
プレイレポート
[プレイレポ]「The First Berserker: Khazan」は手応えのあるボス戦と遊びやすさを両立。強大な敵に立ち向かうのが,楽しいアクションRPGだ
復讐に燃える男が血みどろになって戦うダークな物語が展開する本作は,激しいアクションとボス戦の試行錯誤が本当に楽しい。さらに,途中の脱落を防ぐシステムが随所に用意されており,「親切=簡単」ではなく,倒されながらもプレイヤーに奮起を促す高難度アクションが実現している。
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「The First Berserker: Khazan」公式サイト
舞台は「アラド戦記」の800年前
復讐に燃える男の旅が始まる
「The First Berserker: Khazan」は,オンラインアクションRPG「アラド戦記」のスピンオフタイトルだ。舞台は「アラド戦記」の800年前の時代,国王から謀反の濡れ衣を着せられた元・大将軍のカザンが主人公である。
カザンは国王から拷問されて瀕死の重傷を負ったうえ,その身体を狙う鬼神ブレードファントムに憑依されてしまう。しかし,カザンは強い意志の力でブレードファントムの支配を脱し,国王に復讐を果たすべく旅をする。
「アラド戦記」のスピンオフではあるが,ゲームシステムはまったくの別物。時代も離れているが,貶められた男の復讐劇というシンプルなストーリーなので,原作を知らなくても楽しめるだろう。
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本作は「DARK SOULS」をはじめとする高難度アクションRPG,さらには同作をリスペクトする「仁王」や「STRANGER OF PARADISE FINAL FANTASY ORIGIN」といったTeam NINJAの作品から強い影響を受けたと思われる。
つまり,ハイスペックな主人公とハイスペックなボスがガンガン殴り合い,勝利の報酬としてランダム能力が付与されたアイテムをもらえる,アクションとハック&スラッシュの面白さを味わえるということだ。
そして,試行錯誤を推奨する環境が用意されていることで,上達の喜びを存分に味わえる。その楽しさは,ボスを倒した直後に「もう1回,戦いたい!」と同じボスを“おかわり”したくなるほどだ。武器や戦い方を変え,より華麗な勝利を目指して戦い続けられる。
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本作はミッション制を採用し,敵を倒しながらステージを進み,終盤に待ち構えるボスを倒すとクリアとなる。メインミッションはある程度の時間を要するが,サブミッションはコンパクトなうえにボス戦からスタートするものもあり,サクサクと遊べる。
カザンのHPが尽きたり,水中に落下したりするとミスになり,獲得した経験値「ラクリーマ」をその場に落としてしまう。リトライ時に回収できればいいが,再度やられると永遠に失われる。
ステージは囮(おとり),視線誘導,奇襲などの趣向を凝らした罠が満載だ。「お宝を拾いに行ったら,地中に潜んでいた巨大な虫に食われた」「坂の上の敵を不意打ちしようとしたら,その手前に落とし穴が隠されていた」など,常に殺意が漂っている。
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こうした罠をじっくり観察して見抜くのもソウルライク系の面白さであり,作り手と知恵比べをしているような感覚が楽しい。地形を利用して敵を分断し,逆にこちらが待ち伏せるようなことも可能だ。
カザンは飛び道具である「投げ槍」を持ち,敵を安全に処理できるが,使用には敵に攻撃を当てて「闘志」を溜める必要がある。言い換えれば,周囲に敵がいない状態で闘志が足りないと投げ槍を使えない。待ち伏せている敵を見つけても,「ここで一撃を使っていいのか?」と悩むことになり,緊張感あふれる駆け引きを楽しめる。
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バトルでは攻撃やガード,ステップの回避を使いこなし,さらにリソースとなる「気力」を管理することが重要だ。武器を振るうにも,相手の攻撃を防ぐにも,ステップして避けるにしても気力を消費する。
ガードや攻撃を食らい,気力が尽きると「脱力状態」に陥る。行動不能になるばかりか,このときに攻撃されると大ダメージを食らってしまう。気力は時間の経過で回復するため,攻めるべきときは攻め,退くべきときは退く,冷静な立ち回りが求められる。
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カザンは連続攻撃に優れる「刀斧」,パワフルな溜め攻撃が魅力の「大剣」,リーチのある「槍」という3系列の武器を装備できる。敵に応じて使い分けることが重要だ。
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一方,防具にはそれぞれ「重量」があり,カザンの「筋力」「活力」といったパラメータから算出される装備可能重量との割合によって「素早さ」が決まる。
重い防具は防御力が高く,気力に受けるダメージも減るが,回避時の気力消費量が増える。逆に軽い防具は回避に優れるが,攻撃を食らうと脆い。重装備で固めるか,軽装備で機動力を重視するか,そのためにパラメータをどう伸ばすか。ソウルライク系らしい成長要素もなかなか悩ましい。
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バトルのベースはソウルライクの基本に忠実だが,「ジャストガード」「ジャスト回避」,そして闘志とスキルを意識すると奥深いものになる。
ジャストガードとジャスト回避は,相手の攻撃をギリギリで防いだり避けたりする要素だ。前者は気力が足りなくても脱力状態に陥ることがなく,後者は少ない気力消費と長い無敵時間,直後に派生する「回避攻撃」の威力が増すメリットがある。
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連続して攻撃したり,無敵時間を付与したり,自動的にジャストガードをしたり,相手にデバフを与えたりと,スキルの効果は多彩だ。気力がなくても攻撃できるスキルも存在する。
つまり,気力が少ない状態ではジャストガードやジャスト回避によってカバーでき,もし気力が尽きても闘志があれば攻め込めるというわけだ。プレイヤーのテクニック次第になるが,気力の限界まで攻め込んでからも長いラッシュにつなげられる。
しかし,ジャストガードやジャスト回避は常に成功するとは限らない。リスクとリターンを天秤にかけて,ギリギリの綱渡りをしていくバトルはスリリングだ。
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こうしたバトルの魅力を堪能できるのが,やはりボス戦である。ボスはいずれも非常に高いHPと多彩な攻撃パターンを有し,ラッシュで攻め込んでくる。相手の攻撃モーションをしっかりと見切って,ジャストガードやジャスト回避で気力の消費を抑えつつ,さまざまな高等テクニックを駆使し,大きなチャンスを作り出すことが重要だ。
敵は人間系とモンスター系に大別できる。人間系はカザン同様に攻撃や防御によって気力を消費し,これが尽きると脱力状態になる。敵が連続攻撃を繰り出しくるとガードや回避で対処することになり,お互いに気力が減る。
だが,それだけに一歩踏み込めば有利にもなれる。ここで気力ではなく,闘志を使うスキルが役に立つというわけだ。
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一方,モンスター系は気力ではなく,「怪力」を持っている。怪力は攻撃しても消費されないが,時間経過では回復しない。怪力を減らすにはコツコツと攻撃を当ててもいいし,ジャストガードも効果的だ。
相手の気力や怪力が尽きれば,やはり脱力状態に陥る。こうなれば立ち直るまでは,一方的に攻撃し放題となる。脱力状態の相手にとどめを刺す「ブルータルアタック」で息の根を止めれば,カザンのHPも回復するので良いこと尽くめだ。
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相手の攻撃は激しいが,高等テクニックである「リフレクション」「カウンターアタック」を使いこなして対抗したい。
敵の攻撃に自分の武器を打ちつけて相殺するリフレクションが成功すると,敵はしばらく体勢を崩し,そのあいだは一気に攻撃可能だ。
リフレクションの発動はやや遅く,相手の攻撃モーションもさまざまなので,タイミングを見極めなければならない。予兆の動きに合わせる練習が必要になるわけだ。
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敵の中にはガードもジャストガードも,リフレクションさえも通用しない「バーストアタック」を仕掛けてくるものも存在する。猛ラッシュを締めくくる一撃がバーストアタックの場合,「最後までしのぎ切った!」と思った瞬間に叩き潰された,なんてことも起こる。
しかし,バーストアタックをカウンターアタックで跳ね返し,これも成功すれば相手をしばらく無防備にする。敵がバーストアタックを放つ直前,カザンの背中に警告の紋章が出るため,ギリギリまで引き付けてからカウンターアタックを繰り出そう。
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そして,切り札となるパワーアップが「闘鬼化」だ。
敵に攻撃を当てたり,闘志スキルを使ったり,ブルータルアタックを決めたりすると,闘鬼化ゲージが上昇する。最大値になると任意のタイミングで闘鬼化を発動し,一定時間のパワーアップが可能になる。闘鬼化中は気力ゲージがなくなり,いくらでも攻撃を繰り出せるうえ,敵に攻撃されてもHPではなく闘鬼化ゲージが減るだけで済む。とにかくアグレッシブに攻め込める。
ボスは変身したり,武器を変えたりといったモードチェンジで攻撃パターンを変えてくるが,こちらも闘鬼化で対抗するというわけだ。反射神経を研ぎ澄ませ,気力を注ぎ込み,闘志を燃やし,奥の手である闘鬼化ゲージまで吐き出して激しく戦う。筆者には格闘小説「餓狼伝」において,互いが死力を尽くして戦う試合のシーンにも似たカタルシスが感じられた。
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バトルのシステムを理解し,相手の攻撃を把握すれば,華麗な立ち回りができる。そして,本作では練習しやすいという点も特筆すべきだろう。
ソウルライク系の高難度アクションRPGでは,強力なボス戦の試行錯誤も面白さと言える。その一方,ボス戦の最中に落とした経験値を回収できずにレベルアップを阻まれたり,ミスを恐れて新しい戦法やスキルポイントの割り振りに躊躇してクリアできなかったり……なんてこともありえるが,本作ではここにメスが入れられている。
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ボスの攻撃はいずれもモーションに特徴があり,動きを観察すれば次の攻撃がどこに来るかが分かるため,繰り返し戦うことで対応が洗練されていく。成長システムもさまざまなものが用意されており,カザンを強化できる。
敵を倒してラクリーマを獲得し,チェックポイントでパラメータを伸ばせるのは従来のソウルライク系と同様だが,本作ではボスに敗れてもラクリーマを獲得でき,「ボスに負けまくってレベルアップする」ことも可能だ。
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スキルの習得に必要な「スキルポイント」は,攻撃やジャストガードを成功させると得られる。ラクリーマと違い,ミスしても落とさないし,いつでもノーコストで振り直せる。
また,条件を満たせばカザンのパラメータを強化する「ファントム」を装備でき,これもラクリーマとは無関係にレベルアップしていく。さらに,カザンと同格の能力を持つNPC「挑戦の怨霊」を倒せば,ボス戦で共闘してくれるNPC「助力の魂」を呼び出せるようになり,やはり強化による能力を底上げが可能だ。
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そして,ステージに隠された「鬼石」を破壊すれば,カザンの回復力や取得ラクリーマを徐々に増やせる。多岐にわたる成長の方法を駆使すれば,たとえミスをしても完全に成長が止まることがない。
ここにメリハリのあるモーションに対してプレイヤーの学習が合わさると,いつかはボスに勝てるはずだ。「もう少し頑張ってみよう」「今度はあの攻撃にリフレクションを狙おう」といったモチベーションも保たれる。
また,クリアしたステージはチェックポイントのアンロック状況が維持される。つまり,いきなりボス直前のチェックポイントに飛んで再び戦いを挑む,といった遊び方も可能だ。
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最初はガードの上から乱打され,気力も尽き果てて「こんなヤツに勝てるのか……」と絶望していても,少しずつ光明が見えてくる。ボスの動きを観察して,次に打つべき最善の手を考え,ジャストガードやジャスト回避,リフレクションやカウンターアタックで攻撃を捌きつつ,隙を見つけたら一気呵成に気力と闘志を注ぎ込む。
猛ラッシュを仕掛ければ,長い体力ゲージがゴッソリと減るのだから爽快だ。ボスの攻撃に対処すること自体が楽しく,倒さずにずっと戦い続けていたくなる。
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本作はとにかくボス戦が楽しく,上達に至る導線がしっかりしている。システムを理解し,ボスの動きを学習できれば,あれほどまでに苦戦したボスも圧倒し,自分に酔えるのだ。
アクションやシステムの方向性としては,フロム・ソフトウェアよりTeam NINJAの作品に近いが,「仁王」や「STRANGER OF PARADISE FINAL FANTASY ORIGIN」ほどボスはスピーディではない。「ステージにマスコットキャラクターが隠れていて,見つけるとご褒美をもらえる」「崖っ縁を歩いていると,コウモリの群れが体当たりして落とそうとする」といった,「仁王」のオマージュと思しき要素も見られる。
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前述のとおり,本作のバトルには手応えがあり,それでいて投げ出さないように配慮もされているため,高難度アクションRPGの成熟が実感できる。アクションゲームが得意な人,ボス戦が好きな人におすすめしたいが,「イージー」モードも選べるので気軽にも挑戦してほしい。
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