
プレイレポート
[プレイレポ]2Dガンアクション「Nitro Express」は,緻密なドット絵と独特の銃器システムで,型破りな女性警官コンビの活躍が描かれる
2025年5月18日に発売された本作は,緻密なドット絵とリアルな銃器描写が魅力の2Dガンアクションゲームだ。型破りな女性警官コンビが,街を襲う自律兵器「コンパニオン」に立ち向かう,銃器に絡む独特のシステムで描かれるタイトルとなっている。
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本作の舞台となるのは,東京の特別行政区・内瀞市(ないとろし)だ。この世界ではドローン「コンパニオン」が人々の生活に溶け込んでおり,これを悪用する者たちもいる。
銃器の扱いに優れた「朝比奈陽子」とハッキングを得意とする「夜行 環」のコンビは,中庸を重んじる日本的な上司「山田文明」に率いられ,暴走したコンパニオンが街を襲う一連の事件に挑んでいく。
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本作はドット絵のアートスタイルが用いられており,その美しさには目を見張るものがある。
都会的で開けた都心部と生活の匂いがする郊外といった日本的な街並みが,看板の文字まで読み取れる緻密さと夏の光が感じられる表現力で描かれている。
陽子やコンパニオンはもちろんのこと,幕間に登場する環や文明といった脇役たちまで生き生きとしたアニメーションで動き,ドット絵が好きな人にはたまらないはずだ。
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それもそのはず,本作を開発したGrayfax Softwareは,九龍城塞を思わせる街でイカれた女性が銃をぶっ放すギャングRPG「Orangeblood」のデベロッパである。緻密なドット絵で戦う女性,銃器へのこだわりといった作風は本作にも引き継がれているというわけだ。
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こうした作風が色濃く表れているのが,独特の銃器システムである。
本作は横視点の2Dアクションであり,プレイヤーは陽子を操作して暴走コンパニオンに立ち向かう。陽子は2種の銃器と2種のオプション装備を携行し,これを切り替えつつ立ち回らなければならない。
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銃器はアサルトライフルや対物スナイパーライフルなどさまざまで,敵を撃つと飛び出すダメージ数値とともに爆散するのが爽快である。
また本作では,撃った銃のダメージが妙にバラけることがあるのだが,これは「発砲した際の姿勢に応じて威力に補正がかかる」という本作ならではのシステムによるもの。同じ銃器でもニーリング(片膝立ち),スタンディング(立ち状態),ムービング(移動中),ジャンピングで威力が違ってくるのだ。
例えばストーリークリアで手に入る対物スナイパーライフルの場合,片膝立ちの安定した姿勢だと200%の補正がかかって最高の火力を出せるが,ジャンプ中に撃とうものなら10%,つまり1/10の威力となってしまう。
しかし,片膝立ちの最中は無防備だし,補正が高い銃器は概して装弾数が少なめ。そこで,火力は低いがどんな姿勢でも補正がかからないサブマシンガンや,装弾数が多く補正が少ないブルパップPDWといった銃器が選択肢に入ってくるというわけだ。
基本的には片膝立ちできるよう,周辺を一掃できる銃器と組み合わせて使うのがセオリーとなるだろう。
補正を理解すれば,サブマシンガンやショットガンは動きつつ使い,対物スナイパーライフルやLMGは片膝立ちで撃つようになるはず。補正によってそれっぽい運用を自然と行うように再現されているわけで,銃器が好きな人であれば唸らされるだろう。
銃器の個性についてはFPSやTPSにおいては照準がブレるシステムで表現されていることが多いが,2Dアクションにそのまま取り入れてしまうと相当な違和感が生じてしまう。このシステムであれば2Dアクションで銃器ごとの運用の違いが表現できるというわけだ。
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敵の描写にも,ドット絵とシステムの両面でこだわりが見られる。大型マシンに銃を撃ち込むものの,なかなか耐久力が減らないと感じることも多いだろう。
装甲に対して対人火器をいくら当てようと効果が薄いのは当然のことで,ここでは弱点(大型のマシンに取り付いて制御を乗っ取った敵コンパニオン)を撃って動きを止めてから,地雷や手りゅう弾といった爆発物を使うのがセオリーとなる。
こうしたコンセプトが如実に表れているのが建機や戦車だ。建機は正面に装甲が施されており,銃器を撃っても跳弾して返ってくる。
戦車は高度な近接防御システムを備え,爆発物を投げてもフルオートで迎撃する。耐久力も非常に高いのだが,爆発物に対してはモロく,上記したセオリーどおりに戦えば一気に大ダメージを与えられるのだ。
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こうしたシステムが理解できると,プレイがより楽しくなる。特にミッションモードは大量の敵との戦いや大型マシン戦といったバトルに加え,水面に銃を撃ち込んで飛び出した魚を捕る現代風石打漁などの趣向を凝らしたステージをプレイできるため,気軽に爽快感を味わえるだろう。
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ただ,気になる点もあった。攻撃はジャンプやローリングで回避するのだが,ジャンプすると補正で火力が落ちるし,ローリング中は攻撃できないうえに敵の判定が大きすぎて結構引っかかるのだ。
また敵を倒した際は派手に画面が振動するため,認識に支障をきたすこともあるし,銃器を切り替えた際,使っていない銃器のリロードが自動で行われることはないため,二丁の両方が空になってしまうことも起こった。
そもそも敵の数が多いため,処理しきれずに逃げ回ることも珍しくなく,ダメージを受けるとクリア報酬が減額されるため,ストーリーモードのみを進めていると新しい装備をなかなか買えないという点も気になった。
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新しいテクノロジーとその悪用をベースに激しいメカアクションが展開,人間臭い警官のリアルで味付けされるという点は「機動警察パトレイバー」っぽさもあり,キャラクターの良い意味での理屈っぽさや少しだらけた日常風景といった雰囲気が好きな人にはたまらない。
面白かったのが,出動する(ステージをクリアする)たびに溜まっていく報告書の描写だ。
キチンと報告書を書くと報酬を得られるのだが,その報酬がわずかなうえ,書かなくても進行には何の問題もないため,プレイヤーはやがて放置するようになる。陽子の人となりをゲームらしいインタラクティブ性と誘導で表現しているというわけだ。
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また,銃器のリロードひとつとっても,ショットガンは一発ずつシェルを詰め込み,LMGは上部のカバーを開くなど銃器ごとの違いがドット絵で表現されており,見ているだけでも楽しくなる。「ドット絵」「メカ」「銃器で戦う女性」という制作者のこだわりが香り立つタイトルだ。
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本作は,いわゆるアーケードの2Dガンアクションゲームとはプレイ感が違うため,そうした作品を求めて買った人は戸惑う可能性がある。弾切れなどで攻勢に出られない時間が存在あるため,終盤の難度も結構高く,このあたりの味つけは本作らしさでもあり,人を選ぶ部分ではあるだろう。
リロードやローリングなど,もう少し爽快さに振り切ってもいいように感じたが,このあたりはプレイヤーの好みといったところだろうか。個人的にはより遊びやすく進化してくれるとうれしいので,今後のアップデートにも期待している。
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「Nitro Express」公式サイト
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