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「ドラゴンクエストの日」記念企画。ロト三部作の舞台「アレフガルド」は,どのように姿を変えていったのか?
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印刷2025/05/27 07:00

企画記事

「ドラゴンクエストの日」記念企画。ロト三部作の舞台「アレフガルド」は,どのように姿を変えていったのか?

 1986年5月27日,ゲーム史に残る記念すべきタイトルが発売された。それはファミリーコンピュータ(以下,ファミコン)のプレイヤーに,RPGという新しい世界(ジャンル)を提供するだけでなく,やがては社会現象といえる大ブームを巻き起こすことになるシリーズの第1作「ドラゴンクエスト」(以下,DQ I)だ。

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 以降,「ドラゴンクエスト」シリーズは,39年の長きにわたってさまざまな作品を世に送り出してきた。プレイヤーの世代によって最初に触れたタイトルは異なるだろうが,ナンバリング作が発表されたときのお祭りのような雰囲気や,発売日が近づくにつれて,自分を含むプレイヤーたちが落ち着かない様子になっていったことは,共通の記憶になっているのではないだろうか。

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 さて,そんなシリーズの誕生日と呼べる5月27日は,「ドラゴンクエストの日」と定められている。今年も4Gamerでそれにふさわしい企画を……ということで,シリーズの原点であるロト三部作,すなわちDQ I,「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」(以下,DQ II),そして「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」(以下,DQ III)のすべてに登場した地,「アレフガルド」にスポットライトを当てたい。

 具体的には,DQ I〜IIIに登場するアレフガルドのフィールドを歩き回ってキャプチャし,画像をつなぎ合わせてマップを作成(昔の攻略本にあったアレだ)。それを確認しながら,ゲーム内の時代(タイトル)によってどんな違いがあるのかを比べてみようというものだ。

 伝説の原点であるアレフガルドがどう変わっていったのか,プレイ済みの人は懐かしみながら,未プレイだったりすっかり忘れたりしている人は,ちょっとしたガイドや歴史本のような気持ちで読んでみてほしい。

精霊ルビスが創造したアレフガルドの地。初期のドラゴンクエストを象徴する大陸だ
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 なお,テーマの関係から,本稿にはゲームのネタバレが含まれる。多くのゲーマーとってはもはや“常識”のようなものかもしれないが,DQ I〜IIIを未プレイで,前提知識ゼロで楽しみたい人は,プレイ後に読んでもらえれば幸いだ。

 プレイにはWiiソフト「ドラゴンクエスト25周年記念 ファミコン&スーパーファミコン ドラゴンクエストI・II・III」(以下,Wii版DQ I・II・III)に収録されたファミコン版を使用した。リメイク版とは違った描写がある点も,ご了承願いたい。

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[2024/05/27 09:00]
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[2016/05/27 00:00]


闇に閉ざされ,成熟していないDQ IIIのアレフガルド


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 今回の企画にあたっては,紹介をタイトルの発売順にするか,物語の時系列順にするかで少々迷ったのだが,内容から考えて物語の時系列で並べたほうが分かりやすいだろうと判断した。というわけで,まずは最も古い時代になるDQ IIIのアレフガルドから確認しよう。

 DQ IIIで主人公がアレフガルドを訪れるのは,ゲームの終盤。それまではまったく別の世界で物語が展開されており,アレフガルドの地に立つこと自体がサプライズとなっていた。

 DQ IIIのアレフガルドの陸地は,縦120×横120のマス目にすっぽり収まるサイズ。ほかの時代のアレフガルドと大きく異なるのは,夜が明けることがない,闇の世界であることだろう。これはこの地に棲む大魔王ゾーマが,人々に絶望を与えるべく行っている所業のせいだ。

 主人公がもともといた世界では,歩いていると時間が流れ,呪文「ラナルータ」やアイテムで瞬時に昼夜を変更させることもできたが,アレフガルドでは宿に泊まろうが,ラナルータを使おうが,明るくなることはない。

 ゲーム内に時間の概念が取り入れられたのは,本作からだったので,それを巧みに利用した演出といえるだろう。

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 もう一つ大きな違いは,世界に“端”が存在することだ(上に掲載したマップでは,画像編集の都合上,端が入っていない)。

 ほとんどのドラゴンクエストシリーズ作品では,東西と南北でマップがループすることで世界が丸いことを表現している。DQ IIIでも,最初の世界にはループがあるのだが,アレフガルドは四方が完全に行き止まりなのだ。正確には,外海の先が滝のようになっており,船が進めなくなっている。

 なお,DQ Iには船がないので,外海の先は確認できず,DQ IIのアレフガルドはさらに大きな世界の一部であり,隔絶されてはいない。

画面下に表示されているのが“世界の端”だ
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 非常に奇妙な世界だが,これに関して作中で明確に原因を語る人物はいないようで,闇と同じようにゾーマの仕業なのか,それ以外の要因なのか,よく分からない。しかし,プレイに利用したWii版DQ I・II・IIIに収録されている設定資料集によると,世界がまだできたばかりの未完成状態だから,ということのようだ。

設定資料の一部。「海のまわりはまだ闇」と書かれている
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 詳しくは後述するが,そもそもアレフガルドの地形自体が時代によって大きく変化している。ロト三部作におけるアレフガルドは,精霊ルビスがまだ“創造中”で,地殻変動が我々の現実世界より活発なのかもしれない。

 なお話は前後するが,DQ IIIではアレフガルド到着直後に船が手に入るため,大陸をつなぐ橋の存在感が薄く,さらに一部の場所には船でしか行けないようになっている。
 後のDQ Iでは(船がないので当然ではあるのだが)すべての場所へ徒歩で移動でき,それは(船がある)DQ IIの時代でも同様だ。ルビスだけでなく,人間によるインフラ整備もこれからなのかもしれない。


各所で時代の経過を感じられるDQ I時代


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 次はシリーズ第1作であるDQ Iのアレフガルドだ。本作では「アレフガルド=ゲーム世界のすべて」であり,ほかの場所から物語が始まるDQ IIとDQ IIIとはその点で位置づけがだいぶ異なる。

 マップを見てもらえれば分かるが,物理的なサイズはDQ IIIの時代とほぼ同じ(陸地を収めるのに必要なのは,DQ IIIと同じ縦120×横120のマス)なので,さまざまな点でこの2つのアレフガルドは比較しやすくなっている。

 なお,DQ IIIからDQ Iの間にどれだけの時間が経過したのかは,はっきりと明言はされていない。ただしこの地を治める王が,DQ IIIのラルス1世からDQ Iではラルス16世に大幅に代替わりしているので,恐らく数百年単位で時が流れていると思われる。

ローラ姫の口から,父である「ラルス16世」の名前を聞くことができる
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 まず全体的なビジュアルで一見して違いが分かるのが,水辺の描写だ。後の作品であるDQ IIとDQ IIIでは,アレフガルドに限らず,海と接する陸地には,さざ波のようなものが描かれ,海岸線を表現しているが, DQ Iではそれがなく,直線的に描かれている。後の作品から見れば若干の物足りなさを感じるところもあるだろう。

 ちなみにこのあたりの表現は,DQ IIとDQ IIIでも微妙に異なっている。DQ IIIではほぼすべての水辺にさざ波が描かれる一方,DQ IIでは,川と思われる部分がDQ Iと同じく直線的に描かれているのだ。タイトルごとに違った描写になっているのが興味深い。

 DQ Iでは,城や町,洞窟,ほこらといったロケーションの描写も,ほか2タイトルとの違いが目立つ。城や町,洞窟は1タイル分の小さなアイコンで描かれており,ほこらには専用のアイコンすらなく,単なる“階段”なのも印象的だ。

 草原や砂地,森といった地形のタイルは,三部作でほぼ共通のイメージとなっているが,歩ける山(丘陵地帯)は,DQ Iのみ黄緑っぽい色味で,かつ歩きづらくなっている(移動するとき,ひっかかるような動きになる)のも特徴と言えるだろう。

階段のアイコンでほこらを表現している。今見ると新鮮だ
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 未成熟だったDQ IIIの時代と比べると,DQ Iでは,さまざまな場所で土地がしっかりとつながって大型化。さらに,中央部の「魔の島」を除いて橋やトンネルで接続されたので,徒歩ですべての場所に移動できる。

 特に違いが大きいのが,北部の中央にある大きな森と,大陸と南東の端にある大型の島だ。前者はDQ IIIの時代だとバラバラの諸島状態だったが,海面の水位が変わったのか,完全な陸地になっている。後者は島の北部が一部伸張されて,橋が架けられる状態にまで大型化した。

 一方で,DQ IIIではリムルダール(東にある水に囲まれた町)とメルキド(南にある山に囲まれた町)の間にあった陸地が海によって分断されてしまった。

上の画像のほこらがある場所には,かつてルビスの塔が建っていた。地形の変化も含めて,時の流れを感じる
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 上の画像で紹介したように,DQ IIIでは北部の島にルビスの塔があったが,DQ Iでは塔が消えており,ほぼ同じ場所にほこらができた。
 ルビスの塔はその名前とは裏腹に,魔物が棲むダンジョンと化していたので,後の時代に破壊されたか,あるいは地殻変動によって崩壊したのかもしれない。


アレフガルドの町はどう変わったか


 前述の通り,DQ IとDQ IIIのアレフガルドはほぼ同じスケールであり,各地の町も基本的には同じ場所に存在している。そこには時代をつなぐ要素がいくつも仕込まれているので,その中でも印象的なものをいくつかピックアップしてみよう。

●城が移転した(?)ラダトーム
 DQ Iではゲームのスタート地点になるラダトームだが,町の作りや城の1階のレイアウトは,DQ IIIとほぼ同じ。
 城の南には「ひかりあれ!」のセリフと共にMPを回復してくれる老人がどちらの時代にもいるし,DQ IIIに呪いを解く勉強をしている子供がいると思ったら,DQ Iの同じ場所には実際に呪いのアイテムを外してくれる老人がいたりと,時代を越えたつながりを感じられる。

同一人物なのか,それとも代々呪いについての研究をしている家系の人なのだろうか
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 一方で城と町の位置関係に大きな変化があった。DQ IIIの時代では町の一部として北東にあった城が,DQ Iでは町の南西に独立して建っている。説明した通り,城の1階は同じレイアウトだが,2階の王の間はDQ Iで大幅にスケールダウンされているため,何らかの事情で少し離れた場所に建て替えられたのかもしれない。

位置関係が入れ替わったラダトームの城と町。長い年月の間に何があったのだろうか
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●急速な発展を遂げたガライ
 DQ IIIとDQ Iで“劇的なビフォーアフター”を見せたのが,ガライの生家だ。場所自体はアレフガルドの北西端で同じだが,DQ III時代の一軒家が,DQ Iでは,迷宮のような地下墓地(ガライの墓)を有する立派な町に成長しており,その変化は目を見張る。

DQ IIIのガライの家は,文字通り普通の民家だった(上)。DQ Iの時代(下)にその面影を探すのは難しい
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 ガライはアレフガルドで著名な吟遊詩人だったようなので,もしかしたら彼を慕って人々が集まり,それが町になっていったのかもしれない。昔の面影はほとんど残っていないが,地下にとあるアイテムが眠っているのは,時が流れても同じようだ。

●砂漠に消えたドムドーラ
 ガライの町とは逆の方向で劇的な変化を遂げたのが,砂漠の町ドムドーラだ。アレフガルドの南西に位置しており,周辺には強力な魔物がうろついているが,内海にも比較的近いせいか,DQ IIIの時点では活気ある町となっている。武器と防具の店が(片方は営業していないが)2軒もあるほか,南には比較的大型の馬牧場があり,牧畜も盛んだったようだ。雰囲気的には,DQ IIIの前半で立ち寄るアッサラームに近い。

DQ IIIのドムドーラ。郊外に広めの牧場まである,かなり大きな町だ
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 一方のDQ Iでは,魔物に滅ぼされた町として,ただ廃墟が広がるエリアと化している。建物はなんとかその形をとどめているが,生存者らしきものはまったくいない。魔物がはびこる町型のダンジョンと言えるだろう。フィールドの上のアイコンは普通の町と変わらないため,初見だと驚くはず。

DQ Iのドムドーラは,荒れ果てた家々と毒の沼地が広がる廃墟であり,町としての機能はない
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 壊滅しているため,ラダトームのように時代間でのつながりを持つ人物に会うことはないのだが,DQ IIIでは,あるタイミングでドムドーラの武器屋の子供に「ゆきのふ」という名前がつけられたことを確認できる。その名前はDQ Iでも聞くこととなり,それがあるヒントにつながっていく。

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●さらに守りを固めた城塞都市メルキド
 アレフガルドの南に存在するメルキドは,町全体が壁に囲まれた城塞都市だ。ドムドーラと同じく,強力な魔物が棲むエリアに位置するが,それでも滅ぼされていないのは,やはりこの壁のおかげだろう。ただ,DQ IIIのメルキドでは,壁だけだと守りが不十分だと思っている住人が多いのか,ほとんどの店が魔王への恐怖からか営業しておらず,商業機能としては物足りない。

DQ IIIでは町の内部から壁が確認できる(上)。DQ Iでは町の外に石壁が設置されているほか,床一面がレンガになっていているところが,いかにも「城塞都市」の雰囲気(下)
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 DQ IIIからDQ Iの間で大きく変わったのは,町の“門番”として「ゴーレム」が登場したことだろう。DQ Iではゴーレムを倒さないとメルキドに入れないが,DQ IIIだとその姿はなく,素通りできる。
 とはいえ計画段階には入っているようで,町には名前の選定を行っている老人がいる。ただでさえ強固な守りがさらに強化されたこともあり,アレフガルドでもトップクラスの安全な町になったのだろう。

ゴーレムは強敵だが,あるアイテムを使うことで戦いを有利に進められる
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“世界の一部”になったDQ IIのアレフガルド


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 最後に,DQ IIに登場するアレフガルドを見ていこう。その特徴は,「広い世界の一部分になった」の一言で表せる。DQ IIIのアレフガルドも「舞台の1つ」であるのだが,ほかの世界とは直接的につながっていない,いわば別世界という位置づけだ。

 一方でDQ IIのアレフガルドは「船を入手して海に出ると,目の前に広がる別の大陸」となっている。これはDQ Iをプレイ済みであれば,作品のスケールが大きくなったことを自然と実感できる演出にもなっている。

 ちなみに,DQ IからDQ IIまでの時間は100年とされていて,DQ IIIからDQ Iの間よりは短いようだ。

DQ IIでは,DQ IIIの時代にあった浅瀬がなくなっており,内海も自由に移動できる
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 そんなDQ IIのアレフガルドは,物理的なサイズがかなり小さい。陸地を収めるのに必要なマスは縦64×横58で,DQ IIIやDQ Iの約4分の1といったところ。地形こそDQ Iを踏襲しているが,訪れることができるロケーションはかなり少なくなっている。

 前述のように,DQ IIのアレフガルドは世界の一地方という扱いなので,DQ Iと同じような密度では描けなかったのだろう。

町などは単に描写が省略されているだけなのか,本当に消えてしまったのかは不明。個人的には,リムルダールの町が林になっているのが特に気になる
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 実際に入れる町はラダトームだけであり,目に付くほこらも南東の「聖なるほこら」のみ。ダンジョンまで範囲を広げても,魔の島にあるかつての「竜王の城」と,北東と南東の大陸をつなぐ「沼地の洞窟」だけなので,隅々まで探索するのもそう難しくないだろう。DQ IIIで封鎖されていた内海にも船を入れられるので,どこでも自由に移動と上陸ができる。

 DQ IIにあるロケーションはDQ IとDQ IIIにも登場しているので,すべての場所がどう変わっていったのか,それぞれ見ていこう。

●ラダトームの城と町
 DQ IIIからDQ Iの間に城の場所が変わったラダトームだが,DQ IIでは再度城の場所が変更されており,町の東にほぼ密接する形で建っている。位置関係としてはDQ IIIに近いが,100年の間に再度移設されたのだろうか。
 なお,城と町のエリアが一体化されているのも特徴で,アレフガルド自体と同じくコンパクトになっている。

DQ IIのラダトームは城と町が完全に一体化しており,画面の切り替えもない
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 立地はともかく,全体的なレイアウトに大きな変化はなく,2階の王の間もDQ Iを彷彿とさせるサイズ。実は王が行方不明という大事件が起こっているのだが,その割に町の雰囲気は平和だ。後述するように,脅威が目の前にあったDQ IやDQ IIIとは状況が違うのが,その原因かもしれない。

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 ちなみに,「ひかりあれ!」の老人と呪いの専門家は引き続き同じ場所にいるので,町の伝統はDQ IIでも継承されているようだ(相変わらず同一人物かは不明)。

●魔の島の城
 ラダトームと海を挟んで目と鼻の先にある魔の島には城が建っており,DQ Iでは竜王,DQ IIIでは大魔王ゾーマが待ち受けていた。まさに,世界を脅かす魔王との決戦の地であったのだが,DQ IIでは城の持ち主が竜王のひ孫に変わっており,道中に魔物は出現するものの彼自体は主人公たちに敵意を見せず,むしろヒントをくれる味方として存在している。

竜王のひ孫は,キャラクター付けはもちろん,ゲーム中盤での登場も意外だった
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 つまりDQ IIで世界を危機に陥れているのは,邪神の復活を目論むハーゴンであり,竜王の子孫は関係ない(どころかハーゴンを疎ましく思っている)ということが,かつての決戦の地に行くと分かる仕掛けなのだ。

 旧作のボスが続編に登場するシリーズは決して珍しくないが,シリーズの2作めにボスの子孫との平和的な邂逅があるのはユニーク。そのセンスには脱帽してしまう。

●沼地の洞窟
 沼地の洞窟は,アレフガルドの北東と南東の大陸をつなぐトンネルのようなダンジョン。恐らく入口の周囲が毒の沼地に囲まれているため,この名称になったのだろう。

DQ Iの沼地の洞窟。海底トンネルとも言える
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 「ドラゴンクエスト」シリーズの洞窟は,天然のものなのか,人工的に作られたのか,あるいは天然の洞窟に人の手が加えられたのかが分かりにくいものも少なくないが,この洞窟は純然たる移動用のトンネルとして掘られた,公共インフラの1つだ。
 何せDQ IIIでは工事の真っ最中であり,作業員と思われるあらくれが掘削作業をおこなっているし,敵も出現しない。

 とはいえ内部は入り組んでおり,(将来的にそうなるのだが)まるでダンジョンで,とても一般の人々が使う通行用のトンネルのような雰囲気はない。無計画に掘り進んだ結果なのか,あるいは何かしらの意図があってこの形になったのか分からないが,この時点ですでに不穏な空気が漂っている。

 また,南の大陸にはトンネルの入口(掘削口)が見えないことから,ひたすらマイラ方面から掘り進んでいる様子もうかがえる。

DQ IIIの沼地の洞窟では,あらくれ達がずっと作業を続けており,入口近くにはベッドがある休憩所(宿泊所?)も
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 DQ Iの時代ではトンネルが貫通しているが,工事が終わったはずなのに内部は相変わらず整理されないまま入り組んでおり,おまけに敵まで出現するようになっている。

 名実ともにダンジョンになってしまったのだが,実はこの構造はDQ IIIの状態をほぼ引き継いでいて,良く見比べると,すでにDQ IIIの時点で7割程度は完成していたようだ(特徴的な「牢」の部分もすでにある)。

 筆者は,今回実際にDQ IIIと比べてみるまで,沼地の洞窟は魔物が勝手に迷宮化させたのかと思っていたのだが,どうやらはるか昔の粗雑な工事が,後々起こる事件の遠因になっていたようだ。

DQ Iの沼地の洞窟は暗くて入り組んでいるが,通り抜けるだけならそれほど迷わない
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 さらに時代が下ってDQ IIになると,沼地の洞窟は一変した姿を見せる。内部が明るい(アイテムの「たいまつ」で照らす必要がない)のも大きな変化だが,何より目立つのは,一切の無駄がない直線のトンネルになったことだ。DQ Iの面影はほぼ残っていないし,DQ IIIの時代と同様に敵も出没しない。

“ただの通路”になったDQ IIの沼地の洞窟。通り抜ける以外にできることはない
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 とはいえ通行路と考えるとこの形が正しいはずで,本来の完成想定図はこの形状だったのかもしれない。ラダトームの城が移設されたように,まるで迷路のような使いにくいトンネルも,平和な時代になって再工事が行われたのだろうか。

 DQ IIの主人公たちは船を持っているため,いくら通りやすくなっても,ここを利用する必要はない。まさに「べんりな よのなかに なったものよのう」という感じだが,一抹の寂しさも感じてしまう。

●聖なるほこら
 アレフガルドの南東にあるほこら。前述のようにDQ IIIの時代は船がないと入ることができなかったが,DQ IとDQ IIでは橋がかけられているため,徒歩で訪れることができる。

どの時代も老人がたたずむほこら。代々受け継がれているのか,あるいは世界が危機に陥ると,誰かがこの役割を果たすと決められていたりするのだろうか
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 このほこらは,いつの時代も「何かを持って行くと,何かをもらえる」という役割を担っており,老人が管理しているのも同じ。手ぶらで訪ねる人間は相手にしてくれないので,指定された物を手にしてから向かいたい。


2025年にふたたび新生するアレフガルドの大地


 以上,ファミコン版ロト三部作のアレフガルドを一気にチェックしてみた。

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 冒頭で触れたように,この記事に掲載しているマップは手作業で作成したのだが,取りかかる前に気になっていたのはアレフガルドのサイズだった。DQ IIが一番小さいことは事前に分かっていたが,DQ IとDQ IIIにどれだけの違いがあるかは,かつてプレイした時にも意識したことがなかったからだ。

 作業的には正直かなり大変だったのだが,結果的に「DQ IとDQ IIIのアレフガルドのサイズはほぼ同じであり,DQ IIはその約4分の1」ということが判明し,ファンのひとりとして感慨深いものがあった。

 さて,ロト三部作のリメイクタイトルとしては,2024年にHD-2D版「ドラゴンクエスト III そして伝説へ…」がリリース済みで,2025年には同じくHD-2D版「ドラゴンクエスト I&II」の発売が予定されている。時代に合わせたシステム改修に加えて,物語のより深い掘り下げも行われることだろう。

 長年お世話になってきたファンの1人として,発売を今から楽しみしたい。

ファミコン版ではNPCだったサマルトリアの王女。HD-2D版「ドラゴンクエスト I&II」のトレイラーに,彼女らしきキャラが登場して話題になっている(関連記事
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HD-2D版「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」公式サイト


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