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中国からすごい小説がやってきた。現代の“トゥームレイダー”を描く伝奇アクション「盗墓筆記」(ゲーマーのためのブックガイド:第28回)
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印刷2024/12/26 12:00

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中国からすごい小説がやってきた。現代の“トゥームレイダー”を描く伝奇アクション「盗墓筆記」(ゲーマーのためのブックガイド:第28回)

画像集 No.001のサムネイル画像 / 中国からすごい小説がやってきた。現代の“トゥームレイダー”を描く伝奇アクション「盗墓筆記」(ゲーマーのためのブックガイド:第28回)

 「ゲーマーのためのブックガイド」は,ゲーマーが興味を持ちそうな内容の本や,ゲームのモチーフとなっているものの理解につながるような書籍を,ジャンルを問わず幅広く紹介する隔週連載。気軽に本を手に取ってもらえるような紹介記事から,とことん深く濃厚に掘り下げるものまで,テーマや執筆担当者によって異なるさまざまなスタイルでお届けする予定だ。

 中国からすごい小説がやってきた。
 先日,KADOKAWAから2か月連続で刊行された「盗墓筆記」が,実に面白いのだ。
 中国の作家・南派三叔氏の手になる同作の舞台は,現代の中国。骨董屋を営む青年,呉邪(ウー・シェ)のもとに持ち込まれた絹帛(けんはく/絹の布)には,古代の秘宝が隠された墓の場所を示す文字が記されていた。この呉邪,実は土夫子(トゥーフーズ,墓泥棒)の一族の末裔であり,彼は悪名高い墓泥棒の叔父・三叔(サンシュー)と共に,帛書(はくしょ/布に書かれた書)に導かれて古代の陵墓に挑むこととなる。しかし,そこは7つの石棺に隠された罠,粽子(ゾンビ)などの怪物が待ち受ける,恐るべき地下迷宮だったのである。

 2006年に中国のインターネット小説サイト「起点中文網」に発表された本シリーズは,人気に後押しされて書籍化され,9冊のシリーズ累計で1200万部を達成。本編完結後も前日譚や後日談などのスピンアウトが発表され,ついには映像化やゲーム化も果たしている。
 今回の日本語版は,2006年に発表された第1作「地下迷宮と七つの棺」(原題:七星魯王宮)と第2作「怒れる海に眠る墓」(原題:怒海潜沙)をまとめた「盗墓筆記1」と,第3作「青銅の神樹」(原題:秦岭神樹)を収録した「盗墓筆記2」までが発売となっており,続刊にも期待がかかる。

画像集 No.002のサムネイル画像 / 中国からすごい小説がやってきた。現代の“トゥームレイダー”を描く伝奇アクション「盗墓筆記」(ゲーマーのためのブックガイド:第28回)
「盗墓筆記1」

著者:南派三叔
訳:光吉さくら / ワン・チャイ
版元:KADOKAWA
発行:2024年10月30日
定価:2100円(+税)
ISBN:9784040746470

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KADOKAWA「盗墓筆記」紹介ページ


 「盗墓日記」の魅力は,まず現代伝奇アクションとして抜群に面白い点だ。
 「盗墓」(墓泥棒)とは,中国では古くから存在する職業のことで,それを家業としている一族までいるという。その歴史はかなり長く,例えば三国志で有名な曹操が盗墓を行った記録あり,その鼻祖とされているのだとか。
 そもそも古代より墓を重視していた中国文化では,王侯貴族の墓には高価な副葬品を納める風習があった。それを狙う墓泥棒を迎え撃つために,巧妙な罠が仕掛けられるのも一般的で,秦の始皇帝の墓などは内部が水銀が満たされていて,いかなる泥棒も突破できなかったそうだ。

 こうした経緯から,中国では伝統的な冒険活劇の題材として,エンターテイメントの世界で盗墓が扱われてきた。謎の地下陵墓に挑む本作がまさにそれで,「インディ・ジョーンズ」シリーズや,「トゥームレイダー」シリーズもかくやという冒険が,読者を待ち受けている。

 どんでん返しに次ぐどんでん返しで,息を継ぐ暇もない彼らの冒険は,日本語にして5000〜6000文字程度の短い章で構成された,Web小説ならではのテンポの良さで進んでいく。会話も今を生きる中国の青年らしく,実に現代的で,ときにコミカルだ。
 主人公の呉邪は骨董屋で,建築や風水,骨董の知識,そして祖父が書き残した墓泥棒の記録「盗墓筆記」の助言を頼りに,降りかかる罠や怪物たちに立ち向かう。叔父の三叔は悪名高い墓泥棒で,彼は自らの経験と判断力によって,仲間である張起霊(チャン・チーリン)や王胖子(ワンパンズ。“おデブちゃん”ほどの意)らと共に危機をくぐり抜けていく。

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画像集 No.003のサムネイル画像 / 中国からすごい小説がやってきた。現代の“トゥームレイダー”を描く伝奇アクション「盗墓筆記」(ゲーマーのためのブックガイド:第28回)

 本作のもう一つのポイントは,絡み合う謎と登場人物の魅力だ。
 呉邪たちは,それぞれのエピソードで別の陵墓に挑むのだが,最初は七つの棺が配置された風水的な地下迷宮,2つ目は古代の建設者が作り出した海底墳墓と,異なる趣向が凝らされている。
 いずれもやっかいな罠や怪物が待ち構えていて,それ自体が謎解きになっているのはもちろんだが,それぞれのエピソードは微妙につながっていて,最初のエピソードで発見した遺物が次のエピソードの引き金となっていく。墓の謎も完全には解明されることなく,登場人物の背景も含みを残したまま続いていくので,とにかく続きが気になって仕方がない。誰しもが何かを隠していて,どの人物も一筋縄ではいかないのだ。
 とくに寡黙でミステリアスな張起霊は女性人気も高く,ドラマ版では彼ら青年たちの関係性でも話題を呼んだという。

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画像集 No.004のサムネイル画像 / 中国からすごい小説がやってきた。現代の“トゥームレイダー”を描く伝奇アクション「盗墓筆記」(ゲーマーのためのブックガイド:第28回)

 さらにもう一つ,ゲーマーとしては中華ファンタジー風味の迷宮探索というだけ垂涎ものの本作だが,本好きとしては本作から垣間見える,現代中国の風俗的背景にも注目したいところだ。ここに目を向けると,「盗墓筆記」は2倍面白くなる。
 中華ファンタジーというと,これまでは武侠や仙侠に通じる時代劇がまっさきに思い浮かんだが,なにせ本作は現代の若者達を描いた小説なのだ。例えば主人公の呉邪は,中国政府の目をかいくぐって盗品商売をする一方で,若い世代の流行をしっかり追っていたりする。おかげで文章のあちらこちらから現代中国の文化のかけらが感じられ,興味は尽きない。

 そして本作に登場するさまざまな伝承,歴史,文化がさらに好奇心を湧き立てる。おかげで「山海経」や中国の古典を,もう一度漁り直してみたくなったくらいである。
 ああ,読書は1冊で終わらないのだ。

KADOKAWA「盗墓筆記」紹介ページ


朱鷺田祐介(ライター)
TRPGデザイン/翻訳を主戦場とするフリーライター。代表作に「深淵」「シャドウラン」「ザ・ループTRPG」など。最近のブームはスウェーデン産TRPGで,「MÖRK BORG」に触発された戦国ドゥーム・メタル・ファンタジー「信長の黒い城」を展開中。蜂蜜酒(ミード)について掘り下げた同人誌「MEAD-ZINE」は,BOOTHにて電子版が購入できる。
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