ」「習得するスキルを2つ選ぶ」という手順でキャラクター作成が完了する。かなりお手軽な印象があるが,スキルの種類が前作から大幅に増加しているので,テキストを読んでビルドを考えるだけでも相当悩めそうだ。

素性の紹介ページ。「推奨初期スキル」を取得すればサンプルキャラクターが完成する
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戦技や呪文などは「スキル」としてまとめられ,アイテム「書」を介して入手できる
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 今回は体験会ということで,各自が好きな素性のサンプルキャラクターを選ぶことになった。筆者は原作でも盾をガッチリ構えてゆっくり進むのが好きなので,鎧と盾で防御を固めた素性「放浪騎士」を選択。パーティは4人(筆者含む)の大所帯なので,仲間を守る盾役として頑張ろう。

素性には,原作に存在しない「調香師」「斥候」「闘奴」「導き手」が追加されている
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 しかし,まだキャラクター像は見えてこない。褪せ人として旅をする動機と,狭間の地に至るまでに持つ記憶,そして素性に紐づいた背景の情報を用意することで,初めてキャラクターが完成するのだ。
 そんなわけで,それぞれの情報をランダムに決定する表を使用して誕生したのが,放浪騎士のヨンガメくん。彼は財政破綻で凋落した家の出身(凋落の行先)で,過去に給料をもらった喜びの記憶(一人前の俸給)を頼りに,「とにかくモテたい!」という野望を掲げ(艶福への耽溺),冒険を続けている男だ。

 ……ひどい俗物を生んでしまった気がするが,これはこれで分かりやすいのでヨシ!

メガネは割れても不思議な力で自動復元するぞ!(後付設定)
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 本作のプレイヤーキャラクター(褪せ人)は不死であり,何度でも復活できる。しかし,誰かが死亡するごとに「祝福の導き」を1つ失い,すべてが失われると“大いなる意志”に見放され,ゲームオーバー(キャラロスト)となるので注意が必要だ。
 また,褪せ人は狭間の地を実際に冒険する「ホスト」(プレイヤー1人)と,召喚された協力者の「霊体」(ほかのプレイヤー)に分かれる。霊体が倒されてもほかのプレイヤーは戦闘を続行できるが,ホストが倒れると強制的に敗北となってしまう。

 当然,生存能力の高いプレイヤーがホストを担当するのがいいだろうということで,今回はヨンガメくんがホストを務めることになった。あふれる生存本能,そして金欲と色欲でチームを引っ張ってくれることだろう。
 ちなみに,原作同様の「会話をせず,ジェスチャーのみで意思疎通をする」というバリアントルールも用意されている。今回は普通に会話をしながらゲームを進めたが,原作ファン同士で集まった際にはぜひ試してみたい。

使用するのは6面ダイスのみ。プレイヤーごとに6個ずつ用意しておくと遊びやすい
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 キャラクター作成と導入が済んだら,ついに探索の始まりだ。本作のマップは,原作のマップをブロックごとに分割したような形式になっており,それらを「フィールド」と呼んで管理することになる。

 各フィールドでは,決められた回数だけ「探索」アクションを実行することが可能で,「祝福」があればHPをはじめとする各リソースを回復できる。それらを活用してフィールドを練り歩き,事前に設定されたボスを撃破すればシナリオクリアとなる。

各フィールドには探索で発生する出来事が用意されており,6面ダイスを2つ振って内容を決める。規定回数の探索を終えれば,ボーナスとしてルーン(経験値)を獲得できる
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 ここまでの説明を聞くと,フィールドを慎重に探索してから,祝福のあるところに戻る「牛歩戦術」が最善策に思えるだろう。だが,そこはしっかり対策されている。本作のGMは「悪意シート」を管理しており,条件が達成されるたびに敵の攻撃が強化されたり,目標値が厳しくなったりするといったペナルティ効果が発動するのだ。

 悪意シートの記入は「悪意ダイス」によって進行する。悪意ダイスはゲーム開始時に規定数が振られるほか,プレイヤーによる「フィールドの移動」と「祝福の利用」もダイスを振るトリガーになっている。何度も同じフィールドを行き来すれば,あっという間に敵がとんでもない強さになってしまうのだ。

 ニコニコしながら悪意ダイスを振り,シートに記入していくGMの顔は楽しそうなことこの上ない。GMとして,プレイヤーに絶望を与えていくのもなかなか楽しそうだ。

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スタミナ管理が生死を分ける戦闘システム。行動順はトランプの導入でスピーディに


 我がパーティの探索するマップは,原作でも馴染み深い開始地点「王を待つ礼拝堂」だ。金と女を求める旅の中,無念の死を遂げた放浪騎士ヨンガメは再び褪せ人として立ち上がり,3人の仲間(霊体)と共に冒険に繰り出す。

 原作では非常に短いマップだが,本作では少しだけフィールドが増やされているようだ。となれば,新しいネタもあるかもしれない。さっそく最初のフィールド「礼拝堂」を探索することにしよう。

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 探索ダイスを振ると,さっそくイベント発生。プレイヤーと同じく,礼拝堂で復活したと思われる一般褪せ人(大柄)が襲いかかってきた。原作では安全な場所だったので完全に油断していたが,どうやら独自のイベントも起こるらしい。

 戦闘システムは前作と同じく,「スタミナダイス」を用いたものが採用されている。各プレイヤーは5つのスタミナダイスを持った状態でラウンドを開始し,それらを攻撃や防御などのアクションに割り振って戦うことになる。
 このシステムの面白さは,自分のターンで使用するスタミナダイスの数を先に宣言しなければいけない点にある。まず指定した数だけ振って,それぞれの出目をどのアクションに割り振るかを決めるのだ。

 例えば,5つのうち,3つのスタミナダイスを振って「1」「5」「6」といった出目になったとしよう。その場合,「5」「6」を攻撃などの高い出目を要求されるアクションに,「1」をアイテムの使用などの出目を問わないアクションに割り振ることで,無駄なく行動を行える。

 ただし,敵から攻撃を受けた際に防御をしたり,回避行動をしたりするにもスタミナダイスは必要だ。本作に「命中判定」の概念は存在しないため,スタミナダイスを使い切った状態で攻撃を受ければ大ダメージは免れない。行動順をよく見て,何個のダイスをアクションに使うかを考えよう。

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 前作とは異なるのが,行動順の決定システムだ。ラウンドごとにトランプカードをドローして,大きい数字を引いたキャラクターから先に動く仕組みになった。異なる数字のカードが用意され,同値による競合・処理は発生しない。

 また,最後尾での行動が確定する「A(1)」のカードを引いたキャラクターには,ラウンド内で使用できるスタミナダイスが1つ増えるというボーナスが与えられる。この1つが生死を分ける……といった状況も少なくないだろう。

 スタミナダイスの確保さえ間違えなければ,回避も防御もかなり安定して行えるので,パーティ内での役割分担も難しくはない。というわけで,いきなり出現して我々をビックリさせた一般褪せ人は,まともに剣を振るうこともなく,プレイヤー一行がタコ殴りにして退場となった。戦いは数だよ,褪せ人くん。

前作では技量によって戦闘中の行動順に補正があったが,本作の行動順は完全にランダム。「筋力,技量,知力,信仰」は装備品などの必要能力値,およびスキルの威力補正のみ参照されるようになった
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 ある程度,TRPGに慣れているメンバーが中心だったこともあり,その後もサクサクと進んだが,最後に待ち構えるボスの存在を我々はよく知っていた。原作では「メチャクチャ頑張れば勝てなくもない負けイベント」として用意されている「接ぎ木の貴公子」(以下,貴公子)との戦いだ。

 本作の貴公子も常時2回行動,かつHP40(一般褪せ人の7〜8倍)を持ち,さらに複数人同時攻撃や属性攻撃まで備えた「当然,全員殺す気満々ですが?」と言わんばかりのステータスになっている。これ,勝てるの……?

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 とはいえ,プレイヤー側も道中で戦いの基本を学んでいる。長期戦必至の戦いで大事になるのは,どこまで攻撃にリソースを割けば有効なダメージを与えられるのか,そして,どこまでスタミナダイスを残せば敵の攻撃を受け止められるかを見極めることだ。

 前述の通り,本作には命中判定が存在しないが,ダメージ計算はやや特殊な仕様になっている。攻撃アクションを行えば,相手が回避しない限り,必ず「ダメージ」を生み出せるが,そのダメージが相手のHPを直接減らすわけではない。
 具体的には,ダメージの値がキャラクターの「防護点」を10上回るたびにHPが1減少する。つまり、ダメージが「防護点以下」では,そもそもHPを減らすことができないのだ。加えて,敵はプレイヤーの行動に対して(ラウンドごとに規定回数だけ)防御や回避を行うため,その塩梅を探る必要もある。

 中途半端な攻撃をすれば,スタミナを浪費して逆にピンチを招くことになる。というわけで,まずは防御にスタミナダイスを回しつつ,敵の防御,回避行動や防護点を探るべく戦うことにした。

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 しばし攻防を繰り返したところで,少しずつ戦い方が分かってきた。範囲攻撃は2人までに届き,単体攻撃は後衛を一撃で屠るほどの威力を誇るが,ダイスを3つほど残しておけば誰でも攻撃をしのげそうだ。

 また,すべてのキャラクターは「強靭」と呼ばれる数値を持つ。これは強力な攻撃をヒットさせると相手から削り取れ,0になるとラウンド中の行動がキャンセルされる。仲間と削るタイミングを合わせれば,スキを作ることが可能だ。

 そして,放浪騎士は相手のガードを崩しつつ,強靭を削る強力なスキル「構え」を習得している。仲間と連携して強靭を削り,行動順を見極めて一斉攻撃を叩き込む! これを何度か繰り返すことで,少しずつ貴公子のHPを削り,ついに撃退することができた。

戦闘中,「安全エリア」と呼ばれる場所に逃げ込める。ただし,安全エリアは最大でも5つしか存在せず,1度使用したら次のラウンド開始時に追い出されたあげく,消滅してしまう
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 戦いの中で敵の攻撃パターンやステータスを把握し,それぞれの対策を練りながら反撃のタイミングを探る。これはまさに,原作のバトルそのものだ。
 特徴的なダメージ計算システムも,出力されたダメージ以外の計算に用いる数値が固定なので(あらかじめキャラクターシートに書かれてあるものを参照するだけ),慣れればかなりスピーディに進められるようになる。戦闘以外の場面でも,あらゆる処理が明瞭かつ迷う部分がないので,TRPG初心者でも問題なく楽しめそうだ。

 全体的にロールプレイ用の仕組みはほぼ存在せず,その意味ではTRPGらしい作品とは言えないかもしれない。仲間と相談しながら,限られたリソースの配分を決めていく。この感覚は協力型ボードゲームに近い。
 しかし,実際に遊んでみるとキャラクターに沿った発言をしたくなる場面も多く,TRPG的に遊ぶ余地は十分にある。この「ロールプレイをしたければ,好きなようにどうぞ」といった雰囲気は,むしろ原作に合っているのかもしれない。

戦いの後,出会ったメリナさんの美少女っぷりにヨンガメくんはたいそう喜んだそうな
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 セッション終了後,今回のGMを務めてくれたゲームデザイナー,加藤ヒロノリ氏への合同インタビューが行われた。本作の見どころについて,たっぷり語ってもらったのだが,リムグレイブ(チュートリアル終了後の世界)以降のマップやシナリオに関するネタバレを含んでいる。自分の手ですべてのシナリオをコンプリートしたい人は注意してほしい。

加藤ヒロノリ氏
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――今回は「王を待つ礼拝堂」を攻略しましたが,それ以降の広大なマップがどんな形で表現されるのか気になります。また,新たなシナリオはどのように開放されていくのでしょうか。

加藤ヒロノリ氏(以下,加藤氏):
 リムグレイブをはじめとする大型マップは,原作通り非常に大規模なものです。攻略の中で異なるマップにつながるフィールドに到達したり,新たなシナリオが発生するきっかけになるフィールドを探索したりすると,次回以降に新シナリオの挑戦が可能になります。
 洞窟や地下墓といった小型のダンジョンは,特定のフィールドで探索を行うことで出現します。これらのダンジョンは「隠しフィールド」という扱いで,発見元のフィールドに紐付いています。それぞれに行為判定が必要なイベントや強力なボスを用意しているので,ぜひ挑戦してみてください。

――マップがメチャクチャ広くてビックリしました。これを1度のプレイで回り切るのは大変そうですね。

加藤氏:
 悪意が徐々に蓄積していくので,1度で完全踏破をするのは難しいバランスになっています。とはいえ,一直線にボスまで行って勝つのもまた難しいので,探索と進行のバランスを考えながら進んでほしいと思います。
 マップは広いですが,リムグレイブ序盤のチュートリアル後に入手できる「霊馬トレント」を使用すれば,一気に3マス先のフィールドに移動でき,一度到達した祝福間はワープも可能です。マルギットを倒してストームヴィル城を攻略している間に,一度戻ってハイト砦のイベントを進めておく,といった攻略も可能ですよ。

リムグレイブのマップ。チュートリアルとは比較にならないほどデカい
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――シナリオのボスは決まっているけど,進むルートや攻略順は自由ということですね。

加藤氏:
 それによって,オープンワールドらしさを表現できればと思っています。原作の知識があれば「ここでイベントが起こるはず」とあたりをつけて探索することも可能ですし,ワープ用の祝福を起動するために探索だけする,なんてのもアリです。
 テストプレイのときは悪意の概念がなくて,ボスによるシナリオの終わりの概念もなかったのですが,そうなると終わらないですよね。レベルのバランスを取るのも難しくなりますし,いろいろな試行錯誤の末に現在の形に落ち着きました(笑)。

――ゲーム進行としては,ボードゲームやゲームブックに近いと感じました。自分でシナリオを作ったり,構築したりするわけではないため,独特な雰囲気があります。

加藤氏:
 本作におけるテーブルトークの「トーク」要素は,戦略や行き先を話し合う部分が中心になっています。ロールプレイの部分はシステムで縛るようなものでもないと思って,今回はあえて入れていません。一般的なTRPGはともかく,ELDEN RINGのTRPGはそれが最適だろうと。

――前作に比べて,NPCに関連するイベントも多いですよね。

加藤氏:
 一部の重要なNPCはシナリオの導入部分に持ってきて,必ず会話を発生させるようにしています。たとえば,大亀の「ミリエル」はシナリオ上の大事な情報を持っているのですが,攻略上では大事な場所にいるわけではないので,普通に配置すると出会わずに進んでしまうんですね。そういった部分では,より遊びやすくなるように調整しています。

――全体的に処理が軽くて,ゲームも比較的システマチックに進むので,GMがプレイヤーを兼任したり,ソロプレイをしたりすることもできそうです。

加藤氏:
 できると思いますが,さすがに大変なので推奨はしません。めっちゃ頑張れば,GM自身がキャラクターを動かしつつ,複数の「遺灰」を使って冒険するなんてこともできますよ。
 ちなみに,遺灰はプレイヤーの代わりに召喚できるNPCのことですが,強力な「英雄の遺灰」は2人分として数えられます。人数が少ない場合は,通常の遺灰を複数召喚するか,英雄の遺灰を召喚するかを選ぶことになりますね。

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――原作にはギミックやボスも多いですし,ダンジョンの数は膨大です。これらはすべて収録されているのですか。

加藤氏:
 はい,全部入ってます。当初は「印象的な要素をピックアップしてダイジェスト型にしましょう」と言われていたのですが,「全部入れなければ,ELDEN RINGではないだろう」ということで,原作の要素をできるだけ取り入れました。追憶ボスが持っている特別なギミックも再現しているので,原作との違いも楽しんでもらえたら嬉しいです。

――ゲーム全体のボリュームは,どの程度になるのでしょうか。

加藤氏:
 本編はエピソード0から11まで。外伝にあたるものは10個あります。正確な時間は分かりませんが,普通に遊んでも1周するのに120時間くらいはかかるんじゃないでしょうか。
 通ってきたイベント次第でエンディングが分岐しますし,1周で全要素を体験するのは難しいでしょう。一部の要素を引き継いだ「2周目」もできるので,ぜひ活用してみてください。

――ELDEN RINGの独特な要素「戦技」は,どのように表現しているのでしょうか。

加藤氏:
 戦技を全部組み替えたり,武器にひも付けたりするのは,プレイヤー側の管理が大変だと思うので,スキルを習得する形式に変更しました。習得できるスキルセットは「戦技書」や「魔術書」などのアイテムで増えていくので,スキルビルドを楽しめるようになっています。
 ただ,原作の戦技や魔法といった技は,ほとんどが攻撃に関わるスキルです。再現度を高めすぎると,似た効果の亜種でいっぱいになるので,一部の戦技は効果を変更して役割を持たせています。
 例えば「回れ回れ」は杖のガードスキルになっていたり,刀には「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」をリスペクトした“弾き”の戦技を用意したりしています。

――上位互換だったり,少し効果を変えたりしただけの技がたくさんあっても意味がないですからね。そのほかにも独自の要素はありますか。

加藤氏:
 ダイスを振って,宝箱からランダムにアイテムを得る「ランダムチェスト」という要素があります。めちゃくちゃ運が良ければ,序盤から強力な装飾品を入手することもありますよ。これもまた,プレイごとに体験が変わるランダム要素の1つですね。

「書」をはじめとするアイテムや一部のリソースは,プレイヤーの共有資産として記録される。素材系は「素材点」としてまとめられ,売買に利用可能だ
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――新しい素性が導入されていますが,加藤さんのアイデアだったのでしょうか。

加藤氏:
 あれはですね,初期レベルで装備させないと活躍の場が減る「鞭」「弓」「拳」を最初の選択肢に入れるため,という意味合いが強いです。そこにプラスアルファの要素として「調香師」を加え,4つの新素性が生まれたわけです。

武器はカテゴリごとに基礎的な数値が決まっている。カテゴリが同じなら計算に使う数字の多くが変わらないので,装備を更新するのが簡単だ
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――開発にはどのくらい時間をかけていますか。

加藤氏:
 一昨年の冬に企画が始動して,僕もしっかりとゲームを遊び尽くしてから着手したので,開発期間で言えば丸1年くらいです。当初は今年2月の発売を想定していたんですが,だいぶ分量が増えてしまったので6月になりました。

――オリジナルのシナリオを作ってみたい場合のルールは用意されていますか。

加藤氏:
 ルールは用意していませんが,あとがきに「オリジナルシナリオを作るには」というコラムを記載しています。いきなり全体像を作るのではなく,まず自作ダンジョンを考えてフィールドに混ぜてみて,慣れてきたらレガシーダンジョンを作り,さらにはオリジナルのフィールドを……といった具合に,段階的に作ることを推奨しています。

――TRPGファンとELDEN RINGファン,どちらの層にも注目されていると思います。

加藤氏:
 僕がユーザーだったとしたら,最も注目するのは「再現度の高さ」なので,まず原作の体験をしっかり再現することに力を入れています。その上で,ゲームとして面白いものを作らないといけない。両方を満たせる形を追求した結果,こうなりました。

――この豪華さだと再生産は大変そうですね。ページ数で言えば「クトゥルフ神話TRPG」と同じくらいですし,その上で分冊ですから。

KADOKAWAスタッフ:
 ものすごく勢いがあれば,重版の可能性はあるかもしれません。ただ,生産にはかなり時間がかかるので,確実に入手したい方はお早めにお願いします!

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「ELDEN RING TRPG」公式サイト

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