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パルワールドのポケットペアがインディーゲームを支援する理由。開発者を信頼し,自主性を尊重するマインドを責任者に聞いた[WePlay2025]
2025年11月28日時点で,パブリッシングが発表されたタイトルの数は6つに上り,そのどれもが小規模開発のインディーゲームである。
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ポケットペアのパブリッシングは,かなり特殊な部類なのかもしれない。資金は出すが,その使い方には口を出さない。プレイしてどのように感じたのかフィードバックは送るが,どのようにゲームを変更したらいいかまでは言わない。
開発者の自主性を最大限に尊重した体制には,責任者であるJohn "Bucky" Buckley氏(以下,バッキー氏)のインディーゲーム愛が込められているように感じた。
本記事では,中国最大級のインディーゲームイベント「WePlay Expo 2025」の会場で実施したバッキー氏へのインタビューをお届けする。
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4Gamer:
本日はよろしくお願いします。バッキーさんは,日本に長くいらっしゃるそうですが,ポケットペアに入る前からいらしたのでしょうか。
バッキー氏:
はい。日本には,ポケットペアに入る前から住んでいました。ポケットペアに入る前は,ゲーム業界で働いていたわけではなく,大学の先生をしていました。
4Gamer:
大学の先生からどういうきっかけでゲーム会社に入られたのですか。
バッキー氏:
単純にゲームが大好きだからです。本当にずっとゲームしかしてこなかったくらいでして。
たまたま,4年から5年程前に溝部さん(ポケットペア・代表取締役社長 溝部拓郎氏)とオンラインでお話する機会があり,それがきっかけで縁ができて,今に至る形です。
4Gamer:
いろんなゲームを遊ばれてきたと思うのですが,どのようなゲームを好んでプレイしてきましたか。
バッキー氏:
普段プレイするのは,ほとんどインディーゲームです。小規模な作品も含め,さまざまなインディーゲームをたくさん遊んできましたが,いわゆるAAAタイトルにはあまり触れてきませんでした。
これまでよく遊んできたのは,比較的小規模なタイトルが多いですね。PCでゲームを遊ぶことがほとんどだったので,とくに自動化や工場系のゲーム,ローグライクのようなジャンルが好きなんです。
4Gamer:
AAAタイトルをあまり遊ばず,インディーゲームにのめり込んでいったのはどんな理由からでしょうか。
バッキー氏:
インディーゲームには,独自の仕組みや遊び方を持つ作品が本当に多いんです。AAAタイトルはグラフィックスや映像表現のクオリティが圧倒的で,その点は素晴らしいと思います。ただ,ゲームプレイそのもののメカニクスは,自分にはあまり響かないことが多くて。
一方で,インディーゲームは,とくに最近はものすごくユニークで,ほかでは見たことのないようなシステムを持った作品がたくさんあります。
自分の遊び方の好みとして,1つのゲームを遊び終えたら,次はまったく違うタイプのゲームをプレイしたいんです。ジャンルをどんどん飛び移っていくのが好きで,その意味でもインディーゲームの方が相性がいいと感じています。
4Gamer:
インディーゲームは開発規模的に,短時間で遊べるタイトルというイメージがあると思います。バッキーさんの遊び方としてはどのような形ですか。
バッキー氏:
自分は,短時間だけ,という遊び方はしないですね。気に入ったゲームは,かなり長く遊びます。
最近遊んだ「BALL x PIT」は,クリアまでに35時間くらいプレイしました。インディーだからといって軽く触って終わり,というよりは,しっかりと最後までプレイすることが多いです。
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4Gamer:
ゲームのメカニズムについてですが,インディーゲームでも,プレイしてすぐに面白さが伝わるタイプの作品があれば,しばらくプレイしてから,だんだんと面白さが分かってくるタイプの作品もあると思います。
どういうタイプが,インディーゲームらしいと感じますか。
バッキー氏:
まず,インディーゲームの強みの1つは,「真のインディー」と呼べるような作品の場合,それほど多くの数を売り上げなくても,コスト回収できる余地があることだと思っています。
だからこそ,かなり実験的なゲーム作りができるのです。
自分が例によく挙げるのが,「Loop Hero」です。見た目はものすごくシンプルなオートバトラーなんですが,プレイを続けていくと,そこにどんどん新しいメカニズムが追加されていきます。
ステージが進むごとに新しいルールや仕組みが入ってきて,常に新鮮さが保たれるようになっているのです。
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いわゆる伝統的なゲームデザインでは,プレイヤーが早くゲームを理解できるように,メカニズムを早い段階で全部提示することが多いと思います。
しかし,インディーゲームは最初に見せなくてもいいし,プレイ時間全体を通じて,少しずつ仕組みを足していくような作り方ができる。
そういう風に,プレイ中に新しい要素を追加しつづけ,常に「ちょっと新鮮」な感覚を与えられるのは,インディーならではの贅沢だと思います。
4Gamer:
先ほど,真のインディーは売上をそれほど伸ばさなくても,コスト回収できるというお話がありました。しかし,パブリッシャが付くなら,その分売上も伸ばさなくてはいけないと思います。
Pocketpair Publishingは,どのようなところを目指しているのでしょうか。
バッキー氏:
ほとんどのパブリッシャがROI(Return On Investment,投資した額に対して,どれだけの利益を上げられたかを表す数値)を強く意識して動いていることは,よく理解しています。
ゲームでお金を稼がないといけない,というのはパブリッシャとして当然のことです。
ただ,その考え方を突き詰めてしまうと,「これは面白そうだけど,大ヒットはしなさそう」だと判断されてしまう作品が,どうしても出てきてしまいます。
そういったタイトルは,パブリッシャを見つけられず,資金調達の機会も得られないまま,埋もれてしまうことが多いです。
しかし,そういった作品の中にも,本当に才能のあるクリエイターがたくさんいるんです。彼らはアイデアもスキルも持っているのに,経験やチャンスが足りなかっただけだったりします。
4Gamer:
それが現実ですね。
バッキー氏:
はい。ですので,Pocketpair Publishingは,その現実を少しでも変えたいと思っています。私たちは幸運なことに,そういった小さなゲームに手を差し伸べられる立場にいます。
彼らのゲームが1000万本,2000万本売れることを最初から期待しているわけではありません。もしそうなったら最高ですが,まずはしっかりと完成させ,彼らが経験を積めることが大事なのです。
もし結果として黒字になったり,利益が出たりすればもちろん嬉しいですが,とにかく面白いゲームを作る小さなチームを支えること自体がPocketpair Publishingの核といえます。
実際,Pocketpair Publishingのタイトルのほとんどが,1人か2人程度の小さなチームによる作品であり,その開発チームにとっての初めて,または2作目ということが多いのです。
4Gamer:
Pocketpair Publishingのサポート体制や規模について教えてください。
バッキー氏:
大きく2つの形でサポートをしています。
1つ目は,資金面のサポートです。多くのパブリッシャは,資金提供と同時にかなり多くの条件を開発チームに課すことが多いと思いますが,Pocketpair Publishingは違います。
かなり「ハンズオフ」(投資先に任せること)な形で資金提供を行っています。お金はこちらから出しますが,その使い方は基本的に開発者の自由です。
インディー開発者にとって本当に必要なのは,自由に使える資金だと感じています。自分たちのやり方で,作りたいゲームを作るための資金です。
もちろんこちらとしては,開発者を信頼する必要がありますし,リスクも背負います。
なので,契約前にしっかりと話し合いを行い,信頼のできる相手かどうか見極めています。
2つ目は,マーケティング面での支援です。ポケットペアは,幸いにも優秀なマーケティング部を社内にもっています。
通常のマーケティングに加えて,海外もかなり幅広くサポートできます。とくに多いのは,Steamまわりのサポートですね。
私たちが一緒に仕事をしているインディー開発者の中には,Steamで一度もゲームをリリースしたことがない人もたくさんいます。
実際のところ,Steamにゲームを登録して,Steamworksのバックエンドを設定して,という作業はかなり複雑で手間がかかります。そこが,インディー開発者にとって,大きな課題になりがちなのです。
そこで私たちが,Steamのストアページ作成から設定,その後の管理まで,退屈だけど大変な裏側の作業を全部引き受けています。私たちが裏で働いて,開発者には,ひたすらゲームの中身作りに集中してもらいたいのです。
4Gamer:
以前,個人でSteamに登録したことがあるので,その面倒くささは分かる気がします。
ところで,発表済みのタイトルの中で,資金面のサポートをして,はっきりと変わったな,と感じた例はありますか。
バッキー氏:
ほぼすべてのタイトルがそうだと感じています。現在Pocketpair Publishingで発表済みのタイトルのうち,1本を除いてすべてに資金提供をしています。
その1本だけは,お金はいらないから,マーケティングのサポートだけをしてほしい,とのことで資金は受け入れていません。
どのタイトルも開発の進捗段階は異なりますが,資金が入ったことでゲームの質が上がっているのがはっきりと見えています。
分かりやすい例が,「Truckful / トラックフル」です。この作品は,今年の年初あたりから資金を入れ始めて,もうすぐ1年になります。
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斜め見下ろし視点のトラック運転配達ゲーム「Truckful」は,マシンを操作している感が強い。初心に帰って運転を楽しめる[WePlay2025]
「WePlay Expo 2025」の会場で,ポケットペアがパブリッシングを担当し,ポーランドのインディースタジオ・MythicOwlが開発中のドライブゲーム「Truckful / トラックフル」の体験版をプレイした。物理演算を搭載した荷物を荷台に乗せて運ぶのだが,斜め見下ろし視点による独特な操作感で,一筋縄ではいかない。
資金を使って,彼らは新しいスタッフを雇ったり,音楽やアートの外注にお金をかけたりできるようになりました。
数か月ごとに新しいビルドをもらっているのですが,そのたびにクオリティが1段ずつ上がっているのが分かります。
もう1つは,イギリスのチームによる「Normal Fishing / ノーマルフィッシング」です。こちらも資金援助を始めてから,クオリティの伸びが顕著ですね。
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さらに,つい今朝の話(2025年11月23日)ですが,今年最後のPocketpair Publishing作品として「Vision Quench / ビジョンクエンチ」を発表しました。
アメリカにいる3人の開発者たちによる小規模なゲームで,資金提供を始めた直後から外注などにすぐ活用しているのが見えてきています。
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多くのインディー開発者は,アイデアもスキルも持っていますし,何をすればもっとよくなるかも分かっていることが多いんです。ただ,それを実際にやるためのお金が足りない。
また,とても優秀なエンジニアであっても,自分でアートを描くのは得意ではない,というケースもあります。すべての能力を1人で完璧にこなせる人なんて,ほとんどいません。
そういうときに,外部のアーティストに頼んだり,必要な人材を雇ったりするための資金を提供できていることは,私たちとしてもすごく嬉しいですね。
4Gamer:
インディーはプロ集団ではない,ということが多いと思います。そこでお金の使い方も分からないチームもあるのかと思いますが,どこにどれだけ使うかといった道筋をPocketpair Publishingが示すことはありますか。
バッキー氏:
そこは,今のところPocketpair Publishingの領域ではないと考えていますし,実際,現状ではやっていません。
Pocketpair Publishingは,オンラインでピッチ(短時間の提案やプレゼンテーションなど)を受け付けるページがあります。そこからは,世界中のインディー開発者が企画を送ってきてくれているのですが,私たちは単にアイデアやシステムの良さを見るわけではありません。
同じくらい重要なのが,予算のコンセプトを持っているか,どうかです。企画がすごく面白かった場合,こちらからなぜこの金額が必要なのかを詳しく聞くことがあります。
そこが私たちにとっての分岐点になることが多いですね。
しっかりとした開発者であれば,毎月このくらいのお金を,こういったことに使う予定です,というかなり細かい予算表を返してくれます。
一方で,中には,明確なイメージを持っていない人もいます。友人から聞いた話や,ネットの情報をもとに,何となくこのくらい必要だろう,とだけ考えているケースですね。
その場合,これはPocketpair Publishingの出番ではないのかもしれない,と判断することもあります。
もちろん,できる限り手助けはしたいのですが,いわゆる「ファイナンスのメンタリング」まで踏み込むのは,今のPocketpair Publishingの人員では少し難しいです。
そうした領域に特化した学生向けのパブリッシャなども存在しますし,そういうスタジオの方が向いている場合もあります。
Pocketpair Publishingは,何でもかんでも自分たちでやろうとするのではなく,自分たちのリソースで責任をもって支えられる範囲に集中したいと考えています。
4Gamer:
パブリッシングタイトルを選ぶ時点で,自分たちの支援の方向性にも合っているか見極めるのですね。
バッキー氏:
そうですね。もちろん,何から何まで完璧に計画が固まっている必要はありません。多少決まっていない部分があっても大丈夫です。
ただ,プロジェクトの「始まり」「中盤」「終わり」がだいたいどうなるかというイメージは持っていてほしいですね。
その全体像が見えていれば,こちらもその旅路に併走しやすくなります。
ゲームのピッチには,コンセプトピッチと呼ばれるものがあります。これはビルドもなく,開発も始まっていない段階で「こういうゲームを作りたいので,このぐらいのお金がほしい」とだけ伝えるものです。
そうしたピッチに対しては,Pocketpair Publishingは慎重になります。アイデアだけで何も動いていない状態よりも,すでに何かしら開発が進んでいて,コミットメントが見えるプロジェクトを好みますね。
4Gamer:
ゲーム開発において,フィードバックは重要なものだと思っています。Pocketpair Publishingからも実際にビルドを遊んで,フィードバックを返すのでしょうか。
バッキー氏:
もちろんです。それこそがプロダクションだと考えています。一緒に仕事をしているすべてのチームから,定期的にビルドを送ってもらっています。それをプレイして,必ずフィードバックを返します。
ただし,フィードバックの仕方には気をつけています。こちらから「こうしなさい」という指示はせず,あくまで意見として伝えるようにしています。
開発者のクリエイティブな自由を,できるだけ100%守りたいんです。
もちろん,こちらがプレイしていて「ちょっと方向性が違うかもしれない」と感じることもあります。そのときは,できるだけ丁寧に,やわらかく「こういう感じ方(見え方)もありますよ」と伝えます。
しかし,最終的に開発者自身が「いや,自分はこの方向性で正しいと思う」と強く信じているなら,そこで止めることはしません。
私たちは,可能な限りクリエイティブの主導権を開発者側に置いておきたいのです。
4Gamer:
ちょうど先ほど,吉田修平さん(元SIEワールドワイド・スタジオのトップ)と似た話をしていました※。「アドバイスはするけど,何をすべきかは開発者が決めるべきだ」というようなことを仰っていました。
※本インタビューの直前に収録していました。内容については,後日掲載予定です
バッキー氏:
まさに同じ考えですね。
そして,Pocketpair Publishingが少し特殊なのは,自分たちもゲーム開発会社であるという点です。自社タイトルを作りながら,ほかの開発者の支援もしている。
ポケットペアの歴史の中でも,「どうしてそんなゲームを作るのか」「なぜその要素と組み合わせるのか」といった疑問をたくさん投げかけられてきました。
それでも「自分たちが信じる面白さがあるから作る」というスタンスを貫き,ポケットペアのゲームはどれも成功を収めています。
そういう経験があるからこそ,開発者が本気で信じている方向性があるなら,それを信頼すべきだ,と思うんです。
4Gamer:
開発者を信じ切れるのは,なぜでしょうか。
バッキー氏:
それはもう「私たちがゲーム開発者だから」としか言いようがありません。
4Gamer:
ポケットペアの作品は,好きな要素を全力で詰め込んだゲームという印象があります。パブリッシングタイトルにも,そのいろんなものが好きというのが現れている気がしますね。
バッキー氏:
そう言ってもらえるのは嬉しいですね。私たちは,自分たちを特定のジャンルに閉じ込めたくないと考えています。
もちろんジャンル特化型のパブリッシャ,という存在には大きな価値があります。実際,今もっとも成功しているパブリッシャの中にはそういった会社も多いです。
たとえば,「Hooded Horse」(ストラテジーやシミュレーションに特化したパブリッシャ)ですね。
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ただ,Pocketpair Publishingとしては,あまり自分たちを限定せず,できるだけ幅広いタイプのゲームに開かれたパブリッシャとしていたい。そのスタンスでいます。
4Gamer:
最後に,これからの展開についてお聞かせください。Pocketpair Publishingとして発表されたタイトルも増えてきましたし,来年以降リリースが続くと思います。
今後の意気込みや,目指してきたいことを教えてください。
バッキー氏:
来年リリース予定のタイトルはいくつもありますし,2027年,2028年リリース予定の作品も進行中です。
すでに契約しているけど,まだ発表していないタイトルもいくつかあります。開発者を無理に急かして早く発表しようとすることはありません。
それぞれのタイミングを大事にしたいですね。
とはいえ,パブリッシャとしては,毎年いくつかのタイトルを世に出していきたい,という目標もあります。
今とくに力を入れていきたいと考えているのは,アジア圏のインディー開発者をもっと支援することです。
これまでに契約したチームはヨーロッパやアメリカの開発者が多く,中国や日本の開発者とは,まだそれほど多く組めていません。
ですので,直近の課題としては,日中を中心に,アジアのインディー開発者たちともっと出会い,支援していくことですね。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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