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面白さとは普遍的なもの。水口哲也氏とモブキャストの坂本康朗氏が語る,シリーズ最新作「LUMINES パズル&ミュージック」をスマホタイトルにする意味とは
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印刷2016/07/12 18:00

インタビュー

面白さとは普遍的なもの。水口哲也氏とモブキャストの坂本康朗氏が語る,シリーズ最新作「LUMINES パズル&ミュージック」をスマホタイトルにする意味とは

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 モブキャストは2016年7月19日,スマートフォン向けパズルゲーム「LUMINES パズル&ミュージック」iOS / Android,以下「ルミネス」)の配信を日本およびオーストラリア,ニュージーランドにて開始する(グローバル配信は9月上旬予定)。

 本作は,「ルミネス」シリーズの初代「ルミネス 音と光の電飾パズル」の遺伝子を継承し,純粋に進化させたタイトル。音楽とビジュアルがシンクロする気持ちよさをそのままに,ユーザーインタフェースやユーザーエクスペリエンスを,スマートフォン向けに最適化した作品だ。開発は,「ルミネス」シリーズを手がけてきた水口哲也氏が代表を務めるレゾネアと,モブキャストが共同で行っている。

 今回4Gamerでは,水口氏とモブキャストの坂本康朗氏に,「ルミネス」がどんなゲームに仕上がっているのか,そこにどんな思いが込められているのかなどを聞いてみた。

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「LUMINES パズル&ミュージック」公式サイト



最初のプレゼンでは名称とイメージしか決まっていなかった初代「ルミネス」


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは今回,「ルミネス」の最新作をレゾネアとモブキャストで共同リリースすることになった経緯を教えてください。

水口哲也氏(以下,水口氏):
 経緯を話す前に,かなり時代を遡ることになりますが,まずは「ルミネス」シリーズの成り立ちからお話ししましょうか。

4Gamer:
 ぜひお願いします。

水口氏:
 シリーズ1作目の「ルミネス」は,2004年12月にPSPのローンチタイトルとして,当時のバンダイ(現バンダイナムコエンターテインメント)からリリースされました。
 それ以前の僕はセガ(現セガゲームス)に在籍しており,当時は「セガラリーチャンピオンシップ」のようなレースゲームや,「Rez」「スペースチャンネル5」といった音楽系のゲームを作っていました。

4Gamer:
 それらのタイトルは今なお熱心なファンが多いですよね。

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水口氏:
 ええ,非常にありがたいことです。それから独立して何人かの仲間でキューエンタテインメントという会社を立ち上げるわけですが,そのときバンダイの鵜之澤さん(元バンダイナムコゲームス社長 鵜之澤 伸氏)にプレゼンする機会があったんです。
 当時,PSPが発表された直後で,僕は「ウォークマンのように音楽を聴きつつ,誰でも簡単に何かをいじりながら楽しめるゲーム」で,かつ「誰も体験したことがない新しいゲーム」とはどんなものだろうか,と考えていました。そこから,“効果音がどんどん音楽化することで気持ちよさを感じられるパズルゲーム”というアイデアに至り,「ジャンルはパズル,タイトルは『ルミネス』。でも,詳細はまだ決まっていません!」と,全力で鵜之澤さんに伝えました。

(一同笑)

水口氏:
 鵜之澤さんは拍子抜けした様子でしたが,鵜之澤さん自身が意外にも「Rez」を気に入ってくれていたこともあり,「支援するからいろいろ試してごらんよ」と言ってくださったんです。
 それまでにも僕らは「Rez」などで音楽の演奏感とゲームプレイの融合を試行錯誤してきましたから,「このアイデアから必ず何か新しいパズルゲームが生まれる」という直感がありました。そして,数ヶ月のプロトタイピングを経て,音楽に合わせてタイムラインが動き,落としたブロックがそのタイムラインを通過すると消える,という今のルミネスの形に固まったんです。
 そして「ルミネス」は無事PSPの日本のローンチと同時に発売され,また海外でもUbisoftにライセンスアウトしたことにより,結果として全世界で100万本以上のセールスを達成しました。そして,「ルミネス」の権利はバンダイと双方で守り,新作のプロデュース権は任せていただくことになったんです。

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4Gamer:
 だからスマホ版「ルミネス」のコピーライトにも,「(C)BANDAI」と「(C)BNEI」が記されているんですね。

水口氏:
 そうなんです。バンダイには最初に出資していただいて本当に感謝しています。
 ここまでお話ししてようやく最初の質問に戻るわけですが,僕が離れたあとのキューエンタテインメントがゲーム事業から撤退すると聞き,2014年の終わり頃,「ルミネス」の権利を買い取りたいと打診したんです。そこには今後「ルミネス」というシリーズを,モバイルを初めとしてさまざまな形で展開したいという意図がありましたね。そして,モブキャストの藪さん(モブキャスト 代表取締役 藪 考樹氏)とお話しをして,共同で買い取り,今後の展開を考えていこうということになりました。


高スペックのスマートフォンだから実現できた「ルミネス」の進化


4Gamer:
 モブキャストからスマートフォン版「ルミネス」のプロジェクトが始動したとの発表がなされたのは,2015年1月のことでした。そこから「LUMINES パズル&ミュージック」の企画開発が始まったのでしょうか。

水口氏:
 そのとおりです。また初代「ルミネス」の頃の話に戻ってしまうのですが,PSPは最初「インタラクティブ・ウォークマン」というようなイメージを打ち出していましよね。当時は僕自身も,いつでもどこでもヘッドセットで音楽を楽しむようにゲームを楽しめるハードの登場に関心を寄せていました。今だったらさまざまなモバイルデバイスで当り前のようにできることですが,PSPはまさにその先駆者だったんです。

4Gamer:
 なるほど。

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水口氏:
 そして時が経ち,世の中にスマートフォンが登場しました。とくに高スペック化した昨今のスマートフォンは,あらゆる面で初代PSPを凌駕していますから,いよいよ「ルミネス」開発当初に思い描いていたイメージよりも,もう少しレベルの高いものを実現できるときが来たのではないかと考えたわけです。音がクォンタイズ──つまりバラバラだった効果音が音楽化する,あるいは音楽に合わせてビジュアルが変化するといった部分を,より深く表現できるようになったんじゃないかと。

4Gamer:
 逆に言うと,PSPの「ルミネス」から進化するためには,今のスマートフォンくらいのスペックが必要だったわけですね。

水口氏:
 そうです。ようやく舞台が整ったという感じです。

4Gamer:
 PSPとスマホでは入力方法などに大きな差があると思いますが,「ルミネス」をスマートフォン向けに開発するにあたり,まずどんなことを考えたのでしょうか。

水口氏:
 僕としては,ブロックをタップして回転させ,落として消すというアクションが,PSPの方向キーを使った操作に劣らなければ,スマートフォンでも絶対に気持ちの良いものができるはずだと考えていました。
 また開発チームで最初に議論したのは,「縦持ちなのか,横持ちなのか」ということでしたね。そして最終的に,「スマートフォン向けなんだから縦持ちの『ルミネス』に挑戦してみよう」ということになったんです。

4Gamer:
 確かに,流行っているタイトルなどを見てみても,縦持ちのほうが支持されている印象です。ただ,その一方で,「ルミネス」のファンの中には,PSPで遊んだイメージから「やっぱり横持ちでなくちゃ」という人もいるような気がしています。

水口氏:
 そこは,スマートフォンでゲームを遊んでいる人のスタイルが決め手となりました。もちろん横持ちのゲームを遊んでいる人もいますが,日本では縦持ちで遊んでいる人が圧倒的に多いですからね。
 また「ルミネス」の「誰でも簡単に楽しめる」というコンセプトに沿って,片手で遊べるような内容を実現したいという思いもありました。そこから何度も実験を重ねて今の形になっていますから,開発チームとしては「これだ!」と,自信を持って送り出せますね。

坂本康朗氏(以下,坂本氏):
 この縦持ちか横持ちかという課題は,開発チームだけで議論しても仕方がないと,海外の人達にテストバージョンをプレイしてもらい,意見を集めました。結果としては,横持ち支持派がいる一方で,縦持ちでも十分プレイできるという意見が多かったんです。

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水口氏:
 海外だと,横持ち派が多いんじゃないかというイメージがありますが,そんなことは全然なかったんですよ。
 おっしゃるように昔PSPで遊んだ経験があると,縦持ちに疑問があるかもしれませんが,「ルミネス」を初めてプレイする人ならばそこへの疑問はなく,縦持ちであっても横持ちと同じレベルでプレイできれば問題ないだろうと。

坂本氏:
 そうしたテスト結果と,今後「ルミネス」をどうしていきたいかという開発チームの方針を踏まえ,縦持ちで行こうと決めました。

4Gamer:
 最近では,縦横どちらでもプレイできる仕様にする,という作品も増えていると思うのですが,その点はどうでしょうか?

水口氏:
 「ルミネス」というゲームは,タイムラインが移動することで音楽が成り立つので,縦と横ではプレイ感覚が変わってしまうんですよね。
 僕自身もずっと横持ち用のゲームを遊んできたのですが,今回,自分でスマホゲームを作ってみたところ,縦でもまったく問題ないと感じたので,それなら最適な形の「ルミネス」にしようと考えました。

開発中の画面です
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4Gamer:
 確かに,画面を全体的に使う「ルミネス」だと,画面の向きは固定しないと難しそうですね。縦持ち以外で,スマートフォン向けとして意識したことはありますか。

坂本氏:
 先ほど水口さんが少し触れていましたが,やはり操作感ですね。これまでの「ルミネス」は方向キーとボタンを使ってプレイするものでしたが,スマートフォンで遊ぶとなるとタッチ操作が基本になります。それをどう気持ちよく体感できるようにするかについては,かなり細かくチューニングを施しました。どんなに素晴らしい音楽でも,操作面でイライラしてしまっては本末転倒ですから。

4Gamer:
 確かにスマホ版「ルミネス」は,タッチ操作なのに違和感がない,というより気持ちよく遊べますよね。これまでの「ルミネス」シリーズと同じく,ついつい没頭してしまいます。

水口氏:
 「ルミネス」は,よく海外で「Time Thief」,つまり「時間泥棒」と言われています(笑)。日本でも「没頭して山手線を1周しちゃいました」みたいな人もいたようで……。
 僕らとしては,それらは最高の褒め言葉だと思いますし,そこまでプレイしていただけて嬉しいです。スマホ版「ルミネス」もヘッドフォンを付けて集中していただくと,ゲームの世界に陶酔できるんじゃないでしょうか。降りる駅は見逃さないでほしいですけど(笑)。


初代「ルミネス」から思い描いていたプレイヤー同士のつながりがようやく実現


4Gamer:
 「ルミネス」のサブタイトルは「パズル&ミュージック」となっていますが,その意味を教えていただけますか。

水口氏:
 「初代の『ルミネス』に戻る」という気持ちを込めています。というのも,初代「ルミネス」には,「音と光の電飾パズル」というサブタイトルが付いていたんですが,それに倣ってサブタイトルとして「パズル&ミュージック」を付けた感じですね。

4Gamer:
 水口さんが今回,初代「ルミネス」にこだわった理由は何でしょう。

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水口氏:
 「ルミネス」は,シリーズを通じていろんな形が存在していますが,やはり初代のあの感じが好きだという人が一番多いと感じています。
 ただ……僕の中では「LUMINES パズル&ミュージック」は,もう初代「ルミネス」を超えているんですよ。移植や派生形ではない,初代「ルミネス」と比較しても面白さや気持ちよさがまったく違います。

4Gamer:
 具体的に,どんなところが優れているのでしょうか。

水口氏:
 以前やりたくてもできなかったこと,たとえば音楽が段階的に盛り上がっていくにつれてビジュアルも呼応していく,といった演出などですね。前もあったと言えばあったんですが,技術的な部分で,そのパターンやバリエーションはそれほど多く作れなかったんですよ。今回は,そこがかなり充実していますね。

坂本氏:
 ビジュアル面は相当頑張りました……!

4Gamer:
 逆に「コンシューマ機なら実現できたのに,スマートフォンだとできない」みたいなことはありましたか。

水口氏:
 僕が考える限りではなかったですね。サウンド的にもビジュアル的にも,今回はスマホ版でできることのほうが多いです。たとえば追加スキンの提供などはスマートフォンのほうが簡単にできます。
 またデバイスの向こう側にほかの誰かがいるといったようなソーシャル的な要素の実現は,昔だったらかなりハードルの高いものでした。今回の「ルミネス」が世界中でどのくらい受け入れられるか分かりませんが,いろんな人達とさまざまな形でつながっていくということが,ようやくできるようになったと思いますね。その意味では,今回,モブキャストがソーシャルゲームのエッセンスを注入したことにより,「ルミネス」が進化し,これからも進化を続けるんじゃないかと楽しみにしています。

4Gamer:
 と言うことは,水口さんは初代「ルミネス」の頃から,プレイヤー同士のつながり──つまり,オンラインゲーム的な展開を考慮に入れていたのでしょうか。

水口氏:
 実現可能かどうかはともかく,(頭の中の)ウィッシュリストには入っていました。

4Gamer:
 それがスマートフォンの普及や,モブキャストのような企業の登場によって,ようやく実現したと。

水口氏:
 PSPは,まだオンライン機能が弱かったですからね。スマートフォンでは,オンラインの常時接続や追加コンテンツのデジタル配信が当り前になっています。もちろん「ルミネス」も,リリース後に追加でさまざまなパックを展開していきますよ。

4Gamer:
 パックというのは,新しい楽曲やスキンなどの追加ですよね。

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坂本氏:
 そのとおりです。「ルミネス」シリーズでは,外部のアーティストとさまざまなコラボレーションを展開してきましたが,スマホ版「ルミネス」でも同様のものをパックとして提供していきます。また,楽曲だけでなく新しい遊びや追加機能も提供する予定です。

水口氏:
 音楽面で言えば,DJがいろんな音楽をミックスしていくように,音楽が次々に異なる展開を見せるといったことなどですね。あとはみんながニヤッとしたり,思わず「Wow!」と声を挙げてしまったりすることなど,いろんな遊びを実現していきたいです。

4Gamer:
 まさに進化していく感じですね。ところで坂本さんのおっしゃる追加機能とはどんなものでしょう。

坂本氏:
 オンラインやソーシャルといった面では,まだまだできることがあります。これはたとえばの話ですが,反響次第では,世界中のプレイヤーとつながるような機能を追加したいですね。

4Gamer:
 ということは,「ルミネス」のリリース時点では,プレイヤー同士のつながりがないということでしょうか?

坂本氏:
 いえ,小さな規模のものであれば,いくつかはあります。たとえば「ルミネス」には,動画共有サービスの「Everyplay」が組み込まれていますので,プレイ動画をシェアしてほかのプレイヤーとのコミュニケーションに活用できます。
 またランキングや実績はGoogle PlayやiOSのゲームセンターと連動していますが,反響が大きければ,より違った形のものを提供することも視野に入れています。

4Gamer:
 坂本さんが将来的に実現したい展開はありますか。

坂本氏:
 今,YouTubeなどでは,「ルミネス」シリーズのスーパープレイ動画があがっているのですが,そうした「ルミネス」の動画を,ゲーム内で共有できるようにしたいです。スーパープレイがどういった形で実現されているか,それがランキングのどの位置に入るのかということが伝えられるようになると,プレイヤーコミュニティがどんどん盛り上がるのではないかと考えています。
 ともあれ,今後展開するパックでは「ルミネス」シリーズのファンや音楽好きの皆さんに喜んでいただける内容を目指しています。詳細は順次発表していくので,楽しみにしていてください。

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4Gamer:
 分かりました。話は変わりますが,「ルミネス」は7月19日,日本,オーストラリア,ニュージーランドで先行リリースされるんですよね。

水口氏:
 はい。そこでみなさんの動向を確認して,9月に本格的にグローバルリリースという形になります。

4Gamer:
 やはりメインはグローバル市場ですか。

水口氏:
 そうですね。初代「ルミネス」は北米で一番売れましたから。でも,とくに分け隔てするつもりはありません。昔はどうしてもPSPというプラットフォームの中の作品だったため,PSPを販売していない国や地域に提供できなかったのですが,スマートフォンなら今や世界中どこでも使われていますからね。良い時代ですよ。

4Gamer:
 そうなると,リリース後に展開する各種パックも各国共通という形になるのでしょうか。

水口氏:
 「これは日本的な内容にしよう」「逆にこれはアメリカ的にしよう」といった感じで,国による違いは多少あると思います。


新しいテクノロジーによる「ルミネス」や「Rez」の更新は常に意識している


水口氏:
 ……あまりない機会なので,僕のほうからも話題を振ってもいいですか?

4Gamer:
 ええ,もちろんです。

水口氏:
 ちょっと坂本君に聞きたいんだけど,コンシューマゲームの「ルミネス」をスマートフォン向けにするって提案されたとき,どう思った?

坂本氏:
 実を言うと,私自身はシリーズ作品の中で初代「ルミネス」しかプレイしたことがないんですよ。だから最初は,ずいぶん久しぶりに名前を聞いたな,と。
 そして「あのゲームをきちんとスマホで再現できるだろうか?」という不安がある反面,「これをスマホで突き詰められたらすごく楽しいものになるだろう」という期待がありました。実際,開発中はひたすら気持ちよさを追求するタイミングがありましたし。まだまだ全然気持ちよさが足りないな,とか。それを重ねていくと,よく水口さんがおっしゃる「シナスタジア」(共感覚)の意味が,何となく分かってくるんです。

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水口氏:
 やっぱり「失敗したらどうしよう」みたいな気持ちがあったんだ。

坂本氏:
 そうですね。とくに「初代『ルミネス』の感覚を絶対実現する」みたいな話になったときは,「それは無理じゃないか」と思うこともありました。

水口氏:
 うん,実は僕も「大変だろうな」と思っていた(笑)。

坂本氏:
 その話が出てからは,初代「ルミネス」を相当やり込みましたよ。少なくともチーム内では一番うまくなろうと。

水口氏:
 そういえば,まだ僕とは対決してないよね(笑)。

坂本氏:
 負けませんよ!(笑)

4Gamer:
 ぜひスマホ版「ルミネス」が出た際には対戦してみてください(笑)。
 それではせっかくの機会なので,水口さんご自身の活動についても教えてください。水口さんは「ルミネス」と並行して,エンハンス・ゲームズにてVRコンテンツの「Rez Infinite」に取り組んでいますよね。

水口氏:
 そうですね。

4Gamer:
 水口さんの活動を振り返ると,代表作である「ルミネス」も「Rez」も,時代ごとの最先端の技術に対応して最新作をリリースしているという印象があるのですが,その点については,何か意識していることはあるのでしょうか。

水口氏:
 僕は,音楽と映像を含めたビジュアル,ストーリーテリング,あるいは「Rez」だったら振動など,“体験”をデザインするときに,さっき坂本君が少し触れた「シナスタジア」という言葉を便宜的に使っています。
 たとえば2001年にリリースした「Rez」を一番最初に作ったとき,頭の中では最初からVRに近いものだったんですよ。映像が立体的に見えて,音も3Dで。ただ,どんなにすごいイマジネーションを持っていても,僕らはゲームを作っているわけですから,一定の枠に縛られてしまうわけです。

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4Gamer:
 ゲームの映像を出力するには,どうしてもテレビなどが必要になりますからね。

水口氏:
 映像が誕生して約130年経ちますが,ずっと「四角いフレーム」が存在しているという制約がありました。したがってゲームデザインの発想も,枠の中でどうフレームインさせてフレームアウトさせるか,枠の中でどうユーザーエクスペリエンスを実現するか,というクリエイティブだったわけです。最後は制約の中に押し込めなければいけないという……。

4Gamer:
 なるほど。

水口氏:
 でも,ついにその制約がなくなるんです。これまで僕も,「Child of eden」を3DTV対応にしたり,元気ロケッツで3Dミュージックビデオを作ったり,3Dライブを行ったりと,いろんなトライをしてきましたが,やっぱり常に「四角いフレーム」の縛りがあった。VRではこれがついに消えます。
 だいたい最初のイマジネーションにはフレームありません。「Rez」を最初に考えていた頃は,VRに近いイメージを持っていました。今回,「Rez Infinite」によってようやくそれが実現できると思います。

4Gamer:
 つまり,水口さんが最初に抱いたイメージに限りなく近づいたと。

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水口氏:
 そうです。枠のない3Dの世界で,3Dの音響で,「シナスタジア・スーツ」を着用して全身で振動を感じて……そういった当時のイマジネーションが,ようやく完成しつつあり,「これでやっと次に行ける」と思っています(笑)。
 でも,それだけでは納得できなくて「Rez Infinite」には,一つだけ「Area X」という新ステージを追加します。これは,今の技術を使い,最初からVR体験を意識して作るまったく新しいステージです。そして,このステージが僕らが作る次の作品への出発点になるんじゃないかとも考えています。

4Gamer:
 個人的な「Rez Infinite」の見どころが,また一つ増えました。

水口氏:
 改めてさっきの質問にお答えすると,「ルミネス」や「Rez」という体験を新しいテクノロジーで更新していくことは,ずっと意識的にやっています。そうすることで“体験”をもっと拡張できるし,ゲームの可能性をもっと高めることもできますから。

4Gamer:
 水口さんがゲーム作りにおいて体験を重視している理由は何でしょう。

水口氏:
 気持ちのいい体験や面白い体験そのものは決して古くならない,と言うことです。ある時代の見た目やスタイルに固執すると過去のものになっていきますが,体験そのものには時代と関係ない普遍的なものがあると思います。たとえば「スーパーマリオブラザーズ」を今遊んでも,やっぱり面白いなと感じるものがあるでしょう。
 一方,体験には,テクノロジーで更新できるものとそうでないものがあります。僕がやっているシナスタジア──共感覚的な体験とゲームの体験を組み合わせていく試みは,テクノロジーでもっと拡張できるものだと捉えています。

4Gamer:
 つまり,根本的な面白さを伝えられる形になっていれば,周辺の環境は関係ないということですね。水口さん自身は,ゲームにシナスタジアを組み合わせることを,どのくらいから意識していたのでしょうか。

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水口氏:
 最初から意識していましたが,当初はまったく実現できませんでしたね……。最初に手がけたアーケードゲームの「セガラリー」では,どうしても“触覚”を持ち込みたくて,車がドリフトするときのハンドルの感じや,巻き込んだ砂利がクルマのシャーシに当たる感じをどうやって出すかを考えていました。本物のクルマをモーションベースの上に乗せたこともありましたね。ほかにもHONDAさんと一緒に,スロットルを回すとバイクがグッと起き上がる機構を作ったことも……。今後は,ああいうものがもっと面白くなっていくでしょうね。


今後も進化していく「ルミネス」シリーズ。「LUMINES パズル&ミュージック」はその幕開けに


4Gamer:
 「Rez Infinite」は「Rez」の完成形ということですが,「ルミネス」は水口さんが最初に抱いた「ルミネス」のイメージからすると,どのあたりにあるのでしょうか。

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水口氏:
 かなりいい感じで進化を続けていますね。足りない部分があるとすれば,世界中の人達とつながっていくソーシャルネットワーク的なところですね。そして,それとは別に音楽的な進化も考えられると思います。

4Gamer:
 進化の中でゲーム性が変わることはないのでしょうか?

水口氏:
 ブロックを落として消すことの繰り返し,つまりコール&レスポンスの繰り返しは変わらないと思います。「ルミネス」はブロックを落として落として落として,それが消えていくときに効果音が音楽化し,それにビジュアルが呼応するわけです。この仕組みを拡張していけば,まだまだいろんなパターンのルミネスが作れると思っています。

4Gamer:
 例えば,スマートフォンの性能がさらに上がったり,機能が拡張されたり,あるいはスマートフォンを超えるデバイスが普及したりするようなことがあれば,また違った「ルミネス」が登場するということでしょうか。

水口氏:
 そのとおりです。まだまだ「ルミネス」は終わりません。僕の中では,いろんなルミネスの構想があります。

4Gamer:
 それでは最後に,「ルミネス」に注目している人に向けてメッセージをお願いします。

坂本氏:
 「ルミネス」は,音楽もゲームも100%楽しめる内容に仕上がっています。気持ちよさだけでずっとプレイできるので,音楽好きの方もパズル好きの方もぜひ手にとっていただければと思います。
 また「ルミネス」には,これまでの「ルミネス」シリーズの楽曲も収録しています。残念ながら全曲ではないのですが,シリーズの新たな幕開けにふさわしい選曲になっています。リクエストが多ければ,ほかの曲もパックとして提供していきますので,「ルミネス」ファンの方はぜひ熱い思いをお寄せください。

水口氏:
 「ルミネス」シリーズを遊んだことがある人,あるいは好きだったという人もスマホ版「ルミネス」を遊んでみると,昔の感覚がそのまま残っていることが分かるんじゃないでしょうか。「縦持ちはどうかな?」という疑問も,「やってみたら全然OK」に変わると思います。
 その上で昔の「ルミネス」より気持ちよさと楽しさがパワーアップしていますから,「ああ,『ルミネス』はこういう形で進化していくのか」という未来が垣間見えるはずです。そうした意味で僕らも自信を持って皆さんに「ルミネス」を送り出しますので,気になる方はぜひ手にとっていただきたいです。僕としては,こうして世界中の人が再び「ルミネス」を遊んでくださる状況を作れたのは,本当に嬉しいです。とにかく一度,遊んでみてください。

4Gamer:
 今後の展開にも期待しています。本日はありがとうございました。

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