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[インタビュー]Pay to Winの要素を全部抜いたMMORPGが「スローン・アンド・リバティー」――モバイルゲームでは得づらいものが,PC/コンソールのMMORPGにはあるんです
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印刷2024/12/19 08:00

インタビュー

[インタビュー]Pay to Winの要素を全部抜いたMMORPGが「スローン・アンド・リバティー」――モバイルゲームでは得づらいものが,PC/コンソールのMMORPGにはあるんです

飛行機で1時間の距離なのに,気温差がいつも尋常ではない
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 韓国の南端にある都市釜山では,2024年11月14日〜17日にかけて韓国最大のゲームショウである「G-STAR」が行われていた。

 G-STARは韓国最大のゲームショウではあるが,実のところ出展会社には,毎年結構な変化がある。
 今年はネクソンが超絶巨大なブースを構えていたが,去年のG-STARで超絶巨大なブースを構えていたNCSOFTはおらず,最近のNCの状況とか,つい先日ローンチした「Journey of Monarch - 君主の道」とか,グローバルで調子よさそうなMMORPG「スローン・アンド・リバティ」PC / PS5 / Xbox Series X|S,T&L)とか,いろいろ聞きたかったのだが聞けずじまいだった。

「G-STAR 2024」記事一覧


 ……と思ったのだが,別件でAmazon Games(T&Lの日本のパブリッシャーはAmazon Games)に連絡したときに,

「そういえば釜山にNCの人って誰か行きますか? T&Lのお話とか聞きたいんですが」

と試しに聞いてみたら,

「出展がないので釜山にはNCのスタッフは誰も行きませんが,ソウルまで来ていただけるならお会いできるよう手配しますよ」

とのこと。

 釜山からソウルは325kmで,東京ー仙台間くらい。釜山での4日間のハードな取材を終えてから行くのはちょっと厳しいかなと思ったのだが,NCサイドの開発者と会えるなら行かない手はない。二つ返事で承諾し,ソウルまで行くことになった結果が,本記事だ。

 現地でお会いできたのは,TL CaptainのChoi Moonyoung(チェ・ムンヨン)氏と,戦闘デザインチーム長のKim Sungho(キム・スンホ)氏。T&Lにおける一番の大物とお会いできるとは思わなかった。

 「スローン・アンド・リバティ(Throne and Liberty)」というタイトルは,業界でも忘れてる人がいるかもしれないが,そもそもは「Lineage Eternal」「Project TL」などと呼ばれていたプロジェクトだ。
 遡ると10年以上昔に立ち上がったもので,途中でチームを変更したり,解散したり,いったん中止したり,いろんなことを繰り返しながらも,ここまで生き延びてグローバルローンチまで漕ぎつけている。

インタビュー後,T&Lのチームは分社して子会社化した。NCSOFTの11月28日付プレスリリースにて発表されたが,社名は「FirstSpark Games」で,チェ氏がCEOを務める。インタビュー中にチェ氏が「作っている最中にモバイルゲームのトレンドが来て」という趣旨の発言をしているが,それは10年以上開発しているがゆえのものである
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 NCSOFTは2024年10月21日,会社分割により,新たに4つの完全子会社を2025年2月1日に設立すると発表した。これにより,ゲーム開発を手がけるStudio X,Studio Y,Studio Zならびに,AIに特化したNC AIが誕生する。これらのうち,Studio Xは10月にサービスを開始した「スローン・アンド・リバティ」の開発を継続する。

[2024/10/22 12:52]

 2023年2月に,Amazon Gamesとのパブリッシング契約が発表され,日本,北米,南米,ヨーロッパでのサービスをAmazon Gamesが行うことが判明した。

 グローバルローンチにはそこからさらに1年半以上を要したが,ローンチ後は順調で,MMORPGのノウハウが膨大なNCSOFTと,グローバルユーザーの動向に詳しいAmazon Gamesという組み合わせが功を奏しているのか,久しぶりに「MMORPGのNCSOFT」を見られた気がする。
 どんな風に作ってきたのか,このあとどのようにしていくのか,限られた時間ではあるが色々と聞いてみよう。

TL CaptainのChoi Moonyoung(チェ・ムンヨン)氏(右)と,戦闘デザインチーム長のKim Sungho(キム・スンホ)氏(左)
韓国の人あるあるだが,絶対に(とくにチェさん)日本語が聞き取れて理解している気がする。通訳さんを通してインタビューをしているのだが,通訳を通すより早く反応すること多数。答えづらそうな質問にも真摯に答えていただいて,ありがとうございました
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4Gamer:
 今日は,わざわざお時間いただきありがとうございます。実はNC本社に来るのは初めてです。こんなに巨大だとは。

TL Captain Choi Moonyoung(チェ・ムンヨン)氏:(以下,チェ氏)
 あ,そうなんですね。釜山からわざわざありがとうございます。こんなに寒いソウルまで(笑)。

4Gamer:
 いや本当にこの寒さには焦りました。昨日まで21℃だったのに今日はー3℃とか……。
 さて,「スローン・アンド・リバティ」(T&L)は,サービス開始からまだそんなに時間が経っていない状況ですが,現在のゲーム内の様子であったり,NCとして,チームとして,その様子をどのように捉えているのかなど,概況をまず最初にお聞かせいただけますか。

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チェ氏:
 満足しています。
 最初にプロジェクト立ち上げたときから,グローバル展開を視野にしているタイトルでした。そしてグローバルより先に韓国国内でローンチをしましたが,正直なところ,期待には届きませんでした。
 そして内部で,足りない部分を確実に改善させてグローバルローンチに挑んで,いい成果を出せています。今のところは満足していますし,今後もよりよい方向へ開発を進めたいと思っています。

4Gamer:
 なるほど。これは何の他意もなく聞くんですが,韓国で成功すればグローバルでも成功するということですか? グローバルタイトルを先行で国内ローンチしたということは,そういうことなのかなと。

チェ氏:
 あ,それはちょっと違います。私たちもやってみて,実際に韓国プレイヤーの性格とグローバルプレイヤーの性格がとても違うということを感じています。
 初期の段階でAmazon Gamesとパブリッシング契約をして,Amazon Gamesからグローバル展開に関する色々な意見をもらえたおかげで,私たちはグローバル市場に合わせたモデルを準備できました。そこが,成功においてかなり重要なポイントになっていると思います。

4Gamer:
 確かにAmazon Gamesであれば,そういうノウハウはありそうですよね。そもそもがグローバル企業ですし。
 では逆に,グローバルで良い結果を出している今の状態は,韓国での評判はどうですか?

チェ氏:
 まだグローバルでもサービスを始めて2か月ほどなので,「良い結果」と断言はできませんが,社内も現在の流れを続けられるように集中しています。
 韓国では,この12月にサービス1周年を迎えます。いままで韓国国内でユーザーが持っているNCSOFTに対する先入観や,初期の問題点や不安点は,すべて改善されています。

4Gamer:
 おお,断言しましたね。

チェ氏:
 ええ。グローバルでのいい成果を引っさげて,12月の韓国リリース1周年のタイミングで,プレイヤーたちを呼び戻すことを目標にして準備しています。

4Gamer:
 いますごく興味深いワードが聞こえました。「NCSOFTに対する先入観」というのは,たぶん「NCらしさ」という言葉に言い換えられると思うんですが,そのベースにあるものは何だと思いますか?

チェ氏:
 ふふふ。

4Gamer:
 もしかしてこの質問,待たれてました?(笑)

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チェ氏:
 初めにT&Lを企画する時,最初にいろいろアイデアが出てきましたが,やはりNCSOFTはMMORPGをとても長い間作ってきたんだなぁと思いました。
 たくさん作って,たくさん応援されてきてましたが,やはり過去には技術的な限界でできなかった部分がいくつもありました。今またMMORPGを作るのなら,どこまでできるのだろうという“初心”を持ってはじめたのが,T&Lです。

4Gamer:
 ということは意外にもテクノロジードリブンなんでしょうか。

チェ氏:
 そうとも言えますね。T&Lが追求したのは,MMORPGにおいて現状でも競争力のある技術的な部分というもので,それがベースにありました。
 そしてグローバルユーザーが求めるものと,先ほどおっしゃったような既存のNCSOFTのプレイヤーを満足できるように,時間をかけ,努力をして,方法を探してきました。

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4Gamer:
 なるほど。
 実は僕,最初T&Lを見たときに「あんまりNCぽくないなぁ」と思ってまして。だから逆に,実はそこまで期待してませんでした。僕がやりたかったのは「昔のNCみたいなMMORPG」であって,なんだか無理して今風に作ったよく分からないMMORPGみたいなもの,ではなかったからです。

チェ氏:
 手厳しいですね(笑)。でもおっしゃることは分かります。

4Gamer:
 例えばJRPGに対して世界のユーザーが期待するものって,何か特定のものがあるわけじゃないですか。雰囲気なのか,キャラクターの造形なのか,ストーリー展開なのか,キャラ設定なのか。
 そういう事前情報を無意識に持っていて,その状態で紹介記事を見て「あ,これはJRPGだ。やろう」と思うんじゃないかなと。
 僕にとってMMORPGも同じようなもので,でもT&Lの情報出しの最初のほうとかは,あまりNCらしさを感じなかったですね。だから正直,全然期待してなかったです(笑)。でも実際にプレイしてみたら「あぁこれはNCだわ」と逆に安心したし嬉しかったですけど。

チェ氏:
 そういう風に思わせてしまったのはなんでしょうね……でも作っている過程で個人的に難しいなと思ったのは,トレンドの変化でしたね。

4Gamer:
 ゲーム業界全体,的な文脈ですか?

チェ氏:
 そうです。トレンドはしばらくモバイルにあったので,NCは10年ほどPCゲームを作っていなかったわけです。
 私たちはPC/コンソールゲームを追求したんですが,ゲームにはやはりモバイルゲームっぽいところが溜まってきてしまっていました。そういうものがCBTユーザーのフィードバックを通じて出てきて,そこに我々も不足を感じて,ある程度プレイヤーの苦しみや問題と思っている部分が理解できました。
 Amazon Gamesのグローバル的視点も取り入れつつ,モバイルゲームぽさを意図的に消しつつ,それらの問題点を補って出てきたのが,T&Lだと思います。

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 NCSOFTとAmazon Gamesが2024年10月7日にサービスを開始した「スローン・アンド・リバティ」は,3日ほどでプレイヤー数が300万人を突破するなど,好調なスタートを切っている。今回,同作のグローバリゼーションデザインマネージャーを務めるダニエル・ラフエンテ氏にメールインタビューを実施した。

[2024/10/12 12:00]

4Gamer:
 そういえば確かにそうですねえ。ずっとモバイルでしたもんね最近。

チェ氏:
 逆にこれは,なんでこんなに日本で人気を得られたんでしょう? 正直,うまくいくかどうか微妙だなと思っていました。
 ゲームの内容とかではなく,韓国と日本のユーザーの好みやタイプは違いますし,もちろんグローバルと日本も違います。T&Lがなぜ日本で成功したか,逆に知りたいですね。あなたはT&Lのどこが面白いと思ってます?

4Gamer:
 逆インタビューになった(笑)。

Twitchを視聴してゲーム内報酬が獲得できる,「Twitch Dropキャンペーン」も実施されている
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チェ氏:
 いや本当に(笑)。
 Twitchで,日本のユーザーがダンジョンでパーティプレイをやっているのを観たことがあります。
 韓国の場合は,パーティの中にうまくない人がいると,その人を強く批判したりしてパーティが険悪になりますが,日本のユーザーは,あんまりうまくないプレイヤーが来ても「頑張って!」「いけるいける!」などと暖かく接しているのを目の当たりにして,やはり国ごとのプレイヤーの性格は全然違うんだなぁ,と思いました。
 だからこそ,疑問なんです。

4Gamer:
 うーん……あくまでも個人的な意見ですが,さっきモバイルらしさを意図的に消したと言ってましたが,たぶんそこのバランスが絶妙なのかなぁと思います。
 うまく言えないけど,「ほどほどに面倒くさいゲーム」がしたいんです。少なくとも僕は(笑)。もしかしたらそういう人が思ったより多くいて,そこのニーズにがっちりハマったのかな? という気もしますね。

チェ氏:
 なるほど。「ほどほど」ですか。

4Gamer:
 モバイルのRPGって,MMOに限らず,プレイヤーはほとんど何もしなくても先に進んでいきますよね。というか「プレイ」とは名ばかりでタップ以外のことはしない。なんならタップもしなくていいんじゃないかというくらい,なんでもかんでも全自動になってます。
 僕は登場したころのMMOからずっと遊んでますけど,基本的にMMORPGって,ひたすら何でも面倒くさかったですよね。リネージュ2もそうです。割と何でもかんでも面倒くさかった。

チェ氏:
 まぁいまから見たらそうですね(笑)。

4Gamer:
 でも今のモバイルRPGってあまりにも操作がなさすぎるので,さっきも言ったように「うまいこと面倒くさいゲーム」が欲しいんだと思います。
 T&Lは……例えば移動とかすごく楽ですよね。マウントがうまくゲームシステムに吸収されていたり,テレポートの扱いとか,すごく考えられてると思います。
 でもラクなだけじゃなくてちゃんと面倒くさいところもあって,そのバランスが絶妙だなと思ってます。そういうところが,日本でも受け入れられた要因……なんですかねえ?

チェ氏:
 ありがとうございます。まだ開始したばかりのところで,不足してる部分はまだまだあって,それを改善するように歩み続けると思います。
 いままさにおっしゃっていた「自動すぎる部分」についても,韓国市場に先にゲームを送り出したとき,CBTを通じてユーザーからもこれはよくないというフィードバックを受けました。まさに開発途中で見失ったものです。

4Gamer:
 あぁ,やはりそういう人はいたんですね。

チェ氏:
 ええ。それらの意見を聞いて,PC/コンソールであるべきインタフェースや,本来のゲームの体験を戻し,ゲームの半分ほどを書き換えました。
 よくよく考えてみれば,ゲームを企画した当初その方向を目指していたのに,開発途中で失った部分が多くありました。時代の歪みがあったんでしょうか。

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4Gamer:
 コンセプトがちょっとブレちゃっていた,と。

チェ氏:
 しかし過去のように,非常にヘビーなゲームをするような時代でもないとも考えています。ですので我々の目標は少し軽めにして,短時間でできるようなコンテンツをたくさんいれて,PvPよりもPvEコンテンツをたくさん作って,このあとも開発を進める予定です。
 なので,過去のように強力なギルドや大集団で楽しむというより,少し軽く,ユーザーの個人的な嗜好を生かせるプレイで楽しめるようにしたいです。

4Gamer:
 おっしゃるように,昔,僕たちが廃人だった頃みたいに,みんながみんな,一日16時間もモニターの前にいるわけじゃないですしね。

チェ氏:
 「リネージュ2」は遊んでいたようですが,ずいぶんやってました?

4Gamer:
 「リネージュ2」もそれなりにやってましたよ。なんかアイテムが欲しかったんだと思いますが,ひたすら毎晩毎晩トゥレック オークのキャンプで延々とオークを倒していた序盤の記憶だけが強く残ってます(笑)。もう眠くて眠くてたまらないのに。
 でもおっしゃる通り,いまはああいうプレイを強制する時代ではないですね。そういう意味でT&Lは,確かにプレイを始めても,なんなら1時間ぐらいで「よしここまで」ってできるのが,とても気楽で素晴らしいです。

チェ氏:
 でもその1時間でクエストが終わるということに対しても,「すごく短い」と言う方もいますし,「長すぎて宿題をやらされてる気分」みたいな意見もあるわけで,どういう風に改善しようかと悩みは尽きません。

4Gamer:
 うーん,なるほど。
 そのつながりの話で言うなら,T&Lってデイリークエストみたいなものの効率があまりにも良くて,あのクエスト群が終わったら今日のプレイ終わり! みたいな気分になっちゃうのが,逆に問題かなと思ってます。

チェ氏:
 そうですよね……分かります。そういう部分も将来考慮しておきます。

4Gamer:
 ことのついでに聞くようなことじゃないんですが,では逆に開発側としては,現在の問題点はどのあたりにあって,一番早急に何を片付けなきゃいけないとお考えですか?

チェ氏:
 問題というわけではなくて,改善しなくてはと思っている部分……とはいえ実はまだ解決策はないのですが。
 キャラクター成長システムの過程は,プレイヤーの皆さんから良いフィードバックをもらっています。しかしいま,レベルキャップは50です。レベル50まで行ったら,そのあとやることがあまりない,退屈だというフィードバックはもらっています。

4Gamer:
 MMOの永遠の課題ですね。

チェ氏:
 クエストではなく,“作業”でもない何か。ゲームを続ける動機を与えてくれるような成長体験を,まだ私たちが持っていないという可能性はあります。
 また戦闘については,今日はコンバットチーム長のキムも一緒に来ていますが,様々な武器を使ってみてほしいというのが,デザインの時の目標でした。
 しかし実際に武器一つ育てるのは結構難しいわけで,プレイヤーのレベルがまだ低い段階で,少しずついろんな武器を試しながら成長してほしいというのが,いま私たちが一番考えている部分です。

武器は最初に使ったやつをずっと使いがち(筆者だけ?)
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4Gamer:
 最初のお答えに関してなんですが,こんなに早くユーザーがレベルキャップに行くと思ってなかったということですか?

チェ氏:
 もちろん予想はしていましたが,成長する過程はプレイヤーにとっては面白味のある時間なので,探索する過程になるんじゃないかと思っていました。なので現在でも,開発が想定している時間と,ある程度合ってます。

4Gamer:
 あ,そうだったんですね。失礼しました。

チェ氏:
 ただ,無意味に繰り返すだけの時間を最大限なくすべきだという前提で,ゲームの中にコンテンツが少ないのではなく,実際には機能していない一部のコンテンツがあるのではないかと考えています。

4Gamer:
 なるほど。死にコンテンツですね。

チェ氏:
 先ほどの話ではないですが,ユーザーさんが効率の良い一部のコンテンツにしか関心がないわけで,でもそれは仕方のないことです。
 どうやっていろんなことを知らしめて,興味を持たせて,楽しんでプレイしてもらえるかを,いま考えているところです。

4Gamer:
 T&Lだと,例えば生産系のコンテンツをもっと充実させると楽しそうだな,と思います。

チェ氏:
 はい,そういうことですね。コンテンツを作ること自体は大切なことだと思います。
 でもそれよりも,作り方のスピードを消費側に合わせたり,同じペースで新しいものを作り続けたりできない部分がもちろんあります。
 今のように社内でコンテンツを生産して,それを繰り返して利用できるコンテンツにできないかなと努力しています。もしくはシーズン系のコンテンツを作るとか。いろんな試みを内部でしています。

4Gamer:
 例えば僕は,大昔のEverQuestのように,ただ知らないところに行って,風景を見て,適当に戦って「ダメだこれw」って言って帰ってきたり,知らないところで死んでみたり,そういう冒険がしたいんです。
 ……したいんですけど,さっき言ったデイリーでのレベル上げ効率があまりに良すぎて,そこしかやっていないというのが正直なところです。自分がプレイできる時間にも制約がありますし,それ以外のところに目が向かないと言いますか。

チェ氏:
 そうですよね,そういうことをする動機も作れればいいなと思います。
 ただやはり一般的には,プレイヤーには何らかの目標が必要だと思ってまして,プレイヤーが自らの目的をもって色々なところに目を向けられるようにしようと,日々開発を進めているところです。

4Gamer:
 なるほど。T&Lって,ベースがものすごく良くできてるなと,個人的には思っているんです。
 2024年の新作MMORPGとしてのベース部分が,割といい形で出来上がっているので,ここからの発展がすごく楽しみです。

チェ氏:
 褒めていただき。ありがとうございます。
 そんなに褒められていますが,我々はまだまだ不足を感じています。あなたがそれを見つけないうちに,こっそり改善しなければなりませんね……。

4Gamer:
 ははは(笑)。
 でも真面目にいいタイトルだなと思ってまして,一番いいなすごいなと思うのは,久しぶりに見た「本物のオープンワールド」というところですね。
 世の中に“オープンワールド”を謳うゲームはたくさんありますが,実際にはゾーニングしてラグがあったりします。ほんの少しではありますが。でもT&Lにはまったくないですよね。私が体感してないだけですか?

チェ氏:
 いえ。それが初めからの目標であり原理原則の一つでした。ローディングがない。

4Gamer:
 あのクジラ(ギガントリテ)もそうですよね。皆さん気付いてるのか分かりませんが,すごいですよあれ。しかもちゃんと今風のMMORPGになっているのが,さすがだなあと素直に感心しています。

愛しのクジラちゃん「ギガントリテ」。路線バスみたいに親切に止まってくれたりしないので,高いところから飛び乗る(というか滑空して着地する)のだ
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チェ氏:
 ありがとうございます(笑)。
 とにかくラグがないことは,最初からのルールでした。なるべく現実と同じように,プレイできるようにしたいのです。攻城戦も,なるべくリアルな攻城戦にしたいし,規模も物理的なルールのも,できるだけ現実に沿うようにしました。

4Gamer:
 まあでも鈍い僕も途中で気づいたんです。「これテレポートはもしかして,呪文を詠唱しているときにローディングしているのか?」と(笑)。でもそうだとしても,体感がノーラグなのは本当に素晴らしいです。

チェ氏:
 でもローディングがないということは開発側として困ることがあって,チュートリアルとかTIPSとかガイドとか,そういうものをローディング画面で入れようと思っても,入れる場所がまったくないんです(笑)。

4Gamer:
 確かにどこにも時間的バッファがないですね(笑)。

チェ氏:
 でも真面目な話,やはりゲームにはテンションの起伏があったほうがいいと思います。
 ローディングで区切りを入れる……みたいな話ではありませんが,何か休みを入れる必要があるかなとは思ってはいます。T&Lというゲームは,急激に流れを進んでいるようなところもありますので。

4Gamer:
 意図的に詰まらせるポイントを作るみたいな?

チェ氏:
 いえ,詰まらせるわけではなくて,ところどころで休めるポイントを入れてテンポを調節する感じですね。例えば先ほど話題に出た生活系コンテンツとか。

4Gamer:
 あぁなるほど! 生活系いいですね。ぜひ入れてください,大好きです。

チェ氏:
 釣りとかですか?(笑) 今ユーザーフィードバックに「自動で釣りさせて」という意見がありますが,どう思います?

4Gamer:
 いやあ個人的にはちょっとイヤですね。自動にした瞬間“ただの作業”になっちゃうんですよね。それは良くない。
 まぁでも大丈夫です。釣りがあってジャンプができるMMORPGは絶対に売れると,昔から言われています(笑)。

チェ氏:
 それは初耳です(笑)。あ,リネージュ2はジャンプなかったですよ?

4Gamer:
 あ(笑)。
 まあでも,意図的に何かを入れるのであれば,そこにさっきの武器の問題とかを絡めて,同時に改善するとかどうですかね。
 武器の件は僕もちょっと気になってました。実は自分も最初に決めたものしか使ってないんですけど,今から新しい武器に触って慣れて育てるのはさすがにちょっとダルいなぁ……って思ってて。でもビルドと武器の相乗効果はかなり多いので,いろいろ試してみたい気もするし。

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チェ氏:
 特定の武器を導入するコストが大きいので,現実的にそれをほかの武器に変えること自体が簡単ではありません。新しい武器のマスターになるのは難しいですが,ほかの武器に何度か変えてみたり使ってみたりすることを,少し簡単にしようとは考えています。

キム氏:
 それに対してはまず,「この武器を使いたいな」と思ったらすぐ試せるようなシステムを入れる予定です。

4Gamer:
 自分が育てた武器を,同じ強さの違う武器にすぐチェンジできたり……とかではないですよね?

キム氏:
 ちょっと違います。いま言えるのは「リンクシステム」というものを準備しているということです。自分の武器と同じ成長レベルの,ほかの武器を試着するような感じのことができるようになります。
 例えばあなたが熟練度12のロッドを持っているとして,新しい武器をそれにリンクして,熟練度12のロッドと同じような効果を受けるシステム……という感じです。

※目処が立ったからなのか,ついぞ先日新武器が導入された。そういえば槍なかったな……

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「スローン・アンド・リバティ」,高い機動力と火力を兼ね備えた新武器種「スピア」の紹介動画を公開。実装は12月5日を予定

 Amazon Gamesは2024年11月26日,MMORPG「スローン・アンド・リバティ」(PC / PS5 / Xbox Series X|S)で12月5日に実装予定の新武器種「スピア」の紹介動画を公開した。高い機動力で距離を詰め,敵に弱体化を付与し,高い火力を出せる武器種である。

[2024/11/27 11:48]

4Gamer:
 お,ちょっといいですね。ゼロから育てるのはちょっとさすがになぁ……と思ってました。
 でもあのT&Lの戦闘のアクション要素は,やたら難しいわけでもなく,適当に押してればなんでも勝てるわけでもなく,なんていうか微妙な難しさが,なんとも言えないんですけど,なぜわざわざこのシステムを採用したんですか?

キム氏:
 アクション性のあるコンバットシステム,という意味ですか?

4Gamer:
 はい。今までのMMORPGも,いろんなタイトルがアクション性の高い戦闘システムを作ってはイマイチうまくいかなかったりして,それを繰り返してきた歴史があるわけです。それでもあえてこれにしよう,と思うに至った理由といいますか。

キム氏:
 重要なことは,アクション性云々ではなくて「ユーザーによる選択」だと思うんです。

4Gamer:
 アクション性そのものではなくて,それ以外の部分が重要?

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キム氏:
 ええ。スキル特化システムにおいて最も重要なことは,プレイヤーが簡単にビルドを作りたければ,その通りにとても簡単にプレイができます。でもプレイヤーが少し難しいことをしようと思ったときにも,それほどリスクなく,少し難しくしてリターンを得ることができます。
 自分のスタイルに合わせて,自分のスタイルを作ることができるのが,最も重要なことではないかと思っています。アクション性は向いているから採用したわけで,そこが本質ではありません。
 特定のビルドが弱いとか強いとか良いとか悪いとか,そういうことではなく,難易度の違いが自分の選択で調整できるというのが,重要なんだと思います。

4Gamer:
 なるほど。ちょっと合点がいきました。
 では今のコンバットシステムの完成度は,あなたの理想を100とした場合何%ぐらいなんですか?

キム氏:
 答えにくいですね(笑)。

4Gamer:
 だろうと思って聞いています(笑)。

キム氏:
 そうですね……“アクションゲーム”だと考えると,足りない部分があるかもしれません。ここに異論はないでしょう。
 しかしこれはMMOなので,戦闘時におけるアクション性は,アクションゲームが得意な人にも苦手な人にも,皆に影響のある要素であるということで,難度を下げる必要があります。なので,T&Lにおけるアクションコンバットという意味であれば,70点だと考えています。

4Gamer:
 お,なかなか高いですね。

キム氏:
 コンソールのアクションゲームのように作ることもできますが,それは難度がとても高くなり,プレイヤーを選ぶ結果になってしまいます。なので今の感じに落ち着きました。

4Gamer:
 いや,いいと思います。だって僕たちは“MMORPG”が遊びたいわけであって,エルデンリングの戦闘をしたいわけではないですから。
 アクションつながりなんですが,実は私T&LをPS5でやってるんですが,結構操作が煩雑で難しいですよね……。あれ,もうちょっとだけ簡単になりませんか……。

チェ氏:
 コンソールのゲームパッドに合わせたUIやUXに対して,多くのテストやフィードバックから意見を受けて作ったものです。PCで行う様々な複雑操作のキーを,限定的なパッドに入れ込むのが,やはり結構難しいですね。
 これからPlayStation版を提供していくにあたり,プリセットやカスタマイズ部分を,最大限にプレイヤーが利用できるように工夫していきます。

4Gamer:
 ぜひよろしくお願いします!

チェ氏:
 コンソールにもキーボードやマウスを繋いで遊べるようにも準備しています。とくにチャットなどをするときにコンソール版は大変なので,であればキーボードやマウスをサポートしてしまおうということで。

4Gamer:
 じゃあもうこの流れでついでに言ってもいいですか。
 個人的な事情ですか夜中にしかゲームができないので,基本的にPlayStation Portalで遊んでるんです。文字を……もうちょっと大きくしてほしいです!

チェ氏:
 Portalの人思ったよりいますよね(笑)。
 あれは確かに文字がとても小さいです。UIの文字は問題になってまして,基本的にPCはフォントが3,コンソールは5なんですが,それでも小さいです。ですので特定のテキストについては改善中です。

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4Gamer:
 嬉しいです。

チェ氏:
 UIとはちょっと関係ありませんが,コンソール版に関して,昨日初めてグローバルでの攻城戦を開催しました。そこで出てきたいろいろな不足部分や改善すべき部分を,いま順番に見ています。
 コンソール関連でもプレイヤーからやや不安を抱くような声もいただきましたが,少しずつ改善を進めています。ご安心ください。

4Gamer:
 いいですね。めちゃ期待しています。

チェ氏:
 大規模戦闘の最適化を,もっとうまくやらないとですね。

4Gamer:
 話がちょっと戻っちゃうんですけど,いま話ながら思い付いたので……。
 さっきストレートにレベルが上がってしまうという話をしたじゃないですか。T&Lって,基本的にストーリードリブンで話が進んでいきますよね。メインクエストがあって,それがプレイヤーを引っ張っていってくれます。
 引っ張っていってくれるんですけど,脇道に逸れても全然大丈夫であるという自由度の高さも保証されていて,それがすごく楽しい部分でもあるわけで,もうちょっと意図的に「逸れるようにする」と,もうちょっと僕たちはレベル上げ以外にも時間を使うようになるのかな,と思いました。

チェ氏:
 実は,サービスを始める前のテストバージョンでは,まさに今おっしゃったようなデザインだったんです。

4Gamer:
 失礼しました……。

チェ氏:
 いえいえ(笑)。でも意外と,メインの道から逸れて迷って離脱したプレイヤーが多くて,それでいまのように形になったんです。
 いまおっしゃったことは重々理解してまして,コンテンツを活用するように目標を設定するのではなく,寄り道をどう楽しんでもらえるのかが,いま悩んでいるところです。
 離脱してしまったプレイヤーからもらったアドバイスとしては,メインストーリーのほかに途中にほかの場所やサブコンテンツに行かせるガイドだったり,宝箱だったり,そういうものがあるべきなのに,なかった。それで目標を見失ってしまったのだ,と。
 どうやってシステムの中で自然な流れに落とし込めるのか,まさに今悩んでいます。

4Gamer:
 いやもう本当にすみません……とっくに考えてましたね。

チェ氏:
 いや,4Gamerの代表がなぜこんなところまでお越しいただいて個別のタイトルの話をするのか疑問だったんですが,ちゃんとしたT&Lのプレイヤーだったんですね(笑)。

4Gamer:
 いやちゃんとしてるかどうかは微妙ですが(笑)。
 でもT&Lは,ビジネスモデル的にもちょっと興味深くて,そういう面でも気にはなっていました。

チェ氏:
 T&Lは最初からAmazon Gamesとグローバルリリースに関して話し合っていて,飾りやコスチュームをビジネスモデルにすることを決めて作ってました。日本語でどういう表現があるのかちょっと分かりませんが,一個一個の利益は少ないですが,多くの人に手にしてもらいたいです。
 そのためにゲームバランスをなるべく良くして,Pay to Winの要素を全部抜いて,今のビジネスモデルにしました。

MMORPGにおけるマウントを,「モーフ」として完全にシステムに組み込んでいる秀逸なデザイン。しかも全部可愛い
画像集 No.017のサムネイル画像 / [インタビュー]Pay to Winの要素を全部抜いたMMORPGが「スローン・アンド・リバティー」――モバイルゲームでは得づらいものが,PC/コンソールのMMORPGにはあるんです

4Gamer:
 素敵です。

チェ氏:
 先日ハロウィーンイベントで作ったコスチュームを販売して,これでも売り上げがちゃんと成り立つんだなと,本当に意義のある良い結果が出てきました。
 お金を払ってもらうのでも,サービス要素でも,どちらでもよいんですが,ユーザーさんが満足して楽しく消費してくれるいい流れを作るビジネスモデルが機能することも,証明されていると思います。

4Gamer:
 いいですね。スマホなんかがそうですが,どうしても100人から1万円もらうビジネスになりがちでしたけど,T&Lは1万人から100円もらうビジネスにしたいということですよね。
 こっちの方が健全ですし,ユーザーも気持ちよくプレイできるし,そもそもメーカーに入ってくる金額は同じですから,みんながハッピーだと思います。
 でもいつだったか,元々リアルマネーで売っていたようなものも全部ゲーム内マネーで買えるようにしたりしてませんでした? あれはどういう理由ですか?

画像集 No.019のサムネイル画像 / [インタビュー]Pay to Winの要素を全部抜いたMMORPGが「スローン・アンド・リバティー」――モバイルゲームでは得づらいものが,PC/コンソールのMMORPGにはあるんです
キム氏:
 リアルマネーの場合,誰かが実際お金を使わなければならないわけですが,ルーセント(ゲーム内通貨)の場合,努力すれば誰でも得ることができます。
 そのため,プレイヤーの課金負担を少しでも減らすためにそのように変えました。お金を払わなくてもゲームを楽しめます。

4Gamer:
 でもそれ,会社から見たらマイナスですよね。

チェ氏:
 はい。確かに少しの損失はありますが,全体的にゲームプレイをするためのモチベーションを上げることができると思うので,これが正しいと考えています。
 それが正しいと考えたので,Amazon Gamesでサービスを行うとき,私たちは全てのグローバルサービスも同じように決定しました。

4Gamer:
 理想的な答えをいただけてありがとうございます。
 いっときよりだいぶ空気感は変わりましたが,まだスマホゲームは世界を席巻しています。なので,ゲームというものは隙間時間に遊ぶものだみたいな感じにもなりつつあって,MMORPGみたいなものは生き残りづらい状況でした。日本でも世界でも,結構いろんなタイトルが終わってしまっています。
 この状況で「スローン・アンド・リバティ」を出してきたNCSOFTは,そんなMMOが生きづらい状況をどのように捉えているのかちょっと気になっています。

チェ氏:
 市場には,流れもトレンドもあります。でも,MMORPGに対するニーズは必ずあると思います。
 確かに,最近若いMMOプレイヤーが少なくなっているのは事実ですし,もしかしたら彼らはそれを望んでいないのかもしれません。ただ,MMORPGでしか味わえない楽しさというものは,やはりあると思うんです。
 最近のトレンドであるモバイルゲームで得づらいものが,PC/コンソールのMMORPGにはあり,MMORPGというもののニーズはこれからも続くと思っています。
 そして我々はターゲットや価格も明確で,万人が楽しいMMOというより,NCSOFTのユーザーをターゲットにして,その方々が欲しがるようなMMORPGを開発しています。

4Gamer:
 嬉しいです。僕自身,さっきも言ったようにMMORPGの大ファンなので,この後またMMOが昔のように盛り上がっていくことを期待しています。
 まぁ昔のようにはいかないまでも,MMOがこのあと盛り上がるために,どんなことが必要だと思います?

チェ氏:
 今プレイしているユーザーの声やニーズを,最大限聞かないといけないと考えています。
 皆がよく知っているように,昨今のトレンドは楽しいものがたくさんあって,昔のようにみんなが長く時間をかけてプレイすることが時代に合わなくなっています。
 なので,伝統的なMMORPGをハイブリッドの形に変更して,短い時間の中でもMMORPGが楽しむことができるようなコンテンツを提供する必要があると思います。

4Gamer:
 ユーザーって自分含めて言いたい放題言うわけですけど,そのへんのバランスはどのように取ってるんですか?

チェ氏:
 もちろんT&Lチーム全員も,ユーザーと同じようにゲームをプレイしています。それで内部での意見を聞いて,答え合わせをしています。確かにそうだと思える問題点に対して,これを改善すべきだという確信ができたらそれを優先的に取って改善をしていっています。
 小さく見て開発内部での意見,大きく見てユーザーの意見を合わせて,確信ができたらそれを改善していくという基準です。

4Gamer:
 なるほど。それなら大丈夫そうですね。

チェ氏:
 ユーザーとはなるべく多く接点を作りたいと思っていまして,Discordで話し合ったり,ユーザーを招待して,実際のユーザーの声を聞いて,その場で計画していることも発表したりして,直接その場でユーザーの声を聞いて,またそれを入れて改善していく……というようなイベントもやっています。

4Gamer:
 直接ユーザーと接して何か発言してしまうと,取り返しがつかなくてちょっと怖くないですか?

チェ氏:
 特定のユーザーや質問に対してその場で答えるようなことはしていないのですが,確かにDiscordというツール自体が少しカジュアルだなと感じる部分があります。
 とはいえ実際に,失うものもあれば得るものもあると考えています。ある程度リスクを負っても,私たちのゲームに対して良い意見を与えていただけるので,そういうのはやっぱりやらなければならないと考えています。

4Gamer:
 ちなみにキムさんは,MMORPGが盛り上がるために何が必要だと思います?

キム氏:
 私は,コミュニティの連続だと思っています。一緒に何かをする「コワーキング」が好きな人が多いですが,コミュニティで他人と関係を構築することで楽しさを感じ,我々も一緒に何かをやって,共に成し遂げている感覚を与えることが,私は最も重要だと考えています。
 インゲームだけでなく,Discordなどでもできますし,そのような場を提供することによって,プレイヤーが楽しくプレイし,ゲームの活性化にもなって盛り上がっていくかなとは思います。

運営1か月時点のプレイ集計。ユニークユーザー453万は結構すごい
画像集 No.018のサムネイル画像 / [インタビュー]Pay to Winの要素を全部抜いたMMORPGが「スローン・アンド・リバティー」――モバイルゲームでは得づらいものが,PC/コンソールのMMORPGにはあるんです

4Gamer:
 そのコワーキングの「Co‐」は,開発とユーザー?

キム氏:
 いえ,ユーザーとユーザーです。

4Gamer:
 なるほど,場を作るということですね。
 それにしても……気付いたら1時間半が過ぎてました。

チェ氏:
 本当ですね(笑)。

4Gamer:
 では最後の質問をしていいですか。
 この後T&Lを,どのようなMMOにしていこうと思っていますか?

チェ氏:
 (日本語)夢?

4Gamer:
 「夢」でもいいですし,現実的な話でもいいです。

チェ氏:
 うーん,難しいですね(笑)。
 さっきキムは,コミュニティとユーザー,ユーザーとユーザーの関係が重要だと言っていましたが,僕は開発とユーザーのコミュニティもすごく大事だと思います。
 私たちはただ過去みたいにゲーム開発をするだけでなく,ユーザーが求めるものに耳を傾けて結果を出します。決まったものを作るのではなく,ユーザーのニーズに応じていきたいと思っています。
 これから2〜3年間の大きなロードマップはいま計画しているところで,それもユーザーの意見を聞いて具体的に案をまとめようと思います。お待ちください。

4Gamer:
 ではプレイヤーとしては,どこで意見を発言したら聞いてもらえますか?

チェ氏:
 いま日本のユーザーさんは,Amazon Games JapanのDiscordを通じて意見をいただいていて,それを集めてモニタリングしています。
 韓国のユーザーも,Discordと公式ホームページで意見を書くところがあります。Amazon Gamesもそうですが,NCも時々ライブ放送をやっていて,その時にチャットに書き込んでいるユーザーの意見を収集しています。あとRedditとか。

4Gamer:
 お,Redditも見てるんですね。
 しかしDiscordって,やっぱりちょっとハードルが高い人もいると思うんですよ。意見を言うためだけに参加するのもなぁ……って。なのでもうちょっとカジュアルなものでも聞いてもらえると,ユーザーは嬉しいかなと思うんですが。

チェ氏:
 タッチングポイントというのは,各国結構違うんですよね。韓国でサービスする時は,50人とか集めて意見を聞いたりもしていました。
 グローバル的にもなるべくそういうカジュアルに聞ける,意見を言える場を作ろうと考えています。

4Gamer:
 ぜひお願いします。きっとAmazon Gamesの仕事は増えますけど(笑)。

(一同笑)

4Gamer:
 では,まずはこの先,10年,20年続くサービスになることを期待しています。
 今日は本当にありがとうございました。

チェ氏:
 はい,ありがとうございました。まずは10年から頑張ります(笑)。

画像集 No.003のサムネイル画像 / [インタビュー]Pay to Winの要素を全部抜いたMMORPGが「スローン・アンド・リバティー」――モバイルゲームでは得づらいものが,PC/コンソールのMMORPGにはあるんです

――――2024年11月18日収録
  • 関連タイトル:

    スローン・アンド・リバティ

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