
インタビュー
[インタビュー]次々登場しそうなUGCプラットフォームに,韓国から一番乗り? Stoveを始めとするスマイルゲートのインディーへの挑戦は,ただの業界支援ではなかった
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代表作である「クロスファイア」によって世界的な成功を収めた同社は,いま「Stove」という自社プラットフォームを中核に据えてゲーム産業の構造そのものを再定義しようとしている。
これは筆者も若干誤解していたのだが,「Stove」は単なる配信サービスではなかった。既存の大作主導型のビジネスから脱し,個人や小規模スタジオが自由に作品を発表できる場として機能させようとしている点にこそ,その本質がある。スマイルゲートがインディーゲーム支援を掲げるのは,慈善的な意味ではないのだ。
ペク社長が語るのは,CtoCという概念だ。ゲーム業界においてはRobloxに代表されるもので,ユーザーがプレイヤーであり,同時に創り手でもあるという,双方向的なエコシステムである。UGCというワードの発展系ともいえる。
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「Stove Indie」は,創作者とユーザーが共に成長するインディーゲームプラットフォーム。開発支援に対する思いなどを聞いた[G-STAR 2024]
![「Stove Indie」は,創作者とユーザーが共に成長するインディーゲームプラットフォーム。開発支援に対する思いなどを聞いた[G-STAR 2024]](/games/999/G999905/20241117010/TN/004.jpg)
韓国のゲームショウ「G-STAR 2024」で,Smilegateが展開するゲームプラットフォーム「Stove Indie」について,統括理事のヨ・スンファン氏に話を聞く機会を得た。インタビューでは,Stove Indieの目指すエコシステムや,Smilegateのインディーゲーム支援に対する思いを語ってくれた。
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そしてこの発想の延長線上に位置づけられるのが,同社が現在開発を進めているというサンドボックス型プラットフォームだ。Robloxのようにユーザーが自らゲームを生み出す環境を提供しつつ,Stoveとの連携によって作品が可視化され,流通し,収益化される。ペク氏はこの構想を「次世代の生態系」と呼ぶ。
AAA開発のリスクがグローバルに高まるなか,彼らは“個人の創造力”を軸にした新しい成長モデルを描いているというわけだ。
「リスクを恐れて実行しないことこそが最大のリスク」と語るペク氏の言葉には,スマイルゲートが長年グローバル市場で培ってきた実行力と,次の10年を見据えた確信があるのかもしれない。インディー支援,CtoC,サンドボックス――これらを結ぶ線の先に,スマイルゲートが目指す“新しいゲーム経済圏”は見えてくるのだろうか。
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[インタビュー]3つの社長を兼務するペク氏が,スマイルゲートのゲームを強固なものに―――日本のお客さんが「スマイルゲート」という名前を聞いて「あぁあの会社ね」と分かるようなブランドを作りたい
![[インタビュー]3つの社長を兼務するペク氏が,スマイルゲートのゲームを強固なものに―――日本のお客さんが「スマイルゲート」という名前を聞いて「あぁあの会社ね」と分かるようなブランドを作りたい](/games/999/G999905/20241006001/TN/015.jpg)
今年の春に,急に日本だけサービスが中止になったMMORPG「LOST ARK」。あぁスマイルゲートはついに日本から撤退しちゃうのかなと思っていたら全然そんなことはなく,経験豊富な新社長を擁して日本法人が再稼働した。その新社長にちょっとだけ話を聞けたので,ここにお伝えしよう。
4Gamer:
昨年のインタビューに引き続き2回目の登場です。ありがとうございます。前回と違って今回は,インディーをテーマにちょっといろいろお聞きしたくて。
ペク氏:
どうぞどうぞ。
4Gamer:
わざわざ言うまでもないですが,韓国の大手のゲームメーカーは,みんな割とインディーに対して積極的な挑戦を続けてますけど,その中でもスマイルゲートの一番の特徴は「Stove」という自社プラットフォームを持っていることだと思うんです。
いちメーカーが持ってるプラットフォームであることもそうですが,ローンチ当初から自社作品でないものも扱っていて,こういうサービスにしては結構珍しいパターンだなぁと思いました。
ペク氏:
チェックしていただいてありがとうございます(笑)。
4Gamer:
そんな感じでインディに対応できるプラットフォームまで持っているスマイルゲートですが,そもそもグローバルのインディーマーケットというものをどんな風に捉えてますか?
ペク氏:
そうですね,メジャーなスタジオやメジャーなパブリッシャーが世の中にはたくさん存在してますし,それらの会社は,自分たちがインディータイトルのサービスをして,自分達でそのインディータイトルのIPを持っていくという,そういう構成になり始めてるような印象を受けます。
4Gamer:
それは……確かにそうですね。だからこそ「どこがインディなの?」というタイトルも増え始めているわけですが。
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しかしスマイルゲートの場合は,Stoveというプラットフォームを通して,多様でユニークなゲームをもっと売っていきたいという欲望があります。
既存の有名なメーカーよりは全然小さいけれど,多様でユニークなゲームをお見せできるインダストリーこそが「インディー」だと思っています。もちろんビジネスなので大きいタイトルも欲しいですが,ゲームの多様性という意味での側面では,インディーゲームにこそたくさんStoveに参加してほしいですね。
4Gamer:
なるほど多様性。AAAもかなりキツい感じになってきましたしね。
ペク氏:
AAA級のゲームは,開発コストも非常にかかりますしね。中国の会社みたいにとんでもない量のコンテンツのゲームを開発し続けてオリジナルIPを作るよりは,この瞬間の面白さとか独創性とか,そういうものがあるゲームを作ることが必要だと思いますし,私はそれがインディーの可能性だと思います。
「Palworld / パルワールド」(PC / Mac / PS5 / Xbox Series X|S / Xbox One)みたいなすごいゲームもありますけど,そこまですごくないとしても,独創的なゲームがかなり出ているので,そちらに期待をしている感じですね。
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4Gamer:
んん,いまインディーの代表として「パルワールド」が挙げられたので,いいタイミングだし聞いておきたいんですが,インディーのボーダーラインをどのあたりだとお考えですか?
ペク氏:
私も結局は大手の会社にいる人なので,このチームがこんなジャンルのゲームを作って,これぐらい投資したらこれぐらいは売り上げて利益がこれぐらい残るだろう……ということを,日頃は考えているわけです。
でもインディーというのは,こういう部分から自由になって,もっと新しい方式を工夫する組織単位だと思っています。なのでグローバル的に,インディーとStoveの生態系が調和して融合して,Stoveを通じていろいろお見せできたらいいな,と思っています。
4Gamer:
確かにSteamが世界最大のプラットフォームであることは疑いようがないんですが,売り上げとかダウンロード人気ランキングの多くはメーカー製のゲームなわけで,Steamは「インディーのプラットフォーム」ではないことをしみじみ感じます。なので,Stoveのような存在がそのまま進んでくれるとありがたいですね。
しかし,メーカー製のゲームに人が惹かれてしまうのは当然のことですので,プラットフォーム全体の話で言うなら「客寄せパンダ」みたいな意味合いもあると思うんです。インディーのそのほとんどは無名な作者の無名なタイトルなわけですから,遊んでもらうためには何かの策が必要になったりしませんか?
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ペク氏:
インディーだからといって,ユーザーがわざわざプレイする……とは思っていないです。結局は面白いゲームであることが重要で,その中には大手メーカーのゲームもあり,インディーもあり。でもインディーのためのエリアみたいなものを別途設けて露出するような感じで,一般のユーザーさんまで到達するための努力が続ける必要があると思います。
Steamが世界一のプラットフォームであることは疑いようがありませんが,Steamにある小さいインディー作品は,ユーザーに露出されることなくそのまま終わってしまう場合も非常に多いです。
なのでStoveは,インディーの皆さんの悩みを踏まえて,どんなものであれユーザーへ露出できるチャンスを作るつもりでいます。
4Gamer:
露出もですけど,本当のインディーはPR費用もローカライズ費用も全然ないですよね。ないのは当たり前なんですが,それが問題になってしまう状況も否定できません。
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もちろんそうですね。おっしゃるように,どうやって露出するかだけではなく,ローカライズ費用なども足りていない場合も多く頭を悩ませているわけで,こういう悩みの解決をサポートするために支援したりもしますよ。
Steamは単純に配布するだけのプラットフォームですが,Stoveはさまざまな要望に柔軟に対応できるようインディーの会社と協議を続けるつもりです。
4Gamer:
それはすごく素敵な話だとは思うんですが,正直言ってそれだけでは大きなビジネスになる話ではないと思うんです。少なくとも今のところは。いやもしかしたら,インディーである限り将来的にもほぼならないかもしれない。
確かに1000本に1本ぐらいは凄まじいヒットが出るので,どこかで化ける可能性はありますけど,それにしたってちょっとビジネススキームとして効率が悪いですよね。IPを抱え込んだりグッズ販売してるところも多いですが,それだってリスクは高い。
Stoveが……というかスマイルゲートが,インディーに対してそこまでする理由は何があるんですか。
ペク氏:
うーん……例えば,我々がオープンワールドのアクションゲームを作るとして,まぁ最低でも100億円くらいは基本で,AAAだとそれを遥かに超える額の開発費がかかります。そしてもちろん,AAAを作ったとしても100%成功するわけでもありません。
じゃあインディーかというと,おっしゃるようにそれ単体でビジネスにするのは結構難しいと思います。単純にインディーという,その会社だったりとか個人だったりタイトルだったり,そういうところだけ見てビジネススキームを考えても厳しいだろうなぁ,と。
4Gamer:
まぁいまどきは本当に猫も杓子もインディーですから,余計に「それ大丈夫……?」という気はしますね。コンテンツビジネスをやっていない会社さんなんかが入ってくると,とくにそう思います。
ペク氏:
ですよね。なので我々がたどり着いた先はサンドボックスゲームです。
4Gamer:
……と言いますと?
ペク氏:
今まさにサンドボックスゲームを作ってます。「Roblox」のような,CtoCが可能なプラットフォーム+ゲームの形です。
そのサンドボックスにインディークリエイターたちが参加して何か作るならば,それはインディーデベロッパーとしてはUnityなどを使うのと同じようなものですし,ちょっとは入りやすいと思います。そしてそのデベロッパーたちが生態系に入ってくれば,最終的には結構大きいビジネスに繋がると思っています。
インディーのクリエイターが我々のサンドボックスゲームを活用したら,我々のプラットフォームでとても成功的な何かを作れるんじゃないかな? という。
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4Gamer:
いまStoveの話を聞いてたつもりだったんですが,思わぬものが出てきました。これ書いていいやつですか?
ペク氏:
大丈夫だということにしたからしゃべってます(笑)。
それで我々が考えているモデルは,CtoCが可能なサンドボックスと結合したプラットフォームです。
4Gamer:
詳しくお願いします。
ペク氏:
まず大きなプラットフォームがありまして,CtoCが可能なサンドボックスゲームをそのプラットフォームの中でローンチします。サンドボックスゲームに含まれているツールを使って,サンドボックス内でゲームを作ると,それは自社プラットフォームのメインページに露出できます。
4Gamer:
お? 先ほどちょっと触れてた「埋もれない施策」というやつですか。
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ええ。もちろん別のアプリやプログラムで作ったゲームであってもローンチできますが,究極的には我々のサンドボックスツールで開発したゲームもこのプラットフォームでローンチする方向で事業を展開するつもりでいますし,その生態系にインディーのクリエイターさんたちが参入することを望んでいます。
4Gamer:
ええと最初にクリアにしておきたいんですが,その「プラットフォーム」はStoveで,サンドボックスゲームと呼んでいるものはStoveとは別の話ですよね?
ペク氏:
ええ。いまはそのサンドボックスゲームを準備している状況で,サンドボックスゲームがStoveを牽引する,と思ってくださればよいと思います
4Gamer:
ちょっと話を誤解するとよくないので,申し訳ないんですがRobloxと比較して説明していただけますか。
ペク氏:
いいですよ(笑)。
Robloxの場合は,Roblox内で有名なゲームをプレイするためにはRobloxにログインしないといけないですよね。我々が構想しているのは,サンドボックスゲームのツールでゲームを作ったとき,そのゲームをサンドボックスの「外」で展示できます。
4Gamer:
そこはシームレスにつながってるんですか?
ペク氏:
ええ。サンドボックスゲームにはログインしていなくても,その外側で展示されているゲームをクリックすると,サンドボックス内のそのゲームに直接アクセスできます。ユーザーから見たときには,プラットフォームでそのゲームがプレイできるということです。
4Gamer:
なるほど。サンドボックスの中にFPSがあったとして,そのFPSはStove上で展示されていて,Stove上でアイコンをクリックすればそのまま遊べると。
ペク氏:
先ほど大きなビジネスになりそうではないという話が出ましたが,なぜインディーを支援するかというその部分に関して言うならば,結局のところゲームの未来においてはCtoCが重要な要素になると思ったからです。
なので,より多くの,たくさんのインディーのデベロッパーたちが我々のCtoC生態系に入ってほしいと思いまして,プラットフォーム事業とインディー事業を両立して並行しているのだと理解していただければと思います。
4Gamer:
なるほど。「インディー事業は大きな利益を生むわけではないと思うんですが,本社の事業ポートフォリオの中でどういう位置付けなんですか?」という質問をしようと思ってたんですが,全然違う方向性の話でした。
ペク氏:
サンドボックスゲームについては,単純に他社もやってるから我々もやるということではなく,スマイルゲートグループ全体として,かなり大きな戦略としてやっている事業になりますね。
4Gamer:
先行するサービスに比べてどこが強みだと思いますか?
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制作の容易さ,ですかね。既存の作品ツールは,ローンチしてからそれぞれ時間が経っているので,表現の幅が広くなったというか,ある意味非常に高度化していると思います。
ですので我々のツールはピースを1つ1つ作り上げるのではなく,作りたいゲームに合わせて,ある程度出来上がっているものを提供して,ゲーム作りをしやすい環境を提供しようと思っています。レンジで作る食品みたいに,半分ぐらいは出来上がっていてほぼすぐ作れるような,そういうもの。
そういう環境を提供して,作りたいゲームがより作りやすくなる環境を提供する感じですね。そこが,ほかの作品とはちょっと差別化ができるのではと思います。
4Gamer:
なるほど。Robloxは正直そこまで真剣に遊んだことはないんですが,中に入ってちょっと試してみた感じ,ゲーマー的文脈で言うなら「これはゲームではないのでは?」みたいなものもたくさんありますよね。敵が動かないFPSとか(笑)。それでも何万人,何十万人という人が遊んでいる。
スマイルゲートはそういうものを目指している……わけではなさそうなんですけど,そのあたりはどうですか? いわゆる「ちゃんとしたゲーム」が作れるようになっているのか,それともプラットフォームとして,カジュアルなものからゲームぽいものまですべてを受け入れるようになっているのか。
ペク氏:
たぶん編集長と私はほぼ同じ世代かなと思うんですけど,僕らの世代が「ゲームとはこういうもの」だと思っているものと,今の10代前半の世代が「これがゲーム」と思うものは,確かに違うかもしれないです。なので我々が提供するものが,「ゲームらしく」作れるのだ……と決められるようなものではなさそうに思います。
ゲームとは遊びの手段そのもので,我々が提供するもので「これはゲームらしい」「これはゲームらしくない」ということを決めるつもりはないです。もっと自由に表現できるようにツールは用意するつもりですが,こちらはもうちょっとまとめたらまたの機会に丁寧に説明したいと思います。
4Gamer:
まぁそうですよね。我々の世代の常識がいまの非常識であることだってありそうですし。でもそこは難しい問題ですよねえ。だって多くの場合,作ってるのは「我々の世代」がメインであるわけで。
ペク氏:
そうなんですよね。
まぁ話を戻すと,インディーというキーワードが今日のテーマだった気がするんですが,インディーに関して本当に話したかったことは,「既存のインディーゲームストアのために我々がインディー事業をしているわけではない」ということです。
RobloxのようなCtoCサンドボックスのツールを加えて,それらのシナジーが発揮できる生態系にするために,我々はインディーに注目しています。我々のグループ内でのインディーの立ち位置はそこなんです。
4Gamer:
正直予想外でした。僕が昨日の夜作ったインタビューメモ,全然使うことがなさそうです。
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先ほども話題に出ましたが,インディー事業だけでは利益を生み出すのがとても難しいと思います。
我々も,普通のインディー事業はやっぱりちょっと違うなと思っていて,インディーとシナジーを作り出せる多様な方法に関して悩み,その中の一つがCtoCゲームプラットフォームを融合するモデルになったわけです。
4Gamer:
恥を忍んでいいますが,「インディーの投資判断はどのKPIを重視?」とかメモに書いてあります(笑)。
一同:
(笑)
ペク氏:
まぁそういうKPIを設定したとしても,それで稼げるとはあまり思っていないですけど。
4Gamer:
いやあ,裏切られるインタビューはいいですね。
でもちょっと待ってください。じゃあ今あるStoveというサービスは,今背後に作ってるCtoCのプラットフォームみたいなもののゲート的なものなんですか?
ペク氏:
いえ,StoveはCtoCのプラットフォームの役割も担いますよ。弊社がパブリッシングする主なゲーム,AAAやAA,または大きいオンラインゲームをプレイする空間でもあり,同時に小さなスタジオが作ったA級ゲームもプレイできますし,今話したCtoCサンドボックスゲームで作られたゲームが展示されるのもあり得ます。
4Gamer:
なるほど全体を横断する。
ペク氏:
ええ。今は小さいプラットフォームですけど,大きい夢を抱いています。目標は大きく持つべきです(笑)。
4Gamer:
しかしいつ頃から作ってるんですか?
ペク氏:
これは私個人の考えというわけではなく,全体的な傾向だったり,Stoveを運営するMegaport(メガポート)部門全体のレベルで常に協議しています。
自分がスマイルゲートに入ったのは2年3か月ほど前ですが,最初からその方向性に合わせて自分もやっていますね。なのでもう少し前から始まっているのかもしれません。
4Gamer:
そもそもMegaportという部門は「そういうことをするところ」だということですか?
ペク氏:
ええ。Megaportという組織のミッションは,プラットフォームホルダー,プラットフォーム運営者として成長することで,プラットフォームとは,世界的なゲームのプラットフォーム,またはゲームやエンターテインメントをまとめるプラットフォームです。このミッションには,パブリッシングはもちろん,インディーまたはCtoCサンドボックスなどが含まれています。
この方向性は,私が合流する前にすでに決まっていたものでして,自分もそれに同意し実行している段階です。今はまだ大きくはないですが,一つの方向性のもとにコツコツとやっていくべきだと思ってますし,私と協業する組織はみんなその方針の中で動いています。
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4Gamer:
でもペクさんが入ってから背中を押されたようなもので,ということは比較的新しいですね,実際に動き出したのは。
ペク氏:
会社の戦略的な方向性は既に建てられていたんですが,確かにやっと目に見えるようになったころかなと思います。自分も色んな方々と話し合ったりしてますし,パブリッシングの件も,去年から弊社パブリッシングタイトルが増えてきて,少しずつそれが見えてきたのではないかと。
4Gamer:
実は去年と同じことおっしゃってますよ。
一同:
(笑)
ペク氏:
自分は実行力があるほうだと,自分でも思ってますし,実行に重点がある人だと思っていただければ(笑)。成功できるかどうかは……まぁこればかりは,成功するために頑張るしかないと思います。
4Gamer:
しかしサンドボックスとはちょっと予想外でした。
現時点での感触とか予定とかでもいいんですけど,なんか目新しい要素などが入ったりしますか? AIによってゲームが作られていくとか,他社サービスのデータが読み込めるようになってるとか。
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それは……戦略的に営業秘密なので,さすがにこの場ではちょっと(笑)。
まぁ秘密であることもそうなんですが,実はどういう風に伝えていくべきかがまだ決まってない状況でして,まとまり次第また話しさせてください。必ず話しますから!
4Gamer:
CtoCを基点にいろんなものが動いていくというのは,既存のゲーム業界にはあんまりなかった発想ですし,何かを変えられるかもしれません。
ペク氏:
まぁ成功したら「新しいモデル」で,失敗したら「すばらしい挑戦だった」と言われます(笑)。
一同:
(笑)
ペク氏:
でも個人的にも,確実にその方向性が合ってると思います。もちろん,大きなゲームをパブリッシングするとたくさんのユーザーを集められるし,そのユーザーが自然にCtoCやインディーゲームを見つけてくれてそれも楽しんで,そのような好循環を生み出す生態系を作りたいと思っています。
4Gamer:
「ゲーム内ゲーム」もインディーですもんね。
ペク氏:
そうです。結局インディーゲームは,独立デベロッパーが作るゲームですから,そのツールがUnityであれ,我々のサンドボックスエンジンであれ,それは関係ないです。もうちょっと大きく見ていただければと思いますね。
4Gamer:
うまくいったらいったで,きっと今のRobloxみたいに,中のゲーム制作がどんどん組織化してきて,サンドボックス内のAAAとかが出てくるわけですよ。結局どうであれ最終的には同じ問題に行き着くんだなと思って興味深く見ています。
ペク氏:
既存の方式でゲームを開発するとしたら,その問題がより顕在化すると思いますね。CtoCであれインディーであれ新しいカテゴリーができたら,そこからまた新しいチャンスが創出されるものですから。
もちろんそれも続けると,またそこから顕在化する問題があるとは思いますが,新しいカテゴリーを作ること自体が大事ではないかなと。
4Gamer:
最も難しい壁になるだろうなと思っている部分はなんですか?
ペク氏:
シンプルに言うと,今はまだ「これが問題になりそう」「あれが難しそう」ということは,実はあんまり考えていなくてですね……。
4Gamer:
聞いておいてなんですが,そうあるべきだと思います(笑)。
ペク氏:
もちろん悩んでないわけはないんですが,それらは我々がもっと戦略を具体化してから話せるのではないかと。このような大きい枠の挑戦は初めてなので,どこからどんなリスクが発生するかを今から測るのは難しそうだという理由もあります。
考え出したらとてもたくさんの問題があると思いますが,それを全部考え出すと,実行できなくなる気がします。
4Gamer:
韓国の方って意外とそういうの多いですよね。考えないでとりあえず進むというか。日本人は割と考えてから進む人が多い気がしていて,韓国もちょっと日本に近いかなと思ったら,そうでもないという。
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自分の考えでしかないですが,正しい方向性があるのであれば,それに向かって進むべきです。そして,今将来の何かを心配するとして,そのリスクが本当に起こることより,心配し過ぎて実行できなかった場合のほうが多かったという経験があります。
実行しながら1つ1つクリアしていくと,少しずつですがもっと遠くまで見えるようになります。でも確かに,韓国の人と日本の方とに違いがあることは私も同感です。
4Gamer:
僕がお会いさせていただくのは,かなり上の層の方が多いので,そういう方たちはそういう風に考えるという側面もあるかもしれません。
ペク氏:
そのように考えていただいてありがたいですが,自分としては「出来る方法を探すのが大事でダメな理由を探しちゃダメ」だと思います。私のポリシーですし,これからもその姿勢で頑張るつもりです。
4Gamer:
そうですね。ダメな理由を考え出すといくらでも出てきますし……。それでも,たまに考えちゃうんですよね。どうしてもダークサイドに飲まれてしまう。
ペク氏:
ありますね。
でもやっぱり新しいチャレンジなので,ゲームを1本ローンチするレベル……よりもっと強い意志を持って動かないと,達成できないです。弊社のほか役員の方々も同じ考え方でサポートしてくれるので,今はパワーをもらっている状況で,仕事がしやすいのだと思います。
4Gamer:
では次お会いするときには全貌が聞けることを楽しみにしています。ありがとうございました!
―――2025年9月26日収録
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