
インタビュー
金子一馬氏の世界観で描かれる唯一無二のローグライクカードゲーム――。「神魔狩りのツクヨミ」合同インタビュー後編
オリジナルカードを創出するAIカネコが見どころのローグライク「神魔狩りのツクヨミ」,正式サービスをスタート

コロプラは本日(2025年5月7日),スマホ&PC向け新作タイトル「神魔狩りのツクヨミ」の正式サービスを開始した。本作は,ゲームクリエイターの金子一馬氏が手がけるローグライクカードゲームだ。最大の特徴は,ゲームプレイ中に新たなオリジナルカードの生成する「AIカネコ」を搭載する点が挙げられている。
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AI×ローグライクカードゲームという組み合わせの時点で興味が引かれるが,AIの学習のために「真・女神転生」シリーズや「ペルソナ」シリーズで知られる金子一馬氏が起用されているというのだから,期待感はさらに高まっている。
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本稿では,正式発表前に実施した,金子一馬氏と開発プロデューサーの齋藤ケビン雄輔氏へのメディア合同インタビューの後編部分をお届けする。
前編では「本作がどのようにして作られたか」をテーマに話を聞いたが,後編では「神魔狩りのツクヨミの世界観,そしてゲーム内容について」詳しく聞いている。また,4Gamer単独での質問パートもあるのでお見逃しなく。
AIの活用はコロプラとしての挑戦――。金子一馬氏のクリエイティブを学習したAIを搭載した「神魔狩りのツクヨミ」合同インタビュー前編

「真・女神転生」シリーズのスタイリッシュな悪魔デザインで知られる金子一馬氏を学習した「AIカネコ」が神となる。AIを積極的に取り入れたカードゲーム「神魔狩りのツクヨミ」について,合同インタビューが実施されたのでその様子をお伝えしていこう。第1回のテーマは「本作がどのようにして作られたか」だ。
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キャラクターごとの視点で描かれるストーリーは考察好きも楽しめる内容に
――今回,現代日本と日本神話が融合したような世界観を選んだのはどういった理由からでしょう。
金子氏:
私は現代ものを得意としているところがあるので,選んだというよりは自然に着地した形です。
舞台がタワーマンションなのは,昔からゲーム作りをしているうえでの経験からです。物量を作るのは大変なので,限定的な空間を設定するという手法を使ってきていまして,「ペルソナ」シリーズであれば学校の中で展開するといった感じですね。
今回はそれに加え,普段から「タワーマンションで鬼ごっこすると楽しいだろうな」と考えていたところがあり,現在の形に落ち着きました。
日本神話のツクヨミをテーマにしたのは,ツクヨミが「三貴子(みはしらのうずのみこ)」と呼ばれるほどの神様であるにもかかわらず,アマテラスやスサノオと違って全然お話がないためです。
古事記にはオオゲツヒメというお姫様がいて,スサノオに殺されて身体の各所が食べ物になります。日本書紀ではツクヨミが同じ役目をしているんですが,出番がそこぐらいしかないんですよ。今回,こうした空白を利用してお話が作れるんじゃないかと思いテーマにし,加えて日本神話に関するうんちくを入れ込んでいきました。
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――キャラクターたちはどのような掘り下げがなされていくのでしょうか。
金子氏:
これまで私が手掛けた「真・女神転生」や「ペルソナ」では,プレイヤーの選択でルートが変わるという仕掛けをしてきました。しかし,今回はローグライクというプレイング中心のジャンルなので,ストーリーはテンポ的な意味での足枷になりかねません。
とはいえ,IPを作っていくうえでストーリーや世界観を形作っていきたい……ということで,さまざまな方法論を持つキャラクターたちを用意し,ひとつの話をそれぞれの視点から見られるようにしました。エンディングも違ったものになるため,全員をプレイすることで物語の全貌が見えてくるわけです。
ケビン氏:
世界観についての情報は4キャラクターそれぞれで収集要素として小出しにされていきます。ローグライクはゲームオーバーを繰り返すため,人によってはモチベーションが失われることもあります。そこで,キャラクターごとのストーリーとは別に,収集要素を集めることで世界観が分かっていくという仕掛けを取り入れました。
金子氏:
考察のために収集要素を集めていくことになるので,考察が大好きな方にも楽しんでいただけます。
――群像劇的な物語に見えますが,同じツクヨミのメンバーどうしでの対立は描かれるのでしょうか。
金子氏:
描かれます。目的は同じだけれど,強引な者や話し合いでの解決を求める者などそれぞれ個性が違うわけです。仲が悪い者もいますし,「実は違う任務を帯びている者」もいたりします。
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――ローグライクのカードゲームとして,本作ならではのこだわりを聞かせてください。
ケビン氏:
国内ではまだニッチ寄りのジャンルではありますので,モバイルとPCの環境を用意し,間口を広げたいというのがこだわりのひとつです。
同系ジャンルには,じりじりとした戦いをするものも多いのですが,「手札を減らす」「攻撃と防御をワンターンで行える」といった工夫で,テンポを良くしつつ戦略性の深みを残しています。
成長要素については,探索で得た経験値でキャラクターのレベルが上がり,新たなカードが使えるようになったり,HPの上限が上がったりといったものを想定しています。
遊べば遊ぶほどダンジョン攻略のサポートとなる機能が開放され,戦略の幅が広がってより快適になるという形をとっています。
――ゲームのプレイ時間はどの程度になるのでしょうか。
ケビン氏:
1回のプレイは45分〜1時間程度の想定です。1人のキャラクターがエンディングまでたどり着くのに7〜8時間かかり,これが4人分存在しています。ただ,カードの入手運やプレイングでも変化するため,実際にかかる時間はプレイヤーによって異なります。
その後,ローグライクとしてのエンドコンテンツも用意しています。今までに出てきたボスとキャラクターが階層に関係なく登場するのに加え,ここでしか出現しない敵や収集物も用意しています。
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――ローグライクでは,1回のプレイを終えると持ち物やレベルがリセットされるのが通例です。本作において,次のプレイに引き継がれるものとそうでないものについて教えてください。
ケビン氏:
先ほどお話させていただいた,主人公のレベルアップによる強化要素は引き継がれます。AIカネコが生成したオリジナルカード「創成札」も引き継がれますが,こちらは初期山札にはなく,プレイ中に出現し獲得する形です。それ以外のものはすべてリセットされます。
――マネタイズはどんな要素なのでしょうか。
ケビン氏:
主に2つの課金要素があります。ひとつは経験値を溜めずに強化機能を開放する時短的な要素です。
もうひとつはAIカネコが創成札を作る際の頻度を増やせるものです。創成札に必要な画像生成AIを利用するには,どうしても費用がかかってしまうんです。そのため,無料でも一定の生成は可能ですが,課金いただくことでより多くの枚数を生成できるようにしています。
――サービス開始後,期間限定のイベントやシーズンイベントを行う予定はありますか。
ケビン氏:
ローグライクカードゲームという性質上,期間限定のものは考えていません。サービス開始後は,ゲームとして正しく面白くするようにするバランス調整と,AIカネコによる画像生成のクオリティUPを中心に行っていく予定です。
――4キャラクターをプレイし終えたあとにはどんな要素が追加されるのでしょう。
ケビン氏:
現在はとくに考えていません。さらなる物語の追加や,あるいは「神魔狩りのツクヨミ2」を作るかどうかはプレイヤーの反応次第といったところです。
金子氏:
システムはよりこなれてきますから,私が話を考えないとですね。AIに負けないよう,臨機応変に対応していきたいです。評判が良ければ夏の水着のようなものもあるんですかね? でも,今のままだとAIに弾かれちゃいそうですね。
ケビン氏:
学習のさせ方によっては,そうした展開もできるかもしれませんね(笑)。
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金子一馬氏の世界観で描かれる唯一無二のローグライクカードゲーム
ここからは4Gamerでの個別インタビューとなる。野心的な新作について,そして金子一馬氏の創作術について聞いてみた。
4Gamer:
いろいろと挑戦的な作品ですが,本作をリリースする今の率直な気持ちを聞かせてください。
金子氏:
不安半分,楽しみなところ半分ですね。どちらも半々といった感じです。
ケビン氏:
初めてプロデューサーをするので,プレイヤーからどういった反応をいただけるか,という不安は正直に言うとあります。
4Gamer:
デッキ構築型ローグライクというと昨今ではメジャーなジャンルですが,ほかの作品とどのように差別化したかを聞かせてください。
ケビン氏:
デッキ構築型ローグライクといっても,モバイル向けの作品はほとんどありません。本作で,どれだけ間口を広げられるかが大事だと考えています。
金子さんのファンやローグライクを触ったことのない方にも楽しんでいただけるようにすることを第一にしていますので,そうした部分での工夫を盛り込んでいます。
また,このジャンルでは世界観やストーリーを煮詰めたものはほとんどありません。あの金子一馬さんが手掛ける世界観でローグライクを遊べるという作品ですので,世界観に浸りつつ,ローグライクを楽しんでいただきたいです。
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4Gamer:
世界観の発想について「タワーマンションで鬼ごっこをしたら面白いんじゃないか」と感じられたことがきっかけになったそうですが,詳しく聞かせてください。
金子氏:
子供のころから,デパートのエスカレーターで上の階が見えたりする多層構造が好きでした。当時流行していた「太陽にほえろ」などの刑事ドラマの影響もあり,追いかけっこを妄想していたんですよ。ほら,あの頃の刑事ものって,非常階段を駆け下りて犯人を追跡したり,長い階段を一発で飛び降りたり……って激しいアクションをしてたじゃないですか(笑)。最近のテイストでこれをやるなら,タワーマンションを舞台にするのがいいんじゃないかと思ったんです。
4Gamer:
タワーマンションに取り残された住人たちがいて,サバイバル的な状況に追い込まれているというのも面白かったです。
金子氏:
災害にあったときには人の本性が出ちゃうかもしれませんからね。「俺はお前より上の階に住んでるから偉いんだ!」とか,「ここは俺が分譲で買った部屋なんだから,賃貸のお前には入る資格がない!」とか(笑)。
4Gamer:
それはあるかもしれません。いろいろなドラマを描けるという意味では,タワーマンションは美味しい設定ですね。社内に企画を発表したときと,プロトタイプをプレイしてもらった際の反応はいかがでしたか。
ケビン氏:
社内で評判になった企画なので,いろいろな人から期待の声をいただけました。プロトタイプでは,金子さんの世界観についても楽しんでもらえたようです。ゲーム的には実際に遊んでもらったうえで意見をもらい,改良を加えています。例えば,キャラクターの装備品は完全に違った仕様になりましたね。
4Gamer:
登場するキャラクターのビジュアルや設定が現代的であると感じられました。金子さんは,普段から意識して現代的なものをインプットされているんでしょうか。
金子氏:
心がけるというよりは,単純に好きなんですよ。昔のドラマも好きですし,最新のNetflixの作品も好きなんです。ファッションについてはリアリティのあるものを出していて,そこはほかの作品より優れた部分だと思っています。
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4Gamer:
確かにファッションについてもこだわりが感じられます。
金子氏:
デフォルメはしていますが,再現可能なデザインにしています。服というのは立体的な構造物なので,そこを意識して線を入れています。また,いろいろな部分にこだわりも入れているんです。例えば,ツクヨミのメンバーが履いているパンツは横の部分が開いていますが,これは袴の意匠を取り入れたものです。ツクヨミは古式ゆかしい組織であるということを表しているわけですね。また,ベルトの形や,マスクから髪の毛が出ている点は「仮面ライダー」の旧1号をモチーフにしています。
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4Gamer:
いろいろな部分に工夫が凝らされているわけですね。キャラクターデザインについて,ケビンさんと金子さんのあいだでやり取りはあったのでしょうか。
ケビン氏:
神魔をどうするか,どんなものを出して,どのように描いていただくかはかなり相談しました。
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金子氏:
AIカネコが出力するものはオリジナリティが強くなるだろうと考えていたので,こちらは敢えて伝統的なものをイラストにしました。面白いところだと,方角をつかさどる四神についてはすべてが揃っていません。ぜひいろいろと考察してみてください。
4Gamer:
なるほど。考察できる要素も織り交ぜられているんですね。残念ながらお時間になってしまったので,最後に考察好きな人に何かメッセージをお願いできますか。
金子氏:
最終的に「なぜ人間が地球に存在しているのか」というところにまで踏み込むお話になっています。ぜひ深く考えてみてください。
ケビン氏:
本作はローグライクが初めての人に向けて遊びやすく作っています。世界観を含めて楽しんでもらえればと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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※掲載したゲーム画面はすべてSteam版の開発中のものとなります
「神魔狩りのツクヨミ」公式サイト
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