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「ALIEN: ISOLATION」の魅力を映画ファンの目線で探る。原作をリスペクトしながら創造されたエピソードは“シリーズの新たな歴史”だ
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印刷2015/06/13 00:00

プレイレポート

「ALIEN: ISOLATION」の魅力を映画ファンの目線で探る。原作をリスペクトしながら創造されたエピソードは“シリーズの新たな歴史”だ

 セガゲームスから2015年6月11日に「ALIEN: ISOLATION -エイリアン アイソレーション-」PlayStation 4/Xbox One。以下「エイリアン アイソレーション」)が発売された。SF映画史に燦然と輝く「エイリアン」シリーズ第1作の15年後を描いた本作は,未知の凶暴な生物の恐ろしさが存分に味わえる一人称視点のアクションアドベンチャーゲームだ。

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 基本的なシステムやストーリーなどに関しては6月6日に掲載した紹介ムービーをご覧いただきたいところだが,本稿では映画ファンの目線で作品の魅力をお伝えしようと思う。

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・極限の緊張感が心臓を締め付ける「ALIEN: ISOLATION」をプレイムービーで紹介。恐怖と絶望が支配する宇宙ステーションで生き残れるか

※PC/PlayStation 3/Xbox 360版は日本未発売

「ALIEN: ISOLATION -エイリアン アイソレーション-」公式サイト



舞台は映画「エイリアン」の15年後

主人公はアマンダ・リプリー


 まずは,原作となった劇場用映画について簡単に説明しておこう。1979年に公開された「エイリアン」は,まだデビューから間もないリドリー・スコット監督がメガホンを取ったSF映画だ。
 地球へと帰還の途につく宇宙船のクルー達が,謎の電波を発する小惑星の調査を命じられる場面から物語が始まる。クルーの1人が謎の生物に寄生されてしまい,そこから生まれた凶悪なエイリアン(劇中での呼称なし)に襲われるクルー達の葛藤を描いている。

 宇宙貨物船ノストロモ号という閉鎖された空間の中で,神出鬼没のエイリアンと戦わざるを得ないというシチュエーションは,後のSF作品に大きな影響を与えた。ゲームでも「サイレントデバッガーズ」(データイーストから1991年発売)や「エネミー・ゼロ」(ワープから1996年発売)など,同様のテーマを扱った作品が多く登場している。

 公開当時,筆者は小学生だったのだが,映画館でもらったチラシに載っていた“卵のようなオブジェクトから黄色い光が漏れるビジュアル”がとても恐ろしかったことを覚えている。エイリアンの姿がどこにもなかったことが,逆に恐怖心を増幅させたのだろう(……と同時に,下着姿の主人公エレン・リプリーにドキドキしたことも思い出した)。

「エイリアン アイソレーション」は映画のラストシーン(エレン・リプリーがコールドスリープに入る場面)の語りからスタートする
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 冒頭で触れているとおり,「エイリアン アイソレーション」は映画「エイリアン」の15年後が舞台になっている。いわゆる世界設定だけを引き継いだスピンオフ的な作品ではなく,映画シリーズの流れを忠実に汲んだ“続編”のような位置付けである。

 15年前,忽然と消息を絶ったノストロモ号のフライトレコーダーが発見されたとの知らせが入り,それを回収するためにウェイランド・ユタニ社(映画シリーズに登場する巨大企業)の社員らが宇宙ステーション セヴァストポリへと赴く場面で物語の幕が上がる。

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 そのクルーの1人として登場するのが,主人公のアマンダ・リプリーだ。彼女は映画シリーズ4作品に登場しているエレン・リプリーの娘であり,「エイリアン2 完全版」ではその名前と老後の写真のみが確認できる。
 第1作の57年後を描いた「エイリアン2」の時点では,すでに老衰でこの世を去っているという設定なので,作品に登場するキャラクターとして描かれるのは「エイリアン アイソレーション」が初めてだろう。

 アマンダ(ゲーム内ではラストネームのリプリーと呼ばれているが,母親のことがあるので本稿ではファーストネームで呼称)はウェイランド・ユタニ社のエンジニアとして,ノストロモ号と共に消息不明となった母(エレン)の行方を追うため,セヴァストポリへと向かうのである。

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主人公のアマンダ・リプリー。母親とはあまり似ていないようだが,少しだけ面影があるような気もする


アマンダの敵はエイリアンだけではない


 セヴァストポリは宇宙ステーションなので,ノストロモ号のように狭くはない。しかし,そこに辿り着くまでの移動手段となるトレンス号の内部では,映画に極めて近い空気感を感じることができるだろう。

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 トレンス号やセヴァストポリの内装などは,映画の設定や公開当時(1979年頃)のSF考証に合わせてあるため,現代のSF作品とは印象が大きく異なるレトロフューチャーな雰囲気に溢れている。船内のドアを開ける場面やセーブするときなどの細かな演出でも,映画で見たことがある意匠が登場するので思わずグッとくるファンは多いはずだ。

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宇宙ステーションに向かうべく,アマンダ達は“あの宇宙服”を早々に着用する

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映画に登場したギミックが多数あり,効果音一つとっても再現度は高い

 アマンダ達が到着したセヴァストポリは,宇宙船のドッキングベイが破壊されており,宇宙ステーションとしては機能していない。その内部に取り残された人々の秩序は乱れてしまい,生き残るために同じ人間でも見境なく攻撃してくるという極限状態に陥っている。
 つまり,アマンダの最初の敵はエイリアンではなく,この人間達だというのは皮肉な話だ。

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ゲームは一人称視点で進んでいくため,アマンダの孤独感や恐怖感がひしひしと伝わる

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セヴァストポリの内部には,多くの人間が取り残されている。その中にはアマンダに協力的な人物も存在する

 また,「ワーキング・ジョー」と呼ばれるアンドロイドも敵として登場する。「エイリアン」シリーズにおけるアンドロイドといえば,第1作に登場した「アッシュ」の暴走がトラウマ的な記憶として残っている人は多いのではないだろうか。筆者もまさにその1人で,無表情のまま雑誌を丸めてエレンを窒息死させようとするシーンは,本編であまり姿を見せないエイリアンよりも恐怖を覚えたものだ。

 「エイリアン アイソレーション」に登場するワーキング・ジョーは,映画のような人間と見分けがつかないルックスのアンドロイドではなく,無表情な人形然とした姿をしている。もともと宇宙ステーションの住人をサポートするために造られた彼らだが,ほとんどの個体が暴走してしまい,無差別に人間を襲うようになっている。銃器を使ってくることはないが,耐久力が高く,怯むことなく襲ってくる強敵だ。

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人間に危害を加えないようにプログラムされているはずのワーキング・ジョー。暴走状態になっているため,視界に入ったアマンダに襲いかかる

 「エイリアン アイソレーション」は一人称視点で進行するゲームではあるが,いわゆるシューターの類ではない。積極的に攻撃できるほどの武器は入手できないため,敵に遭遇したときは身を隠して行動することが基本だ。アマンダはエンジニアなので,入手した部品を使って閃光弾やスモーク爆弾,回復キットなどを作り出して,危機的状況を切り抜けていくことになる。

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アイテムには敵の気を逸らすための発煙筒,一時的に怯ませるスタンバトンなどがある。すべて消耗品なので,使いどころを間違えないように

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ステーション内に落ちている部品を拾っておけば,それを組み合わせてアイテムを作り出せる

 そこで,最も重要な存在となるのが動体探知機(モーショントラッカー)だ。ちなみに映画「エイリアン」はもちろん,その57年後となる「エイリアン2」に登場したものより,かなり小型化されている。
 これは周囲にある動くモノがディスプレイに映るようになっていて,天井や床下を隠れて移動するエイリアンの居場所であっても知ることができる。ただし,ひっそりと動かずに身を潜めている相手には反応しないため,絶対的な信頼性はないものの,アマンダの心強い味方となってくれるのだ。

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動くモノの存在を知らせてくれる動体探知機。これを構えている最中は走れず,アイテムも使えない

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小型なので狭い場所でも使用可能だが,狭いダクトの中では画面が乱れてしまう。敵が近くにいるときには,発信音によって気づかれることも


“完全な生物”エイリアンの容赦ない襲撃をどう回避する?


 もう1人(?)の主人公であるエイリアンの存在も忘れてはならないだろう。映画では,惑星「LV-426」に座礁した巨大宇宙船の中で眠っていた彼らが人間を宿主として誕生し,何度かの脱皮を繰り返して成長する生態が描かれている。
 身長2メートルを超える二足歩行の生物で,口から伸びるインナーマウスと呼ばれる第二の顎や鋭く尖った長い尻尾を駆使して,対象を捕食していくという攻撃的な性質を持つ。攻撃を受けて傷を負うと吹き出す体液は強酸性で,それによって逆に大きなダメージを与えられるため,劇中では攻守ともに優れた“完全な生物”と説明されている。

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身体の内部から食い破られたような痕が残る犠牲者。彼女がエイリアンの宿主となったのだろうか?

 映画では,エイリアンが素早く移動するシーンはなく,クルーの前に突然現れて襲いかかるという形で,その神出鬼没さを演出していた。巨大なエイリアンのスーツを着用した役者が演じていたのだから,当然と言えば当然なのだが,ゲームでは高速で移動する描写があり,映画と同じイメージを持っていると面食らうことだろう。
 エイリアンに一度でも見つかってしまったら,いくら全力で走ったとしても逃げ切れない。動体探知機で事前にヤツの居場所を把握するか,見つかる前に身を隠すなり,アイテムを使って気を逸らすなりして窮地を脱するのだ。

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満を持して姿を現すエイリアン。ゲームを始めても,なかなか登場しないところは映画と同様だ

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エイリアンに武器はまったく効かず,火炎放射器も一時的に追い払う効果しかない。身を隠してやり過ごすか,アイテムで気を逸らすかして,その場を速やかに離れよう

 ちなみにゲームに登場するエイリアンは,前衛芸術家のH・R・ギーガー氏によって生み出された「ビッグチャップ」と呼ばれる種類を踏襲しているようだ。
 エイリアンと一口に言っても作品によって細部のデザインが異なっており,ビッグチャップは半透明なドーム状の頭部の前方に人間の頭蓋骨のような意匠(実物が使われたとのこと)があるのが特徴になっている。映画の第1作に登場したということで,筆者だけでなく多くの人にとって強く印象に残っているエイリアンだろう。

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見つかったら,まず逃げられない。あとは数パターン用意されているアマンダの絶命シーンを見るだけだ


追加ミッションも原作をリスペクトした内容に


 「エイリアン アイソレーション」には,映画「エイリアン」の名シーンを再現したオリジンミッションが2本用意されている。いずれもボリューム自体は小さいものの,エレンや仲間のクルーとなって,映画同様にノストロモ号を探索できるのは感動モノだ。
 とくに「最後の生存者」は,エレンが宇宙船の起爆を止めようとするシチュエーションが省かれているとはいえ,起爆装置を作動させるプロセスや,脱出するまでのエイリアンとの攻防は,思わず手に汗握る展開になっている。映画ファンならば,興奮を抑えられないはずだ。

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「搭乗員は放棄してよし」では,エレン,パーカー,ダラスの3人からキャラクターを選択可能

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ノストロモ号の内部が忠実に再現されているので,見て回るだけでもワクワクしてしまう

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「最後の生存者」は,エレンがエイリアンもろともノストロモ号を爆破して脱出しようとするシーンを体験できる

 どう足掻いても倒すことができない完全生物のエイリアンに対して,いかにして身を隠して目的を達成するのか。「エイリアン アイソレーション」は,いわゆるステルスアクションの趣が強く,やはり映画シリーズを知っているかどうかで,その評価は多少なりとも変わると思う。

惑星LV-426を探索するシーン。巨大な宇宙人の死骸「スペースジョッキー」をあらゆる方向から眺められるシチュエーションに感激!
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 探索やステルスアクションが好きなら十分に楽しめるゲームではあるが,事前に(あるいはプレイ後に)映画「エイリアン」を見ることで,敵に追われる緊張感,細かなシチュエーションや背景の設定に至るまで,徹底的に映画をリスペクトして作られていることが分かるはずだ。
 「エイリアン アイソレーション」の登場により,「エイリアン」シリーズに新たな歴史が加わったと言っていいだろう。

「ALIEN: ISOLATION -エイリアン アイソレーション-」公式サイト

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