
インタビュー
[インタビュー]「SNOW BROS. 2 SPECIAL」をリメイクしたワケ。開発経緯や韓国での人気の理由をCRT GAMESに聞いた
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1994年にリリースされたアーケードゲームを,リメイクによって現代に甦らせたのは,レトロゲームを専門とする韓国のCRT GAMESだ。本稿では,そんな同社で本作を担当したディレクターのイム・ソンギル氏にメールインタビューを行った。同作へのこだわりや韓国での「スノーブラザーズ」人気など,気になるところを聞いてみたので,気になる人はぜひご一読いただきたい。
「SNOW BROS. 2 SPECIAL」公式サイト
多数の新モードが追加されたリメイク版「SNOW BROS. 2 SPECIAL」
「SNOW BROS. 2 SPECIAL」のオリジナルは,「究極タイガー」や「TATSUJIN」といったシューティングゲームで知られる東亜プランが,1994年に発売したアクションゲーム「おてんきパラダイス」だ。
海外では「Snow Bros. 2: With New Elves」の名前で知られる同作では,プレイヤーは雪玉を投げるニック,雷を操るボビー,水弾を放つロイ,風を吐くリチャードら4人の主人公を操作し,悪のアッツー大王からプリン姫を取り戻すため冒険を繰り広げる。
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攻略の基本は敵に攻撃を当てて雪玉や風玉に変え,これを蹴とばして地形にぶつけていくことだ。このとき,蹴飛ばした玉にほかの敵を巻き込むと高得点になる。有利な位置で吹き飛ばせば,すべての敵を一網打尽にするのも不可能ではない。
主人公の性能,敵の性質,マップの構造を理解して,パターンを組んでいくことでステージを攻略する,古き良き1画面ゲームの良さが詰め込まれたタイトルとなっている。
今回のリメイク版には,当時のグラフィックスを再現した「オリジナル」と,現代風にアレンジした「リメイク」モードに加え,残機1機で戦い続ける「サバイバル」,素早いクリアを目指す「タイムアタック」,上へ上へと登る「スカイラン」といった新モード,また敵キャラクターを操作する「モンスターチャレンジ」などの新しい試みが用意され,オリジナル版を知る人もそうでない人も,新たな気持ちで楽しめる一作に仕上がっている。
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記憶の中のイメージを大切に,懐かしいゲームを現代に蘇らせること――CRT GAMES イム・ソンギル氏 メールインタビュー
4Gamer:
まずは本作の開発経緯を教えてください。「スノーブラザーズ」シリーズはとくに韓国で人気があると聞きますが,なぜ今「スノーブラザーズ」なのでしょうか。
イム・ソンギル氏(以下,イム氏):
「スノーブラザーズ」シリーズは,長年にわたって世界中のゲーマー,とくに韓国のファンから根強い人気を集めてきました。1990年代のアーケードゲームに思い出を持つ人達にとっては,単なるゲーム以上の存在ともいえるでしょう。
私たち自身も,子供の頃に「スノーブラザーズ」シリーズを遊んで育った世代です。そのため,いつか必ずリメイクしたいという思いをずっと抱いていました。
今リメイクをした理由は,昔のゲームをより洗練された方法で再現できる技術があり,レトロコンテンツへの関心が高まっているタイミングだからです。伝説的なIPである「スノーブラザーズ」を再び世に送り出すのに最適な時期だったわけですね。
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4Gamer:
開発にあたり,とくに苦労された点はなんでしたか。またオリジナル版の権利を管理しているTATSUJINとは,どんなやり取りをされたでしょうか。
イム氏:
オリジナル版は非常にシンプルな構造に見えますが,実際は非常に精巧なバランスの上に設計されています。こうした部分を保ちつつ,現代的なセンスを加えていくのが最も難しい課題でした。
TATSUJINには,オリジナル版が持っていたアイデンティティやデザインに対する徹底した監修をお願いしました。本質を損なうことのないよう,またオリジナルを尊重する気持ちを忘れることなく開発を進めました。
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4Gamer:
リメイクモードの開発経緯を教えてください。新ステージや新ボスなどで,とくにこだわったポイントはありますか。
イム氏:
リメイクモードは当時のファンが思い出を振り返りつつも,新たな楽しさを感じられるように企画されたものです。オリジナル版の根幹をなす構造は可能な限り保ちつつ,グラフィックスやサウンド,操作感など全体的な要素を現代的に再構築しています。
同時に,ゲーム全体のボリュームを大幅にアップする取り組みも行いました。オリジナルの「Snow Bros. 2」は前作からステージ数が減ってしまっていて,これを惜しいと感じたのがその理由です。
追加ステージやボス戦においては,プレイの多様化を心掛けています。ときにボス戦では,単に演出を派手にするのではなく,それぞれのボスがプレイヤーに異なるアプローチを求めるよう設計し,オリジナルとは異なる形での没入感を追求しました。
4Gamer:
追加されたモードの中では,モンスターを操作する「モンスターチャレンジ」がユニークに感じられました。このモードを実装した理由はなんですか。
イム氏:
開発にあたっては,単なるリメイクに留まらないよう,いかにして新しい楽しさを加えるかを深く考えていました。そうした試行錯誤の末に誕生したのが,「モンスターチャレンジ」です。このモードではプレイヤーがさまざまなモンスターを操作して,これまでとは異なるアプローチでステージを攻略できるようになっています。さらに一定の条件を満たすと新たなモンスターがアンロックされ,それぞれのモンスターが持つ固有のスキルや特性で,同じステージでもまったく異なるプレイが楽しめます。
このモードに込めたのは「シンプルながら戦略性のある楽しさ」という「スノーブラザーズ」の魅力を深掘りし,さらに拡張したいという思いです。既存のファンにはなじみ深い世界観に新鮮な要素を加え,初めてプレイするプレイヤーには多彩な選択肢と個性豊かなキャラクターを通じて,自然にゲームの世界へ没入できる入口を作り出す。そうした工夫を施してあります。
とくに韓国では,キャラクター収集や育成要素に慣れ親しんだプレイヤーが多いので,これらの要素は非常に好評を得ています。キャラクターを集める楽しさや,それぞれ異なる操作方法を覚えていく過程そのものが,プレイヤーの挑戦心を刺激しているのだと思います。
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4Gamer:
リメイクモードを始めとした,新モードの韓国での反響はいかがですか。
イム氏:
予想以上に良い反応をいただいており,とても嬉しく思っています。
オリジナル版のファンの皆さんからは,「思い出の中にある感覚はそのままに,ゲームとしてより洗練され,快適になった」といった評価を多くいただきました。とくに協力プレイが今でも楽しいという声が多かったです。
今回初めてシリーズに触れた皆さんからは,「モンスターチャレンジやスカイランといった多彩な要素があって,自然とゲームの世界に入り込める」という感想をいただいています。世代を超えて楽しめるデザインが,ある程度成功を収めたという結果だと受け止めています。
4Gamer:
「スノーブラザーズ」が,とくに韓国で人気を博した理由はなんだと思いますか。
イム氏:
韓国での人気の理由はさまざまあると思いますが,当時のアーケードゲーム市場の特殊性に一因があったと考えています。ほとんどのゲームセンターで協力型アクションゲームが人気でしたし,「スノーブラザーズ」シリーズは2人で協力プレイすれば,より楽しく遊ぶことができました。
キャラクターデザインや音楽も魅力的でしたし,操作がシンプルであることや,「雪玉で敵を吹き飛ばす」というユニークなゲームメカニクスが,老若男女問わず多くのプレイヤーに強い印象を残したのだと思います。
それだけに,韓国のファンの皆さんから「『スノーブラザーズ』シリーズをまたプレイしたい」という声をいただくことが多く,おかげでリメイク版の発売にこぎつけることができました。
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4Gamer:
当時の韓国のアーケードゲーム事情について,もう少し詳しく教えてください。またその中で,「スノーブラザーズ」シリーズはどのように遊ばれていたのでしょうか。
イム氏:
1990年代前半における韓国のゲームセンターは,放課後に友達と良く遊びに行った思い出の場所でした。文房具店や小さな商店の前に小さなアーケードゲーム機が設置されていて,新作が入荷するたびに列を作ってプレイの順番待ちをしたものです。またプレイのウマい人が注目を集めることもありました。
いろいろなゲームがありましたが,「スノーブラザーズ」シリーズは気軽に遊べることで人気になりました。一般層からは「Snow Bros. 2」がとくに人気でした。前作と比べてキャラクターが素早くなり,ステージの雰囲気もさらに華やかになって,ボス戦も趣向が凝らされていましたので。難度が下がって,1コインでエンディングを見るのも夢ではありませんでした。だから韓国では,友達と一緒に「最後までクリアしよう!」と挑戦した思い出を持つ人も多いのではないかと思います。逆に,マニアからは初代「スノーブラザーズ」の方が高い評価を得ていましたね。
ゲームセンターが徐々に姿を消していった時期も,「スノーブラザーズ」シリーズは人気でした。ファミリーレストランのキッズスペースなど,子供向けの施設にゲーム機が置かれていて,知名度としても安定していたのが理由だと思います。
4Gamer:
CRT GAMESの設立経緯を教えてください。レトロゲームのリメイクを多く手がけていますが,なにかこだわりがあるのでしょうか。
イム氏:
「単に懐かしさを売るのではなく,過去の名作を現代的な感覚で蘇らせる」という理念で設立したのがCRT GAMESです。
私たちが子供のころに夢中になったゲームには,今見ても魅力的な要素がたくさんありますが,技術の進歩とともにプレイヤーの期待値も変化しています。そのため,当時の感性を保ちつつ,現代の基準に見合うクオリティと楽しさを提供することを,CRT GAMESは目標としています。
「こだわり」というよりは,原作へのリスペクトと,その価値を次の世代にも伝えたいという想いこそが,私たちをリメイクへ突き動かしているのです。
4Gamer:
CRT GAMESのタイトル,例えば「サイキック5 エターナル」にもリメイクモードがありますが,こうしたスタイルはどのように確立したのでしょうか?
イム氏:
私たちは,原作に対する「記憶の中のイメージ」を具現化することを最も大切にしています。当時のプレイヤーがゲームをプレイして受けた感動は,グラフィックスやサウンドだけでなく,ゲームのリズムや操作感,演出といった,総合的な体験から生まれたのだと私達は考えています。
なので,リメイクにあたっては原作の感性を損なうことなく,現代のプレイヤーに満足いただけるよう,ビジュアル演出やUXの改善,新しいコンテンツの投入などをバランスよく取り入れるよう心がけています。
例に挙げていただいた「サイキック5 エターナル」では,ボタン一つでオリジナルとリメイクの2モードを即座に切り替えられるようにしました。こうしたスタイルこそがCRT GAMESのアイデンティティであり,今もなお挑戦を続けられる原動力になっています。決して簡単な挑戦ではありませんが,これからも試行錯誤を重ねながら学び,改善していきます。
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4Gamer:
CRTは「Creative」「Remake」「Technos」の頭文字とのこと。余談ですが,このTechnosは「くにおくん」シリーズのテクノスジャパンと何か関係があるのでしょうか。
イム氏:
面白いご質問ですね! 実際,多くの方がこの点を気にされているようです。社名のTは確かにTechnosの頭文字ですが,これはテクノスジャパンとの関係を示すものではありません。
しかし,私達がゲーム開発で目指す哲学において,テクノスジャパンの精神とその遺産が大きな影響を与えているのは間違いありません。「ダブルドラゴン」「ギャングファイター」「西遊降魔録」「くにおくん」シリーズといったタイトルには,時代を超えて愛される個性がありますし,そこに含まれるユーモアと挑戦精神は,私達がレトロゲームを手がけるうえで大きなインスピレーションを与えてくれます。
私自身,子供の頃からテクノスジャパンの作品が大好きだったので,CRTに「Technos」が含まれているのも,そういった敬意の結果だと思っています。ちなみに,「Technos」という言葉自体には,「技術」や「技巧」といった意味も含まれています。
4Gamer:
最後に,日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
イム氏:
いつも温かいご関心とご声援をいただき,まことにありがとうございます。私達CRT GAMESは,子供のころの感動を再び味わえるよう,一つひとつの作品に心を込めて制作しています。今回の「SNOW BROS. 2 SPECIAL」も,そうした想いを込めた作品です。オリジナルのファンの皆さんには「あの頃の感覚」を,そして初めてプレイされる皆さんには「新鮮な楽しさ」をお届けできればと思っています。
今後とも変わらぬご声援をよろしくお願いします。私達も良いゲームでその期待に応えていきたいと思います。
1画面アクション黄金期のゲームデザインをそのままに,現代的なグラフィックスや「モンスターチャレンジ」のような新システムを組み込んだ「SNOW BROS. 2 SPECIAL」は,当時を知る人には懐かしく,そうでない人にも遊びやすいゲームになっている。
皆でワイワイ遊べるゲームを求めている人や,協力プレイ好きにはとくにおススメできる内容なので,興味のある人はぜひ試してみてほしい。
「SNOW BROS. 2 SPECIAL」公式サイト
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- PC:SNOW BROS. 2 SPECIAL
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- アクション
- CRT Games
- GRAVITY
- グラビティゲームアライズ
- プレイ人数:1〜4人
- Nintendo Switch:SNOW BROS. 2 SPECIAL
- Nintendo Switch
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- ライター:箭本進一

(C)TATSUJIN Co., Ltd. All Rights Reserved. Developed by CRT GAMES. Published by Gravity & GRAVITY GAME ARISE Co., Ltd.
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