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映画「異端者の家」は,ゲーマーに刺さる“密室脱出×サイコロジカルホラー”な一作だ。対話と選択がキーとなるA24の注目作をゲーマー視点で紹介
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印刷2025/04/29 07:00

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映画「異端者の家」は,ゲーマーに刺さる“密室脱出×サイコロジカルホラー”な一作だ。対話と選択がキーとなるA24の注目作をゲーマー視点で紹介

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 2025年4月25日より全国の劇場で公開中の映画「異端者の家」(原題:Heretic)は,A24が新たに贈るサイコロジカルホラーだ。布教活動で訪れた家に閉じ込められたシスターたちと,その家の主(異端者,Heretic)との対話を軸に,想像もつかない展開が待ち受ける。

 密室劇,心理ゲーム,脱出劇――ときに静かに,ときに目まぐるしく動く物語は,ホラーゲームが好きな人はもちろん,推理アドベンチャーや脱出ゲーム,人狼ゲームなどの正体隠匿ゲームといった「推理と駆け引き」を楽しむタイプのゲーマーにも刺さる要素が詰まっている。本稿では,ゲーマー視点でオススメしたいポイントを中心に「異端者の家」を紹介していきたい。


「異端者の家」公式サイト



A24が描く新たなサイコロジカルホラーと,その作り手たち


画像は映画「DEATH STRANDING」の共同製作を発表した際に公開された(関連記事)A24のロゴ。作品に合わせて自社ロゴのデザインを変える(遊ぶ?)のもA24の面白いところ
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 本作を手がけるA24(エー・トゥエンティフォー)は,アメリカの独立系エンターテインメント企業だ。2012年の設立以来,個性的なアート系・インディペンデント系作品の劇場配給やテレビドラマ企画を手がけ,「ムーンライト」(2016年)以降は自社製作にも乗り出し,同作は第89回アカデミー作品賞を受賞した。

 「ミッドサマー」「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」「シビル・ウォー/アメリカ最後の日」「関心領域」などなど……映画賞受賞作や日本でも話題になった自社製作作品(のさらに一部)に絞ってもこのとおりのラインナップで,映画ファンはもちろん,アートやポップカルチャーが好きな層などに熱く支持されている映画会社だ。
 ゲームファンであれば,「DEATH STRANDING」実写映画の共同制作会社と言えばピンとくる(そしてA24を知るゲームファンなら,デススト映画化でA24が製作と聞いて「それ!」と思った)はず。

「A24×Happinet Phantom Studios」公式サイト

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[2023/12/15 10:40]
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[2025/04/08 19:15]

 「異端者の家」の監督と脚本を担当したのは,スコット・ベックブライアン・ウッズの2人。「クワイエット・プレイス」にてジョン・クラシンスキー監督とともに脚本を担当したことで一躍注目を集めたのち,2人で「ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷」「65/シックスティ・ファイブ」といったホラー・スリラー作品を手がけてきた。
 また映画製作のかたわら,2人の地元に近いダベンポートにアートシアター系映画館「ラスト・ピクチャー・ハウス」を設立。映画そのものへの愛情を大事にしているクリエイターたちだ。


対話と選択が鍵を握る,招かれた一軒家で始まる心理ゲーム


 物語は,バーンズ(ソフィー・サッチャー)パクストン(クロエ・イースト)という2人の若いモルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会)のシスターが,宣教のため教会のリストにあった家に訪れるところで動き出す。

左からバーンズ(ソフィー・サッチャー)とパクストン(クロエ・イースト)。「学校のクラスメイトとかだったら,こんな風に一緒にはいなさそうだな」と感じるほどタイプが異なる2人
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 大雨のなか,自転車を漕ぎ,森にひっそりとたたずむ一軒家にたどり着いた2人。迎え入れたのは,優しげな笑みをたたえた男――リード(ヒュー・グラント)だった。
 雨足は強く,このまま外を移動するのは危険だろうと,家に上がるように勧めるリード。教義上,男性だけの家に滞在することはできないと一度は拒むシスター2人だったが,リードから「奥に妻がいる」と説明されリビングへと通される。

 しかし,リビングにて3人で話し始めてから空気が少しずつ変わり出す。「どの宗教も真実とは思えない」と,まるで2人の信仰心を試すかのように持論を展開しだすリード。その柔らかな物腰とは裏腹に,場には徐々に不穏な気配が漂い始める。
 なにかがおかしいと感じた2人は,教会から呼び出しがあったと嘘をつき,その場を離れようとする。だが玄関はロックされており,携帯も圏外で外界との連絡手段も断たれていた。逃げ道を断たれた2人のシスターは,閉ざされた家で異端者(Heretic)による極限の心理ゲームに巻き込まれていく。

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ゲーマー視点で推したい“プレイヤー感覚"で楽しめる物語の仕掛け


 そんな「異端者の家」はいろいろな視点で楽しめる作品なのだが,実はかなりゲーマーの感性をくすぐってくる映画だったりする。
 ちょっとしたことがネタバレになり,初見の驚きを奪ってしまうことにもつながるのでふわっとした伝え方になってしまうけれど,この先を読んで「なんとなく気になってきたぞ」と思ったら,ぜひ劇場で体感してほしい。

 まず大きなポイントになるのが,リードとの“対話”。本作の重要なモノとなる“異端者との会話”だが,その話題は宗教に留まらず,そのほかのカルチャーの話題にも広がっていく(そのなかに,ゲーマーであればめちゃ刺さるであろう話も……)。関係のない話を始めていないか? と思いきやその話は彼なりの主張に着地し,一方でなにかの違和感や試されているような気配も感じさせられる。
 そんなリードの言葉を読み取りながら,2人のシスターが自分の言葉や行動を選ぶ過程は,まるで推理ゲームや正体隠匿系の心理ゲームのようだ。

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 カメラワークもそれを強く後押ししている。
 引きのカット,極端なアップ,誰かの視点,一人称的なアングル……同じ部屋のなかなのに,見えるものや感じる空気が視点によって大きく変わっていくカメラワークがスリリングな演出になっているのはもちろん,「これは何かのサインか? それともミスリードか?」と自然と頭が働き始める。それはまるで,自分自身が謎だらけの家に閉じ込められたプレイヤーになったかのような感覚だ。

 そんな本作の“視点”作りを支えるのが,撮影監督のチョン・ジョンフン「オールドボーイ」などパク・チャヌク監督作品で知られ,「IT/イット “それ”が見えたら,終わり。」「ラストナイト・イン・ソーホー」といったホラーやサスペンス作品の絵作りでもその名を知られている。ちなみにゲームファン向けに付け加えると,映画版「Uncharted」の撮影監督を務めた人物である。

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 そして忘れてはいけないのが,この家で繰り広げられるゲームの“ゲームマスター”であるリードの異様な存在感だ。
 普通に穏やかに話しているだけかと思えば,いつの間にかリードのペースに引き込まれ,もう逃げられない。2人のシスターだけでなく観客までもが,知らないうちにリードのルールに絡め取られていく。

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 そのリードを演じるのが,英国の名優ヒュー・グラントだ。近年では「パディントン2」フェニックス・ブキャナン役などクセのある悪役も演じているが,今回のリードはそれらとは違う。「ノッティングヒルの恋人」「ブリジット・ジョーンズの日記」「ラブ・アクチュアリー」といったロマンティック・コメディのやわらかいイメージの延長にありながらも,それを理詰めで他者を追い詰める“恐怖の存在”に塗り替えたような人物なのだ。
 そんな狂気をまとったゲームマスターを演じたヒュー・グラントの存在感と魅力も「異端者の家」を特別な映画にしている要素だ。



映画でなにかに触れたいなら。心の奥にあるなにかを試されるような映画


 宗教が作品に深く関わっている点で構える人もいるかもしれないし,人によってはそのあたりの描写で不快に思うこともあるかと思う。
 ただ,本作が描こうとしているのは,特定の団体や宗教そのものを批判することではないということは伝えたい。受け取り方は人それぞれだが,もっと普遍的な,社会のしくみや人間の生活に関わるものをテーマに込めた作品だと感じさせられる。

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 以下はあくまで筆者の感覚だが,世界や社会のシステムとなっているものや,日常を生きるなかで感じる“生きづらさ”の正体のようなものに触れようとしている──そして,観た人自身にそれを考えさせるような作品だと感じた。
 また,これは同じA24の作品「関心領域」でも似たようなことを思ったが,刺さる人には「もうやめて!」と叫びたくなるほど深く突き刺さる一方で,(込められたものに)気づいてほしい,知ってほしいと思う人にはそれが退屈に映る映画ではないかというもどかしさも……。きっと観る人によって,印象も,心に残るものも,大きく違ってくるだろう。

 ……などと小難しいことを言ってしまったが,本作は絵の作り方や音の使い方,さまざまなジャンルのホラー要素を織り交ぜた驚きの展開など,ホラーエンタメ作品としてきちんと楽しめる作りになっている。難しいこと抜きにドキドキしながら映画を味わうことができるので,純粋にホラー作品を観たいという人にもオススメだ。

 「異端者の家」は,全国の劇場で公開中。ゴールデンウィークにみんなでワイワイ楽しむような映画ではないけれど,映画を通して何かに触れたい,なにかを感じ取りたいと思っているなら,「異端者の家」は静かに心に残る一本になるかもしれない。

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4月25日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
異端者の家

監督/脚本:スコット・ベック,ブライアン・ウッズ
キャスト:ヒュー・グラント,ソフィー・サッチャー,クロエ・イースト
原題:Heretic 2024年 アメリカ・カナダ
字幕翻訳:松浦美奈
上映時間:1時間51分
配給:ハピネットファントム・スタジオ



<STORY>
 シスター・パクストンとシスター・バーンズは,布教のため森に囲まれた一軒家を訪れる。ドアベルを鳴らすと,出てきたのはリードという気さくな男性。妻が在宅中と聞いて安心した2人は家の中で話をすることに。早速説明を始めたところ,天才的な頭脳を持つリードは「どの宗教も真実とは思えない」と持論を展開する。
 不穏な空気を感じた2人は密かに帰ろうとするが,玄関の鍵は閉ざされており,助けを呼ぼうにも携帯の電波は繋がらない。教会から呼び戻されたと嘘をつく2人に,帰るには家の奥にある2つの扉のどちらかから出るしかないとリードは言う。信仰心を試す扉の先で,彼女たちに待ち受ける悪夢のような「真相」とは――。


「異端者の家」公式サイト

「A24×Happinet Phantom Studios」公式サイト

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