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Dynamis Oneといえば,人気作「ブルーアーカイブ」(iOS / Android / PC)の開発に携わったスタッフが立ち上げた新スタジオだ。その同社の新作ということで期待が高まる「アストラエ・オラティオ」は,8月19日に初のクローズドβテスト(以下,CBT)の募集もスタートし,正式リリースに向けて着実に歩みを続けている。
「アストラエ・オラティオ」,クローズドβテストの参加者募集を開始。抽選で選ばれたプレイヤーはスマホでテストに参加可能
NCは本日,Dynamis Oneが開発中の新作タイトル「アストラエ・オラティオ」のクローズドβテストについて,参加者募集を開始した。応募は,公式サイト内の「クローズドβテスト募集ページ」にて可能だ。受付期間は2026年9月21日12:00まで。
本稿では,そのコミックマーケット108に合わせて来日した本作のアートディレクター,Kim In氏へのインタビューをお届けする。
作品のビジュアルコンセプトなど,CBTが迫る本作の情報はもちろんのこと,クリエイターとしての氏の源流についても深く語ってもらったので,本作の続報が気になっている人はぜひご一読いただきたい。
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魔法少女ではない,“魔法使い”の少女たち
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは読者に向けて簡単な自己紹介と,「アストラエ・オラティオ」での立ち位置を教えてください。
Kim In氏(以下,キム氏):
Dynamis Oneで「アストラエ・オラティオ」のアートディレクターを担当しているKim Inと申します。hwansang名義でコンセプトアーティストとしても活動していまして,これまでさまざまなタイトルに関わってきました。今回は「アストラエ・オラティオ」を皆さんに紹介できるのを大変うれしく思っています。どうかよろしくお願いします。
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4Gamer:
ありがとうございます。今回のコミックマーケット108では,その「アストラエ・オラティオ」の初のブース出展を果たしました。最初のお披露目として,なぜこの場所を選ばれたのでしょうか。
キム氏:
おっしゃるとおり,今回のコミックマーケットは私たちの「最初の一歩」だと思っています。この場所を選んだのは,本作がこれから何を目指し,そしてコミュニティとどう向き合っていくかを,まず皆さんに伝えたかったからですね。ティザーアートブックを手に取ってもらい,読んで,そして体験してもらって,ファンの皆さんに私たちのスタンスを知ってもらいたいと思いました。
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4Gamer:
なるほど。ゲームの内容について伺う前に,本作の制作体制についていくつか聞かせてください。まず原作としてStudio Noxのクレジットがありますが,これは何を意味しているのでしょうか。
キム氏:
Studio Noxは,「アストラエ・オラティオ」の開発をスタートするにあたって,Dynamis One内で2024年9月に設立されたスタジオです。開発のみならず,本作のIP全体の管理・運営を担当し,作品としての軸や世界観に一貫性を持たせるために生まれました。これを通して,本作の魅力をさまざまな形でファンの皆さんにお届けしていきたいと思っています。
4Gamer:
Studio Noxにはisakusan(ヤン・ジュヨン)氏やDoReMi氏,Mx2j氏も参加されているのですか。
キム氏:
はい。役割はそれぞれ異なりますが,その全員が制作に携わっています。
まず本作の土台となる世界観は,私とDoReMiさん,そしてisakusanさんで作り上げていきました。今はそれぞれ担当領域に分かれて制作を進めていますが,初期の構想段階ではそういう区分けはありませんでした。
4Gamer:
なるほど。今はキムさんがアート全般を見てらっしゃるわけですね。
キム氏:
アート周りは,私とDoReMiさんの共同ディレクションですね。またMx2jさんには,主にキャラクターの作画監修をお願いしています。isakusanさんは,シナリオを中心とした全体のディレクションの担当です。
4Gamer:
本作の世界観についてですが,いわゆる「魔法少女もの」と考えていいのでしょうか。
キム氏:
「魔法少女もの」というよりは,「魔法使いもの」といったほうが正しいですね。より具体的に言うなら,本作のキーワードは「魔法」と「新伝奇」――この2つが構想の初期から目指した方向性でした。
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4Gamer:
「新伝奇」とは,なかなか難しいキーワードですね。もう少し展開していただけますか。
キム氏:
例えば「ブギーポップ」シリーズや「空の境界」「灼眼のシャナ」といった,1990年代から2000年代初頭のライトノベルの空気感と捉えてもらえたら,そう遠くないと思います。議論を重ねていくうちに,まさにそうした作品のエッセンスを取り入れたいと考えるようになり,それが本作の舞台設定に反映されていきました。
4Gamer:
本作の舞台は'89年の東京……とのことですが,つまりこの場所を選んだのは,そうした空気感を表現するためだと?
キム氏:
はい。「新伝奇」と「魔法」がテーマである以上,日本の,それも東京という舞台設定は欠かせないと考えました。一方で,時代設定については,近未来的なビジュアルの前作と差別化したい意図もありました。それはもうやりきったので,今回は少し趣向を変えてノスタルジーを表現したいと考えたわけです。
4Gamer:
ああ,なるほど。しかし,なぜ'89年なんでしょうか。平成元年だからですか?
キム氏:
具体的に'89年と定めたのはシナリオディレクターなので,私からお答えするのは難しいですが,ビジュアル面に限った話だと,おっしゃるとおり昭和の終わりから平成初期のレトロ感というのは意識してデザインしています。
あといちおう補足しておくと,本作の舞台は1989年ではなく,'89年という架空の年代になっています。だから実際の1989年の東京とは,風景などもかなり違うと思います。
4Gamer:
ああ,そうでした。公開されている情報でも,東京タワーの竣工日が全然違っていますね。
キム氏:
はい。とくに東京タワー周りはシナリオライターが意図して設定した部分です。ゲームをプレイしていただくと,その意味もきっと分かると思いますよ。
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デザインの鍵は“平成レトロ”?
4Gamer:
では,さっそくアートワークについて伺っていきたいのですが,まず本作のコンセプトからお聞かせ願えますか。確か前作では,「清涼感や日常感を強調する“銃器+学園生活”」とおっしゃっていたように思うのですが。
[NDC21]思わず恋するキャラ作り。「ブルーアーカイブ」のアートディレクター陣の講演レポート
NEXON Koreaが主催する,ゲーム開発者向けカンファレンス「Nexon Developers Conference 21」で,スマホアプリ「ブルーアーカイブ」のアートディレクター講演が行われた。思わず恋してもらうキャラクター作りのためのこだわりとは。
キム氏:
本作のコンセプトは,「魔法使いの少女たちと共に,非日常との境界で味わう特別な体験と,ノスタルジックな東京が持つ心地よい空気感を届ける」ということです。なのでビジュアル面では,「記憶の中にある“良さ”のエッセンスを,現代のトレンドに合わせて再構築する」ことを意識しています。
4Gamer:
先ほども平成レトロという話がありましたが,具体的にはどういったところにそれが現れているのでしょうか。
キム氏:
例えば作中に登場するガジェットで言うなら,カセットテープやCRTモニター,あとポータブルオーディオプレイヤーなんかが平成レトロですね。あとはビルなんかのデザインも,直線を多用した四角いデザインを心掛けています。曲線を増やしたり,あるいはガラス張りなどで透明にしたりすると,どうしても近未来的になってしまいますから。
4Gamer:
ああ,確かにそうですね。
キム氏:
それとフィルムカメラで撮った写真のような質感も意識しています。
自分自身,子供の頃からカメラが好きで,よく撮影していたのですが,カメラって時代の移り変わりを感じやすいじゃないですか。フィルムからデジタルカメラへの移り変わりはその最たるものですが,デジタルだって今と昔では全然質感が違います。そこにはノスタルジーを感じさせる何かが,やはりあると思うのです。
4Gamer:
キービジュアルを拝見した感じだと,モノトーンな印象を受けましたが,それも意図的ですか。
キム氏:
おっしゃるとおり,グラフィックデザインやレイアウトには白と黒のコントラストを多く取り入れています。これは自分の勝手なイメージなんですけど,「新伝奇」というジャンル自体に,夏より冬の空気感,それと昼と夜のコントラストの強さがあると思うんですね。
なので昼夜のコントラストを強調するためにモノトーンを使い,また冬の冷たい空気を表現するためにブルーを基調にして,なおかつ暗くなりすぎないよう春を思わせるピンクやグリーンを取り入れる色設計を心掛けています。
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4Gamer:
ご自身が手がけた,これまでの作品との差別化は意識しましたか。
キム氏:
そうですね。前作では「けいおん!」「らき☆すた」「ゆるキャン△」といった作品に見られる,高度にキャラクタライズされたデザインと,デジタルならではの細くクリーンな描線を追求する方針を採っていました。
一方で,今作で目指すのはアナログでレトロな時代感――セルからデジタルへ移り変わっていく時代の,人の手の痕跡が感じられる,厚みと質感のある作画表現に挑戦したいと考えています。
4Gamer:
キャラクターについても,レトロな時代感を意識されたと?
キム氏:
はい。例えば女の子のキャラクターデザインでは,クレイス(ワンド)を手にしていることと,その周囲に十字の光が輝いていることがデザイン上の基本ルールの一つになっています。また1990年代から2000年代に見られた太い線のストロークなど,アナログならではの特徴を取り入れることも意識していますね。
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4Gamer:
なるほど。アートディレクターの仕事は,そうしたルールというか方向性を定めて,チームに徹底させることなのですね。
キム氏:
そうですね。全体的な画風や方向性はDoReMiさんに担当いただいていますが,そのDoReMiさんや背景担当のfeev99さんと話し合いながら,本作ならではの作画表現を追究していくことが私の仕事になります。プレイする中で目にするさまざまなビジュアルから,そうした独自の質感を感じ取ってもらえたら嬉しいですね。
4Gamer:
太い線のストロークというと,例えばトリガー作品※のようなイメージでしょうか。
※日本のアニメ制作会社。代表作に「キルラキル」「SSSS.GRIDMAN」「サイバーパンク エッジランナーズ」など。
キム氏:
ああ,近いと思います。遡れば「あしたのジョー」といった昭和の作品に行き着くのだと思いますが……確か昔見た何かのドキュメンタリーで,トリガーのスタッフさんが「インパクトのある絵を作りたいときは,あえて汚い線で描いて迫力を出す」といった話をされていたのですよね。これが非常に有効で,本作にも取り入れるようにした表現の一つです。
4Gamer:
なるほど……。ちなみにそうしたデザインの方向性の変化は,トレンドから読み解いたものなのでしょうか。
キム氏:
どちらかというと,トレンドよりも今作のテーマに合わせたデザインを追求した結果だと思っています。前作は近未来都市が舞台でしたので,キレイな線や色味を追究した作画を目指しました。一方,今作はレトロな雰囲気を目指しているわけで,その違いがデザインにも反映されています。
4Gamer:
いわゆる萌え絵全体の流行が,レトロな表現に回帰する方向に進んでいるわけではないと?
キム氏:
そうですね。ただトレンドの変化に関して言うとしたら,生成AIが進化したことによる揺り戻し的なものは,あるかもしれない。AIはデジタルな表現がとても得意ですからね。昔のセル画の塗りから今のデジタル絵まで,全部見てきた自分のような人間からすれば,今になって一昔前のアナログな作画を見ると,こう……何かノスタルジーのような魅力を感じるんですよ。
4Gamer:
ああ,なんとなく分かる気がします。
キム氏:
AIの絵が苦手な人もいますし,そこからかつてのアナログ的な表現に惹かれる人が今後増えていくのだとしたら,それはトレンドと呼んでいいのかもしれない。セル画風だったり,線の太いキャラクターというのは,だから今後流行するデザインの一つ……かもしれないですね。
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都市と星,そして魔法に彩られた世界観
4Gamer:
ゲームとしての本作についても少し伺いたいのですが,見どころとしては,やはり魔法使い同士のバトル……ということになるのでしょうか。
キム氏:
本作におけるゲームプレイの中心的テーマは「決闘」にあります。この世界には「決闘裁判」という独自の紛争解決手段があり,それがゲーム内の戦闘の核になっているわけです。なのでビジュアル面でも,魔法使い同士の1対1のバトルをいかに魅力的に見せるかに注力して制作を進めています。
4Gamer:
少女たちが戦う理由というわけですね。
キム氏:
そうです。なので本作における戦闘は単なるゲームシステムではなく,世界観と有機的に結びついた重要な要素といえます。また「魔法」という定義の難しいものを誰にでも理解しやすい普遍的なルールに落とし込み,また掘り下げることで,一人ひとりの魔法使いが持つ個性を表現しています。
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4Gamer:
キャラクターごとに魔法も異なるんですね。ビジュアル的には,どんなところにこだわったのでしょうか。
キム氏:
ええ。各キャラクター固有の魔法表現や,アーティファクトを使用するときのモーションやプレイスタイルに注目していただきたいです。キャラクターの日常の姿はもちろんですが,戦っている姿からも,そのキャラクターの魅力が伝わるようにしていますので。
4Gamer:
公開されているキャラクターを幾つか拝見しましたが,行政側と裏内閣,港区の少女たちでデザインコンセプトが異なるように感じました。これは意図的なものですか?
キム氏:
現状公開しているものは,誰もが直感的に魅力を感じられて,それでいて違いが分かりやすい――ある意味王道的なデザインを心掛けたキャラクターと言えます。立ち上げ当初からあまり個性を出し過ぎてもよくないので。そのうえで,掘り下げの段階では複数のコンセプトを組み合わせることで,より深い味わいや個性が生み出せるように設計しています。
4Gamer:
それはつまり,今後ほかの地区が開放されていった暁には,また別のコンセプトやテーマを持ったキャラクターが登場する……ということでしょうか。
キム氏:
はい。本作は実在する地域や都市,ランドマークをモチーフにしていますので,それぞれのキャラクターやクランの拠点となる場所ならではの特色を,ビジュアルからもしっかりと感じられるようにするつもりです。
4Gamer:
現在公開されているPVは,全編がほぼ3Dグラフィックスでしたが,本作には2Dグラフィックスによる表現は用いられていないのでしょうか。
キム氏:
そんなことはありません。静止画はもちろん,Spineアニメーションを活用した表現を随所に取り入れています。3Dグラフィックスも,イラストをそのまま3Dにしたのではなく,連続する動きや空間の広がり,自由な視点など,3Dならではの表現にこだわっているので,そうした部分にも注目して遊んでもらえたら嬉しいですね。
4Gamer:
なるほど。ちなみにこういった本作の世界観は,シナリオとアートワークのどちらの主導で生み出されたものなのですか。
キム氏:
どちらかが主導するでもなく,お互いにアイデアや要求を出し合いながら,螺旋を描くように少しずつ最終形に近づいていった感覚ですね。それによって,当初は想像すらしていなかったものが混沌の中から生まれてくるんです。こうした制作スタイルは,ある意味Dynamis Oneに根付いているものなのかもしれません。
4Gamer:
意見の相違でケンカになったりとかは?
キム氏:
あります(笑)。でもそれは我々に限った話ではないと思いますよ。クリエイターは皆,多かれ少なかれ信じる美学のようなものを持っているものですから。
4Gamer:
確かに(笑)。ちなみに,どんなことでケンカになったんですか?
キム氏:
うーん……例えばですけど,あるキャラクターの魅力を伝えたいとなったときに,ディレクターから「ビジュアルや演出をもっと派手にして!」って言われたりするんですよ。でもデザイン側としては「これ以上はやり過ぎ」ってことが往々にしてあるんですよね(苦笑)。
要素を足せばいいってものではないし,今のプレイヤーならこれで十分に分かってくれるはず。むしろ足したらダサくなっちゃうよ……ってことがあって,そこで議論になったりしました。
4Gamer:
よく分かります(笑)。でも,分かりやすくしたいディレクター側の気持ちも分からないではないという。
キム氏:
そうなんですよね。まあ,これ以上バラしたら怒られちゃいそうなのでやめておきますが,そんな風に日々意見を交わしながら,熱量を持って開発に取り組んでいると思っていただければと(笑)。
4Gamer:
ちなみに「アストラエ・オラティオ」(星の祈り)という本作のタイトルには,どんな意味が込められているのでしょうか。
キム氏:
ハッキリしたことは,機会があればisakusanさんからお伝えさせていただきたいです。ただ,アートの観点からお話させていただくなら,ビジュアル的にも「星」がテーマだというコンセンサスは,プロジェクトの立ち上げ当初から明確にありました。キービジュアルにも,星に向かって手を伸ばし,願いを託している姿が描かれていますし。個人的にもタイトルどおりのビジュアルだと感じているので,とても気に入っているんですよ。
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オタク文化の最先端と,その源流
4Gamer:
せっかくなので,キムさんご自身についても少し聞かせてください。キャリアとしては「ELSWORD」のキャラクターデザインを担当されたのがスタートと伺っていますが,当初からゲーム開発を志してらっしゃったのですか。
キム氏:
はい。幼い頃から小説やゲーム,漫画など,さまざまな創作物に触れながら育ってきましたので,いつか自分でも魅力的なキャラクターや世界観を生み出して,それを誰かに届ける仕事がしたいと思っていました。その後,偶然のきっかけからゲームの原画やイラストに携わる機会をいただいて,以来,この仕事を続けています。
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4Gamer:
先ほど「空の境界」や「灼眼のシャナ」といったタイトルが話題に上っていましたが,そういった先行タイトルの影響はやはり大きいですか。
キム氏:
もちろんです。「魔法」「都市」「新伝奇」というテーマを扱う以上は,とくにTYPE-MOONがこれまで築き上げてきた土台を抜きにして語ることはできません。
自分自身,「月姫」から「Fate/Grand Order」に至るまで,彼らが生み出してきたさまざまな作品のファンですし,昼と夜のコントラストや夜の街に潜む神秘,ビル群の狭間で繰り広げられる活劇といった本作の諸要素は,そうした礎の上に築かれたものといって過言ではありません。
4Gamer:
TYPE-MOONの奈須きのこ氏は,確かに新伝奇を代表する作家の一人ですが,それ以外はいかがですか。
キム氏:
あとは「ブギーポップ」シリーズや,「東京BABYLON」や「X」といったCLAMP作品の影響も大きいと思います。そういった作品にビビっとくる人は,「アストラエ・オラティオ」も楽しんでいただけると思いますよ。「やっぱり新伝奇ってこうだよね!」って感じで。
4Gamer:
ああ,東京タワーが重要なシンボルになっているあたり,確かにCLAMP作品の影響は感じますね。個人的には,ほかにも新海 誠作品や前述したトリガー作品,あとは「魔法使いTai!」といった佐藤順一作品の影響も感じるのですが,そこはいかがですか。
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キム氏:
……おっしゃるとおり,いま挙げていただいた作品からは,どれも強く影響を受けていると思います。とくに佐藤順一監督の作品は私自身もそうですが,とくにDoReMiさんが大好きなんですよ。しかしそこまで見抜かれるとは,ちょっと驚きました(笑)。
4Gamer:
もしかして,DoReMi氏のお名前は「おジャ魔女どれみ」から来ていたりとか?
キム氏:
それは本人に聞いてみないと分からないです(笑)。
4Gamer:
そうですよね(苦笑)。ではキムさんが一番最初に意識した作品,自身のオリジンを形作った作品というと,何になりますか。
キム氏:
正直,一番最初はあんまり覚えてないんですが……今の自分に至る決定的な作品を一つ挙げるとしたら,「鋼の錬金術師」だと思います。2003年版の。
4Gamer:
おお,しかも2003年版とは。確かにあれは素晴らしかったですが,しかしまた,なぜリメイク版でなく2003年版なのでしょうか。
キム氏:
韓国で,日本や世界のコンテンツをリアルタイムで視聴できるようになったのが,ちょうどあの頃だったんだと思います。しかも吹き替えではない原語バージョンで,オリジナルそのままの表現で楽しめたのは,恐らく初だったんじゃないかと。
4Gamer:
2003年版は,原作準拠のリメイク版と比べても,とくにダークな展開が多かった印象ですが,どんなところに惹かれたのでしょうか。
キム氏:
まさに,それまでなら編集でカットされていたような表現が,そのまま流れたのが大きかったですね。とても子供向けとは思えないテーマや哲学が,作品に込められているところに衝撃を受けました。
4Gamer:
では逆に,ここ最近でとくに注目している作品やクリエイターはいますか。
キム氏:
今期のアニメだと「さよならララ」が面白いですね。あと少し前になりますが「NEEDY GIRL OVERDOSE」も楽しく観させていただきました。クリエイターで挙げるなら,山田尚子監督や石谷 恵監督の作品がとくに印象深くて,注目しています。
4Gamer:
石谷 恵作品とは,またマニアックですね(笑)。日本のオタクでも,名前だけで通じる人はそう多くないのではないでしょうか。
キム氏:
そう……ですかね。「ワンピース」の各話演出で有名になった方だと思いますが,繊細なタッチの作画と演出がとくに気に入っています。
4Gamer:
先ほど「あしたのジョー」の話題が出ましたけど,そういった昔の作品も遡ってチェックされているのですか。
キム氏:
そうですね。やっぱりオタクとしては,何かにハマったらその源流にも触れてみたくなるじゃないですか。「あしたのジョー」の場合は,「はじめの一歩」にドハマりしたときに,じゃあこれも観ておかなくちゃって感じで,幾つかの名作ボクシングものと一緒に履修した感じでした。
4Gamer:
分かります。オタクかくあるべしという感じですね。
キム氏:
ありがとうございます(笑)。やっぱり時間の流れに耐えて残り続ける作品には,それだけの理由があると思っていますので。いいところは吸収して,仕事にも生かしていきたいですね。
4Gamer:
すいません,すっかりオタクトークになってしまいました。話を戻しまして,今回の来日はコミケへの参加が目的だと思いますが,ほかにもどこか行かれましたか。
キム氏:
時間があったら,取材を兼ねて東京の風景を撮影しようと思っていたのですが,思ったよりスケジュールがタイトで,今回はちょっと難しそうです。自分たちの出展ブースでさえ,少ししか見る時間がとれないありさまなので。
4Gamer:
ああ,それは残念ですね。コミックマーケットの会場を見渡せば,今やキムさんが手がけられたタイトルをはじめとした中韓のスマホタイトルが百花繚乱で,大変な人気を博しています。この状況を,キムさんご自身はどう見ていますか。
キム氏:
コミックマーケットは,個人的にも以前から足を運んでいたので,そこに「アストラエ・オラティオ」が参加している今の状況には,とても満足しています。さまざまな国で開発されたタイトルが人気を集めているのは,日本が育んできた漫画やアニメの文化が,情報化が進むことでリアルタイムに世界中で楽しまれるようになった結果ではないでしょうか。
日本のオタク文化から生まれたこのタイトルを,その本場である日本で,ぜひ皆さんと一緒に楽しみたい。今回の出展も,そんな思いから実現したものですからね。
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4Gamer:
この記事が公開される頃にはすでにCBTの募集が始まっていると思いますが,そこではどんな体験ができる予定ですか。
キム氏:
第1報からこれまでは,キービジュアルを中心とした断片的な情報しか公開していませんでしたが,CBTではストーリーやバトルといった要素すべてが組み合わさった完成形の「アストラエ・オラティオ」をお披露目する予定です。
ボリュームとしてはさほどではないかもしれませんが,ゲームを一度体験すれば,公開されているキービジュアルも,また新たな発見をもって眺められるはず。なので,気になる人はぜひCBTに応募してもらえたらうれしいですね。
4Gamer:
期待しています。伺いたいことはまだまだありますが,残念ながらお時間のようです。最後に,本作に期待するファンに向けてメッセージをいただけますか。
キム氏:
「アストラエ・オラティオ」は,一度プレイして終わりのゲームではなく,長期にわたる連載のようなつもりで制作しているタイトルです。週刊連載で新しい話が公開されたときの,あのお祭り感。それを本作でも再現できたらと思っていますので,ぜひ冷めないうちに,お召し上がりいただけたらと思っています。
4Gamer:
機会がありましたら,ぜひまたお話を聞かせてください。本日はありがとうございました。
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