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光と影の叙事詩。釜山発の高難度アクションゲーム「Light Odyssey」は,宇宙を飲み込むブラックホールに立ち向かう
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「Light Odyssey」の舞台は,ブラックホールによって光が失われつつある「シャドウワールド」。プレイヤーは小さな主人公「パンディ」を操作し,宇宙全体を飲み込もうとする巨大な脅威に立ち向かう。パンディこそが,失われた光を取り戻すための唯一の希望なのだ。
会場で実際に動いているゲーム画面を見て,まず目を引かれたのは,そのアートスタイルである。本作は白と黒を基調としたモノトーンのビジュアルで統一されているが,これは単なるデザイン的な選択ではない。開発チームの音楽担当であるMichael Kang氏によれば,「ブラックホールが光を消費している」という設定そのものが,このビジュアル表現に直結しているという。
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光が失われつつある世界。その設定を視覚的に体現するかのように,ゲーム全体が黒と白の世界として描かれる。専任のアーティストが手がけたこの世界は,どこかディストピア的な雰囲気を漂わせながらも,独特の美しさを持っている。単調になりがちなモノトーンの表現を,ここまで魅力的に仕上げているのは,チームの技術力の高さを物語るものだろう。
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本作はボスラッシュ,ハックアンドスラッシュの要素を組み合わせたアクションゲームだが,その戦闘システムには独自の工夫が凝らされている。なかでも特徴的なのが,「バースト」と「オーバードライブ」という2つのスキルだ。
バーストはボスに大ダメージを与える攻撃スキルであり,オーバードライブはスタミナを消費せずに戦闘を続けられる特殊能力である。これらのスキルを習得するには,ボスを倒して得られるスキルポイントをアンロックしなければならない。さらに,フィールド中には秘密のパズルが隠されており,それらを解くことで,追加のスキルポイントを獲得できるという。
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Kang氏は「ゼルダの伝説のようなパズル要素がある」と説明してくれたが,このシステムは探索の楽しみと戦闘の戦略性を見事に結びつけている。単にボスを倒すだけでなく,世界を注意深く探索することで,より強力なスキルを手に入れられる。
本作には10体から11体のボスが登場する予定だ。それぞれのボスは火,氷,自然といった異なる元素を操り,独自の戦闘パターンを持っている。会場で見せてもらったのは最初のボスだったが,その動きからも難度の高さがが感じられた。
ボスラッシュ型のゲームデザインにおいて,各ボスの個性をいかに際立たせるかは極めて重要な要素だ。本作では元素や攻撃パターンの違いを通じて,プレイヤーを飽きさせない工夫が施されている。Kang氏の言葉を借りれば,これらの多様な要素が「プレイヤーをゲームに引きつけ続ける」のだという。
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「Light Odyssey」の開発チームは小規模で,SSUN GAMESのスタジオメンバーはわずか4人。プログラマー1名,アーティスト2名,そして音楽担当のKang氏という構成である。しかも,フルタイムで開発に従事しているのはプログラマーのみで,アーティストとKang氏はパートタイムでの参加だ。
チームが拠点を置くのは,韓国第二の都市・釜山。ソウルではなく,港町の小さなスタジオで,彼らは4年間にわたって本作を作り続けてきた。限られた予算の中で,昼夜を問わず開発を進めてきたという。それでもKang氏は「ゲームを作るのが好きだから」と笑う。すべては情熱によって支えられているのだ。
Kang氏の本業がゲーム音楽ではないという点も興味深い。彼の主な仕事はミュージカル/シアターの作曲家であり,ミュージカルや映画のための音楽を手がけている。ゲーム音楽については「ゲームが好きだから,プログラマーを手伝っている」という立場だという。職業作曲家としての技術を持ちながら,純粋な情熱でプロジェクトに参加している彼の姿勢は,このチーム全体の雰囲気を象徴しているようだった。
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現在,本作は2026年4月のリリースを目標に開発が進められている。ただし,小規模チームで少しずつ開発を進めているため,予期せぬ遅延が発生する可能性もあるという。それでも,4月までの完成を目指して,日々作業を続けているとのことだ。
Steamではデモ版が公開されており,誰でも本作の雰囲気を体験できる。モノトーンの世界観,独特の戦闘システム,そして小さなチームが込めた情熱を味わってほしい。
わずか4人のチームが,限られた予算と時間の中で作り上げようとしている「Light Odyssey」。その挑戦は,インディーゲーム開発の本質を体現しているといえるだろう。光を失いつつある宇宙で,小さな主人公が希望を取り戻そうとする物語は,開発チーム自身の姿とも重なって見える。この作品が完成を迎えたとき,どのような評価を得るのか,今から楽しみだ。
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Light Odyssey
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