
プレイレポート
[プレイレポ]デッキ構築ローグライクとSLGの要素が見事に合体。「StarVaders」はジャンルの“つなぎ目”がない融合を成し遂げた良作だ
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Joystick VenturesとPlayworksよりSteamにて販売中の本作は,発売1か月前の時点で5万5000を超えるウィッシュリスト数を記録。そして2025年5月1日の発売でさらに話題となり,Steamレビューでは“圧倒的に好評”となっている(記事作成時の2025年5月8日14:45のレビュー数 592件時点)。
というわけでさっそく遊んでみたところ,かなり独特な魅力とエネルギーのこもった作品だった。本稿ではゲーム内容の紹介とともに遊んでみて感じたことをお届けしていく。
「StarVaders」公式サイト
デッキ構築ローグライクと戦略シムを,“細かな数字”の管理をせず楽しめる
戦いの舞台になるのは,謎多きインベーダーの攻撃を受けている世界だ。プレイヤーは巨大メカを駆使して敵の侵攻を食い止め,インベーダーを指揮するボスを撃破しなければならない。
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ゲームのルールは単純で,攻め込んでくるインベーダーをすべて撃退すればステージクリアとなる。マップは横5マス×縦8マス(状況によって拡張 / 縮小される)で構成されており,敵が手前3マスに侵入してターンが経過すると「ドゥームゲージ」が累積していく。これが満タンになるとゲームオーバーだ。
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インベーダーの行動は種類によって異なるが,基本的に一撃でも攻撃を与えれば破壊できる。ただし,こちらの攻撃や移動といった挙動にはカードが必要で,手札が尽きたら次のターンを待つことになるので,順番をよく考えて動きを決めなければいけない。
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要するに,デッキ構築ローグライクと戦略シミュレーションを組み合わせたような作品なわけだが,実はそういったコンセプトのゲームはすでに存在する。知っている人向けに言うなら,本作のシステムは「Alina of the Arena」と「Into the Breach」を組み合わせ,そこにタワーディフェンスの要素を足したようなイメージだ。
そう聞くと複雑そうに感じられると思うが,本作のスゴいところは,複数ジャンルの要素をうまく1つにまとめているところだ。細かな管理要素をシステム上の挙動に合流させ,自然に簡略化しているので,ジャンルの“つなぎ目”が見えないほどキレイな仕上がりになっている。
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おかげで,把握しなければいけない“数字”はカードを使うためのコストのみに集約されており,プレイヤーは手札と盤面のパズル要素に集中できるようになっている。
そうした配慮をとくに強く感じたのは,プレイヤーが操るメカの耐久力の要素だ。実は本作のメカにはHPの概念が存在せず,ゲームオーバーになるトリガーは“ドゥームゲージが満タンになる”以外には存在しない。
その代わり,メカが攻撃を受けると「ジャンク」(お邪魔カード)がデッキに投入される。体力が減って破壊されるのではなく,選択肢に不純物が混ざって行動が鈍くなるという形でダメージを表現しているわけだ。
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こうした調整はとてもうまくゲーム性と噛み合っており,テンポのいい演出と相まって遊んでいて気持ちがいい。細かな数字をやりくりするマイクロマネジメントに終始させられる状況が少なく,ほとんどの決断が戦況に直結する“重要な決断”であるため,遊びの密度が非常に濃く感じられた。
そのうえで,戦闘後に引き継がれる数値がドゥームゲージに集約されているため,現在展開されている戦闘に集中できるのもいいところ。1回のランは30分〜1時間程度かかるのだが,その間はずっと楽しく悩みながら遊ぶことができた。
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メカが違えばまったくの別ゲー! リプレイ性抜群の乗り換え要素
ゲームを進めていくと,新たなメカやパイロットがアンロックされていくのだが,これがまた多様性に富んだ体験を与えてくれる。
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特にメカの違いっぷりは強烈で,出現するカードセットやアーティファクトだけでなく,根本的なルールから変えてくるから油断ができない。
たとえば,最初から選べる「ガンナー」のカードコストは「ヒート」と呼ばれ,カードを消費するごとにヒートが累積していく。これが上限を超えるとオーバーヒート状態となり,即座にターンが終了する。さらに,最後に使ったカードは炎上状態となって使用不可能になってしまう。
かなり痛いデメリットではあるが,それを受け入れられるなら上限を超えてカードを使えるということでもある。基本的にはヒートが上限値を超えないように調整しつつ,ここぞという場面ではオーバーヒート覚悟でカードを投入する,という決断も必要になるだろう。
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一方,2体目のメカ「スティンガー」にはヒートの概念が存在しない。その代わり,一般的なローグライクカードゲームに近い「パワー」が用いられ,ターンごとに回復するパワーを使ってカードを使っていくことになる。
ただし,スティンガーのカードは全体的に攻撃範囲が狭く,移動を使って敵に肉薄しなければ攻撃を当てられない。つまり,移動が必要なぶん必要なパワーが多いのだ。
それを補助するのが,固有の状態異常「ショック」である。ショック状態の敵を攻撃すると追加のパワーを得られるので,ドロー効果のあるカードと組み合わせて運用すれば,戦場を縦横無尽に駆け抜けられる。ガンナーとは一味違う,アグレッシブな戦いぶりがスティンガーの持ち味だ。
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3体目の「キーパー」にいたっては,そもそもプレイヤーのメカ自体が初期盤面に存在せず,人形などのオブジェクトを「召喚」して戦わせる形式が採用されている。キーパーのパイロットは召喚したオブジェクトに憑依し,乗り移りながら戦うのだ。
キーパーのカードは「マナ」によって発動できるが,マナは消費しなかったぶんが次ターンに引き継がれる(最大5マナ)仕様になっている。マナは毎ターン3まで回復するが,一気に5マナを使いたい場面では前ターンに意図的にマナを余らせる必要がある。
さらに,キーパーのパイロットは手札とは別に「呪文」を持ち,これはいつでもノーコストで発動可能だ。ただし,呪文別にクールタイムが設定されているほか,発動の基点となる位置は召喚したオブジェクトに依存することが多いので,使い所は見極めなければいけない。
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3つのメカが持つ固有システムは,いずれも単体でも十分に1本のゲームとして成り立つほど個性的だ。出現するカードセットも独自性を生かす内容になっており,パイロットによっても有効な戦略が変わるので,リプレイ性は驚くほど高い。
ただ,難度設定とアンロック条件の噛み合いについては少しだけ気になった。本作は3つの難度から1つを選んで攻略を進めていくのだが,スティンガーのアンロックには2つめの難度でゲームをクリアする必要があり,キーパーは最高難度をガンナーとスティンガーでクリアすることを求められる。
それに加えて,ゲームクリアに達するとアンロックされるメカごとのカードやアーティファクトは解禁速度がゆったり気味で,結構な回数を周回しなければ利用できない。全体の難度は同ジャンルの作品と比べるとやや低めではあるものの,ゲームの基本要素に要素に触れるにあたって時間がかかりすぎる部分は,ややダレる要素だったと思う。
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とはいえ,ゲーム全体の完成度は極めて高い。複雑になりがちな要素をカードゲームと戦略シミュレーションのシステムに落とし込み,細かな管理要素を排除した本作には“単なる”ローグライクカードゲームではない魅力がある。
戦いを盛り上げるアップテンポなBGM,カードごとに設定されたメリハリあるアニメーション,1ターンに敵を連続撃破した際のSEなど,直感的に味わえる楽しさもしっかりとあり,死角の少ない良作だと思う。難度は比較的低めだが,きちんとチャレンジングな要素も用意されているので,初心者も熟練者も問わず体験してほしい1本だ。
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