
プレイレポート
14世紀のヨーロッパで繰り広げられる十字軍と悪魔の戦い。リアルタイム戦略RPG「Band of Crusaders」が描く終わりなき聖戦[gamescom]
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Band of Crusadersの特徴は,プレイヤーの行動に関わらず世界が独自に進行する「生きた世界」というコンセプトだ。街では経済が動き,悪魔は着々と勢力を拡大し,時間と共に世界の混沌が進行していく。まるで本当に14世紀のヨーロッパが悪魔に侵食されているかのような緊張感が,プレイヤーを待ち受けている。
今回,Virtual AlchemyのHubert Nosek氏から直接話を聞きながら実機デモをプレイする機会を得たので,その詳細をお伝えしよう。
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「Band of Crusaders」の戦闘は,一般的な戦略RPGのようなターン制ではない。リアルタイムで進行しながらも,重要な局面ではスローモーションになり,戦術的な判断を下す時間が与えられる。この独特のシステムにより,アクション性と戦略性が融合している。
戦闘に入る前には,敵の種類や地形の詳細を確認できるプレビュー画面が表示される。例えば「狩りの罠」が仕掛けられた森林地帯では,不用意に突撃すると大きなダメージを受ける可能性がある。事前の情報収集と準備が,生死を分けることになるのだ。
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実際の戦闘では,キャラクターの配置が極めて重要になる。ポールアームを持つキャラクターを適切に配置すれば,一度に複数の敵を攻撃できる。逆に,敵もシナジーを持っており,ヘルハウンド・アルファの近くにいるヘルハウンドは能力が強化される。単純に強いキャラクターを並べるだけでは勝てない,奥深い戦術性がそこにはある。
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興味深いのは,敵もアクティブアビリティを使用してくることだ。例えば「Feast」というアビリティで回復を試みる敵には,回復される前に集中攻撃を仕掛けなければならない。プレイヤー側も,範囲攻撃の「Righteous Sweep」やスタン効果のある爆弾など,多彩なアビリティを駆使して戦況をコントロールしていく。
戦闘後には詳細なサマリーが表示され,与えたダメージ,受けたダメージ,ブロックや回避による「無効になったダメージ」などの統計を確認できる。これらのデータは,次の戦闘に向けてビルドを最適化するための貴重な情報だ。
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本作のキャラクター育成システムは,一般的なRPGとは一線を画している。まず目を引くのは,ステータスが「Constitution(体力)」「Dexterity(器用さ)」「Strength(力)」の3つに絞られていることだ。これについてNosek氏は「人間は貴重であるというリアリティを重視した結果」と説明した。
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Dexterityは遠隔戦闘だけでなく複数のアビリティに影響を与え,Strengthはロングボウの使用に必要だがクロスボウには不要という,現実的な要素が反映されている。ただし,クロスボウは序盤は非常に強力だが,後半になるとロングボウのほうが高いダメージを出せるなど,プレイスタイルに合わせた選択が可能だ。
各キャラクターには独自のスキルツリーがあり,パッシブアビリティとアクティブアビリティを選択して成長させていく。例えば,範囲攻撃の「Cleave」と,高ダメージ・出血効果があるが味方を攻撃する可能性もある「Mock」のように,リスクとリターンを天秤にかけた戦略的な選択を迫られる。
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特に重要なのが「信仰(Faith)」だ。戦闘に勝利すると信仰が上昇し,キャラクターが戦闘中にとった行動や,ランダムイベントでの選択に影響を与える。元騎士,傭兵,農民といったキャラクターの背景設定によって,同じイベントでも反応が異なる。ダメージを負ったキャラバンを助けるか,略奪するかという選択で,元騎士は助けることで信仰が上がるが,傭兵は略奪を選んでも信仰が下がらない。
これは単純な善悪の二元論ではなく,チーム内の多様なキャラクターの動機と価値観を考慮して選択する必要があることを意味している。プレイヤーは十字軍のグランドマスターとして,異なる背景を持つ人々をまとめ上げる難しさに直面するわけだ。
戦闘の合間にある,拠点(キャンプ)の管理も重要になる。ワークショップでは鎧の修理を自動化したり,手動で修理するアイテムを選択したりできる。医務室では負傷したキャラクターの回復を管理し,キッチンでは空腹度を管理する。空腹度は信仰にも影響を与えるため,単なるリソース管理以上の意味を持つ。
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十字軍宿舎では,戦闘に投入できるキャラクターの枠を増やすなど,プレイヤーの進行度をコントロールできる。これらの施設をどのように発展させるかは,プレイスタイルによって大きく変わってくるだろう。
世界に点在する都市には,それぞれ独自の経済状況がある。「食料過多」の地域では食料が安く購入でき,逆に不足している地域では高値で取引される。このような経済の変動は自動的にバランスを取るようになっており,プレイヤーはそれを利用して効率的に物資を調達できる。
クエストも多様で,護衛,アイテム回収,敵の討伐などさまざまな種類が用意されている。重要なのは,すべてのクエストに時間制限があることだ。世界は常に動いており,プレイヤーがあるクエストを取り組んでいる間にも,ほかの場所では状況が刻々と変化している。優先順位を決めて行動しなければ,手遅れになることもあるという。
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そんな本作の核心となるのが,「世界の混沌(Chaos)」という値だ。プレイヤーが悪魔を倒さずに放置していると,混沌度が上昇し,敵の種類やイベント,クエストが変化する。混沌が進むほどゲーム全体の難度が上がり,最終的にはゲームオーバーに至るという。
画面上部には常にタイマーのような表示があり,これはストーリーの進行と混沌の進行度を示している。時間の経過と共に,より強力な悪魔が出現するようになり,最終的には主要なボスとの対決が待っている。
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デモプレイで見せてもらったボス「Beelove」は,まさに悪夢のような存在だった。「蠅の主」と「暴食の罪」を組み合わせたこのボスは,巨大な昆虫の姿をしながらも,人々が融合して食らいつく「暴食」の概念が視覚的に表現されている。
戦闘中は蠅を放ってキャラクターに取り付かせ,継続的なダメージを与えてくる。通常の戦術では歯が立たず,特殊な対策が必要になるだろう。
夜や沼地などの環境も,戦闘に影響を与える。暗闇では視界が制限され,沼地では移動速度が低下する。これらの要素を考慮して戦略を立てる必要があり,単純な力押しでは勝利できない。カイト(敵を誘導しながらの攻撃)や回避といったメカニクスを活用し,地形と環境を味方につけることが重要になる。
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「Band of Crusaders」は,戦略RPGとサンドボックスの要素を見事に融合させた意欲作だ。リアルタイムとスローモーションが織りなす独特の戦闘システム,多様な背景を持つキャラクターたちの管理,そして刻一刻と変化する生きた世界。これらすべてが組み合わさって,プレイヤーはまさに「14世紀ヨーロッパで悪魔と戦う十字軍のグランドマスター」としての体験を得られる。
特に印象的だったのは,開発者の「人間は貴重である」という哲学が,ゲームデザインの随所に反映されていることだ。キャラクターを使い捨てにするような選択肢はなく,一人ひとりの背景と価値観を尊重しながら,困難な状況を乗り越えていく。これは単なるゲームメカニクスを超えて,プレイヤーに深い思考を促す要素となっている。
今回見せてもらったマップは,全体の約3分の1に過ぎないとのことで,完成版ではさらに広大な世界が待っているという。14世紀のヨーロッパ全土を舞台に,どのような聖戦が繰り広げられるのか。リリースが待ち遠しい。
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