イベント
大幅にボリュームアップしたSPIEL'25。ドイツゲーム賞銅賞は林 尚志氏「ボムバスターズ」が受賞
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会場面積が大幅に拡大。入場時には長蛇の行列も
年々拡大を続けるSPIEL Essenだが,SPIEL'25では大幅な規模拡大が行われた。
長年6ホールで開催していた展示・販売スペースは,7ホール構成に。これに伴い,軽量〜中量級ゲームを扱うFamily Game,重量級ゲームを扱うExpert and Hobby Gameのエリアがそれぞれ3ホールに増加した。
また,プレス発表では「TRPGやミニチュアゲームのブースが充実した」とコメントされている。昨年よりTCGと合わせてRole Playing, Miniature & Trading Card Gamesエリアとして2ホール分の敷地に広がっていたが,より存在感が大きくなった格好だ。
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来場者も,20.4万人から22万人に増加。開催前週の時点で金曜日・土曜日のチケットは売り切れるほどの人気を博し,開催直後に長蛇の入場列ができる日もあった。これまで開催直後からスムーズな入場ができていたSPIEL Essenだけに,入場にこれほどの待ち時間が見られたのは珍しい。
会場内も開催直後から大盛況で,各ホールで歩けなくなるほどの混雑が見られた。
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出展者も多種多様だ。AsmodeeやKosmosをはじめとする大手から中小・インディーのパブリッシャまで,948団体が一堂に会した。出展団体は世界各地から集まっており,今年も4大陸50か国からの出展があったという。プレスカンファレンス内で行われた質疑応答では「ヨーロッパ地域の外から安価に出展できるプランを用意してほしい」という質問もあり,各国パブリッシャからのSPIEL Essenに対する熱い視線が感じられた。
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日本発団体は24団体と過去最多。「日本エリア」が生まれ存在感を増す
SPIEL'25においては,日本から24団体22ブースが出展。日本発ブースの出展は年々増加しており,948団体が登録するSPIEL Essen 2025では全体の2%を占める規模となり,その存在感を見せていた。
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SPIEL'25で特徴的だったのは,日本発ブースの配置だ。日本発ブースの多くはFamily Gameエリア内に固まって配置されており,とくに名前は冠されていないが「日本エリア」ともいえる区画を作っていた。試遊を楽しむ来場者も多く見られ,いずれのブースも大盛況。出展者からは「集中的な配置になったことで,昨年より多くブースを訪れてきているのでは」という声もあった。
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そのほか,日本発TCGブースも盛況だった。昨年もブースを構えていた「ポケモンカードゲーム」や「遊戯王オフィシャルカードゲーム」に加え,今年は「ONE PIECEカードゲーム」が公式ブースを出展。そのほかBlackfireブースにて,多くの日本発TCGシリーズが遊ばれていた。
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ドイツゲーム賞大賞はSETI。日本発のボムバスターズも銅賞を受賞
SPIEL'25開催前日の10月22日には,世界的なボードゲーム賞である「ドイツゲーム賞」が発表された。各賞はドイツ語圏に住むボードゲームファンの投票によって選出される。
大賞はTomáš Holek氏による「SETI:地球外知的生命体探査」。異なる星に住む知的生命体を探すべく,惑星を探索する重量級ゲームだ。授賞式のインタビューでは「天文学の進歩でフレーバーテキストに書いてある情報が古くなり,カードに書いている情報が完成から発売までの半年で間違ったものになってしまった」とエピソードを語り会場を沸かせた。
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加えて,日本のゲームデザイナー林 尚志氏による「ボムバスターズ」が銅賞を受賞した。林氏は7月に発表された「ドイツ年間ゲーム大賞」では金賞を受賞しており,それに続いての快挙となった。当作は,爆弾処理班として指定されたミッションの爆弾を解除していく協力型ゲームだ。2020年に制作された林氏の作品「ボムスカッド」を前身とし,フランスのカクテルゲームスから2024年に出版された。
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授賞式ののち,林氏にコメントをいただいた。
受賞に際しての思いとしては,「ドイツ年間ゲーム賞を受賞して,ドイツゲーム賞についても取れたらな,という思いはあった。一方でドイツゲーム賞については重量級ゲームが評価される,ということはよく知っていたので,やはり金賞のSETIは強いな,と感じた」と話していた。受賞を受け,今後ゲームデザイナーとしてどのように活動していくかについては,「受賞したゲームの拡張を作ったり,ほかの頼まれごとも増えていくように思うのでそれには取り組んでいきたいと思うが,今後も自分のゲームを作り続けていきたい」とのことだ。
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子供向け部門は,Fertessa Allyse, Randy Flynn両氏による「Die kleinen Alchemisten」が受賞。「小さな錬金術師」といった意味だ。材料を組み合わせてポーションを作り,販売して得たコインの数を競い合う。スマートフォンアプリで材料トークンを読み取ると,できあがるポーションが表示される仕組み付きだ。
そのほかの受賞作は以下のようになっている。ほとんどの作品は日本語版が発売されているので,ぜひこの機会に手に取ってみてはどうだろうか。
| タイトル | デザイナー | メーカー | |
|---|---|---|---|
| 1 | SETI: Auf der Suche nach ausserirdischen (邦題:SETI:地球外知的生命体探査) |
Tomáš Holek | CGE / HeidelBär Games |
| 2 | Endeavor: Die Tiefsee (邦題:エンデバー:ディープ・シー) |
Carl de Visser,Jarratt Gray | Frosted Games/Board Game Circus |
| 3 | Bomb Busters (邦題:ボムバスターズ) |
林 尚志 | Pegasus Spiele |
| 4 | Castle Combo (邦題:キャッスルコンボ) |
Grégory Grard, Mathieu Roussel | Kosmos |
| 5 | Faraway (邦題:ファラウェイ) |
Johannes Goupy,Corentin Lebrat | Kosmos |
| 6 | Civolution (邦題:シヴォリューション) |
Stefan Feld | Deep Print/Pegasus Spiele |
| 7 | Blood on the Clocktower | Steven Medway | Funtails |
| 8 | Slay the Spire: Das Brettspiel (邦題:Slay the Spire: The Board Game) |
Gary Dworetsky, Anthony Giovannetti,Casey Yano | Nice Games |
| 9 | Astrobienen (邦題:エイピアリー) |
Connie Vogelmann | Feuerlant |
| 10 | Dune: Imperium Uprising (邦題:デューン 砂の惑星:インペリウム 反乱) |
Paul Dennen | Dire Wolf Digital/Asmodee |
子供向け部門受賞作品
Die kleinen Alchemisten
デザイナー:Matúš Kotry
パブリッシャ: CGE / HeidelBär Games
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こちらは,出たばかりの新作がノミネートされることが多いのが特徴だ。上位作は大きく話題を呼び,翌年のゲーム賞受賞作となることも多い。まさに翌年のボードゲームシーンを占うランキングと言ってよいだろう。
今年はファミリー部門でMichael Palm, Lukas Zach氏の「Boss Fighters QR」が,エキスパート部門でMichael Yang氏の「COMPILE」が最高評価を受けた。日本発作品はEngamesから発売されている尾根ギア氏の「ゴーストリフト」がファミリー部門5位にランクインした。
ファミリー部門
| 順位 | タイトル | 評点 | 日本語版有無(予定含む) |
|---|---|---|---|
| 1 | Boss Fighters QR | 4.1 | × |
| 1 | Map Masters | 4.1 | × |
| 3 | Rebirth | 4.0 | × |
| 3 | Tag Team | 4.0 | 邦題:タッグチーム |
| 5 | Ghost Lift | 3.9 | 邦題:ゴーストリフト |
| 5 | Take Time | 3.9 | 邦題:テイク・タイム |
| 7 | Formidable Farm | 3.8 | × |
| 7 | Fearless | 3.8 | × |
| 7 | Ghostbumpers | 3.8 | × |
| 7 | Light Speed Arena | 3.8 | × |
エキスパート部門
| 順位 | タイトル | 評点 | 日本語版有無(予定含む) |
|---|---|---|---|
| 1 | COMPILE | 4.5 | 邦題:コンパイル |
| 2 | Last Droids | 4.4 | × |
| 3 | 1ers Contacts | 4.3 | × |
| 3 | Arten Garten | 4.3 | 邦題:アークノヴァ:サンクチュアリ |
| 3 | Forest Shuffle: Dartmoor | 4.3 | × |
| 6 | The River of Gold | 4.2 | × |
| 6 | Kavango | 4.2 | × |
| 8 | Kuldhara | 4.0 | × |
| 9 | Finspan | 3.8 | 邦題:フィンスパン |
1170人が1つのカタンをプレイ。ギネス記録を塗り替えたCatan Connect
10月24日には「カタン」30周年にちなんだ特別イベントとして,1170人で行う「Catan Connect」が開催された。これは過去最大の競技人数としてギネスブックに記録されることとなった。
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通常のカタンは,最大4人のプレイヤーで遊ぶゲームとなっているが,Catan Connectではカタン島が描かれたマップを横に広げるように連結し,大人数で遊ぶことができるルールとなっている。詳細な変更点については割愛するが,
- 木材や鉱石といった資源の供給を決めるダイスは全プレイヤーで共有
- ゲーム開始時に行う道・開拓地の初期配置は全プレイヤー固定。
- 資源交換の交渉は正面,両隣,斜向かいの5人と行うことができる。
- 参加者はそれぞれ向かい合うプレイヤー同士「月」と「太陽」に分かれ,交互に手番を行う。手番交代は持ち時間制。
- 全プレイヤーのうち,最も早く勝利点18点を集めたプレイヤーが勝利
といった変更点があり,総じて通常のカタンと比べてスピーディーにゲームが進む。ジーピーが日本語字幕版のルール説明動画をYouTubeで公開しているため,気になる人は見るとよいだろう。
着席ののち,ルール説明やトークイベントを経てゲーム開始。実際にゲームが始まると,盛んに交渉を始める人,「Lehm!(レンガ)」と足りない資源名を叫ぶ人などにぎやかにゲームは進んでいった。
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当初のイベントスケジュールでは,試合時間として45分程度が想定されており,短いのではないかと危惧したが,実際は15分ほどで試合終了。30ターン前後で決着がついてしまい,周囲のプレイヤーからも「早い!」との声がこぼれた。勝者のプレイヤーには製品版「Catan Connect」や3Dカタンなどが贈られた。Im Kartonからは筆者含む2名が参加し,各国のプレイヤーたちと対戦。首位を取るぞと意気込んだものの,生産力を整えている間にゲーム終了となってしまった。
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通常のカタンよりも選べる要素が少なかったり,周囲のプレイヤーが強いかどうかによって有利不利が発生したりと運要素もあったが,タイムアタック的な要素が加わったカタン,というのは新鮮な体験だった。
大人数のCatan Connectは10年前の2015年にも開催されており,今後も節目となる年には開催が期待される。参加してみたい人はチェックするといいだろう。加えて,KOSMOSから製品版「Catan Connect」が発売されている。日本語版の発売は未定のようだが,手に入れて遊んでみるのもよいだろう。
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会場で見かけた気になる作品たち
そのほか,会場で見かけた作品のうち興味深かったものを写真とともに紹介したい。国内外で開催されるイベント参加を検討したり,今後のアナログゲームライフを楽しんだりするうえでの参考となれば幸いだ。
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著者紹介:Im Karton
海外アナログゲームイベントを訪ねて旅する3人組。読み方は「イム・カートン」。これまでに世界最大のアナログゲームイベントであるドイツ「SPIEL Essen」(シュピールエッセン)をはじめ,アメリカ「Gen Con」(ジェンコン),フランス「Festival International des Juex」などを訪問。「Essen Spiel Guidebook 2023」に続き,2024年はアメリカのアナログゲームイベント「Gen Con」へ行きたい人の旅行ガイド「Gen Con Guidebook」を刊行。
Omochicard
Im Kartonメンバー。海外イベント訪問時は旅行の計画や日本へボードゲームを送る宅配便の発送などを担当。海外ボードゲームが大好き。好きなボードゲームは「アーク・ノヴァ 新たなる方舟」や「Kemet: Blood And Sand」。
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