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本日公開の映画「サイレントヒル:リベレーション3D」で音楽を担当した山岡 晃氏に,「で,『サイレントヒル』って何?」と聞いてみた
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印刷2013/07/12 00:00

インタビュー

本日公開の映画「サイレントヒル:リベレーション3D」で音楽を担当した山岡 晃氏に,「で,『サイレントヒル』って何?」と聞いてみた

「サイレントヒル:リベレーション3D」
7月12日(金)TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー
画像集#005のサムネイル/本日公開の映画「サイレントヒル:リベレーション3D」で音楽を担当した山岡 晃氏に,「で,『サイレントヒル』って何?」と聞いてみた
 白く霧と灰に満ちた幻想的な不気味な世界観が特徴的なホラー作品として,ゲームファンに長く愛されている「サイレントヒル」シリーズ。その実写映画化第2弾となる「サイレントヒル:リベレーション3D」が夏休みの注目作品として,本日(2013年7月12日)より全国公開される(TOHOシネマズ 六本木ヒルズほかにて全国ロードショー)。

 今回は,「サイレントヒル」シリーズで音楽,そしてゲームプロデュースを務め,映画でも音楽を担当するキーパーソン・山岡 晃氏へのインタビューを行った。
 サイレントヒルの楽曲がどのように作られてきたのかはもちろん,映画とゲームの違い,そしてサイレントヒルとは何であるのかを,短い時間ではあったが話してもらえたのでお届けしたい。
 氏独特の言い回しもあえて残しているので,そこに込められたメッセージも感じ取ってもらえれば幸いだ。

映画「サイレントヒル:リベレーション3D」公式サイト



音楽,そして製作に深く関わった映画版


4Gamer:
 よろしくお願いします。
 山岡さんは「サイレントヒル:リベレーション3D」の音楽を担当するにあたって,映画のスタッフとはどんなやりとりをしてきたんですか?

山岡 晃氏(やまおかあきら)
東京芸術大学で製品・インテリアデザインを学んだ後,作曲家としての活動を開始。コナミ入社後に,サイレントヒルの音楽や,作品全体のプロデュースに携わる。自身いわく「ちゃんと音楽の勉強をしたことがない」とのことだが,特定のジャンルに収まらないバラエティ豊かな楽曲を生み出している。最近では世界各地を飛び回りながら多くのクリエイターとの協業を果たしている
画像集#001のサムネイル/本日公開の映画「サイレントヒル:リベレーション3D」で音楽を担当した山岡 晃氏に,「で,『サイレントヒル』って何?」と聞いてみた
山岡 晃氏(以下,山岡氏):
 監督のマイケル(・J・バセット)とは割と密にやりとりをしてきましたね。もともと製作を担当したデイビス・フィルムのトップであるサミュエル(・ハディダ)とは,前作からすごく仲良くしてもらっていて。
 その二人から,「今回はこんな方向性にしようと思うんだけど」「ここのカットはこういう風にしたいんだけど」といった相談を受けていました。もちろん,音的な部分も含めて。

4Gamer:
 欧米では2012年に公開された作品ですが,山岡さんの作業はいつ頃から始まったんですか?

山岡氏:
 一昨年の2011年……いや,もっと前からやっていましたね。

4Gamer:
 音楽だけではなく,映画のアイデア出しにも参加していたんでしょうか。

山岡氏:
 そうですね。「このシーン,ちょっとグロすぎない?」とか(笑)。そういうサジェスチョン的なものも含めて,ロサンゼルスにあるデイビス・フィルムのオフィスへと出向き,打ち合わせを重ねていました。
 でも,僕から関わらせてくれとお願いしたわけじゃなく,サミュエルが僕にすごく良くしてくれるので,必然的にコミュニケーションが密になった感じですね(笑)。
 それに,前作の監督クリストフ(・ガンズ)はかなりのゲーマーだったんですけど,マイケルもそうなんですよ。なので,ゲーマーならではの温度感っていうのはすごくありました。
 こちらも参加させてもらうことで,映画監督としてのモノの作り方なんかを見ることができて,勉強になりましたね。

4Gamer:
 勉強?

山岡氏:
 例えば,主人公のヘザーが,大勢のバブルヘッドナースがいる部屋に入り込むシーンがあるんですけど,マイケルは「ここでこういう音を入れたい」「こういう風に盛り上げたい」「こういう感覚を(お客に)抱かせたい」といったディテールを,僕に説明してくれるんですよ。

4Gamer:
 ということは,撮影前の段階でも,完成した映像のイメージが監督の頭の中にはあるということですね。

山岡氏:
 そう。で,その話を聞いて,音としてどう表現していくかというのを詰めていったんですね。
 ゲーム制作ではあまりない進め方なので,非常に興味深かったです。「映画というのはこうやって作っていくものなんだ!」と。だから僕自身も,すごく映画が作りたくなりましたよ(笑)。

4Gamer:
 おお。山岡さんはどんな映画を撮ってみたいんですか?

山岡氏:
 僕ね,日本の昔話がやりたいんですよ。あれって,昔からの言い伝えだったりして,すごく日本的な感覚が凝縮されてると思うんです。
 それをね,人間模様はそのままに,舞台を現代だったり外国だったりに置き換えてやってみることで,グローバルに日本的な感覚っていうのを伝えることができるんじゃないかという。

4Gamer:
 イソップやグリムもそうですけど,寓話っていうのは,お国柄がすごく出ますよね。

山岡氏:
 “怖さ”というのもそうなんですけど,日本人と外国人の感じ方ってやっぱり大きく異なりますからね。ゲームのデバッグをしていたときも,日本人なら「めちゃめちゃ怖えぇ!」となるシーンを,外国人にプレイさせると大笑いするんですよね。彼らも決して怖がっていないわけではないんだけど,理解を超えた部分が笑いという表現になってしまう。その国の文化によって受け取り方は違うもので……それが良いとか悪いじゃなくて,感覚的に捉え方が違うんですよ。
 そういったことを浮き彫りにできるような題材って日本にはたくさんあると思っていて,彼らにも飲み込めるようなオブラートに包んで,「飲んでよ」って届けられたらいいなあ,なんて。


ゲームと映画における音楽制作の違い


4Gamer:
 サイレントヒルの話題に戻りますが,ゲームと映画における音楽の役割の違いって感じましたか?

山岡氏:
 ゲームってインタラクティブなメディアだから,プレイヤーによって攻略パターンも進み方も違うんですよね。一瞬でクリアできる人もいれば,数時間同じマップの中で迷う人もいる。映画は,(上映時間が)2時間だったら,その間ってみんなおおよそ同じ感覚を得るわけですよ。同じ時間を共有するというか。
 なので,映画なら同じ感覚の人達に向けて音楽を“当てる”んだけど,ゲームではバラバラですから。そういう意味ではゲームの音楽のほうが,色んなことを想定する必要があります。同じマップでも複数の曲を用意したりね。

4Gamer:
 映画だと“尺”という手がかりがありますし。

山岡氏:
 そうですそうです。前作の映画でもそうでしたけど,それはすごく感じましたね。映画のほうが楽というわけではないんですけど,作りこみ方が違うな,というのは。今回もあらためて思ったんですけど。

4Gamer:
 楽曲そのものの発想方法も変わってきたりもするんでしょうか?

山岡氏:
 映画は,0歳から100歳までって言ったら大げさかもしれないですけど,すごく“マス”。サイレントヒルなら,ある程度のホラーファンが見るだろうという想定ができます。
 けど,ゲームの場合は,コントローラーの方向キーやアナログスティックを押せばキャラクターが進むみたいなことを理解している人達に向けたものです。
 マス向けなのか,ある程度のコア向けなのかみたいな,そんな違いはありますかね。

4Gamer:
 では映画の音楽制作でも,マス向けを意識したということですか?

山岡氏:
 そこはめちゃめちゃ意識しましたね。なんていうか……あんまり難解な,難しい音楽っていったらアレですけど,「この感覚って捉えにくいかな」と迷うような部分は,なるべく使わないようにしました。

4Gamer:
 分かる人だけが分かる的なところはなるべく落としていったと。

山岡氏:
 落としていきましたね。サイレントヒルでよく使っている,ハンマー音などのインダストリアル的なニュアンスは残しているんですが,分かりやすさを表現するのにはすごく気を使いました。

4Gamer:
 では効果音など,ゲーム版と共通の部分も?

山岡氏:
 ナタの音とか,後ろで「ブォォーン」って鳴っているドローンズと呼ばれる効果音なんかは,こちらからデータを送って,効果音的に使ってもらっています。
 効果音がサイレントヒルの印象を作っている部分も大きいので,とにかくいろんなデータや,そのバリエーションを,監督のマイケルには渡しています。

4Gamer:
 データレベルで,共通化されているとは思ってもみませんでした。

山岡氏:
 だから必然的にやり取りも増えるんですよ(笑)。
 さっき話したナースのシーンでは,お互いにコミュニケーションを取りながら「こうしようああしよう」と,かなりこだわりました。エンディング曲の「サイレントスクリーム」も,締め切りギリギリまで時間をかけて作りましたし。

画像集#002のサムネイル/本日公開の映画「サイレントヒル:リベレーション3D」で音楽を担当した山岡 晃氏に,「で,『サイレントヒル』って何?」と聞いてみた


サイレントヒルの根幹にあるのは“愛情”


4Gamer:
 ゲームのサイレントヒルに関しては音楽からプロデュースまでやられて,映画の音楽も担当された山岡さんなので,あえて大きな質問をしますが,山岡さんなら「どんな条件を満たせばサイレントヒルなのか?」という問いに,どういう風に答えますか?

画像集#003のサムネイル/本日公開の映画「サイレントヒル:リベレーション3D」で音楽を担当した山岡 晃氏に,「で,『サイレントヒル』って何?」と聞いてみた
山岡氏:
 それは本当に大きな問題ですよね。
 僕もいまだに分からない(笑)。

4Gamer:
 例えばほかのシリーズものだったら,「主人公の●●が出てくるから○○だ」みたいな言い方もできると思うんです。
 でもサイレントヒルって,ホラーであるとこと,白く霧と灰に満ちた幻想的な雰囲気,閉ざされた街「サイレントヒル」といった共通項はありますが,タイトルごとに主人公が異なってますし。

山岡氏:
 何だろうな……(しばし考慮して)。制作中に一番言っていたのは,“愛情”でした。今回の映画であれば,主人公のヘザーとお父さんの親子愛,前作の映画であれば奥さんもいての家族愛で,ゲームの2であれば夫婦愛だったり。そこを絶対軸としてブレさせない作り方をしていましたね。
 ゲームはホラーをうたっているし,(そう見られて)当たり前なんですけど,その根底の愛情劇があるから,サイレントヒルになっているんじゃないですかね。

4Gamer:
 ホラーというのは包み紙であって,中身は愛であると。

山岡氏:
 そう思いますけどね。それがなかったら,単に不思議な世界にいっちゃうホラー映画みたいになっちゃうと思うんですけど(笑)。

4Gamer:
 そんな質問をした直後になんですが(笑),映画では三角頭(レッドピラミッドシング)が非常に格好良かったですね。

山岡氏:
 見てくれたみんなに言われますね(笑)。
 マイケルとも話したんですが,三角頭の扱いってすごく難しいんですよ,あれってゲームだと完璧に悪の象徴ですけど,この映画ではちょっと立ち位置が違っていて。映画として分かりやすく描きたいとマイケルは言っていたので,そういう意味ではありなのかな,と。

4Gamer:
 主人公のヘザーが三角頭(レッド・ピラミッド・シング)と初遭遇する遊園地跡の通路のシーンは,サイレントヒル2を彷彿とさせますね。ほかにもシリーズのクリーチャーがかなり登場していて。

山岡氏:
 ある種,オールスターキャストですね。3,4を除いたホームカミングまでのキャラクターが全部出てきますから。

4Gamer:
 では最後に,これから映画をご覧になるサイレントヒルファンに向けて見どころやメッセージをお願いします。

山岡氏:
 ファンの方ならたぶん前作も観てくださっていると思うんですけど,前作での未解決部分や,答え合わせができるような映画になっています。
 登場人物やクリーチャー,背景描写であったりは,ゲームを知っているほど楽しく,あるいは懐かしく思えるところがたくさんあります。ゲームファンにとってはたまらない映画だと思うので,ぜひそれを観て,楽しんでほしいと思います。
 3D映像ならではの,“飛び出す三角頭”にも,ぜひ注目してください。

4Gamer:
 ありがとうございました。

画像集#004のサムネイル/本日公開の映画「サイレントヒル:リベレーション3D」で音楽を担当した山岡 晃氏に,「で,『サイレントヒル』って何?」と聞いてみた

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