
インタビュー
[インタビュー]「Project Motor Racing」の開発プログラムに山野哲也氏が参加。現役ベテランドライバーがレースシムのリアルを語る
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「Project Motor Racing」は,「Project CARS」や「GTR - FIA GT Racing Game」「ニード・フォー・スピード シフト」などを手がけてきた開発陣によるリアル系のレーシングシミュレーターだ。「ファーミングシミュレーター」シリーズをリリースしているGIANTS Softwareのゲームエンジンが採用されており,日本ではセガが販売を担当することが発表されている。
「ファクトリードライバープログラム」は,そんな同作にリアルなドライブ感覚を加えるために,実車のドライバーやシムレーサーからのフィードバックを得ようというものだ。一般も含めた多くのドライバーから参加者を募っており,開発中のビルドのテストプレイを通じて,既存のデータからは得られない挙動や操作感を,ゲームに反映するとしている。
その「ファクトリードライバープログラム」に,国内ジムカーナのレジェンドとして知られる山野氏が参加するのだから,いったいどんなことになるのか期待は尽きない。また山野氏が最新のレースゲームをどう見たのかも気になるところだろう。発表に先駆け,セガ本社にてメディア合同のインタビューが実施されたので,本稿ではその模様をお届けしていく。
「Project Motor Racing」公式サイト(英語)
「ファクトリードライバープログラム」公式サイト(英語)
実車のリアルとゲームのバーチャルの差を埋めるために
――ファクトリードライバープログラムへの参加依頼を受けたときのお気持ちをお聞かせください。
山野哲也氏(以下,山野氏):
突然の話だったので,びっくりしました。というのも,私の運転技術はいわゆるシミュレーターやゲームで培われたものではなく,実車での経験がすべてでした。それが果たして最新のゲームソフトの開発に役立つのか,正直なところ疑問だったんです。
なので,最初は「僕はゲームはやらないタイプですが……」と正直にお伝えしたところ,「実車のリアルとゲームのバーチャルの差を埋める」ことが最大の目的なのだと伺いまして,それなら私山野が参加する価値はあるに違いないと,そう思ったんですね。
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――では,レースゲームで遊んだ経験は,まったくなかった?
山野氏:
いえ,まったくではありません。振り返ってみれば,子供の頃に「セガラリー」をゲームセンターで遊んだことがありました。それがあまりにも面白くて……例えば砂利の上を走ったときの感触や,ハンドリングが滑る感覚なんかに,実車ならこんな動きになるんだろうなと感じた思い出があります。
ただ近年にも,何度かレースゲームに挑戦したことがあるんですが,やっぱりリアルとバーチャルの差があまりにも激しくて,うまく走れなかったんですね。その結果,自分はゲームが下手だという悲しい結果だけを持って帰ることになり……僕のゲームとの関わりはそういうものだったんです。
ですが,私が協力をすることで“ゲームとバーチャルの差”が縮まるのなら,免許を持っていない子どもたちや,サーキットを走ったことがない人達にも「モータースポーツってこういうものなんだ」って広く伝えられるかもしれない。レーシングドライバーというのは,富士山で例えたら9.9号目とかを走っている人達ですから,その気持ちを裾野にいる人達にまで伝えられるなら,これはもう楽しみでしかないですね。
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――最初に本作に触れたとき,何が足りないと感じましたか。
山野氏:
ステアリングのレスポンスに対する時差,つまりタイムラグですね。操作をしている山野がいて,モニター上の車が動くまでが少し遅れる印象がありました。スピードメーターが60km/h以下であれば思ったとおりに動くんですが,速度が上がるにつれて反応スピードが変わる印象だったんです。
ただそこで凄いと思ったのは,細かなセッティングを実車と同じにできたことですね。今回テストしたMX-5という車はダンパーの硬さを調整できるんですが,それがゲームでも同じようにできたんです。運転していて挙動がおかしいなと思ったときに,実車と同じように調整してみると,ちゃんと挙動が正しくなる。そこが本当に驚きました。
もちろん調整だけではカバーできない部分もあったので,そこはリクエストを出して反映してもらおうと思っています。
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――山野さんのリクエストが,今後のアップデートに反映されていくんですね。
山野氏:
そうですね。我々もレースシーズンを重ねていく過程で,日頃から何かしらのアップデートをしています。それがライバルよりも早ければ早いほど,チャンピオンシップが転がり込んでくる可能性が高くなります。今日はまさに,そんな単純なセッティングだけでは直せないだろういくつかの要素について,開発者の方にオンラインでアドバイスさせていただきました。
――具体的にはどんな助言されたのでしょうか。
先ほどのステアリングのレスポンス以外では,スピンしたときにカウンターを当てたり戻したりしたときに違和感などもありました。
これはよく皆さんに話していることなんですが,車の運転って,リカバリーが命みたいなところがあるんですね。車の性能を引き出すために100%の運転が求められるときって,短時間に101%の運転と99%の運転を繰り返すことでこれを成立させるんですが,101%以上のときはアクシデントが起こりやすくなるんです。それをカバーするリカバリー性は本当に大事なことでして,今回はそれも重点的にお話ししました。
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――かなり完成に近づいた現在の段階で,一般の人がゲームを触ってみたとき,ドライビングスキルはどの程度まで反映されると思いますか。
山野氏:
先ほどの数値で言えば,90%ぐらいまでは辿りついているのではないでしょうか。現実とシミュレーターで最も違うのは,運転時にGがかかるかどうかです。一般的な環境ではGはありませんし,Gを再現できる特殊な環境や機材があっても,それは現実とは違っています。
ただいろいろな意見はありますが,運転スキルにGがどう影響するかは,僕個人としてはあまり関係がないと思っているんです。運転時の判断に直結する一番大事な情報は視覚で,つまりはフロントガラス越しに見える景色や環境の変化です。そういう意味では,実車もシミュレーターも条件は同じなんですよね。
なので実車のフロントガラスに相当する,画面に写るものの精度が高いほど,実車との差はなくなっていきます。そういう意味で,90%の運転は可能だと僕は思っています。
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――山野さんご自身は,本作で運転してみていかがでしたか。
山野氏:
途中はずっと黙ってやっていましたね(笑)。僕自身がゲーム慣れしていないこともあって,また先のフィードバックのラグなどもあったので,最初は走りづらかったです。ですがコースや車の挙動が分かってくると楽しくなってきて,それこそ100%に近い精度で走れるようになったときは,夢中で楽しんでましたね。
――昔山野さんが遊んだという「セガラリー」から30年以上が経過していますが,レースゲームにおける視覚情報,つまりグラフィックスの進化をどう感じましたか。
山野氏:
いやもうびっくりしました。景色があまりにも自然すぎて,ゲームということを忘れてしまいます。とくに感じたのは,光と影の表現です。太陽がどこにあって,その光がどう落ちているか。コースに見える木々の葉っぱに落ちていることもあれば,建物に影を落としていることもある。コースの逆側に来ると,それが反転して見えるわけですよ。
路面も同様で,アスファルトの石粒に落ちる光によって見え方が違って,太陽が正面にあるときは路面が光って見えるし,後ろに太陽があるときは逆に暗く見える。それが全部反映されているのがすごいと思いました。技術の進歩とともに,開発陣のこだわりを感じた部分です。
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もう一つ驚かされたのは,車にせよコースにせよ,見た目だけでなく,そのすべてが詳細に作り込まれていたことですね。例えばコース両脇のホワイトラインに,ちゃんと伸びた芝がかかっていたり,芝とラインの間にアスファルトが見えたりする。
今回のコースは,僕自身が実際に走ったことがあるコースではありませんでしたが,ホワイトラインを超えて芝を踏んだときの挙動や,縁石を踏んだときの振動の有無まで再現されていて,リアルとは聞いていましたが,そこまでとは思っていませんでした。
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また車の内装にしても,MX-5カップカーのロールケージに巻いてある,パッドを固定するための結束バンドまで再現されているんですよ。ロールケージの溶接跡なんかも実物さながらで,実車と変わらない見た目に,ある意味すごく安心しました(笑)。視覚的にも実車を運転している感覚になれること間違いなしだと思います。
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――最後に,本作を楽しみにしているレースゲームファンにメッセージをいただけますか。
山野氏:
運転がうまくなりたいということなら,ここからスタートしてみるといいと思います。開発のこだわりはしっかり伝わりましたので,僕もそれに応えられるよう,可能な限りフィードバックを出していきます。ご期待ください。
――ありがとうございました。
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- ライター:稲元徹也

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