
インタビュー
「Stellar Blade」×「NIKKE」コラボはいかにして生まれたか。吉田修平氏をゲストに,SHIFT UP開発陣が語った合同インタビューを掲載
6月7日には,「NIKKE」側のコラボ情報を紹介する公式番組が配信され,期待に胸を膨らませている読者も多いことだろう。さらに6月10日には,両作の開発者と豪華なゲスト陣による特別対談動画も公開されて,明日12日のコラボ開始に向けて,着々と準備が整ってきている。
本稿は,その特別対談の収録後に行われたメディア合同インタビューの様子をお届けするものだ。質問に答えてくれたのは,「Stellar Blade」のディレクターであり,両作品を開発するSHIFT UPのCEOを務めるキム・ヒョンテ氏と,「NIKKE」開発チームディレクターのユ・ヒョンソク氏,そして「Stellar Blade」をプロトタイプの段階から見守ってきたという,元SIE・インディーズ イニシアチブ代表の吉田修平氏である。
コラボの制作秘話や,それぞれのタイトルに関する裏話なども語られたので,両作のファンは,先の対談動画と合わせてチェックしてほしい。
元SIE・吉田修平氏と「Stellar Blade」「NIKKE」ディレクターらの対談動画が6月10日に公開。両作のコラボ記念配信で明らかに

Level Infiniteは2025年6月7日,背中で魅せるガンガールRPG「勝利の女神:NIKKE」と,アクションRPG「Stellar Blade」とのコラボレーションを記念した特別配信を実施した。この中で,吉田修平氏が登場する特別対談映像の公開が告知された。
「Stellar Blade」公式サイト
「勝利の女神:NIKKE」公式サイト
二つの開発チームが競い合って生まれた珠玉のコラボレーション
――今回のコラボの見どころを教えてください。
ユ・ヒョンソク氏(以下,ユ氏):
「NIKKE」側の見どころはいろいろあります。「NIKKE」と「Stellar Blade」は,どちらもポストアポカリプスの世界を舞台にしているという共通点がありますので,ストーリーも良いものになりました。ぜひご期待ください。
また,「Stellar Blade」ファンなら気付くだろうオマージュや,さまざまな小ネタを3Dフィールドに散りばめています。強敵「プロビデンス」のバトルも再現していますので,こちらも注目してほしいですね。
キム・ヒョンテ氏(以下,キム氏):
「Stellar Blade」側の見どころを一つ選ぶなら紅蓮でしょうか。剣を持ちながらも,「NIKKE」では遠距離戦しかできなかった紅蓮ですが,「Stellar Blade」では白刃を交える,文字どおりの真剣勝負を見せます。今回追加される「マン」と合わせて,紅蓮は「Stellar Blade」でも一番手強い相手になると思いますね。
――「NIKKE」側では,「Stellar Blade」コラボのあとに新しい企画を予定していますか。
ユ氏:
いろいろ議論しているところですが,詳しくお伝えできる状況ではありません。今は「Stellar Blade」とのコラボに期待していただけたらと思います。
――SHIFT UPのお二方から見た,吉田さんやSIEへの印象を教えてください。
キム氏:
吉田さんは「Stellar Blade」を発掘してくださったうえに,今回のコラボも応援してくれている,いわば「Stellar Blade」の母親のような人です。ですので,この場で改めてお礼を申し上げたいと思います。
そして,吉田さんはPlayStationブランドの誕生からPS4までの,コンソールゲームの全盛期を作られた人でもあります。とくにPS3からPS4の時代には,「アンチャーテッド」や「God of War」といったタイトルでゲーム業界を支えてくださいました。ですので,私はゲーム開発者としても,いちゲーマーとしても吉田さんに感謝しています。
これからも,現在携わられているインディーゲームや,ゲーム業界の未来についてなど,深掘りしたお話ができればいいなと思っています。
――吉田さんはSHIFT UPを訪れたことがあるそうですが,スタジオの印象はいかがでしたか。
吉田修平氏(以下,吉田氏):
2019年に初めてうかがったのですが,そのとき「Stellar Blade」のプロトタイプを見せてもらい,これはすごいと思いました。韓国のゲーム業界は開発力に優れたデベロッパがたくさんあります。常々コンソールゲームを作ってほしいと思っていたところに,いきなり「Stellar Blade」が出てきたので,驚きました。キムさんからは「子供のときからPlayStationを遊んでいて,将来PlayStation向けにゲーム作りたいと思っていた」というお話を聞いて,感動したのを覚えています。
SHIFT UPはフロアも奇麗でしたし,「Stellar Blade」の制作に使ったクリーチャーの手作りモデルがいっぱい並んでいて,工房やアトリエのような雰囲気がすごく魅力的だと思いました。開発者の皆さんもたくさんいらっしゃって,もう熱気ムンムンでしたよ(笑)。
――吉田さんは,「Stellar Blade」の開発を最初期から見守ってきたと伺っています。結果として同作は大成功を収めたわけですが,その理由は何だとお考えですか。
吉田氏:
キャラクターの造形や技術力,グラフィックスの美しさなど,成功の理由はいろいろあると思います。しかし個人的にはバトルの手触りの良さ――難しいけれど,慣れてくると乗り越えられる熱いバトル,パリィのような難しいテクニックを誰でも学べるところなど,コンバット体験が遊びやすく,深いものに仕上がっていることであると考えています。
ここに至るまで,SHIFT UPの皆さんがSIEのプロデューサーやマーケッターたちとかなり密にキャッチボールしていたのも見ています。その甲斐もあって,ポリッシュされた良いゲームになったと思っています。
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――コラボにあたり,「NIKKE」側から要望したことは何かありましたか。
キム氏:
とくに要望を出したり,制限を掛けたりといったことはしませんでした。今回のコラボは,お互いのチームがやりたいことをやりたい放題にやったという感じで,社内コラボだからこその自由さだったと思います。
当初はここまでの作業になるとは思っていなかったのですが,いざ開発が始まると熱量がどんどん高まっていき,お互いにディープな質問をぶつけ合うなど,その過程でチーム同士の理解が深まっていきました。
――コラボにあたり,「Stellar Blade」ファンに注目して欲しい「NIKKE」の魅力を教えてください。
キム氏:
2つの作品にはそれぞれ良いところがあります。今回のコラボは,「Stellar Blade」の中に「NIKKE」が登場し,「NIKKE」の世界観の中に「Stellar Blade」が入り込んでいるという感じです。“もし「Stellar Blade」の開発者が「NIKKE」を作ったら?”,あるいは“もし「NIKKE」の開発者が「Stellar Blade」を作ったら?”という想像が現実になったようなもので,まさに夢のコラボといえます。
ユ氏:
「NIKKE」と「Stellar Blade」は魅力的なキャラクター表現や,ポストアポカリプスの世界観に基づいたストーリーテリングといった共通点があります。ですので,「Stellar Blade」が好きな人なら,きっと「NIKKE」も楽しんでいただけると思います。
今回のコラボでは,「記憶」というテーマによる両タイトルの融合をお届けしますので,楽しみにしていてください。
――「NIKKE」はリリースから2.5周年,「Stellar Blade」は発売から1年が経ちましたが,それぞれの手ごたえをお聞かせください。
ユ氏:
2.5周年という期間は決して短いものではなく,いろいろと思うことはあります。最近は,皆さんに長く愛していただけるゲームにするため,なるべくトラブルが起きないよう,ビルドの安定性を向上させることを重視しています。そのための準備もしていますので,ご期待ください。
キム氏:
それだと,あまりにも開発者目線じゃないかな(笑)。
ユ氏:
2025年1月に書いたデベロッパーノートに,「3周年のストーリーにご期待ください」と書いてしまったんですよね(笑)。それだけ力が入っていますので,3周年はきっと楽しいものをお届けできると思います。お楽しみに。
キム氏:
「NIKKE」はイベントがあまりに多いので,開発チームが苦労しているのをよく見かけます。そんな彼らのために社長ができることというのは……皆さんお分かりですよね(笑)。
「Stellar Blade」も1周年を迎え,おかげさまでPC版の発売にこぎつけることができました。こうしたシングルプレイゲームは,ひとたび発売されればせいぜいバグ対応のパッチを作るくらい……というのは昔の話。ライブサービスと同じ感覚でアップデートを続けたところ,「Stellar Blade」は発売当時とは別物になりました。コンテンツも多く,完成度も高くなっていますので,ほかのプラットフォームへの移植というより新しいタイトルをリリースするような気持ちです。
プレイヤーの皆さんも,PC版のリリースを喜んでくれているようで,私も嬉しい気持ちになりました。もちろん,PS版にも同じ内容のアップデートを行いますので,期待していてください。……ちょっとありきたりなPRコメントになってしまいましたね(笑)。
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――吉田さんに聞きたいのですが,「NIKKE」と「Stellar Blade」にはどんな印象をお持ちですか。
吉田氏:
「NIKKE」は日本展開時の,街中をジャックしている感じのプロモーションがすごかったですよね。キャラクターの魅力を背中から見せるという手法を見たときは,「このゲームは勝った」と思いました。
「Stellar Blade」は難度の高いサードパーソン系という,個人的に一番好きなタイプのゲームで,プロトタイプの段階から遊ばせていただいていました。途中はかなり難しかったりもしましたが,調整を経て満足度の高いゲームになったという印象です。SHIFT UPさんは,常にゲームを改善し続ける姿勢を持っていて,素晴らしいと思います。
――東京ゲームショウ2024のインタビューで,ユさんは“「NIKKE」で次にコラボしたい作品は「Stellar Blade」”とおっしゃっていました。実際にコラボが実現するまでの流れやエピソードを教えてください。
ユ氏:
「Stellar Blade」については,発売前からコラボしたいと考えていたので,キムに繰り返しお願いして洗脳しました(笑)。特定のきっかけがあったというわけではなく,互いにリスペクトしていたので,運命のように自然な流れでコラボすることができたんです。
キム氏:
ここだけの話をすると,「NIKKE」と「Stellar Blade」のコラボは実現しない可能性もありました。それというのも,「NIKKE」においてコラボ相手を選ぶのは,四半期のコンテンツを決めるような,重大な決断だからです。もし「Stellar Blade」の評価が低かったら,「NIKKE」のプレイヤーの皆さんをガッカリさせることになってしまいます。
だから,「Stellar Blade」の開発中は“「NIKKE」とのコラボにふさわしいコンテンツになるだろうか”という心配がありました。実は,その心配は今も続いています。コラボがうまくいくことを祈っていますし,こうした中でコラボしてくれた「NIKKE」には感謝しかありません。
ユ氏:
キム社長,給料のほうもよろしくお願いしますね(笑)。
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――「NIKKE」と「NieR:Automata」とのコラボでは,エミールショップやカメラを動かしたときの蹴りなど,原作ファンも喜ぶ要素が多数再現されていました。今回のコラボで,「NIKKE」ファンにとくに注目してほしいポイントはありますか。
キム氏:
「Stellar Blade」では「NIKKE」本編と同じ声優さんを起用したうえで,紅蓮の性格も再現しています。また,「NIKKE」における「宝もの」の要素も取り入れるなど,細かな再現を行いました。最近は「NIKKE」のバトルの見た目を模倣したゲームも増えてきていますが,そうした作品を作っている人達に,「どうせなら,これくらいやらないと」といえるようなものになったと思います。
――「NIKKE」はさまざまな作品とコラボしていますが,「Stellar Blade」コラボはほかと比較しても発表から実施まで長い期間がありました。その理由はなんでしょうか。
ユ氏:
理由の1つは,「NIKKE」としては初の相互コラボだからです。自社内でのコラボだからこそ,いろいろなものを盛り込んだので,制作に時間がかかったわけですね。
もう1つの理由は,社内コラボだからこそ,エンバーゴ(情報解禁)の日付を考える必要がなかったことです。通常のコラボでは,先方から「ここの日付までは情報を出さないでください」というお達しがあるのが通例です。しかし自社コンテンツ同士だとそういった制限がありません。早く発表できたのは,そういう理由だと思います。
――両作品とも人類とヒューマノイド,あるいはアンドロイドが重要なキーワードになっていますが,今回のコラボも,こうした部分をより深く描いたものになるのでしょうか。
キム氏:
「Stellar Blade」側は,本編とはまた一味違った,キャラクターの新しい魅力にフォーカスしたものになっています。一方「NIKKE」側は,そうしたテーマを掘り下げた考察が可能なものになっています。
ユ氏:
ポストアポカリプス的世界観とヒューマノイドの物語の組み合わせは,「NieR:Automata」コラボで既に行いました。そのため,今回は「記憶」をテーマに据えた物語を展開しています。興味深いものに仕上がっていますので,ご期待ください。
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――展開するプラットフォームからジャンルまで,異なる点も多い両作ですが,コラボについて「Stellar Blade」の開発チームからはどんな反応がありましたか?
キム氏:
「Stellar Blade」チームとしては,PC版の発売と同時になるため,2つのプロジェクトを並行して進める厳しいスケジュールとなりました。そのため,「Stellar Blade」チームから「NIKKE」チームに希望を出すようなことはしていません。ただ,お互いのチームが競い合った結果,「ここまでやるか」と感じるほど熱量の高いコラボになりました。両作のスタッフに感謝したいです。
ユ氏:
キムからは「PC版の開発と並行でやらなければならないので,ベストなものにはならないかもしれない」と聞いていました。しかし,実際に出てきたものはとんでもないクオリティで,驚いたものです。「NIKKE」チームとしても,「大変だ,あっちはすごいものを作ってるよ!」という感じで,より良いものを作るための刺激になりました。
――「NIKKE」のストーリーでは,アニスのアイドル時代という衝撃的な過去が明らかになり,アイドルグループのメンバーも登場しています。彼女たちもニケである以上,戦闘が可能なのでしょうか。今後部隊に追加できるのか,とても気になります。
ユ氏:
メンバーたちもニケであるため,戦闘力はあります。戦えるかもしれないし,強いかもしれません。プレイヤーの皆さんの部隊に追加できるかどうかは,ネタバレになるため現在は詳しくお伝えすることができない段階です。
――吉田さんへの質問です。今回のイベントについての感想を聞かせてください。
吉田氏:
今回のイベントは,私自身がSHIFT UPさんのファンだけに「ぜひ,やらせてください」と返事させていただきました。いろいろなお話を聞けましたし,ヨコオさんや斎藤さんはユーモラスな中に深い話もされていて,すごく楽しかったです。
――本日はありがとうございました。
両作品のファンにとっては待望のコラボ開始まであとわずか。Xデーの6月12日に向け,公式放送や関連動画を見て期待を高めておこう。
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