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“こち亀”のボードゲームがまともなわけがない!副業&ギャンブルで10億円稼ぐ「ゲーム・ザ・両津勘吉」昭和・平成レトロボードゲーム大百科 第9回
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「こちら葛飾区亀有公園前派出所」,通称“こち亀”といえば,かつて週刊少年ジャンプに連載されていた秋本 治氏による人気ギャグ漫画で,その主人公の両津勘吉(以下,両さん)はいまでも多くの人に愛されているキャラクターです。
そんな両さんが大好きなことといえば,お金儲けとギャンブル。その要素を余すことなく注ぎ込んだボードゲームが,今回の「昭和・平成レトロボードゲーム大百科」で紹介する「ゲーム・ザ・両津勘吉」です。発売元はバンダイで,発売時期はちょうどこち亀のテレビアニメ放送が始まった1996年。そのせいか,ゲーム内で使用されているイラストも,アニメと原作漫画のものが入り混じっている印象です。
ゲームの概要を簡単に紹介すると,「モノポリー」のような正方形のルートを周回しながら,そのマス目に配置された店や会社を経営し,最終的に10億円稼いだプレイヤーが勝者となる,というもの。
文字にすると普通というか,「それってモノポリーとどこが違うの?」って感じですが,そこに“こち亀”要素が加わることにより,かなり破天荒というか,奇想天外というか,波乱万丈というか……正直なところゲームバランスの悪い,しかしそれだけに“こち亀”っぽいボードゲームに仕上がっています。ということで,さっそく紹介しましょう。
舞台は葛飾区亀有公園周辺
プレイヤーはそれぞれが両さんに
今回もまずはパッケージから。白と黒のツートーンに笑顔の両さんと怒った両さんが向き合い,そこにお札と借用書が舞うデザイン。ここからもうお金の匂いが漂ってきます。
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ゲーム盤を見ると,中央に亀有の街,それを取り囲むように周回ルートのマス目が配置されています。マス目に書かれているのは,両さんが副業として経営するさまざまなショップや企業のほか,競馬場や神社,地下鉄などのさまざまな施設です。
そしてど真ん中に派出所型ルーレットが設置されています。ただ,この紙製のルーレットが若干回しにくく,もう少し予算が掛けられなかったのかなぁ,という気もするんですが,きっといろいろな事情があるのでしょう。
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ここでひとつお詫びがあります。今回の記事で使用しているプレイヤーコマは,このゲームオリジナルのものではありません。プレイヤーコマが欠品の状態で某オークションサイトに出品されていたものを購入したため,筆者がプレイヤーコマを自作しました。本来は色違いの両さんの立体消しゴムコマが付属しますので,そこはあらかじめご了承ください。
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ということで,各プレイヤーコマをスタート地点であるニコニコ寮のマスにセット。なお,このゲームは最大4人がそれぞれ両さんとなってプレイするものになっています。両さんコマとは別に大原部長コマもあり,そのコマは大原部長スタートマスに配置。さらに,スタート資金として各プレイヤーに銀行から5000万円が配られたところで,ゲームスタート!
多種多様なビジネスマスに止まり
まずはオーナーになろう!
さてこのゲームでまずやるべきなのは,ルーレットの出目に従って「ビジネスマス」に止まること。ビジネスマスには,「両津氷屋」「両津漫画スクール」「リョーツ・ゲーム・カンパニー」といった会社やお店などがあり,オーナーがいなければそのマスに書かれた開設資金を銀行に払って購入できます。
購入したビジネスマスには自分の色の「両マーク」が設置され,以降このマスに止まったプレイヤーから,そのマス目のルールに従った収入を得る(たまに賠償金を払う)ことができます。
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なので,特に序盤はできるだけオーナーのいないビジネスマスに止まり,自分の店,会社を増やすことが重要です。ビジネスマスの開設資金は100〜300万円とマスによって異なり,高い開設資金を払えばそのぶん別のプレイヤーが自分のマスに止まったときに得る収入も多くなるので,基本的には高めのビジネスマスに止まりたいところです。
ですが後のゲーム展開によっては,やむを得ずビジネスマスを手放さなくてはならないこともあります。その際のダメージを軽減するためには,安いビジネスマスもある程度持っておいたほうがいいので,このバランス感覚がこのゲームにおいてとても重要です。
そして,1周して再び自分のビジネスマスに止まれば,増資が可能。必要になる金額はビジネスマスによって異なりますが,増資によって店や会社のランクがアップして,ほかのプレイヤーが止まったときに得る収入額が激増します。
なお,各ビジネスマスはCランクから始まり,Aランクまで成長可能。マスによっては1回で3億円の収入を得るものもありますので,いかに早くビジネスマスをAランクに成長させるかが,勝負の大きなカギになります。
ゲームを盛り上げる
特殊ビジネスマスも手に入れろ
さらにこのゲームには「特殊ビジネスマス」という,より両さん色の強いマスもいくつか用意されています。そのひとつがギャンブルの王道「場外馬券売場」で,ここに止まって100万円を払い,オーナーになったプレイヤーは,ほかのプレイヤーがこのマスに止まったときに競馬のレースを開催できます。
レースには300〜2000万円の掛け金で参加でき,結果はルーレットの出目によって決定。1着を当てたプレイヤーには掛け金の10倍が配当されますが,その支払いを担当するのはオーナーではなく銀行です。オーナーは自分の腹を痛めずに掛け金を収入にできるという,極めてグレーなギャンブル場となっています。
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さらにもうひとつ紹介しておきたいのが「地下鉄両津線」。これも開設資金100万円でオーナーになれば,好きなビジネスマスに地下鉄駅を設置できます(マスに地下鉄チップを配置)。
以降,そのマスに止まったほかのプレイヤーは,ビジネスマスでの支払いを終えたあとに,さらに高額な運賃(ルーレットの出目×200万円)を払って,地下鉄チップのあるマス,もしくは地下鉄両津線のマスに強制移動となります。
逆に,オーナーがチップのあるマスに止まると,当然ながら運賃無料で移動可能。さらに再度「地下鉄両津線」のマスに止まれば,地下鉄の駅を最大3つまで増やせるので,ゲーム展開上,ほかのプレイヤーの高いビジネスマスを回避したいときなどは大変有利に働きます。
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ほかにも,お賽銭で儲ける「両津大明神」,大食いチャレンジで儲ける「両さんの夜泣きカレー店」という特殊ビジネスマスもあるので,可能な限り手に入れたいところ。
中川と麗子はこのゲームでも
やっぱり頼りになります!
さて,こち亀の読者なら,両さんの同僚であり頼れる金持ちキャラ,中川と麗子を当然ご存じだと思いますが,もちろんこのゲームでも2人が登場します。
まずは中川ですが,「中川登場!」のマスに止まることで,「中川カード」をゲット。このカードは超強力で,ゲームにおけるギャンブル以外の出費はすべて中川が支払ってくれます。なので,先ほど紹介したビジネスマスの購入はもちろん,その後の増資に1億円かかっても,ほかのプレイヤーの高額なビジネスマスに止まっても,その支払いは中川に回せるという,まさに鉄壁のカードです。
一度手にしたら二度と手放したくないカードですが,所持中にほかのプレイヤーが「中川登場!」のマスに止まったら,その場でルーレット勝負を行ない,大きい数字を出したほうに所有権が移ります。また,中川カード持っているプレイヤーが,再び「中川登場!」マスに止まった場合,中川カードは返却となりますので,可能な限り長くキープしたいところ。
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つづいて麗子は,こちらも「麗子登場!」マスに止まることで麗子カードをゲット。中川カードほど強力ではありませんが,毎回自分の手番でルーレットを回すたび,資金カンパとしてそのルーレットに付随した金額(100〜300万円)が銀行から支給されます。
なお,中川カード同様に,再び麗子登場マスに止まったら返却。それとは別にルーレットで1が出た場合も返却となります。
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加えて,中川と麗子のカード両方を同時に所有することはできません。中川カード持っているときに麗子登場マスに止まったり,逆に麗子カードを持っているときに中川登場マスに止まったら,新たに止まったマスのカードを所有することになります。優先順位的にはまず中川,次に麗子と覚えておきましょう。
捕まったら最後
大原部長からはとにかく逃げろ!
さて,中川と麗子がいるということは,当然,大原部長もいます。スタート時にも紹介しましたが,「大原部長コマ」として,マス目を周回する両津たちの前に立ちはだかります。
ルート上に7か所かある「大原部長動く!!」のマスにプレイヤーコマが止まると,大原部長コマが1つ先の「大原部長動く!!」マスに移動。その移動先のマスにプレイヤーコマがあった場合は,大原部長に捕まったことになり,問答無用で所有しているビジネスマスを1つ失います。
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また,ビジネスマスを1つも所有していなかったとしても,大原部長は許してくれません。そのプレイヤーコマは,ルートから隔絶された「大原部長の家」に移動。そこではネチネチと説教されたり,壊れたビデオデッキの修理をさせられたりと,両さんにとっては最悪の事態が待ち受けており,ルーレットで「ルート入口からルートに戻る」と書かれている目が出るまで脱出できません。
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また,プレイヤーが自ら大原部長のいるマスに飛び込んでしまった場合も同様なので,可能な限り近づかないことが大事です。
このゲーム最大の番狂わせ
「亀カード」に気をつけろ!
これまで「中川カード」や「大原部長動く!!」マスなど,ゲームの流れを大きく変える要素を紹介してきましたが,このボードゲームで一番警戒したいのは,「亀カード」です。
これはボードゲームのお約束的な,いわゆるアクシデントカードなんですが,その規模がヤバいというかヒドいというか,ゲームバランスを大きく崩しかねないものもチラホラ……。
特にヒドいのが「ボルボ西郷,建物を誤爆!」と「爆竜大佐登場!! 指令 敵ノ資金源ヲ破壊セヨ!」のカード。誤爆とか破壊と書いてある時点で予想がつくと思いますが,増資で大きく成長させたビジネスマスが,このカードを1枚引いただけで潰れます。それもカードによっては一気に3か所。筆者もプレイ中に何度か引いた経験がありますが,もうここまで来ると逆に笑っちゃいます。
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もちろんビジネスが潰れるだけでなく,すべてのプレイヤーのビジネスマスが1ランク成長する「日暮熟睡男が目覚め,超能力を発揮!!」カードもあるので,亀カードすべてがヒドいわけではないのですが,このあたりはこち亀ファンなら楽しめても……という部分が強いかもしれません。
ビジネスマスを成長させて
相手からの支払いを得る
このゲームには,先に紹介したマスのほかにも,「お宝チップ」が入手できる「お宝発掘」マスや,持っているビジネスマスに応じて銀行から売上金がもらえる「配当」マスなどがあります。
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それらもうまく使いつつ収入を得て,1周してスタートのニコニコ寮に戻ってきたら,ここでいったん止まり,給料の100万円をもらいます。お宝チップを持っていれば売ることも可能で,所持金が足らず借用書を持っている場合は,ここで可能な限り返済することもできます。
さらに,ここでは亀カードを1枚引くことに。説明したように亀カードはゲームの流れを大きく変える可能性があるのですが,それを強制的に引かされるルールは,ある意味でとてもこち亀らしいと言えるかもしれません。
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といった感じで,この周回を繰り返し,できるだけ相手のビジネスマスに止まらず,自分のビジネスマスで収入を得まくって,誰かの所有金額が10億円を超えたところでゲーム終了。そのプレイヤーが勝者となります。
どのビジネスマスを購入し成長させるかといった戦略性の高さがある一方で,亀カード1枚で状況が一変する運要素の強さもあって,気が抜けません。漫画の両さんのように,大金を手にして勝利を目前にしながら一気に転落,という展開もあるわけですが,それをすべて理解したこち亀ファンなら,とても楽しいボードゲームです。
なお今回紹介した「ゲーム・ザ・両津勘吉」も,筆者が経営している「Book CAFE ヨミヤスミ」のイベント「8時だョ!レトロボードゲーム」にてプレイできますので,よかったらご参加ください。
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■■Book CAFE ヨミヤスミ■■
京王線の京王多摩川駅から徒歩6分ほどの場所にあるブックカフェ。1980〜90年代の本や雑誌,漫画に加えて,パソコン雑誌やゲームブックなども揃っています。
毎週末開催されるイベント「8時だョ!レトロボードゲーム」では,本連載で紹介したものをはじめとしたレトロボードゲームをプレイできますので,下記のイベントサイトでお申し込みのうえ,ぜひご来店ください。
公式サイト:https://sites.google.com/view/yomiyasumi
公式イベントサイト:https://sites.google.com/view/yomiyasumi-8jidayo
公式X:https://x.com/yomiyasumi
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