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“移動すること”の楽しさを。レトロな飛行艇で空の島々を旅する「ATMOSFAR」は,ほどよい緊張感と温かな雰囲気が絶妙な探索アドベンチャー[gamescom]
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Apog Labsはスウェーデン南部マルメを拠点とする小規模スタジオで,世界的に人気を博した空港経営シム「Airport CEO」を制作したチームでもある。本作は彼らにとってその次の挑戦となるタイトルであり,集英社ゲームズがグローバルパブリッシャとして協業を発表したことでも,名前を耳にした人はいるかもしれない。
今回は,ドイツ・ケルンで開催中のgamescom 2025にデモ版が出展されていた本作を,Apog LabsのスタジオヘッドであるOlof Kindblad氏と,ディレクターのFredrik Salomon氏が紹介してくれた。
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舞台となるのは惑星タイコスの広大な空と,そこに浮かぶ島々。プレイヤーは大型飛行船「クラウドクルーザー」を拠点とし,広々とした世界を航行しながら,さまざまな島を巡る。探索したい島の近くに到達したら,小型飛行艇「ワスプ」に乗り込み,目的の島を探索だ。
ちなみに現地のハンズオンで体験できたシナリオは,クラウドクルーザーのコア電源が尽き,航行できなくなってしまい,近くの島に不時着したそれを回収しに行くというものだった。
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プレイ中は,マニュアル感のある操作や“がたぴし”した挙動などが独特の雰囲気を生み,飛行そのものが操作の楽しさにつながっていた。
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島に到着すると,徒歩やダッシュ,ジャンプに加え,ジャンプを押し続けることで使える「ジェットパック」などで移動していく。
ここでとくに強く感じられたのが重力の存在だ。崖を飛び越えるときのジェットパックで浮き上がる推進感や,着地したときの衝撃が,操作の手応えとして残る。地形は横方向よりも縦方向の移動を意識させる作りで,切り立った崖や岩山,使われなくなった灯台などを行き来する過程に,本作ならではの探索の面白さがあった。
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開発者が強調していたのは「移動そのものが体験の中心にある」という点だ。壁を滑り降りたり,崖を飛び越えたり,あるいはワスプで空を渡ったりと,選ぶ手段によって同じエリアでも異なる体験が生まれる。
「走るか,飛ぶか」。ゲームでは当たり前の移動アクションを操る,その瞬間の判断が,自分だけの冒険をつくる要素になっている。
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探索の途中で目に入るのは,その島ならではの生態系だ。
見慣れない植物が群生し,奇妙な生き物が歩き回っている。中には人を襲う食虫植物もいて注意が必要だが,移動の合間に立ち止まって景色を眺めたり,生き物の動きを追ったりする余裕もある。
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環境はただの背景ではなく,探索の手触りを構成する大事な要素になっていた。風に押し戻されて足場に届かなかったり,雲に視界を奪われたりすることもあれば,風向きを利用して想定以上の速度で島から島へ移動できる場面もあるように,自然現象もプレイに作用するのだ。
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探索のお目当てのコア電源は高い放射線量を持ち,生身で持ち運ぶことはできない。そこで,島に打ち捨てられていた「運送型ワスプ」を修理して利用することになった。
資材の収集はレーザーガンのようなツールを使い,照準を合わせて長押しすることでレーザーを放ち採取する。修理も同様で,ツールを切り替えて照準を合わせ,撃ち込むことで作業が進む。
いわゆるシューターの操作感覚を資材集めや修理に使っているのが本作の特徴で,銃を構える行為が戦闘ではなく,制作や再生のためにあるのが実にらしいところだ。
修理を終えた運送型ワスプに乗り込み,空中でホバリングしてマグネットクレーンを操り,コアを吊り上げてクラウドクルーザーへ運搬する。
この,クレーンでモノを拾い上げて機内へ収める工程は,重機シミュレータ的な遊び心地がある。こうした部分には,空港経営シムを手がけたスタジオらしいシミュレーションへのこだわりを感じる。
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今回のプレイを通じて印象に残ったのは,やはり移動そのものが中心に据えられている点だ。
冒険やクラフトはもちろん楽しいが,その前にまず歩く,走る,飛ぶといった基本の移動の感覚がほどよくリアルで,ほどよくゲーム的に調整されていて,しっかりと自分が歩いている感覚を与えてくれる。
操作周りについてはまだ調整中のようだったが,ゲームの核となる部分は,短いプレイでも十分に伝わってきた。
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現地では,集英社ゲームズがグローバルパブリッシャとなった経緯についても聞かせてもらえた。
きっかけとなったはApog Labsが公開した動画で,それを見た集英社ゲームズの担当者が「これは好きだ。面白そうだ」と1人のゲーマーとして感じ取り,連絡を送ったことから始まったそうだ。
「小さな町で作っていたゲームが,日本という遠くの国から興味を持ってもらえたのは驚きであり,とてもうれしい」と開発者は語る。
そして「日本のプレイヤーは探索や冒険を丁寧に楽しんでくれると聞いています。ATMOSFARは移動や発見そのものを味わっていただける作品なので,ぜひ体験してほしい」と,日本のゲームファンに向けてメッセージも寄せてくれた。
本作はgamescomでデモ版が披露されたが,試遊版はすでに日本語に対応していた。探索サバイバルの緊張感をほどよく含みつつ,全体としては温かい雰囲気をまとった「ATMOSFAR」。ドイツに続いて,東京ゲームショウ2025でも触れられる機会があればぜひ期待したいタイトルだ。
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