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大幅にボリュームアップしたSPIEL\'25。ドイツゲーム賞銅賞は林 尚志氏「ボムバスターズ」が受賞
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印刷2025/11/01 09:00

イベント

大幅にボリュームアップしたSPIEL'25。ドイツゲーム賞銅賞は林 尚志氏「ボムバスターズ」が受賞

 2025年10月23日から26日にかけ,ドイツ・エッセンのMesse Essenにて世界最大級のアナログゲームの祭典「SPIEL Essen 2025」(以下,SPIEL'25)が開催された。会期中は世界各地からパブリッシャやクリエイターが集い,新作を発表。参加するアナログゲームファンは試遊や買い物を楽しんでいた。業界関係者も多く集まり,作品の売り込みや仕入れなどを行うトレードショウともなっている。今年もその模様をレポートしていきたい。

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会場面積が大幅に拡大。入場時には長蛇の行列も


 年々拡大を続けるSPIEL Essenだが,SPIEL'25では大幅な規模拡大が行われた。
 長年6ホールで開催していた展示・販売スペースは,7ホール構成に。これに伴い,軽量〜中量級ゲームを扱うFamily Game,重量級ゲームを扱うExpert and Hobby Gameのエリアがそれぞれ3ホールに増加した。
 また,プレス発表では「TRPGやミニチュアゲームのブースが充実した」とコメントされている。昨年よりTCGと合わせてRole Playing, Miniature & Trading Card Gamesエリアとして2ホール分の敷地に広がっていたが,より存在感が大きくなった格好だ。

ホール7は昨年までは待合用ホールとして使われていたが,今年は大手パブリッシャのブースがびっしりと並んだ
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プレス発表スライドより今年の会場マップ。昨年はホール6までが会場として使われていた
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 来場者も,20.4万人から22万人に増加。開催前週の時点で金曜日・土曜日のチケットは売り切れるほどの人気を博し,開催直後に長蛇の入場列ができる日もあった。これまで開催直後からスムーズな入場ができていたSPIEL Essenだけに,入場にこれほどの待ち時間が見られたのは珍しい。
 会場内も開催直後から大盛況で,各ホールで歩けなくなるほどの混雑が見られた。

金曜日は開場直後に長蛇の入場列。2度3度と折り返し,結果入場に30分ほど要した
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 出展者も多種多様だ。AsmodeeやKosmosをはじめとする大手から中小・インディーのパブリッシャまで,948団体が一堂に会した。出展団体は世界各地から集まっており,今年も4大陸50か国からの出展があったという。プレスカンファレンス内で行われた質疑応答では「ヨーロッパ地域の外から安価に出展できるプランを用意してほしい」という質問もあり,各国パブリッシャからのSPIEL Essenに対する熱い視線が感じられた。

重量級ゲームが揃うExpert & Hobby Gamesエリア。例年ホール3がこのエリアの中心だったが,今年はホール4にも力作が多かった
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ゲーム作者へのインタビューやボードゲームビジネスに関するセミナーなどが行われるSPIEL.talks会場。今年はホール4内に豪華なステージが設置され,注力具合が感じられた
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SPIEL'25,Gen Con,UK Games Expoなど世界各地の大規模イベントについての座談会。開催に際しての工夫や苦労をスタッフの肉声で聞ける貴重なイベントだ。「入社して初めてのイベントの思い出」などのテーマもあった
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各国のTRPGパブリッシャが集結。ダイスセットやプレイを盛り上げる小道具を販売する店も増えたように感じた
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ミニチュアゲームブースではWarhammerやBattletechといったメジャータイトルに限らず,新興勢も含めた多種多様なタイトルが集結。先行販売品/限定販売品なども用意され,力の入り具合が感じられた
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日本発団体は24団体と過去最多。「日本エリア」が生まれ存在感を増す


 SPIEL'25においては,日本から24団体22ブースが出展。日本発ブースの出展は年々増加しており,948団体が登録するSPIEL Essen 2025では全体の2%を占める規模となり,その存在感を見せていた。

オインクゲームズブース。創立15周年にちなんだ作品展示ブースも創設され,その歴史をたどることができた。会場内のいたるところに広告も掲示され,会場をジャックしている感もあった
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itten×Saashi & Saashi合同出展ブース。趣向を凝らせたブースデザインが毎年注目を集めているが,今年は裏表で両団体の新作が大きく目に入るようになっていた
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重量級ゲームが集うホール3に展開されていたHobby Japanブース。「FINAL FANTASY XIV TTRPG」と「さいころ民主主義デメクラシー」の2作品を出展
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 SPIEL'25で特徴的だったのは,日本発ブースの配置だ。日本発ブースの多くはFamily Gameエリア内に固まって配置されており,とくに名前は冠されていないが「日本エリア」ともいえる区画を作っていた。試遊を楽しむ来場者も多く見られ,いずれのブースも大盛況。出展者からは「集中的な配置になったことで,昨年より多くブースを訪れてきているのでは」という声もあった。

「日本エリア」の様子。ホール入口にも近く,入るなりEngames,アークライト,ヤポンブランドなどおなじみの日本発ブースが立ち並ぶ。日本発ゲーム好きの来場者にはたまらない光景だったのでは
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Engamesブース。スカウトアクションにランクインした「ゴーストリフト」を先行販売したほか,人気作「ノコスダイス」の試遊も盛り上がっていた
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アークライト/ゲームマーケットブース。アヂサワモユキ氏「トーネードスプラッシュ」,OKAZU brand「レイルウェイブーム」,らぴす氏「スノーコロニー」などを販売。売り切れが相次ぐ人気だった
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CMON×ヤポンブランドブース。佐藤雄介氏「CHARGE」やHEY!「マッチ売りの大富豪」を販売。そのほか,スイタ氏「GOTOKU」「GUESSER」,いせごん氏「絵獣コレクション」,荒尾俊樹氏「Poker Brawl」などを展示
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JELLY JELLY GAMESブース。キャンプ場で起こった殺人事件をモチーフにしたトリックテイキングゲーム「The Slasher」にちなんで,ブース内にはテントを展示
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GOTTA2ブース。「Alice's Wonder puzzle」をはじめとする同社のボードゲームに加え,日本産素材を用いたサプライなどを販売するDokkoi_JP制作のグッズや,HEY!「国旗王」などの作品を展開
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冒険企画局ブース。新作「Kampa!」などのボードゲーム作品に加え,歴代の日本語TRPG作品を閲覧できるコーナーがあった。「会場には日本語が読めない人も多いとは思うが,手に取って日本発TRPGの魅力に触れてもらうことができれば」と代表の近藤氏
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ClaGla×コロコロ堂ブース。コロコロ堂から発売される新版「ナショナルエコノミー」のほか,ClaGla「Human×AI Racers」など盛りだくさんだ
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「どうぶつしょうぎ」でおなじみの団体,ねこまど。親しみやすい形のコマで遊ぶことのできる将棋「Shogito」を展開するilexberry BVと共同出展
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Phantom Lab×Frenchy Kumaブース。今月,Kickstarterにて大成功を収めた新作のPhantom Lab「Astraios:Starlight」や,今年のゲームマーケットでも販売されたFrenchy Kuma「Tales of Kunugi」を出展
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すごろくやブース。「MAMÉ WASABI」シリーズ3作を展開。ブース販売以外でも,今年もYouTubeでSPIEL'25の模様を配信するなどさまざまな活動を行っていた
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北海道から参加したKumageraブース。多岐にわたる出展手続きを独力で調べながら,SPIEL'25初出展にこぎつけたという。羊蹄山をモチーフにしたゲーム「YOTEI」を販売した。ブース内には,畳やこたつなど日本の風景を再現
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同じくSPIEL'25が初出展のSzpiLAB(シュピラボ)ブース。「ラフレシアン」「プラネピタ」「スノープ」の3作品を展開
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ムンディガラポンやイベント遠征でのシルクロードおじさんの動画で,国内ではおなじみのスタジオムンディブース。SPIEL'25では「究極のカップ麺」を主軸に販売・試遊を行った
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「タイパ至上主義」シリーズを展開するTRYBEブース。「麻雀」「花札」「百人一首」「ポーカー」などのルールを簡略化し「ゲームの本質を最短時間で最大限楽しめる体験」を来場者に届けた。SPIEL'25で初出展(画像はTRYBEより提供)
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えんぴつや消しゴムなど身近な文具を使って遊べるボードゲーム,「BUNGU SQUAD」を展開するBUNGU SQUADブースが昨年に続き出展。通常版と豪華版の2バージョンを展開
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長野に拠点を構えるボードゲームエージェント会社PeakBGMらの共同出展ブース。同社が海外展開に携わるサニーバードの「カエルタワー」や,宮野華也氏の作品「七つの予言」などの試遊コーナーもあった
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Esper Game Studioブース。多忙なアニメ制作現場をモチーフにしたボードゲーム「JI-SO-GI」など3作品を展開していた
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 そのほか,日本発TCGブースも盛況だった。昨年もブースを構えていた「ポケモンカードゲーム」や「遊戯王オフィシャルカードゲーム」に加え,今年は「ONE PIECEカードゲーム」が公式ブースを出展。そのほかBlackfireブースにて,多くの日本発TCGシリーズが遊ばれていた。

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ドイツゲーム賞大賞はSETI。日本発のボムバスターズも銅賞を受賞


 SPIEL'25開催前日の10月22日には,世界的なボードゲーム賞である「ドイツゲーム賞」が発表された。各賞はドイツ語圏に住むボードゲームファンの投票によって選出される。
 大賞はTomáš Holek氏による「SETI:地球外知的生命体探査」。異なる星に住む知的生命体を探すべく,惑星を探索する重量級ゲームだ。授賞式のインタビューでは「天文学の進歩でフレーバーテキストに書いてある情報が古くなり,カードに書いている情報が完成から発売までの半年で間違ったものになってしまった」とエピソードを語り会場を沸かせた。

SETI大賞受賞の模様。天文学はTomáš氏の趣味でもあるという
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会場では拡張「Space Agencies」が早くも発表された
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 加えて,日本のゲームデザイナー林 尚志氏による「ボムバスターズ」が銅賞を受賞した。林氏は7月に発表された「ドイツ年間ゲーム大賞」では金賞を受賞しており,それに続いての快挙となった。当作は,爆弾処理班として指定されたミッションの爆弾を解除していく協力型ゲームだ。2020年に制作された林氏の作品「ボムスカッド」を前身とし,フランスのカクテルゲームスから2024年に出版された。

ボムバスターズ授賞式の模様。爆弾というモチーフを使った理由などが質問としては挙がった
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 授賞式ののち,林氏にコメントをいただいた。
 受賞に際しての思いとしては,「ドイツ年間ゲーム賞を受賞して,ドイツゲーム賞についても取れたらな,という思いはあった。一方でドイツゲーム賞については重量級ゲームが評価される,ということはよく知っていたので,やはり金賞のSETIは強いな,と感じた」と話していた。受賞を受け,今後ゲームデザイナーとしてどのように活動していくかについては,「受賞したゲームの拡張を作ったり,ほかの頼まれごとも増えていくように思うのでそれには取り組んでいきたいと思うが,今後も自分のゲームを作り続けていきたい」とのことだ。

受賞後,筆者のインタビューに答える林 尚志氏。SPIEL Essenへの来訪は9年ぶりという。「ドイツからの出展がメインであった前回訪問に比べて,いろんな国のブースを見るようになった」とSPIEL'25についての感想も語っていただいた
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SPIEL'25における「ボムバスターズ」試遊ブース。連日,試遊卓を囲む人で中が見えないほどの盛況だった
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8月にアメリカで開催されたGen Conでの「ボムバスターズ」特設ブース。作品のモチーフとなる時限爆弾をクローズアップしたブースが印象的だった
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 子供向け部門は,Fertessa Allyse, Randy Flynn両氏による「Die kleinen Alchemisten」が受賞。「小さな錬金術師」といった意味だ。材料を組み合わせてポーションを作り,販売して得たコインの数を競い合う。スマートフォンアプリで材料トークンを読み取ると,できあがるポーションが表示される仕組み付きだ。
 そのほかの受賞作は以下のようになっている。ほとんどの作品は日本語版が発売されているので,ぜひこの機会に手に取ってみてはどうだろうか。

タイトル デザイナー メーカー
1 SETI: Auf der Suche nach ausserirdischen
(邦題:SETI:地球外知的生命体探査)
Tomáš Holek CGE / HeidelBär Games
2 Endeavor: Die Tiefsee
(邦題:エンデバー:ディープ・シー)
Carl de Visser,Jarratt Gray Frosted Games/Board Game Circus
3 Bomb Busters
(邦題:ボムバスターズ)
林 尚志 Pegasus Spiele
4 Castle Combo
(邦題:キャッスルコンボ)
Grégory Grard, Mathieu Roussel Kosmos
5 Faraway
(邦題:ファラウェイ)
Johannes Goupy,Corentin Lebrat Kosmos
6 Civolution
(邦題:シヴォリューション)
Stefan Feld Deep Print/Pegasus Spiele
7 Blood on the Clocktower Steven Medway Funtails
8 Slay the Spire: Das Brettspiel
(邦題:Slay the Spire: The Board Game)
Gary Dworetsky, Anthony Giovannetti,Casey Yano Nice Games
9 Astrobienen
(邦題:エイピアリー)
Connie Vogelmann Feuerlant
10 Dune: Imperium Uprising
(邦題:デューン 砂の惑星:インペリウム 反乱)
Paul Dennen Dire Wolf Digital/Asmodee

子供向け部門受賞作品
Die kleinen Alchemisten
デザイナー:Matúš Kotry
パブリッシャ: CGE / HeidelBär Games


スカウトアクションの投票結果は会期中「Fairplay」ブースに張り出され,途中経過が分かる。写真は26日朝時点でのエキスパート部門の途中経過
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 会期中に開催される参加者投票ランキング「スカウトアクション」も会場を沸かせた。
 こちらは,出たばかりの新作がノミネートされることが多いのが特徴だ。上位作は大きく話題を呼び,翌年のゲーム賞受賞作となることも多い。まさに翌年のボードゲームシーンを占うランキングと言ってよいだろう。

 今年はファミリー部門でMichael Palm, Lukas Zach氏の「Boss Fighters QR」が,エキスパート部門でMichael Yang氏の「COMPILE」が最高評価を受けた。日本発作品はEngamesから発売されている尾根ギア氏の「ゴーストリフト」がファミリー部門5位にランクインした。

ファミリー部門
順位 タイトル 評点 日本語版有無(予定含む)
1 Boss Fighters QR 4.1 ×
1 Map Masters 4.1 ×
3 Rebirth 4.0 ×
3 Tag Team 4.0 邦題:タッグチーム
5 Ghost Lift 3.9 邦題:ゴーストリフト
5 Take Time 3.9 邦題:テイク・タイム
7 Formidable Farm 3.8 ×
7 Fearless 3.8 ×
7 Ghostbumpers 3.8 ×
7 Light Speed Arena 3.8 ×

エキスパート部門
順位 タイトル 評点 日本語版有無(予定含む)
1 COMPILE 4.5 邦題:コンパイル
2 Last Droids 4.4 ×
3 1ers Contacts 4.3 ×
3 Arten Garten 4.3 邦題:アークノヴァ:サンクチュアリ
3 Forest Shuffle: Dartmoor 4.3 ×
6 The River of Gold 4.2 ×
6 Kavango 4.2 ×
8 Kuldhara 4.0 ×
9 Finspan 3.8 邦題:フィンスパン


1170人が1つのカタンをプレイ。ギネス記録を塗り替えたCatan Connect


 10月24日には「カタン」30周年にちなんだ特別イベントとして,1170人で行う「Catan Connect」が開催された。これは過去最大の競技人数としてギネスブックに記録されることとなった。

全プレイヤーが着席したCatan Connect会場の模様。これだけの人数が1つのボードゲームをプレイするというのだから驚きだ
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 通常のカタンは,最大4人のプレイヤーで遊ぶゲームとなっているが,Catan Connectではカタン島が描かれたマップを横に広げるように連結し,大人数で遊ぶことができるルールとなっている。詳細な変更点については割愛するが,

  • 木材や鉱石といった資源の供給を決めるダイスは全プレイヤーで共有
  • ゲーム開始時に行う道・開拓地の初期配置は全プレイヤー固定。
  • 資源交換の交渉は正面,両隣,斜向かいの5人と行うことができる。
  • 参加者はそれぞれ向かい合うプレイヤー同士「月」と「太陽」に分かれ,交互に手番を行う。手番交代は持ち時間制。
  • 全プレイヤーのうち,最も早く勝利点18点を集めたプレイヤーが勝利

といった変更点があり,総じて通常のカタンと比べてスピーディーにゲームが進む。ジーピーが日本語字幕版のルール説明動画をYouTubeで公開しているため,気になる人は見るとよいだろう。


 着席ののち,ルール説明やトークイベントを経てゲーム開始。実際にゲームが始まると,盛んに交渉を始める人,「Lehm!(レンガ)」と足りない資源名を叫ぶ人などにぎやかにゲームは進んでいった。

開始前のゲーム盤面。1テーブルあたり30人程度のプレイヤーが参加。通常版に比べるとずいぶん細長いカタン島だ
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 当初のイベントスケジュールでは,試合時間として45分程度が想定されており,短いのではないかと危惧したが,実際は15分ほどで試合終了。30ターン前後で決着がついてしまい,周囲のプレイヤーからも「早い!」との声がこぼれた。勝者のプレイヤーには製品版「Catan Connect」や3Dカタンなどが贈られた。Im Kartonからは筆者含む2名が参加し,各国のプレイヤーたちと対戦。首位を取るぞと意気込んだものの,生産力を整えている間にゲーム終了となってしまった。

優勝プレイヤー表彰の模様。金色のトロフィーと記念品が贈られた
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筆者のゲーム終了時盤面。勝利点は初期状態から2点しか増えず6点。18点などまだはるか先だ。ゲームで使った道,開拓地,資源カードなどのコンポーネントは持ち帰り可能で,「甲子園の砂」のようだ
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 通常のカタンよりも選べる要素が少なかったり,周囲のプレイヤーが強いかどうかによって有利不利が発生したりと運要素もあったが,タイムアタック的な要素が加わったカタン,というのは新鮮な体験だった。
 大人数のCatan Connectは10年前の2015年にも開催されており,今後も節目となる年には開催が期待される。参加してみたい人はチェックするといいだろう。加えて,KOSMOSから製品版「Catan Connect」が発売されている。日本語版の発売は未定のようだが,手に入れて遊んでみるのもよいだろう。

Catan Connect製品版。横に連結して最大18人まで遊べる
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会場で見かけた気になる作品たち


 そのほか,会場で見かけた作品のうち興味深かったものを写真とともに紹介したい。国内外で開催されるイベント参加を検討したり,今後のアナログゲームライフを楽しんだりするうえでの参考となれば幸いだ。

スカウトアクションにもランクインした「1ers Contacts」。プレイヤーは地球に不時着した宇宙人となり,人類に見つからないように地球からの脱出を目指す
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こちらもスカウトアクション入賞作品「ABROAD」。「ガイドを書いてお金を稼ぎながら旅行をする」という目的を果たすべく,出版社に旅行スキルを売り込むゲームだ
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東京の地下鉄を扱ったゲームがなぜか多かったように感じられた。上が「Shinjuku」,下は「Travelers Tokyo」だ
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地図にたくさんのコンポーネントを置いていくゲームはそれだけで気になってしまう。「Era of Tribes」(写真上)と「Mesopotamia」(写真下)
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フロリダの海岸で貝殻を集めていくゲーム。「ウイングスパン」で有名なエリザベス・ハーグレイブ氏の新作だ
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フリードマン・フリーゼ氏の新作「Five Families」。ギャングの構想をモチーフにしたエリアコントロールゲーム。メインボードに描かれているのはニューヨークの地図だ
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昨年のSPIEL'24にてBlind Guardianとの合作で話題を呼んだシリーズ「HEABY METAL」。今年の新作はパワーウルフを率いて少女を救う協力型ゲーム「1589」だ
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山岸泰之氏の作品「ブリコラージュヘッズ」を前身として作られた「機械」。タイトルと世界観に惹かれてしまう
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ピンボールのように球を流していくボードが印象的な「12 Rivers」。アルパカの個人ボードもかわいい
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Inside Up Games「Earth」の拡張「Earth: Abandance」。4×4のスロットに置いたカードの組み合わせで点数を競うのが楽しい作品だが,拡張でどのようにパワーアップしていくのだろうか
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重量級ゲーム好きに根強い人気を持つ「トワイライト・インペリウム」に新拡張が。勢力が追加されるのはもちろん,新たな遊び方のできる新モード「Twilight's Fall」も追加されるという
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著者紹介:Im Karton
 海外アナログゲームイベントを訪ねて旅する3人組。読み方は「イム・カートン」。これまでに世界最大のアナログゲームイベントであるドイツ「SPIEL Essen」(シュピールエッセン)をはじめ,アメリカ「Gen Con」(ジェンコン),フランス「Festival International des Juex」などを訪問。「Essen Spiel Guidebook 2023」に続き,2024年はアメリカのアナログゲームイベント「Gen Con」へ行きたい人の旅行ガイド「Gen Con Guidebook」を刊行。

Omochicard
 Im Kartonメンバー。海外イベント訪問時は旅行の計画や日本へボードゲームを送る宅配便の発送などを担当。海外ボードゲームが大好き。好きなボードゲームは「アーク・ノヴァ 新たなる方舟」や「Kemet: Blood And Sand」。
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