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【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
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印刷2009/11/19 11:00

連載

【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)

切込隊長 / アルファブロガーにしてゲーマー。その正体は,コンテンツ業界で今日も暗躍(?)する投資家

画像集#002のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)

切込隊長:茹で蛙たちの最後の晩餐

ブログ:http://kirik.tea-nifty.com/



 4Gamer読者の皆様,こんにちは。
 全3回掲載と,「ヨーロッパユニバーサリス ローマ:ヴァイア ヴィクティス」を題材にした記事として,無駄に大長編となってしまった今回のAAR(After Action Report)だが,世界の片隅でこっそり覇を唱えるピクティイの歴史活劇も,いよいよ最終章である。
 閉じた部族社会から開かれた共和制へ移行してはみたものの,想像を絶する衆愚政治の場と化してしまったピクティイ。その一方で,拡大するローマ帝国の足音は,ついそこまで近づいてきていた。急速な軍備拡張を図るために,自由な采配が振える独裁制への移行を決意したピクティイの行く末や,いかに。

【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(前編)

【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(中編)


前回のあらすじ

 古代スコットランド(カレドニア)を起源とし,いまやブリタニア島および旧領アイルランド全域にその勢力を拡大したピクティイ。紆余曲折を経て原始的な戦闘部族社会からの近代化を果たし,急速にその国力を伸ばしていたピクティイであったが,勃興から約200年が経とうという頃,「慢性的な人材不足」と「硬直化した元老院体制」という構造的なふたつの理由による政情不安定に陥っていた。一方,当のローマも度重なる内乱によって,その権勢に陰りが見え始め……。


独裁政治を目指して暗中模索するピクティイ


内戦が絶えないローマに,火事場泥棒的な戦争を仕掛けるピクティイの図
画像集#011のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)

 ローマでは内戦が発生し,それに横からしれっと介入して寸土を奪取したピクティイ。巨大帝国ローマは内部から朽ちている。その恒常的な内乱に付け入って,一個でも二個でも領土を拡張しようと,我々は涙ぐましい努力を払い続けてきた。ローマの大きな手からこぼれ落ちた金は百円でも惜しく,領土は零細農家の痩せた耕地ですら貴重だ。我々の成長は,常にローマからの簒奪によってのみ実現できる状況なのである。
 先のローマ内戦では,機先を制して近隣の領土を掠め取り,火事場泥棒の極みを大ローマ帝国に見せつけ,ヨーロッパに匪賊国家ピクティイありの蛮勇を轟かせるに至ったのだ。
 ……で,ここまでは良かったが,さらに大規模な内戦の発生したローマにまた宣戦布告しようと思ったら,ピクティイ国内にはびこる元老院の人民派派閥が六割を超えるという惨事ゆえに宣戦布告ができないというとんでもない問題が起きた。おい,ピクト族は戦闘国家だぞ。戦争したいときに戦争し,欲しいものは力ずくでも奪い取る,そういうワイルドで前向きな精神で成り立ってきたのがピクティイのはずだ。
 しかし,国が大きくなり安定した生活を求める国民が増えてきたということなのか。堕落だ。完璧な堕落だよこれは。目の前に,奪い取れる領土があれば,怒涛のように雪崩れ込んで,一心不乱に攻め込み奪取する。そういう気骨ある精神がなければ,今後控えるローマとの戦争に勝利することなどできないのは自明じゃないか。覇気がなさ過ぎる。ちんたら戦闘国家やってんじゃねえよ。蛮族あがりをなめてんのかよ。なんだ,この国を挙げての大企業病みたいな状態は。もしくは2000年も前倒しに発生した英国病のような風情は。お前らには危機感というものがないのか。

独裁制への移行条件のあまりの高さに驚愕。「尊大」とか「傲慢」とかならいっぱいいるけど駄目なのね
画像集#003のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
 ひとしきり画面の前で罵声と嘆息を巻き上げたところで,中編でついに決意に至った独裁制へと本格的に移行するための準備を始めてはみた……のですが,いろいろと不都合がありまして。ここから独裁制へと移行するための条件というものが,やたらハードル高いんです。安定度はともかく,人望があって,圧制度が高くて,「征服者」か「野心的」か「策士」か「汚職」か「利己的」の特性がないと独裁政治へは移行ができない,ということで。
 ちょっと待て。そんな便利な人材,うちにいたか? あれこれ構想を練っているうちに,就任したての元首がまた鬱に。そんなに嫌な職業なのか,ピクティイの元首というものは。っていうか,これから独裁制に突入しようというところで,いったい何をしているんだお前。しっかりしろ。いや,しっかりしてないからストレスに負けちゃっているわけではあるが。あまりにも無情な事実に愕然としていたら,その直後に人民派閥が中心となって,今度は内戦が勃発。ちょっとちょっとちょっと。内側で揉めてる場合じゃないだろ,ローマがすぐそこまで迫ってる状況で。

画像集#004のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
ピクティイ名物,鬱になる元首。とてもじゃないけど独裁制になどなれそうにありません
画像集#005のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
そんな鬱の元首を嫌ってか,人民派閥が内戦を仕掛けてきた! ここは安倍政権ですか

見えにくいけど,国土の半分が水色の反乱軍に制圧されたでござるの巻。これが……内戦なのね!
画像集#006のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)

画像集#007のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
その反乱を起こした張本人。何でこんなアクの強い無能な奴に……。っていうか,国庫($3871)よりはるかに多い彼の個人財産($11005)に注目。いくら汚職特性持ちだからって,お・ま・え
画像集#008のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
さすがに腹が立ってやる気倍増,光の速さで反乱鎮圧。お前ら全員,漏れなく皆殺しだから,うん。しかし,財産は没収されないんだよねえ,システム上。残念だ。差し押さえちゃえよ。マジで

内戦も終わり,新たなる舞台へ進化を遂げる前夜のピクティイ全貌。二百年前の,カレドニアからここまで成長するとは感慨深い
画像集#010のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)


関係ないけどこのゲーム,たまにシングルマザーが出現する。女手一つで子供を育てる姿に感動だが,人民派左翼に所属してる時点で興味激減
画像集#009のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
 圧倒的な作戦能力で内戦を早期鎮圧に成功したものの,ただでさえ人材の乏しいピクティイで,ますます内部の枯渇が著しくなってきた。新しく就任した元首は,今度は民衆に煽られて,プーチン前大統領(現首相)みたいな発言をしたかと思うと速攻でアホ特性を沢山つけられる始末。これはどういうことなんだ。
 そして,ローマはついにデンマークにまでその所領を拡大することに成功。さすがは文化的過ぎるローマ,あっという間に領土拡張に漕ぎ着けているようで,こちらとしては完全に行き止まりになってしまいました。あー,もう殖民する空白地がない。これ以上,ピクティイは新天地に殖民をする余地がなくなってしまった。つまり,もはや国力という点ではピクティイに勝ち目はなくなったのだ。新規の領土が拡張できないのだから,これ以上の拡張を志すには,文字通りローマから領土を奪うことしか方法がなくなる。しかし,現実問題として,ローマとピクティイの国力の差は覆し得ないほどの隔たりがあったのである。

 もはや,ローマと覇を競うこと,そのものが夢と潰えた。いかに戦争を回避し,ローマに口実を与えず,かつ国家の尊厳を守り,国民の生活を安寧たらしめるか。これからは,国家の安寧を第一に考えなければならない状況になったのである。
 こうなってしまっては仕方がない,とにかく外交は最大限,ローマから戦争を吹っかけられる最悪の事態を回避するために努力し,国防も攻め込むのに適した補給を想定する小分けにした軍隊ではなく,大規模な兵団を国内前線に重点配置する防衛策を採らざるを得ない。
 必然的に司令官のいない陸軍の再編も進め,国境地帯に有力な司令官を二名抜擢し,前線の防衛にあたらせることにした。一人は「統合失調症の虎」,第4軍司令官のディウィキアクス・エリトウィスさん。もう一人は「統合失調症の龍」,第1軍司令官のアディアトゥアヌス・コレイスさん。ピクティイを守る竜虎,輝ける蛮族の双璧として,対ローマ最前線で国家の命運を握ることとなった両者は,同じ特性持ちだったりする。どうして我が国には不思議な特性が多いのだろう。

元首のデュカリウス・デゥラティスさんのプーチン化イベントが発生。別に軍事が上がるわけじゃなく,マイナスの特質がたくさん付くだけのイベント
画像集#013のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)

画像集#014のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
「統合失調症の虎」,ディウィキアクス・エリトウィスさん近影。司令官なのにカリスマ0,人望0が輝く。脳筋司令官の星として頑張って欲しい
画像集#015のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
こちらは「統合失調症の龍」,熟練のアディアトゥアヌス・コレイスさん。各種要職を歴任し,高齢ながら前線指揮官に就任。最前線に立つご意見番的存在である

画像集#016のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
そしてピクティイ恒例の,元首,妻を友人に寝取られたでござるの巻。さっき,あんたプーチン化して「私を怒らせないほうがよい」とか言ってたじゃん
画像集#017のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
そこへ,ローマで内戦が! それゆけ,未開の戦闘部族戦隊! ローマの領土を獲得するのだ!

 ちなみに我が国の大将軍は嘘つきであり,総督は愚鈍である。全体的に,あまりお付き合いしたくない微妙な国に仕上がったと我ながら思う。元首は鬱になったりプーチン化しているし,しまいには妻を寝取られたりしている。どうなっているんだろう,この国。
 だが,どのような特性を持っていようと,人材は人材であり,能力が高ければそれはすべてに優先する。それがピクティイの掟でありケルト文化の生きる道なのである。というか,それは私が勝手にそう思ってるだけだけど。人が少ない分,全員野球というか全員投入,ああ,人材難。
 そうこうしているうちに,ローマで内戦が発生。これだ,いまこそ領土を刈り取るぞ! 成長こそいまのピクティイに必要なことなんだ! とばかりにローマ反乱軍に宣戦布告。言いがかりすらつけずに戦争吹っかけてるけど気にしない。あまり強そうに思えない龍虎に率いられた部隊が獅子奮迅の活躍を繰り広げ,一時はローマ反乱軍の秘密兵器,軍事10の部隊に苦戦をするも,必殺の士気の回復日に着弾を調整した微妙司令官たちによるローテーション投入の波状攻撃でこれを撃退。ついに領土を2プロヴィンス広げることに成功した!

 ……と,勝利の美酒に酔ったのもつかの間,今度は信頼と実績の司令官1号である第4軍司令官ディウィキアクス・エリトウィスさんが,なんと謀反。ピクティイ史の世に言う「統合失調症の乱」の始まりである。いやあ,何ていうか,こんなところで戦っている場合じゃないんだけどなあ。ただでさえ人材が薄いのに,また反乱に加担したお調子者どもを処刑しなければならないのか。
 しかし,ここで混乱している間にローマに宣戦布告とかされてはひとたまりもない。早期鎮圧を目指して作戦を開始するんだ! いくら著名な司令官とはいえ,カリスマも人望もない反乱者についていくアホは少なく,ものの半年であっという間に鎮圧。国家の最前線を支えた歴戦の猛将も,その野望と共に断頭台の露と消えましたとさ。

画像集#018のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
さっき人民派閥が内戦起こして粛清されたので,今度は宣戦布告できる。大義名分などない! 突き進め!
画像集#019のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
微妙な司令官達が大活躍。敵に壊滅的な打撃を与えて戦勝。やればできるじゃん俺達!

画像集#020のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
ローマ反乱軍の秘密兵器,軍事10の鬼神に率いられたローマ軍に手こずるピクティイのアレな精鋭部隊。自軍兵士が溶ける,溶けるように戦死していく……
画像集#021のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
誰か,誰か対抗できる人材はいないのか! と思ったら,「統治者と結婚したい」軍事9の女が……リアル鬼嫁かよ

画像集#012のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
人材がスカスカになり,またしても司令官のいない軍隊になってしまうピクティイ陸軍。大丈夫なのか
画像集#022のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
カリスマ0人望0の「統合失調症の虎」ディウィキアクス・エリトウィスさんが叛乱。支持者がいるということ自体に驚き


ついに独裁制ピクティイへ移行! そして時代は神話から人史へ……


 内戦の終結に英雄的貢献をもたらしたカッシベラウヌス・コレイスさんが次代元首へと就任したので,おもむろに能力を確認したら,いつの間にか「策士」の特質を獲得しているじゃないですか,奥さん。おお,何という僥倖。これなら独裁制へ移行する最大のハードルがクリアできる! 人望もあるし,あとは圧制度さえ高ければいいってことだ。よし,暴虐な政治を実施して,独裁制へ移行するぞ!

画像集#023のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
踏んだり蹴ったりの前代元首が死に,ピクティイに新たな時代をもたらす元首がついに登場。その名もカッシベラウヌス・コレイスさん
画像集#024のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
知らん間に「策士」の特質を持っていた。これなら独裁制へ移行できるぜベイベー。それにしても「控えめ」で「尊大」で「傲慢」って

 圧制度を上げるには,酷いことをすれば良い。ただし,人材の乏しい我が国において,うっかり有力な人物を投獄したり殺害したりすると,彼らと親交を持つ友人の忠誠度が下がったりして何かと具合が悪い。あくまでも,政治的な影響力のない女性か無能ゆえに国政に影響がなく,身寄りも乏しく,友人もいない,子供を生む可能性のない高齢者にするべきだ。
 ということで,ただ国家のために殺すことを目的にした人選が始まった。慎重に宮廷の人柱リストを精査した結果,先の統合失調症の乱で拘束された女性や,身寄りのいなくなった罪のない老婆が縛り首にされるにいたり,ついに圧制度は10をクリア。国家のためにその命を捧げてくれ。そして祈ってくれ,独裁ピクティイがローマからの脅威に立ち向かい,国家国民を長きにわたり安寧たらしめるその姿を。
 貴重な犠牲を何となく払い,満を持して,ピクティイは腐りきった共和制から脱却する。くだらないしきたりや,つまらないしがらみに囚われ過ぎた旧弊はいま去ろうとしている。そう,いまやピクティイは独裁政治へと移行する資格を手に入れたのだ!

画像集#025のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
圧制度アップ作戦の犠牲となるのは,さきの乱で叛乱側につき収監されていたアンカスタ・シナティスさん。彼女を処刑して+4。国家のページを開けるためには,やむを得ない犠牲だ
画像集#026のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
次に犠牲となるのは,何の罪もないリタウィス・シナティスさん。伴侶も鬼籍に入り,娘二人も亡くなって身寄りのない老婆が,国家のために働けるのはその命を捧げることだけだ。投獄されて圧制度+2,処刑で+4
画像集#027のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
独裁制へのボタンを押す。長かった……。これでクソのような共和制ともサヨナラ。これで,僕らの未来が拓けるんだ。きっと,拓けるんだ
画像集#028のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
「全体の利益のために誰かが犠牲に」などと意味深なことがウィンドウに記された報告画面。ここまで来るのに250年……長ぇ

 そして,ピクティイは独裁制への扉を開けた。
 元老院時代は,通商路開くだけでも相手国との親和度なぞが響いて満足に交易もできなかったのが,いまではボタン一発で貿易開始。素晴らしい。戦争も自由自在。素晴らしい。何より良いのは軍隊司令官を自在に就任させられること。何て素晴らしいんだ独裁制。ああ,こんなことなら最初から独裁制で来れば良かった。無理だけど。でも,何より人材の抜擢で優秀な若手を無理なジョブローテーションなしに就任させられる自由度の高さは,ただでさえ劣勢のピクティイにとって善戦のよすがになるのは疑いない。
 交易路が自在に開け,国家が経済的に好転すると,多少忠誠度が下がっても国庫から余財をばら撒いて安全を「買う」ことができるようになってくる。ピクティイの問題は人材難であり,これが起動的な任免で緩和されるようになると,俄然,採用可能な選択肢が増えてくる。もしかしたら,ローマを向こうに回してピクティイの大立ち回りができるのかも。

新しい評議会画面。人選が大変であることには変わりない。宰相とか当面充てられる奴がいないので空席。いいのか,そんなんで,という気もするけど,人がいないんだからしょうがないだろ馬鹿
画像集#029のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)

画像集#030のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
国策スロットは1つ増えて4つ。現在国策5つのローマに少しでも追いついておきたい
画像集#031のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
宣戦布告も自由自在。ああ……権力者って何て甘美な存在なんだ……。


ローマと大激突!……どころか,ピクティイもローマも国内大変でそれどころじゃなく


 そんな甘美なロマンに水を差したのは,庇護される者達であるはずのピクティイ民衆であった。つーか独裁制だとそれであるだけで圧制度が高くて,せっかく広げたピクティイ全土で農民の叛乱が起きまくりです。ああ,何というパルチザン祭り。っていうか,難度が高いせいもあって反乱発生確率がリアルタイムで次々と判定されるため,毎週のようにどこかで反乱が起きて数千人単位の農民がわーわー言うという事態が発生しております。
 仕方なく,反乱鎮圧用に騎兵だけで編成した巡回部隊を作ってぷちぷちと反乱を潰して回る日々が発生し,とてもじゃないけどローマと戦争とか言ってる場合じゃありません。とにかく圧制度を下げないと。とはいえ,圧制度なんてそう簡単には下がらず,元首が変われば半分になるけど肝心の元首はさっき就任したばかりで働き盛りの48歳という状況。
 いやいやいやいや,私はピクティイを守るために独裁制に移行したんだよ。それはお前らの生活を守るためだ。技術を発展させ,良い生活を送るためだ。交易を進めて豊かな社会を作るためだ。そのために独裁制にしたのに,なぜ分かってくれないのかなお前ら。なあ,ちょっと。反乱すんな。

 反乱が起きるたびに,元首の人望が下がる。人望が下がると,宮廷内の人々の国家への忠誠度が下がる。まるで転がり落ちるようにピクティイ内部に亀裂が走り,それを収拾してもすぐ次の問題が発生し……の繰り返し。とてもじゃないけどローマ打倒とか考える余地がない。
 あまりにも元首に人望がないので,ついに宮廷から反乱軍が出やがった。内戦勃発だ。誰だよ,反乱したの。その名も,コムミオス・カルビスさん。軍事6の「地味」で「控えめ」で「雄弁」で「凶暴」で「がさつ」な「統合失調症」の司令官の方です。何だお前。
 つーか,この状況でローマから宣戦布告でもされたらマジにピクティイ滅ぶぞ。マジでヤバいぞ。内部で主導権争いしている場合じゃない。いや,主導権は私がずっと握りたいけど。

画像集#032のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
とか言って,大反乱祭りがピクティイを襲う。お前らのために独裁制にしたんだ! お前らのためだぞ! なぜ分かってくれないんだ!
画像集#033のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
かつては100あった人望も,いまや0。完全に地に堕ちた独裁者。スターリンぽくて素敵です

画像集#034のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
内乱発生から3年後,内戦が終結するや,まるで役割は果たしたとばかりに息を引き取るカッシベラウヌス・コレイスさん。その波乱に満ちすぎた人生に乾杯
画像集#035のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
まるで追悼するかのようにローマでも内戦発生。独裁制へと移行はしたものの,これに介入するだけの余力はピクティイには残されていませんでした

 3年の年月をかけて,ようやく内戦を終わらせたピクティイだが,そのピクティイに独裁制をもたらしたカッシベラウヌス・コレイスさんが……突如ぽっくりと永眠してしまった。
 一方ローマはローマで,何度も内戦を繰り返し,大混乱に陥っていた。ローマと対抗するべくカレドニアの僻地から立ち上がったピクティイは,ローマとガチに対戦することなくローマと共に大企業病を発病させ疲弊しきっていたのである。フランスの大地で対峙する両国は,パンチも繰り出せぬヨレヨレの状態で力なくたたずみ,続発する内戦と反乱で胃を痛めながら,ただ立ち尽くすのみである。

 そして,このゲームにも終わりがやってくる。そこには熱気と活気に溢れた大国の睨み合いという熱量の高い緊張ではなく,領土と組織をギリギリのところで維持しながら,内戦や反乱の恐怖に怯える肥満体質のローマとピクティイが,ふうふう言いながら何とか国家を運営しているという状況であった。
 しかし,文明化したピクト族はその後も北海文明の覇者としてローマと対峙し続けることだろう。もはや,この世界ではケルト文化はカレドニアから出で,古代ヨーロッパを代表する文明として誇るべき版図を持って,賞賛にたえうる繁栄を謳歌していた。いまでは失われた歴史の中に埋没しているピクト族の姿も,ゲームを通してその雄姿をはっきりと捉えられる存在にまで成長することができたのだ……。

ゲーム完走。お疲れ様でした。イギリス,アイルランドにベネルクスと北ドイツという領土のピクティイ
画像集#036のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)

 本作の良さは,ゲームバランスとしてのマゾさ(今回は途中で難度がやたら高いことが分かったのだが)がそれなりに合理的で,ひとつひとつ理由がついており,現実社会の人間関係や組織のありようと見比べても遜色ないほどリアルな点にある。
 残念ながら,初期の国力の大小でその後の発展度合いは決まってしまう自由度の微妙さは,ゲームとして見ればやや問題かもしれないが,本作は,そういった様々な事象も脳内補完しつつ,古代の人々の営みを想像しながらゆっくりと楽しむ作品だと言えよう。そこには,パラドゲー系統の他作品にはない,悠久の歴史を感じながら自己投影していく楽しさが凝縮されている。

 おそらくは,このゲームに触れた10人に7人から8人は「つまらない」と感じるかもしれない。バグも多い。残念な仕様も少なくないが,それ以上に多くのロマンが含まれている作品であると私は思う。思い通りにならない現実以上に,思い通りにならない国家の姿がここにある。いわゆる派手な名作ゲームに飽きたら,いつでもこのゲームを手にとって見るといいだろう。本作は,古代の人々の息づかいを聞かせてくれるはずだ。

画像集#037のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
バルカン方面。ローマがあまり侵食せず,いまだマケドニアとダキアが頑張っています
画像集#038のサムネイル/【切込隊長】打倒ローマを目指すケルト文化の挑戦(後編)
ジブラルタル方面。エジプトに押された緑のカルタゴが少し繁栄


■■切込隊長■■
言わずと知れたアルファブロガーで,その鋭い観察眼と論理的な文章力には定評がある。が,身も蓋もない業界話にはもっと定評がある。ゲーマーとしても知られており,時間が無いと言いつつも,膨大に時間を浪費するシミュレーションゲームを愛して止まない。全3回に及んだ今回のリプレイ記事だが,連載中には,なんと本場(?)イギリスの「ピクティイ研究家」から,丁寧な表敬のメールが隊長宛に送られてきたのだとか。いやー,いつのまにか国際的な連載になっていたようで,我々もびっくりですよ

 
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